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気付き 2

「あ……や、やめてよ……藤野さん」


「ギャハハ! 届かないのかよ! ホントにチビだなぁ、駄犬は!」


 茶髪の不良っぽい女の子が、その子の肩辺りまでしか身長がない小さな女の子から、彼女の教科書を取り上げているようだった。


 茶髪の隣では金髪の目つきの悪い女の子が、それを面白そうに眺めている。


 小さな女の子は、いつの時代の女の子かというほどのおかっぱ頭で泣きそうになりながら取り上げられた教科書を取り返そうとしている。


「うわぁ……またやっているよ」


 苦々しい顔をする栄介。


 あれは、要するにイジメだ。


 茶髪の方が藤野。金髪の方が長澤。二人ともこのクラスの不良女コンビである。


 そして、小さい女の子が、今年の五月という酷く中途半端なタイミングに転校してきた犬井理香子である。


 おかっぱ頭の小さな女の子である犬井は、その「犬井」という苗字から長澤と藤野から「駄目な犬井」と呼ばれ、それが転化して今では「駄犬」と呼ばれるようになっている。


 そのオドオドとした態度もあいまって二人の不良の格好の「おもちゃ」となっているのだった。


「飽きないねぇ、長澤さんも藤野さんも。いい加減やめればいいのに」


 そして、既に二学期になったというのに未だに犬井は、長澤と藤野の「おもちゃ」なのであった。


「ほーら、取ってみろよ! 駄犬!」


「や、やめてよ……か、返して……」


「ぎゃははは! 返して欲しいか? じゃあ、パスするからな? ちゃんとキャッチしろよ? そら、とってこい!」


 すると、藤野はそのまま教科書をゴミ箱に投げ入れてしまった。


 犬井はゴミ箱に駆け寄る。


 しかし、ゴミ箱は昨日の当番が処理をサボったのか、ゴミまみれで、教科書もそこに埋もれてしまっていた。


「フフッ。ほら、駄犬。早く教科書拾わないと授業始まっちゃうよ」


 長澤が嬉しそうな声で犬井にそう言った。


「ゴミ漁り、頑張ってね~、ギャハハ!」


 藤野は下品に笑いながら、呆然とする犬井を他所に、長澤と一緒に自分の席の方へ戻っていってしまった。


 犬井は悲しそうな顔をしながらゴミ箱へ向かい、それを漁り始める。


「うわぁ……かわいそうだな、犬井さん」


 栄介だけでなく、周りのクラスメイトも哀れみの目で犬井を見る。


 しかし、皆見るだけだ。それを手伝ったりしない。


「じゃあ、手伝うか?」


「え?」


 思わず俺は栄介に訊ねていた。


「可愛そうと思うなら、ゴミ漁り、手伝ったらどうだ?」


 俺が無表情でそう言うと、栄介は困った顔で俺を見た。


「え、あ……ああ。そ、そろそろ授業だ。僕、席に戻るから、じゃあね」


 俺の言葉に動揺したようで、慌てて栄介は席に戻って行った。

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