生命賛歌
八月、処暑の時節らしい。街路樹の下には干からびた油蝉、散らかる死骸。残りものだけがまだ、喚き続けている。何処か記憶する光景。個体の設計図に刻まれているのか。飽きて、その場を離れる。
日中の熱はそのままのようで、赤い陽が沈むと、夜は冷気が延びてくる。街の外見はコンクリートとアスファルト。中身はプラスチックとビニール。緑はちらほら、公園や川沿いの並木、丘陵地の雑木林。一日しがみつき、今日を越える。
潜んでいた地下からようよう這い出て、姿形を変え、喰われないよう、捕まらないよう。所在を移しながら、知るを知る。世界は残酷に、こんなにも広く、短い。自らの習性に重ね、歓楽街、不夜城近くで遅くまで騒ぐ。
見えないもの。天と地があって、その外側にあるもの。創造された目的、それからの先。見えてきたもの。空に比べる矮小さ。かなわない決まり事。こんな浮いた感情もひとときのもの、次へは繋がらない。
不意に、ざぁーっと雨が降って止んだ。
埒外に、手頃な場所にしがみつく。幾許かばかりの残り、昂ぶる欲求が最期。静謐を破り、魂が、命の本能が、振り絞って私を震えさせる。
ツクツクボーシ、ツクツクボーシ。