5話
投下でゴワス。o((*`^´*))oドスコイ!
「おかわり!」
純粋で無垢な声が家に響く。朝から大声を出さないでくれ、と思ったがあいつは腹ペコだ。絶賛空腹中だ。
ツバキは甘味の前に、「まずは腹ごしらえからじゃ!」と言って今に至る
「どんなけ食うんだよ」
俺は呆れを含んだ声で大食漢のツバキに言う。当のツバキは心外、といった顔をしている。
「んっ?こんなのまだまだ序の口じゃ。それよりも早くおかわり!」
ツバキは一瞬で空になった特大の茶碗を俺に元気よく差し出す。本当は受け取りたくない。もう家の食糧がこいつのせいで底を尽きようとしている。本当に食べないでもらいたい。だが、拒否すると拗ねる。だから面倒くさい。
「これで終わりだからな」
「な、何故じゃ!」
ツバキは目を大きく見開き箸を握りしめる。こいつが好き勝手に飯を食ってたらこの世界の食糧無くなるんじゃないか?と思ってしまう。
「あのな~お前のせいで家の食糧が無くなりかけてるんだよ」
「そんなもの買ってこればよいじゃろ」
「それが出来ないから終わりなんだよ。この家、どこにあると思ってるんだ?」
「そんなもの―――――あ」
「やっとわかったか。この家は森奥にあるんだよ、しかもかなりの広さをもつ森の奥だ。わかったか?」
「わかったのじゃ。おかわりするのやめるのじゃ」
ツバキは俺に差し出していた特大の茶碗を下げる。おかわり出来ないのがそんなに悲しかったのかしょんぼりしている。
「はいっ、これで終わりだからな」
しょんぼりとしているツバキの目の前にこぼれ落ちそうなほど飯が入っている茶碗を差し出す。当のツバキは目を丸くしてこちらを見る。
「な、何故じゃ?」
「さっき言ったろ、これで終わりだからなって。これが本当に終わり。これ以上のおかわりは禁止、本当に食糧が無くなる。さっ、豪快な食べっぷりを見せてくれ。俺はお前の食べているところ結構好きだからな」
「うむ!承知した!」
ツバキが箸を持ち、飯を口に含もうとしたとき、飯が消えた。口に含んでいないのに消えたのだ。ツバキは「うまいのじゃ~」とか言っているので食べているのは分かる。だが、何故消える。
「なあ、なんで飯が消えるんだ?」
「これが噂に聞くキャ〇食いと聞いたから、お主は儂の食べっぷりが好きなのであろう?」
「好ましくはあるが、消えるとはきいていない」
「細かい男じゃの。男なら気にするな」
なんか丸められた。そんなことは無視して他のことをしなければ。|д゜)チラッ
やっぱり消えてるな。一体どんな原理だ?そんなことを考えていると、
「ごちそうさまなのじゃ。これ、どこに置けばいいのじゃ?」
早いな、もう食べ終わったのか。
「あ、ああ、こっちに持ってきてくれ」
「うむ」
茶碗の上に箸をのせて、一歩また一歩と慎重にこっちに持ってきた。
「そこに置いといてくれ」
「ひゃうっ。いきなり声をかけるな!びっくりするじゃろ!」
怒った勢いで手から茶碗が滑り落ちる。
「あ、」
ガッシャンッ!
