騒動のあと
それからどれくらい経ったのだろう。
とにかく、既に外は真っ暗だった。
犬井は泣きつかれてずっと下を向いている。
俺は呆然とただ天井を見上げていた。
さて……これからどうしたものか……
「……ちょっと」
と、声が聞こえた。
俺は顔を声のした方に向ける。
長澤が鋭い目つきで俺を見ていた。
「……なんだ。長澤」
俺がそう言うと長澤は頬を膨らませて俺を見る。
「ガムテープ、なんとかしてくれない?」
言われて俺はようやく気付いた。
そして、けだるい気持ちを押し殺して、なんとか立ちあがった。
そのまま長澤のガムテープをはがしていくことにした。
何重にも巻かれているためなんとも面倒くさい作業だったが、なんとか俺はそのガムテープをはがし、長澤を自由の身にしてやった。
「はぁ……まったく。酷い目に遭ったわ」
長澤は心の底から疲れたと言わんばかりに大きくため息をついた。
「……すまん」
俺の口からは自然と謝罪の言葉が出た。
すると、長澤はキョトンとして俺のことを見る。
「なんで謝ってのよ」
「……なんとなく」
「はぁ? まったく……」
すると、長澤は俺から視線を反らし、今度は犬井の方に目線を向けた。
そして、そのまま下を向いている犬井の方に近づいて行く。
「え……お、おい。長澤……」
俺が呼び止めようとするのも構わずに長澤は犬井の傍に近づいていった。
「犬井、起きてんでしょ?」
長澤の声に犬井は反応しなかった。しかし、長澤は構わずに先を続ける。
「アンタねぇ……だから言ったじゃない。コイツは、変態野郎だ、って」
そういって俺を指差す長澤。
なんとも言い返せないので、俺は黙ってその様を見ている。
「……違う……逢沢君は……」
それでも犬井は小さな声でそう言っていた。
それを聞いて、長澤は大きくため息をついた。
「まったく……どうしようもないわね。あのね。だったら聞くけど、アンタは、コイツの何を知っているわけ?」
それを聞いて犬井はようやく長澤の方に顔を向ける。死んだ魚のような目で長澤を捉えていた。




