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転生

 俺の名前は明野星明(あけのせいめい)

 結構捻くれた性格をした、自他共に認めるゲスだ。

 

 しかし、高校3年間の間でいじめられたりとかそういうのは無かった。

 むしろ俺の周りにはいつも誰かが居た。

 後輩がウザいからキッツイの一言言ってくれへんか〜、と絡んでくる運動部。

 デュフフ、DQNにラノベを取られたでゴザルよ、と遠回しに助けを求めるオタク。

 ちと隣の三高の野郎と戦争すっからよ、いつものゲスい作戦考えてくれよ、と参謀役を要求するDQN。


 誰に対しても歯に衣着せぬ物言い。

 好きな物を冒涜される事に対しての怒り。

 そしてやるからには回りくどいやり方でなく、徹底的に外道且つ下衆なやり方で物事を解決する。


 そんな捻くれたゲスな俺をみんないつも必要としてくれていた。

 別に個人個人が面倒な事を全て俺に押し付けていただけなのだが。

 だからその要件を満たした時には見返りを要求していた。

 ギブアンドテイクは当然だ。そこに友情なんて存在しない。


 まぁ、そんな仲間とも別れ、とうとう大学生として新生活の第一歩を踏み出すって時に、俺は死んだ。


 信号無視、スピード超過の車に撥ねられ即死。

 どうやら運転手が脱法ハーブの常用者で、もうイかれてしまわれていたらしい。


 と言うのを、空から見た。

 

「さて、死因も判明した所で話といこうか」


 目の前にいるのは白いスーツに身を包んだ紳士。


「君は晴れて死亡した。おめでとう」

「ええ、でも意識があり、こんな非現実的な現象が起きている時点で、コレ第二の人生歩まされますよね?」


 紳士がびっくりした顔をした。


「なんと、君は死んだ事に驚かないのかい?」

「ええ、痛みも感じず逝ったお陰で死んだ事にも気が付けず、こちらからしたら視界が道路から空に瞬間移動した事の方が驚きです」


 紳士は懐からハンカチを取り出し、額を拭い始めた。

 なかなか動揺しているらしい。


「え、えーっと、まぁ、その、なんだ。とりあえず君は死んだ。そして、ここは死後の世界だ」

「胡散臭いですね」


 紳士の心に見えない言葉の矢が突き刺さる。

 昔から、思った事がすぐ口に出てしまう。

 悪い癖でもあるが、これのお陰でDQNや運動部の連中にも、「こいつはヤバイ」と言う認識を持たせる事が出来た。

 要するに、気軽に手を出せない奴だと思わせる事が出来る。これは、高校でかなり役に立った。


「ま、まぁ、実の話君生きてるんだよね」

「だろうと思いましたよ。まぁ死んでても第二の人生歩ませてくれそうだったし、心配はしてませんでした」


 どこからか、「もうやめて! 紳士のライフはゼロよ!」と言う声が聞こえた気がした。

 実際、紳士は見るからにヘコんでいた。

 ぶつぶつと、「俺神なのに。なんでこんななめられてんの?」と言っている。


「え? 聞こえませんけど。はっきりと言ってもらってもよろしいでしょうか、神様?」


 紳士、いや神。俺も予想はしていたが神がこんな豆腐メンタルだとは思っていなかった。


「あ、いや、なんでもないよ。それで、実は君は肉体的には植物人間になっていて、精神が異世界に召喚の儀式を経て呼び出されているんだ」

「おーおー、死後の世界の次はパラレルワールドですか」


 くっ、と唇を噛み締めながら神は続ける。

 この短時間でメンタルが強くなるなんて、流石は神だ。


「本来、君は死ぬべき運命にあったんだが、その儀式のせいで生き永らえる事になったんだ。これは、」

「つまりあなたは異世界の神で、僕ら地球の神が定めた運命をあなたが統治する異世界の住人が狂わせてしまったと。そういう事なんでしょう?」


 ついでに、と俺は付け加える。


「異世界の神のあなたよりも、地球の神の方が位か何かが高いと。それで『これはやらかした』と思って、俺に異世界で生きる上で何らかの利益のある事をしてくれるんですよね?」


 異世界の神は、ただがっくりとうなだれた。

 図星らしい。


「もうそこまで分かってるんなら、言う事ないよね……。君がこちらの世界に帰ってくるには、あちらの世界の生物の5割に英雄として崇められる事だよ。そうすれば、君をその世界から出す為の力が僕に溜まるから」


 ほう、なるほど。

 面白そうだ。


「さ、どんな力が欲しい? 最強化? ハーレム? スキルシーフ? キャンセル? なんでもいいよ……」

「んー、ならそれ全部で。あなたのミスなんですからね。俺が被害者。俺の要求は全て通らないと。違いますか?」

「ち、違わないねぇ……」


 あ、ヤベ。声音に怒りが混ざってる。

 少しおちょくり過ぎたか。

 でも、まぁこちらの立場的有利は揺るがないし、いいか。


「それじゃあ異世界へ飛ばすよ」


 紳士が俺に両の手のひらを向ける。

 と同時に視界がぐにゃりと歪み始める。


「あ、一つ言い忘れたけども。


君、異世界で死んだら 二 度 と 元 の 世 界 へ は 戻 れ な い よ」


 俺の意識は歪んだ空間に吸い込まれるようにして消えていった。

 


 

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