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14話

遅くなってすまなかった(´・ω・`)リンをエルフにしますた

最初の生徒がダンジョンに入ってもう四時間が過ぎようとしていた。昼下がりのガンガンと照りつける太陽、それが今では夕焼け空を作り出している。


戻ってきた生徒たちを尻目に、教師たちは一つの場所にかたまり何やら言いあいをしている。


「イチミヤさんがダンジョン内で行方不明です。それと、一番最初にダンジョンに入った者も行方がわかっていません」


眼鏡をかけて教員の証である青のローブを身に付けた教師の一人が事務的に現段階でわかっていることを話す。


「イチミヤ家のご子息だぞ。もし、行方不明になれば私達の首が危うい」


教師一同は背筋を震えさせる。


「他の応募者達は帰せ。あとは私達で捜索する」


教師が集まった応募者を帰らせようとしたとき、ダンジョンの入り口が光った。


「たく、あいつのせいで。ん?」


現れたのは、遥か昔、禁忌と呼ばれた紫の瞳の少年だった。その少年の腕のなかにはリンがいた。制服がボロボロで所々に血が滲んでいる。


「どうしたんだ?」

「どうしたんだもなにも、私達が行方不明だったからじゃないか?」

「そういうもんか?」

「そういうもんだ。早く下ろしてくれないか?」


夕焼けのせいか、リンは顔を赤くしている。


「承知しましたお嬢様」

「お嬢様言うな。まず、こんなお嬢様なんかいない」

「そりゃそうだ」







薄暗いダンジョンの廊下。魔物はあれから一匹も現れていない。多くの部屋を中継してきたが、先に述べた通りだった。


「シリウス君、後どのぐらいだい?」

「直線距離で300。大きな扉があります。恐らくダンジョンコアがある部屋かと」


ダンジョンコアとは、ダンジョンの核。そのコアを壊せば、ダンジョンとしての機能を失い、ダンジョンは消える。人間でいえば心臓にあたる。


「お願いがあるんだが…ダンジョンコアは壊さないでもらえるか」

「それは何故?」


疑問に思った。ダンジョンが王都にあるのは危険ではないのか。もし、氾濫を起きれば真っ先に王都は壊滅する。ダンジョンが無くなった方が、王都全体としては益ではないのか。


「このような特殊な例は私達が初めてだ。だが、全体を見ればこのダンジョンは、生徒の鍛練の場として優秀なんだ。もし、このダンジョンが無くなると、この学園の質が下がってしまう。そういうことを避けたいんだ」

「まぁ、いいですけど……約束は出来ませんよ」


シリウスは気まずそうに頭をかいた。リンはそれなら仕方ないと割り切ってくれた。


代わり映えのない廊下。二人はカツカツ足音を立てながら、着実にあの扉まで向かう。


代わり映えのない一歩を踏み出したその時、空気が雰囲気が変わった。広い空間に出たようだ。


広い空間は明るかった。そして、目視できた。重厚で巨大な、竜をも凌ぐ迫力。あれがもし、生きていれば、あれから見た俺たちは米粒。シリウスにそう思わせる【あれ】とは、目の前に鎮座している、壁のような扉。


そしてこれが、ダンジョンの最後の砦へと続く、死の扉。


「さあ、先輩。さっさとここを抜けて帰りましょうか」

「わ、わかった」


リンは顔を強ばらせながら頷いた。恐らく、ダンジョンの最深部など初めてなのだろう。リンは確実に強い。シリウスはそう確信している。だが、どんな強者も、緊張という敵に負ければいつもの通りの力の半分も発揮できない。それほどまでに、この場所は空気が違うのだ。


扉を潜ればそこは、生きるか死ぬかの境目。どちらが死んでもおかしくはない。リンはそれを、瞬時に理解している。だから、あえて声をかけない。


その代わりに、額と額をくっつける。これは、ハンクの時によくしてもらった行為だ。


「な、何をいったい?!」


リンは顔を真っ赤にして吠える。シリウスは静かに、心臓に指を指す。


「あ、」


気づいたようだ。それならそれでいい。あとは人事を尽くすだけ。シリウスはローブを翻らせ、扉に向かった。その後を、リンは追う。


シリウスは扉を軽く押した。にも拘らず、重厚で巨大な扉は意図も簡単に開き始める。ギギギィーと重々しい音を立てながら、これがやめば、そこからは死合。両者共に、気を引き締める。


