協力者、再び 2
「で、どうなんだ? 協力してくれるのか?」
「で、でも、私、あの子に謝っちゃったし……」
「別にそんなのは些細な問題だろう。気が変わったとでも言っておけばいいんだ。犬井のヤツの脅えきった顔が目に浮ぶよ」
思わずそれを想像したとき、俺は興奮してしまった。
その様子を、長澤が引きつった表情で見ているのに気付き、俺は落ち着きを取り戻すことにした。
「……はぁ。わかったわよ。可憐にでもそういえば、きっとあの子も喜んでイジメに加担してくれるでしょ。で、それでどうなるの?」
「ああ。お前達が犬井をイジメているところに、俺が行く。そして、俺が犬井を助けるんだ」
「はぁ? 何それ?」
「だから、そのままの意味だと言っているだろう。で、俺が助けにきたらお前は犬井に対するイジメをやめろ。いいな」
俺がそういうと、なぜか長澤は「はは~ん」と何かに納得したような声を出して、馬鹿にした感じで俺を、目を細めて見てきたのである。
「そういうことね……ダメよ。そんなことのためには協力できないわ」
「そういうこと? お前はどういうことだと思っているんだ?」
「簡単よ。アンタ、駄犬の前で良い格好したいだけなんでしょ? まったく……何が犬井はイジメたくなる顔するんだ、よ。結局そういうことじゃない」
「おいおい、何を勘違いしているのか知らんが、なんだ? 協力してくれないっていうのか?」
「ええ。そうよ。協力できないわね」
憮然とした態度で長澤はそう言う。どうやら、「例のこと」は完全に忘れてしまっているらしい。
「そうか。まぁ、お前がそこまで言うなら、別にいいがな」
「そうよ。私は、そんなことのためには協力しないんだから」
「わかった。じゃあ、まぁ、俺としてもお前の秘密を完全に保持するという約束も、もうできないというわけだな」
俺がそういうと、長澤はギクッとした表情で俺を見た。どうやら途端に思い出したようである。
「あ……そ、そうだったわね……」
「ああ。そうだ。別に俺としてはお前を脅しているつもりはないが、一応な」
「……卑怯じゃない。結局、私はまた……」
悲しそうな顔で俯く長澤。そんな様子を見ていると俺もさすがに長澤が一体何を勘違いしているのか気になった。
「おい。お前、一体俺がどういうつもりでお前に協力を持ちかけていると思っているんだ?」
俺がそう訊くとキョトンとした顔で長澤は俺を見た。そして、少しためらいながら俺から視線を反らす。
「だ、だって……アンタがそんな風に犬井を助けるっていうのは……あ、アンタが、犬井のこと、好きだからなんでしょ……」
最後の方は恥ずかしそうに、長澤は頬を膨らませながらそう言ったのだった。




