別の誰かに 2
「まぁ、大丈夫なんじゃないか」
「はぁ? アンタねぇ……教室戻ったら大変なことになってるわよ?」
「大変って?」
「だから……なんであんな風に……皆見てたじゃない」
不満そうにそう言う長澤。
どうやら長澤は何もわかっていないらしい。
「いいじゃないか。見てもらった方が」
「はぁ? なんでよ?」
「いいか、長澤。俺達は付き合っているんだぞ。だったら、それを多くの人間に知られた方がいい」
そう。特にアイツ……犬井にも知ってもらう必要がある。
長澤がこんな風になるとは思ってももなかったが、むしろこれは好都合である。
俺は長澤に話しかけたとき、チラリと犬井を見た。
その時、犬井は少し不安そうな顔をしていた。いや、してくれていた。
その表情はかつて俺が愛したあのオドオドした、情けない犬井の片鱗を見せてくれた。
俺は確信した。このまま行けばまた、犬井は元に戻ってくれるかもしれない、と。
「……で、どうするのよ。これから」
「どうするって……デートだろ?」
デートという言葉でギョッとしたようで長澤をレンズの奥の瞳を丸くして俺を見る。
「なんだ? 何か変な事言ったか?」
「あ、アンタねぇ……はぁ。まぁ、いいわ。それ、いつやるのよ?」
「いつって、そりゃあ今週だろ」
「日曜ってこと? まぁ……一週間我慢すればいいってことでしょ?」
「まぁ、そうなるな」
俺がそういうと長澤はジッと俺を見ていた。レンズの奥の瞳はそれ以外にも何か言いたそうにも見える。
「なんだ? 何か言いたいのか?」
「え? あ、いや、別に……」
「そうか。じゃあ、後一週間、俺と付き合っているという体で仲良くしてくれよ」
俺がそういうと長澤は嫌な顔を……しなかった。少し恥ずかしそうにしながら俯いているだけである。
なんだか調子が狂う。むしろ、そこはちゃんと否定してほしかったのだが。
「おい、長澤」
「え? な、何よ?」
「頼むぞ。ちゃんと、俺の彼女らしく、な」
「か……彼女……」
俺がそういうと、今度は長澤はぼぉーっとしている。
コイツ、大丈夫なのだろうか……俺はにわかに不安になってきた。