扉が完全に開いた。中にいたのは、巨大な全身黒色のゴーレムだった。ゴーレムは二人に気づき、雄叫びをあげる。


「ゴォォォォォォォォォォ」


やれやれといった感じで歩みを進める。どうやら、あのゴーレムはせっかちさんなようだ。

シリウスは大鎌を、リンは刀を装備する。


「生きて帰りましょうね」

「それはフラグかい?」

「いえいえ、滅相もない。フラグクラッシャーですよ俺は」

「それならいいんだが……来たぞ」


リンの声が低くなる。


――やれやれ、本当にせっかちさんなようだ。


「左右に!」

「わかった!」


二人は突進してくる巨大なゴーレムの死角に滑り込むかのように避ける。突進したゴーレムに隙ができた。二人はそれぞれの得物でゴーレムを斬りつける。


ガコン


金属と金属が当たる音には相応しくない音。突如、空から大鎌の先端が降ってきた。あれは、大鎌が衝撃で折れた音だった。


「折れたか……やはり、会心を狙わないとダメージは入らないか…」


ゴーレムの会心としては、目が有名である。だが、目の前に立ちはだかるゴーレムの目には、ゴーグルらしきものが装着されており、攻撃は不可能だ。


だが、もう一つ会心がある。それは知られていないのではなく、実行できないがために知られていないものであった。


ゴーレムの関節は体と同じ金属ではなく、強化筋肉を用いられている。体よりは柔らかいが硬くないとは言っていない。当然硬い。


その筋肉と金属の体を繋ぐ、人間でいうところのちょうど脇の辺り。そこにもう一つの会心がある。繋ぎ目には、小さな空洞がある。そこに攻撃すれば大ダメージを狙える。


だが、それは不可能に近い。動いている敵、況してや知能のある敵に一点を狙い続けるなど至難の業。さらに、空洞といっても指が2本入るかどうかの大きさなのだ。


そこを狙うなど神業レベル。当然誰でもできるわけもなく、人々は狙いやすく尚且つ、視界を一時的に無くすことができる目を狙うわけだ。そっちの方が利にかなっている。


「先輩、武器を少し貸してくれませんか」

「何をする気だい?」

「会心を狙おうかと」

「会心?目は狙えないはずたが……わかった、どうせこのままではじり貧だ。少しの可能性にかけようじゃないか」


リンから刀が投げ渡される。先程の攻撃があったにもかかわらず、刃こぼれ一つしていない。相当な名刀なのだろう。


突進後の硬直がとけたゴーレムは、攻撃を再開させる。シリウスの上空から無慈悲にも、死の鉄槌が下される。シリウスは焦った様子はなく、冷静に後ろに飛ぶ。直後、先程まで立っていた場所に鉄槌が下された。


