一章第五話 大きな王国と島への旅立ち
次の日からは昨日に引き続き、サバンナの探索をする日が続いた。 そして、とうとう念願の海岸に出ることが出来たのだった。 ここから先に行くにはボートが必要だ。 この日からは岸まで行ってボートを作る作業に徹した。
島は30kmほど離れておいる。 手漕ぎのボートで行くこと自体難しいだろう。 ボートは手作りな上、体の大きなリックを乗せなくてはならない。 水や食料も必要だろう。
そうこうしているうちに、2週間がたっていた。
だがしかし、ボートが完成した。 あとは思い切って行くだけだ。 魔女が提案した島の探索計画もまだ表には発表されていない。 リックは決心し明日の朝出る事を心に誓い、折りたたみ自転車のごとく身体を縮めて窮屈な部屋で眠りについたのだった。
旅立ちの朝は早い。
海の上で夜。 島に着いたら夜。 これでは自分の命が危ない。
島に着いたあと数時間は明るくなくては困るのだ。 リックは自分の体に鞭打って、サバンナへと駆け出した。
いつも通ったサバンナの中。 木を見て岩を見て先に進む。 いつもと同じであった……はずだった……
目の前には肉食獣。 全身に緊張が走った。 ナワバリを移動したのか。 いつもと時間が違うからか。 どちらにせよ、逃げる他なかった。
しかし、2足歩行の丸腰の荷物持ちは4足歩行の狩の名手相手には分が悪かった。 無我夢中で走るリックにすぐさま追いつきリックは左足を爪で引っ掻かれてしまった。
左足のブーツは引き裂かれ、脱げて飛ぶ。 しかし!それが幸いした。 肉食獣は飛んだブーツに興味を持ち、ブーツの方へ向かっていったのだ。 リックはその隙に距離を離して、九死に一生を得たのだった。
無事にナワバリも抜けたようで、肉食獣は来る気配はない。 左足は裸足になってしまったが、ブーツのお陰で怪我はしなかった。 だが、靴を調達する暇はない。 町に戻っても自分が履ける靴は売ってないし、作る暇もない。 リックは仕方なく裸足のまま、海岸へと向かった。
海岸に到着すると、太陽はまだまだ東にある。
2週間かけて作ったボート。 今日中に島にたどり着けなければ死ぬだろう。 リックはひたすらボートを漕いだ。 何時間たっただろうか。 太陽は真上に存在する。 天候は晴れ、波も穏やか。 天がリックの味方をして、リックは無事に島に上陸出来たのだった。