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すいません。時間がなかったので題名が考えられませんでした。あと短いです。
昨日からメイの様子がおかしい。どこか怯えているようだ。
寮の前で別れてから会っていないから心配だ。そのせいで、飯を腹八分目までしか食べれなかった。まぁ、世間一般ではそれが普通らしいが、食べれるときに食べておかなければいざというときに対応できない。
そんなことはどうでもいい。今は目先の問題を解決しなければ。
昨日、先輩から言われたことは、引き抜きだった。驚いたことはシャロが生徒会に入っていたことだ。生徒会は人手不足らしく、どうにかして役員を手にいれたいらしい。
そんな話をしているときでも、珍しくメイは心ここに在らずといった感じで、ずっとボーッとしていた。
「……どうすればいいんだ」
自室でふと呟いた。外は明るく、いやまだ薄暗がり。言葉に表すなら早朝と言ったところか。
自室は二段ベッドと二つの机の簡素な部屋だ。そんな部屋は外から差し込む陽光を浴びて一気に明るくなる。
シリウスは窓を覗いた。外ではようやく小鳥達が囀りを始めだした。昨日の夜に降った露が陽光で煌めく。
今日もいつもと変わらない朝が訪れた。
そこは修練場。生徒達が腕を磨き、そして剣を交える場所。そこに、胸に鷹のクラス章を着けた生徒達が一列に整列している。
数分後に現れた教官の指示のもと、ペアを作り剣を交える。
―――ガキンガキン
金属がぶつかり合う音が鼓膜を刺激する。蝉の合唱のように修練場内に響き渡る。
「で、ふっ!どうし、ふっ!たんだ?」
「何でもぉっ!ありませんっ!」
一つのペアだけは次元が一回り二回りも違っていた。
高速の一太刀を浴びせれば、また高速の一太刀が返され、少しでも態勢を崩そうものなら直ぐ様追撃を入れる。生徒の戦い云々の前に修練として相応しくない光景だ。他の生徒、教官までもがそのハイレベルな剣戟に見惚れている。
先程まで蝉の合唱よろしくうるさかった修練場が静まり返り、連続して聞こえる接触音。空を斬る音。それらがまるで有名作曲家が作曲した音楽のようで、それを生み出す剣は演奏者。彼らはまるで円舞曲を踊る踊り子。その全てがそれぞれの仕事をこなし、一つの芸術を生み出す。
二人の顔に大粒の汗が滲み出る。それは剣戟の壮絶さを物語っている。それだけではない。剣が少しずつ――小さいながらも欠けてきている。
他の生徒たちが観戦することにより広くなった修練場を最大に使い両者は間合いをとった。
「はぁはぁ、俺が勝ったら教えてくれよ」
「はぁはぁ、だから何にもないです!」
もっともスタンダードな構えである上段の構え。その構えを崩さぬまま地を蹴った。二人の陰が陽炎のように揺らめいた。陽光すら二人の速さに追い付かない。
幾度となく交差する双剣。それから迸る火花。
「チッ!」
「ハァッ!」
両者、剣戟の衝撃で後ずさる。修練場の石の床は微かにひび割れる。
二人は同時に汗を拭う。二人の躯からは力は感じられない。そしてまた―――揺らめき消える。
数瞬、修練場内を劈く轟音。
ガキィィィンッ!!!!
「はァっ!」
「くッ!」
小さな苦悶の声。そしてなぜか、両者の鍔ぜり合うはずの剣が虚空を斬る。直後の両者に聞こえたのは後ろに何かが落ちる落下音。二人は揃って青い顔で自らが持っている剣を見た。
そこには、半分から上が、剣が真っ二つに折れている。切り口というのだろうか。その折れた場所は平坦で均等。剣と剣がぶつかり合う衝撃で折れたとは思えないほど流麗だった。
両者の戦闘は終わるかに思えた。が、両者は短刀ほどの長さに変化した剣を構える。
そしてまた、穏やかな水面波紋が広がるように音が静かな修練場に響き渡った。
「「ッ!?」」
異様な光景が視線を釘付けにする。二人の間――そこに素手の青年。
「懐かしい顔を見つければ……」
老人のように落ち着いた声音。二人の剣から手を離した青年は何か言葉を紡ごうとする。が――
「お祖父様っ!」
二人の戦闘が終わったことにより異様な空気が流れる修練場に、怒気を含んだ声が皆の耳に届いた。皆一様に発生源を見れば、壮麗な少女。
「おぉ、リン」
「おぉ、じゃありません!全くもうっ!理事が御呼びです」
「もうそんな時間か」
青年は思い出したように時計を見る。
「早く行きますよ」
「ああ、そうしよう」
リンは軽く教官に会釈してその場を後にする。青年もそれに続く。ふと、青年は何か思い出したかのように後ろ――二人の方に振り返った。
「また会おう。少年少女よ」
そう言い残し青年はその場を去った。あとに残るのは微妙な空気の生徒達と教官。暫しの沈黙。それを打ち破るのは校内に鳴り響く無機質な鐘の音。
二人は鐘の音と同時に呆れながら顔を見合わせた。
「あいつは何がしたかったんだ?」
「さぁ?私にはわかりかねませんね」
「(あぁ、やってしまった……)」
青年は可愛い可愛い孫娘の後ろで、1人先程の行動を振り返り悶絶していた。流石の孫娘も後ろには目はないようでバレたりはしない。
「(仕方ないだろ、懐かしかったんだから。悪くない。あいつが悪い)」
酷い逆ギレだ。だが、さっきの行動はきっと夢に出てくる。「また会おう。少年少女よ」
――うわぁぁぁぁぁぁ
「お祖父様、何をしてらっしゃるんですか?壁に頭なんかを打ち付けて。釘なんてないはずですが」
「今自分に釘を打ち付けているところだから気にしないでくれ」
これから働くように、自制という釘をな。
「はぁ?」
「気にしたら敗けだ」
「まぁ、いいですけど…生徒達の授業に割り込むのは関心いたしませんが、それはどのような理由でなさったのですか?」
愛する孫娘の背中から般若が見え隠れしている。さっきの行動が余程不満だったようだ。孫娘は可愛い顔で睨みつけてくる。その表情もグッドだ。
「いや、知り合いに似たような奴がいて、そいつに見えただけだ。教官が困っていたからついでにあの戦闘を止めた。これでどうかな?」
「似ている人は気になりますが…まぁ、いいです。それより……」
孫娘が足音を消して詰め寄る。青年はそれに後ろに後ずさる。
「もう時間は過ぎています」
「あ、ああ」
孫娘は流れる長髪を翻した。
「さぁ、行きますよ」
今年?来年ぐらいまで本当に忙しいので投稿は不定期になります。待っていてくれる方はすいません。なるべく早く上げるつもりですが遅くなることは確実ですので待っていただけたら幸いです。