地面は抉れ、ダンジョンを揺らした。もし、喰らえば肉塊すら残らない。そんな威力。だが、避ければ反撃のチャンス。シリウスは会心目掛けて駆ける。


会心を目視できた。それは小さな空洞。シリウスは借り受けた刀を両手で持った。突きの姿勢だ。


会心を突く。


一瞬、ゴーレムが笑ったような気がした。


ガコン


聞き覚えのある音が響いた。それは金属と金属がぶつかり合う音。大鎌を折った音だった。

その衝撃が刀を伝い、シリウスの腕に。


「ぐっ!」


刀は折れていなかった。だが、片腕――左腕が恐らく折れた。肘からしたがぶら下がっている。


シリウスは急いで離脱する。ゴーレムの拳が間近まで迫っていたのだ。


間一髪のところで避けた。ゴーレムと距離をとってリンと合流する。


「だ、大丈夫かい?!」

「大丈夫です。左腕が折れただけです」

「それは大丈夫とは言わない!」


リンは慌てて折れている左腕に手をかざす。


『ヒール』


力ある言霊を紡ぐ。が、一向に効果は現れない。リンは慌て始める。


「あれ?あれ?何で?魔法使えるはずなのに?」

「先輩それ以上やっても無駄ですよ」


―――性格悪い。このダンジョンにそういう感情を抱いた。


物理無効(アンチ・アタック)のゴーレム。魔法無効(アンチ・マジック)のダンジョン最下層。


「攻略させる気ないだろ、これ」


乾いた笑みしか出てこない。


物理無効(アンチ・アタック)はその名の通り物理攻撃が無効化される。どれだけ殴ってもダメージ一つ与えられない。魔法無効(アンチ・マジック)は魔法を無効化させる。


物理無効(アンチ・アタック)は抜けがなく、攻略不可能。だが、魔法無効(アンチ・マジック)には抜けがある。それは、魔法にしか効果がない(・・・・・・・)


数瞬にして勝利への布石が見えた。


「先輩、10秒だけ足止め頼みます」


シリウスは借り受けていた刀を渡しながら話す。


「攻撃しようなんて思わなくていいです。ただ、足止めをお願いします」

「10秒…か」

「はい」


リンは難しい顔をする。戦闘において10秒とは、それだけで勝敗が決する時間。その長い長い時間、一発一発が致命傷の足止めをするというのは至難の業。


「わかったやるよ。向こうは待ってくれないようだしね」

「ゴォォォォォォォォォォ」


ゴーレムは雄叫びをあげ、突進してくる。


「10秒だけ頼みます!」

「了解!」


シリウスは後方へ、リンはゴーレムのいる前方へ駆ける。


勝利へのカウントダウンが始まる。


リンは注意を引かせるために、わざとダメージの通らない足を斬る。ガコンと金属と金属がぶつかり合う音がしたが、注意をこちらに向けれた。これからが本当の勝負だ。


ゴーレムが何故か動かない。何かを発動しようとしている。


ゴーレムの拳に風の鎧が纏われた。リンにゴーレムの拳が迫る。


どんどん拳が迫ってくる。リンは離脱を試みるがゴーレムの拳の方が速かった。咄嗟に刀を盾にする。


虚空に紅が舞う。


「くっ!」


風の鎧から出た鎌鼬で服が切れた。切れた服からは、男というのに、染み一つない白い肌が覗かせる。


刀は折れていなかった。この刀はイチミヤ家に伝わる銘刀の影打ち。影打ちで幾度となくゴーレムを斬りつけた。

もし、手元に真打ちがあれば……


ゴーレムが物理無効(アンチ・アタック)と知らないリンは、この刀の真打ちを欲している。


「やぁぁぁぁぁぁ!」


全ての力を込めてゴーレムに斬りかかった。それは、空気を裂き、擬似的な真空を造り出す。


ゴーレムは拳で向かい打つ。


巨人対小人。両者の力は互角だった。リンはゴーレムが纏っている風から現れた鎌鼬で外傷を負う。それでも力を緩めない。


「これで…どうだぁぁぁぁぁっ!」

「ゴォァッ?!」


数瞬、ゴーレムの視界が揺らいだ。そのまま、仰向けに倒れる。全ての力を出しきったリンは、その場に倒れた。指一つ動かない。それだけの力を用いても、あのゴーレムには傷一つつけれなかった。


「上出来ですよ」


不意に後ろから声がした。振り向いた先には、見るもの全てに禍々しいと思わす、陽炎揺らめく大鎌を持っているシリウスがいた。


「あとは任してください」


毅然といい放つ。そのまま、リンの前に出る。立ち上がったゴーレムは、それを見て本能的に標的を変えざる負えなかった。


「ゴォォォォォォォォォォ」


それは、今まで相手を臆させる意味での雄叫びだった。だが、今回の雄叫びは、自らを鼓舞するようなそんな雄叫びだった。


一瞬の隙が命取り。両者は同時に動いた。


ゴーレムの風を纏った拳と、陽炎のような大鎌がぶつかり合った。だが、金属と金属がぶつかり合う鈍い音は鳴らなかった。聞こえたのは、ゴーレムの驚く声だった。


「ゴァッ?!」



いつも通りなので書かないゼッ!

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