3話
ヾ(;゜;Д;゜;)ノ゛本格的に話が変わってきた。あ、今回も短めです。すんません。
そこはある森の奥地にある祠。過去に竜神を崇め奉った祭壇があるとされる場所。奉った竜神は魂だけが今だ健在。時折訪れた生き物に加護を与えている。
竜神には願いがあった。自分の魂を受け入れる大きな器の持ち主についていき、この広い世界を見て回りたいという願い。もう何年経ったか忘れた。何百、何千年この祠に訪れた生き物に祭壇で加護を与えてきた。だが、自分の魂を受け入れる器の持ち主には一度も出会ってなかった。
そして竜神は今日もまた、訪れた生き物に加護を与えている。いつか自分を受け入れる器の持ち主に出会うため竜神は生き続ける。
竜神の祠はひんやりとしていた。今の時期は植物の芽吹きを促すぽかぽかとした春の陽気。だがこの祠の中は季節すら拒絶しているようだった。
祠の内部は整備されており、人三人が並んでも余裕があるサイズだ。奥へ進むと壁から美しい水晶が剥き出しになっており、祠内部が水晶による光でキラキラと光っている。
師匠は何度か見たことあるのかまったく気にしていないが、俺とシャロは興味津々だ。やはりシャロも女の子だからか、水晶を覗きこんでうっとりとしている。かくいう俺は、これを売ったらいくらになるんだろうか?下世話なことを想像している。
「お前ら前を見て歩け」
俺とシャロがあまりにも歩くのが遅いのか、師匠は呆れている。
「師匠これが竜神の祠なのか」
「正確には竜神の祠に続く道だな。この奥に祭壇がある。早く終わらせるぞ。やることがあるからな」
そう言って師匠は足早に歩く。俺は水晶を見てうっとりとしているシャロを現実に呼び起こし急いで師匠についていく。
「早くしろ」
「ごめん、ごめん」
暫く歩くと大きな空洞の入り口にたどり着いた。師匠は目配せで行くぞ、といい空洞の入り口に入った。俺達も続けて入る。
空洞の内部は殆どが泉で占められていた。水面から底が透けて見えるほど透明感のある水。明かり等無いのに先程の道とは比べ物にならないほど明るい。蒼白い光が辺りを包み込んでおり神秘的な光景だった。
その泉の真ん中には、朱を基調とした祭壇が佇んでいる。祭壇に行くには入り口から一直線に続いている大きな岩の上に乗らないといけないらしい。
「すげぇ」
その言葉しか浮かばなかった。シャロもそのようで目を一杯に見開いている。
「お前ら・・・もういい、行くぞ」
師匠は岩の道をトントンとか跳びながら進む。俺達も後に続いて進む。
祭壇につくと俺は師匠に引っ張られて祭壇の目の前に出される。シャロは狗神の加護があるらしいので竜神の加護を受けるのは俺だけということだ。
師匠に教えられた通りに片膝をつき、手を組み言葉を紡ぐ。
「竜神様。お目通り願います」
瞬間、泉が輝きを増した。するとどこからともなく威厳ある声が聞こえた。
『汝、何を望む』
野生の竜神が現れた。
話しますか?
はい
いいえ
俺ははいを選ぼう。ちょっとだけ遊びたかったんだよ。察してくれ。
「私は加護を望みます」
『おお、懐かしい響きだ。この頃誰もここを訪れんから話し相手を欲しているのじゃ。話し相手になってくれば加護を与えよう』
「承ります」
『うむうむ、よかったのじゃ。それで気になることが一つ。お主、何故人の身でありながら魔法口が無いのじゃ』
魔法口とは、人族、亜人族、竜人族が魔法を放つための口。体の至るところから魔力が練られ、練られた魔力を一点に集めて放出する口。この魔法口がなければ魔法を放つことができない。本来、人族に部類される者達は魔法口がある。だが俺には無いのだ。恐らく竜神はそれが珍しいと思ったのだろう。
「理由は不明です。最後に魔法を使ったのが10年前です」
『何らかの異常で魔法が使えなくなったのか。どれ、儂が見てやる。目をつむれ』
俺は竜神に言われた通り目をつむる。すると体の中に何か入ったような感覚がした。時折、どれどれとかほおーとか聞こえる。暫くして体に入っていたものが出たような感覚があった。
『目を開けろ』
言われた通り目を開ける。
『お主、中々の魔力じゃな。それでお主が魔法を使えなくなった理由がその魔力のせいじゃ』
竜神は一人で話し出す。
『お主の体のなかで、その強大な魔力が暴走して魔法口を塞き止めているのじゃ。早く手を打たなければお主は近い将来死ぬ』
竜神に言われたことはあまりにもヘビーだった。
「俺は今どんな状態なんだ」
『やっと本性を現したか。よいよい、畏まる必要はない。それでお主の今の状況は馬に四肢をくくりつけられ、裂かれる寸前じゃ』
