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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
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朝の食堂

気がついたら100話達成していました…皆様ありがとうございます!


感想、レビューお待ちしております。

 3日目が訪れた。なんだか疲れ切ったクロムと共に食堂に行くと昨晩は特に何もなかったようでラタン姉もスズちゃんも仲よさそうにしている。


「ラタン姉、昨日の髪飾りどうかな?」


「よく似合っているのですよ。キルヴィが選んだだけはありますね」


「ありがとう!ラタン姉のも似合ってるよ!」


 昨日買ってあげた髪飾りをつけて見せ合いっこをしてきゃあきゃあとはしゃいでいるようだった。今の会話を聞くに、どうやらスズちゃんもラタン姉と呼ぶようにしたらしい。


「あれ、イブキさんは?」


 少し不安そうにしながらクロムが2人に尋ねる。そういえば今日は姿が見えない。


「昨日買ったらしい本を読んでるみたいなのです。集中しているみたいだったので一声だけかけてきましたが先に行っておいてって言われたのです」


 ラタン姉が顎に指を当てながらそう言うと、スズちゃんがそれに続いた。


「お兄ちゃん、昨日一緒にいたならあれどういった本かわかる?覗き込もうとしたらダメって抱え込んじゃって教えてくれないの」


 クロムの方を見ると、フルフルと首を振った。


「いや、私もサッパリなんだ。本屋で見たときは古ぼけた、変哲も無いような黒表紙の本に見えたんだけど私にはタイトルが読めなかったんだ」


 うーむ。気にはなるがイブキさんも大人の女性だ。隠したいことの1つや2つあるのだろう。とりあえず今のところはそっとしておこうという話になった。


 朝の食事を終え、今日の方針を決める。明日は日が昇る前にはアムストルを出るつもりである。せっかくこんなに絵になる場所だというのに、ほとんど見て回っていないので今日は町の観光でもしておこうか。近くにニニさんが居たので観光に良いところはないか尋ねてみる。


「観光?あー、お客さん達は明日の朝までの滞在だったねー。でも観光かー。参考になるかわからないけど私が好きなところでもいいのかなー?」


「ぜひ、お願いします。地元の人が好きな所って、いかにもその町のことを知ることができましたって気分になれるので」


「そう?なら教えるねー」


 僕が地図を広げると、ニニさんは精巧な地図だねーと言ってくれた後にオススメポイントを指差しながら教えてくれる。


 代表の家の裏庭は素敵な庭園があるんだよ、この角にある祠に礼拝すると幸せになれるらしいよ、ここから見る夕焼けは素敵なんだよ、と一生懸命に説明をしてくれるニニさんに皆で癒される。


「でも、格別に私が好きなのは町の入り口だよー。いろんな人がいろんなものを抱えてこの町にやってくる。それを眺めるのが私は世界で2番目に好きかなー?」


「2番目なんですか?ちなみに世界で1番好きなのは?」


 スズちゃんがそう尋ねると、ニニさんは「トトさん」と頬を赤らめながら身をくねらせた。ラタン姉とスズちゃんがきゃあきゃあとはしゃぐ。トトさんもこんなに可愛い人が奥さんで幸せ者だと思う。そこでニニさんは短くあ、と言った。


「ごめんねー、訂正するよ。町の入り口は好きだけどすぐに世界で3番目に好きなものになっちゃうかもしれないのー」


 その言葉に女子2人は食いつき気味にどうしてですかニニさんと尋ねる。ニニさんはニコニコしながらお腹を撫でると2人のテンションは最高潮に達したようだった。一体どういうことかと頭をかしげると仕方がないなといった感じにクロムが近くにやってきて説明をしてくれる。


「ええっ!ニニさんとトトさんに子供が!?」


 思わず大声で叫んでしまった。食堂にまばらにいた他の利用者が一斉にこちらを振り向く。


 えへへー、と頬をかくニニさんに食堂全体が歓声に包まれた。ここの常連さんらしい利用者は皆でこのことを祝おうと意気込んでいる。大声で騒いでいたから気になったのか、厨房から何事かとトトさんが顔を出すと歓声がひときわ大きくなる。


 トトさんに対して皆口々に

「おめでとう」

「この幸せ者め!」

「ちゃんと家族を幸せにしろよ!」

「大変だったら手伝うからいつでも呼んで」

 と声がかけられる。


 トトさんは現状を理解できないまま食堂利用者達の手でニニさんの前まで引っ張り出されてきた。一体どうしたんだいとニニさんに尋ねるトトさん。あのね、とニニさんは自分のトトさんの耳元でボソボソっと呟く。


 トトさんは目を白黒させた後、遠吠えのような声を上げてニニさんを抱き上げてくるくると回ったのだった。途端に回りから妊婦に何やってんだバカと止められ、ニニさんを優しく降ろさせた後にトトさんはもみくちゃにされていく。


 降ろされたニニさんはこちらに歩いてくる。その顔は幸せに満ちていた。


「みんな、楽しそー。早く産まれてくれないかなー?楽しくて、幸せな世界が待ってるよー?」


 その顔は、ニニさんとは全く似ていないというのに僕のことを見ていたアンジュ母さんに重なったのだった。

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