三章第一話 小さな人間と大きな人間
小人の肌は青白く、身体は冷え切っていた。
リックは小人をお風呂に入れてやろうと、少量の水を火にかけてお湯を沸かした。 小人はボタンの付いた服を着ている。 少しでも力を入れたら壊れてしまいそうだ。 小人の体よりも太い指を持つリックには爪の先を使っても脱がす事が出来なかった。
湧いたお湯を小皿に移し入れて自分の指で温度を確かめた。 良い湯加減だ。 服を諦めたリックは再び小人を指先でつまみ上げてお湯に入れた。 顔がお湯に浸からないように気をつけて。
すぐに小人の顔色が良くなって来た。 小さな身体は冷えるのも早いが温まるのも早い。 リックは小皿のお湯を入れ替えて、小人を見つめる。 小さいながらも手や足の形も同じ。 そんな小人が可愛らしく見えた。
「〜〜〜〜!!……」
小人の意識が戻った。 巨大な眼球に見つめられている事に気づいて、恐怖に飛び上がった。
「んぎゃ!」
小人は勢い余って小皿から転げ落ちてしまった。
「ごめんな。 怖がらせる気はなかったんだけど…… 俺、君たちを捜してたんだ…… って言葉は通じないか……」
小人はリックの目にも分かる程に震えていた。
「これ、風呂。 もう大丈夫?」
小人はバイブ機能を発動させたまま固まっている。
「えっと、服とかごめん。 咄嗟だったからさ。 ……どうしたら言葉が伝わるのかな……」
小人の恐怖をどうした取り除く事が出来るのか。
リックはもどかしくて頭をバリバリと掻きむしった。
「きょ…… きょ…… じん……」
風に掻き消されてしまいそうな程に小さな音。 しかしそれはまぎれもなく聞こえた。
「え?」
リックは小人に顔を近づけて小人の表情を伺った。
「話せるの?」
リックの息で小人の髪や服がなびく。
「あ…… か………?」
小人が喋っている。 この音はきっと小人の声だ。 リックは左耳の穴を小人に押し付けるように近づけた。
「あなたはかみさまですか?」
なんと小人はリック達と同じ言語で喋っていた。 そんな驚きと小人の発言にリックは爆音とも思える程の大きさで一人大笑いしたのだった。




