一章第三話 大きな王国と秘密の階段
朝。 リックはいつもより早く目覚めた。 仕事に出る前に小人について調べるためである。リックは急いで布切れを着て、ずっと使い続けているブーツを履いた。 当然ながら、リックに会う靴や服は売っていない。 ブーツは自分で動物を狩ってその皮で自作した。 服も布切れを集めて縫って作ったものだ。
ウドが利用できる図書館は朝早くと夕方のみしか開いていていない。 これは昼間は労働が義務のため図書館に来ること自体おかしく、逆に夜は遅くまで本を読まれて次の日の仕事に支障をきたす事がないようにするためである。
本の貸し出しはしておらず、その場で読む他にない。 リックは限られた時間の中で小人についての本を読み漁った。
小人は昔この大陸の東にある島にいるとされていた。 小人はとても小さく脆く、人間との共生は不可能だと思われるが約180年前、小人の大捜索が行われた。 木々を切り倒し、哺乳動物を絶滅にまで追い込んでまで島中を捜したそうだ。 しかし、結局見つかることはなかった。 それからと言うもの、物好きな人が度々その島を訪れた。 小人を見た。 そう言う人も居たようだが証拠もなく、そのうちに小人は都市伝説となったのだった。
そして、約130年前からはその島への立ち入りも禁止されて人々の小人への関心は薄れて行った。
分かってはいたが図書館の本で得たものはあまりなかった。 やはり、こればかりは自分の目で確かめるしかないとリックは悟った。
今日も城の掃除が始まった。 昨日終わりの報告をせずにサボったことを怒鳴られ殴られての始まりだったが、気を取り直して掃除を始めた。 城の掃除をさせられてはや8年。 魔女の許しを得るように掃除するのはリックにとってお手の物だった。 そして、城の隅から隅まで掃除するからこそ知った隠し階段があった。 リックはいつものサボり部屋には行かず、その階段を通って誰にも気づかれることなく城を抜け出した。
東の海岸に出るには、サバンナを通る必要がある。 運が良ければ走って2時間というところか。 しかし、肉食獣のナワバリに入ってしまえば命の危険にさらされる。 リックはそんなサバンナを安全に通る道の開拓のために、サバンナ内を徘徊した。
そして、仕事の終了時間前には城に帰ったのだった。