茶碗が粉々に粉砕した。元々俺が作った茶碗なので焦ることはないが、ツバキは割ってしまった罪の意識のせいで少し涙目になっている。
「ど、どうするのじゃ、これ」
「片付ければいいだけだろ。それより破片さわってないか?」
「さわってないのじゃ。それよりも儂怒られるのか?」
「いいや、元々俺が作ったものだし、なにより俺のせいで割れたんだからツバキは怒られない。てか、怒れない」
「よかったのじゃ」
安堵の息を吐き、ない胸を撫で下ろす。
「今から片付けるからあっちで暇を潰してくれ」
「わかったのじゃ」
「破片踏まないように気を付けろよ――――痛っ」
「どうかしたのか!?」
破片を片付けながら話していたせいで左手を切ってしまった。
「手を切っちゃってな、そこの棚の一番上に救急箱あるか?」
「えーとこの白い四角い箱か?」
「それだ。それをこっちに持ってきてくれ」
俺は今のうちに散乱している破片を片付ける。元々茶碗が特大だったので破片の量が異常だったがある程度は片付けることができた。
「ほれ、持ってきたぞ」
「ありがとう。ついでにすまんが箱を開けてくれないか?」
「開けたが、何を取り出せばよいのじゃ?」
「えーと白い容器に青い蓋のなんか変な形のやつないか?」
「あるにはあるんじゃが……」
「どうした?」
「中になにも入っていないのじゃ」
「なっ!?」
どうすればいいのか。このままほうっておいたら細菌が入るし、血が垂れて部屋が汚れるかもしれない。まずは水で血を流すのが先か。
「箱の中から布をとってくれ」
「消毒はどうするのじゃ?」
「消毒するのがないからな、水で流して布でってやつでいいだろ」
「ほう」
なんかよくわからん。そんなツバキを無視して血を水で流そうとしたとき、指を掴まれた。
「なんだ?」
指を掴んだのはやはりツバキだった。理由がわからん。何故指を掴む。そんな疑問が頭のなかで渦巻く。いまだに俺の指を掴んでいるツバキは、いきなり指を咥え込む。
「―――ッ!?!?」
「じゅるっ……ちゅ……ちゅぅ……れる、れろれろぉ……ちゅるる」
「ツ、ツバキ!?」
「ちゅ……じゅるっ……れるれる……なんひゃ、ひらんのか……んむっ…ちゅ……ちゅぅ……れろ、ちゅるる」
「知らんとかじゃなくて、何故指を咥える」
「はぁむ……じゅるちゅる……っん、んん……ちゅ……唾液には、傷を癒す効果があるのじゃ……はぁぁ……れるれろ」
「…………」
「れろれろれろ……はぁ、はぁ……ちゅるる」
やばい、これ結構クル。はっ!駄目だ俺!鋼の精神をもって煩悩を消すんだ。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、俺の精神力、舐めんなよぉォォ!
「じゅるる……れる、れる……ちゅぅ……はぁむ……ちゅぽ……んん、はぁ……はぁ……ぷはぁ、これで治ったじゃろ」
やっと咥えていた指を解放する。ツバキが咥えていた指は唾液でベトベトになっていて、光が当たるごとにキラキラしている。肝心の傷は治っており、先程まで血が出ていたとは思えないほど止まっている。
「ありがとう、な」
素直に礼を言う。何だろうこのやるせないかんは。あ、お礼には別の意味なんか含まれてないからな。
「ふふふ、どういたしましてなのじゃ」
ない胸を張って喜んでいる。何でかわからないが自慢気だ。人助けできたのがそんなに嬉しかったのか?だけどなぁ、危うく俺は過ちを起こしそうになったんだけどな。そんなことを思いながら、嬉しそうにしているツバキを見て頬が緩んだ。
「お陰で怪我治った」
ポンポンとツバキの水色の頭を撫でる。
「うんにゃッ!やめろ、やめるのじゃ!子供扱いをするな!」
ツバキは必死に抵抗する。だが、今のツバキは然れど幼女。成人の俺とでは圧倒的な身長差がある。例え、どれだけツバキが手足をじたばたさせ抵抗しても、絶対に敵わない。その事をわかっている俺は頭を撫でるのをやめない。
「可愛いなぁ」
「な、か、可愛いって言うなぁぁぁぁぁ」
「何だよいきなり、可愛いが駄目なら……愛らしいな」
「それ、同じ意味じゃろぉぉぉぉ」
「わかったよ。じゃあやめる」
「あっ………な、何故じゃ、儂は可愛いと言うのをやめろと言っただけで、撫でるのをやめろとは言っていないぞ。だからな、あのな、その、もっと撫でてほしいのじゃ」
頬を赤く染めて、モジモジしながら俺に懇願する。不覚にもツバキのことを可愛いと自分のものにしたいと思ってしまった。
そんな邪な思いを捨て、ツバキの願いを叶えてやる。
「わかった、心行くまで撫でてやる」
課題がぁ、課題がぁ。そんなことは置いておいて、今回は少し遅れてしまって申し訳ありません。先程も書いたように課題が多すぎて終わらなかったのです。まあ、もう終わらせましたけど。そんなことがあって今回は遅れてしまいました。いつも通り、誤字脱字があれば教えてください。次回「誰だと思ってるんだ?」よろしくお願いします。