想像して背中に悪寒が走る。折角、あの日生き延びたのに死ぬわけにはいかない。そんな思考のせいで顔が強ばってしまう。
『そんな怖い顔をするのではない。お主の体内にそれを御する者がいればよい。本題に入ろう。お主、儂と契約をしてみんか?』
後ろで傍観していた師匠が驚愕の声をあげる。竜神はそんなのお構いなしに話を進める。
『お主にはいいことばかりじゃぞ。お主は生き永らえることができ、更に儂の魔力と運動神経、知識を手に入れることができる。お主は儂を外の世界に連れ出すだけでよい。どうじゃ?契約するか?』
俺に対して良いことばかりの契約。何よりも生き永らえることができる。そんなの聞く前にわかっているはずだ。
「するしかないじゃないか、契約を」
『契約成立じゃな』
「それで今からか?」
『待て待て、先走るな。少しお主の力を見せてくれ。魔法が使えないからって10年前サボっていたわけでは無いのだろ?』
「何を見せればいい?」
『お主の力じゃ。何でもよい。だがここを荒らさない程度で頼む』
この祠を荒らさない程度で見せつける俺の力。俺が誰にも引けを取らない俺の得意分野。
「魔術でどうだ」
『ほう、魔術を選ぶか。それほどまでに自信があるのか?』
「ありまくりだ。魔術だけなら多分、いや確実に竜神より上だ」
『言いよる。儂は魔術は極めてこそいないがなかなかじゃぞ。儂より魔術が上。面白い。見せてみろ』
じゃあ始めよう。今回は祠を荒らさない程度で見せつける魔術 《ライト》でいこうと思う。気を静めて、雑念を消す。
《光灯の骸に口付けを》
一瞬で魔方陣が組み上がり光が灯される。これが俺の魔術。極限まではしょった得意分野だ。
本来の魔術は 《~神々の骸に敬愛を、~骸に口付けを》とかいう無駄に長いフレーズなのだ。試しに術式を言うと、 《光の神々の骸に敬愛を、明るく照らす光の骸に口付けを》が必要なのだ。うん、長い。
術式の頭には自分の使いたい属性を。魔術には属性があり、五行万象は勿論のこと光、闇、聖がある。この属性は自分の才能によって使える者が異なる。俺は全ての属性を使える。
だが戦闘で近接されれば長い術式を言わないと駄目な魔術は使えない。師匠の教育論は魔術、魔法を使いたきゃ無理矢理でも短縮しろ。後衛なんか接近されればただの肉壁だ!近接攻撃も極めろ!というありがたい教育論のお陰で近接攻撃は師匠に次ぐぐらいで、魔術はもう極めたと言えるぐらいだ。
『す、素晴らしい!素晴らしいぞ!魔術の術式をこれ程までに短縮した人間はお主が初めてじゃ。嘘ではなかった!お主は儂にふさわしい契約者じゃ』
今まで術式を短縮したものは沢山いたそうだ。だが短縮した術式ではまともに効果が発揮されなかった。そのせいで術式を短縮するのは無理と結論付けられていた。
術式の短縮に必要なものは持ち前の魔力、意志、最後に想像力だ。この3つを兼ね備えた者以外で術式を短縮することは至難の業だ。
そして俺は術式を極限まで短縮した。使いたい属性と最後のフレーズを言って後は想像力で補っている。その結果、近接戦でも魔術が使えるようになった。
「で、契約はどうやってするんだ?」
『祭壇の上に鏡があるじゃろ』
祭壇の真ん中に草みたいな形の金縁の見るからにお高そうな鏡があった。
『その鏡にお主の血を垂らして、儂に名前をつけるのじゃ』
名前か。う~んどんな名前が良いのか。もう花の名前でいいか。俺はそこら辺にあった石を一つとり皮膚を薄く切る。
「じゃあ、ツバキで」
『中々いい名じゃ。これで契約完了じゃ』
「随分と呆気なかったな」
『契約とはそういうもんじゃ。後ろにいるお二方。これからよろしく頼む。では儂はお主の中にいるので何かあったら呼べ。儂は寝る』
「おう」
それっきりツバキの声はしなかった。言ってた通り寝たのだろう。俺は師匠とシャロと一緒に祠を出た。
外に出ると空が茜色に染まっていた。俺達は師匠に乗って家に戻った。師匠がときどきこちらを振り向いていた。そんなにツバキと契約した俺が気になるのか?俺はよくわからないまま家へ帰宅した
「疲れたぁ~」
今はもう辺りは暗くなっている。夕食を平らげ、家事を終わらせて風呂にはいった。もうすることはなく後は寝るだけだ。
今日は一段と疲れた。早く寝よう。そう思い横になる。するとすぐに眠気が襲ってきた。
明日、朝食、何にしようかな・・・
怒涛の三連続じゃい!誤字脱字があれば教えてください。では次回の予告『ロリ神様は突然に』どうかよろしくお願いします。