表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/167

気付き 4

 その日も俺の一日は普通で終わった。


 そして隣の席の犬井も、長澤と藤野のおもちゃとして一日を終わった。


 必要以上に罵声を浴びせられ、犬井自身の存在を否定されていた。


 そのたびに犬井は涙を浮かべる。その様は益々長澤や藤野の嗜虐心を煽った。


 事実、俺でさえ、そんな犬井の表情を見ていると苛めてやりたいと思ってしまう。ある意味ではそれは才能なのかもしれないと思った。


「おーい、直人」


 そこへ栄介が声をかけてきた。


「今日さぁ、テニス部の練習だから、終わるまで待っててくれないかな?」


「ああ、いいぞ。どうせ暇だからな」


 栄介と俺はいつも一緒に帰っている。帰る方向が一緒だからだ。


 それは栄介にテニス部の練習があっても同様である。俺は栄介の練習が終わるまで図書室で本を読んでいるのだ。


「悪いね。じゃあ、練習終わったくらいに教室に来てね」


「ああ。わかった」


 どうせ暇なのだから断る理由もない。俺は教室を出て図書室へと向かう。


「おい、駄犬。何勝手に帰ろうとしてんだよ」


 と、廊下に出ると、また犬井が長澤と藤野に絡まれていた。


 犬井は脅えきった顔で俯いている。よくもまぁ、長澤と藤野も、高校生にもなってくだらないことをするものだ。おそらく、奴らも俺と同じくらいに暇なんだろう。


 俺はそのまま三人を尻目に図書室へと向かった。一瞬だけ犬井が目の前を通り過ぎる俺のことを見た気がしたが、そんなことは俺にとってどうでもよかった。


 なにせ、俺と犬井には関わりが無い。助けてやる義理もない。


 だとしたら無視するのは酷いことでも悪いことでもない。俺にとってはそのまま図書室に行くのが正しいことなのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