大いなる茶番 3
「あぁん? なんだって? やめろ、だと? 何をだよ?」
藤野が典型的なチンピラのように俺に絡んでくる。
「犬井に絡むのを、だ」
「はぁ? なんでてめぇなんかに言われて、はい、そうですか。ってやめなきゃいけねぇんだよ。大体絡んでんじゃねぇんだよ。これは。私達は、駄犬と遊んでやってんの。お前なんかが出てくるトコじゃねぇんだよ、わかる?」
俺は藤野の言葉に動じなかった。
藤野こそ、この場にそぐわない存在なのだ。これは俺と長澤の茶番である。
俺からしてみれば、役者ではない藤野こそ、この場から早々に消えて欲しい存在である。
「知るか。とにかくもう犬井に突っかかるな」
「あぁ? てめぇ、私の話ちゃんと聞いてたのかよ? てめぇに言われる筋合いないってんだよ!」
段々藤野がイラ付いてきた。こうなると少し面倒なことになりそうである。
俺は長澤の方を見た。長澤と目が合う。
「可憐。やめなよ」
そして、長澤は俺の思考に気付いたのか、藤野を諌める。
「はぁ? なんでだよ、流佳?」
「いいよ。もう。帰ろう」
「はぁ? なんでだよ……え? ちょ……お、おい、流佳?」
すると長澤は、藤野を置いてそのまま歩き出してしまった。藤野は慌ててその後についていく。
「あ。そうだ」
そして、俺の横を通り過ぎる寸前、長澤が口を開いた。
「アンタさぁ、なんで? どうして駄犬を助けるの?」
長澤は興味深そうな顔でそう訊ねてきた。
いや。違う。長澤は既に俺の答えをわかっているのだ。
俺はかすかに微笑んだ。長澤にわかるかわからないか位のレベルで。
「助けるのに、理由がいるのか?」
俺の応えに、長澤は満足そうだった。そのまま長澤は俺の横を通りすぎ、校舎裏から去っていった。
「お、覚えていろよ、駄犬」
悪役の捨てセリフよろしく、藤野はそういって長澤の後を追っていった。
残されたのは俺と犬井だけであった。




