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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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85 選択と再選択

 85 選択と再選択




 100人の少女は10歳ぐらい見えるが、経験上2ヶ月もすればおっぱいが膨らんで12歳ぐらいになる。

 今まで飢えた少女を、何人も見てきたからわかってしまうのだ。


 飢餓状態による成長の停止。


 これがあるから、女の子たちは生き延びるのだろうと予想しているが、カエデさんも同じ結論に達しているから、間違いないと思われる。


 100人の少女にマナイとメナイがおにぎりを配っているのを見て、そんなことを考えていた。


 現在は3段目の田んぼで、アカニシキの稲刈り真っ最中なのだ。

 経験を積ませるために、少女たちも連れてきて稲刈りをさせている。

 今日刈った稲が、このおにぎりになるということを肌で実感させる、いい機会なのだった。


 親父と校長から預かった人材なのだが、新潟の未来を背負って立つ責任を持っている。


 キンとススは、100人を侍女見習いとすることを拒否してきた。

 ドウは、難民と指定しなかった。

 彼女たちの意見では、領地外の人間を勝手にこちらの人材として使うことはできないとのことだった。


「出稼ぎ労働でいいだろう」

「駄目です。正式な雇用であれば先生方と同じ外国人手当を出すことになります」

「難民ではなく留学みたいな立場です。そうしないと、各村で手伝いが欲しいときには、関東平野の外から人を連れてきて労働させることになります。奴隷制度に近いと思いませんか」

「妻も食べきれないのに、性奴隷100人作る?」


 最後の意見はドウである。


 別に奴隷も性奴隷も作らないからね。


 結局、口ではかなわないので、100人の少女たちは俺の食客として、働くのではなく勉強するという名目で畑仕事をすることになった。


 実は、比較的物わかりの良いギンにも相談したのだが、


「新潟の開発計画と実行する農民を申請してください」


 などと言われて、簡単に断られたのである。


「もう、子供を二人は産んでいても良いはずなのに」


 ブツブツ文句を言っていたから、八つ当たりなのかもしれない。


「4長官を抱いてあげれば解決するのに、何でしないの」


 法律顧問の豪華さんがそう言うのだが、4長官が一人でも妊娠して抜けたら、現在のエリダヌスでは人材不足で後釜を埋められないのだ。


 とはいえ、向こうが意地ならこっちも意地だ。

 子供っぽいと言われても、4長官に頼らずに100人育てて新潟に豊かな土地を作ってやるぞと、変な目標を立ててしまった。


 お陰で大変なのは、マナイとメナイだ。

 ササ、ミヤ、レナの3人を使って、100人の面倒を見なければならない。

 しかも、侍女試験が迫っているから、見習いたちは勉強もしないといけない。


 この1ヶ月は散々だった。


 倉庫を改造して住居を作り、風呂に入れ、食事を作り、日本語を教えながら畑仕事を教えるのだが、100人もいるし、侍女や見習いとしてのノウハウも援助も受けられないのだ。


 スカートをナナとサラサが都合してくれなければ、更に大変だった。


 サラスとイリスは食事作りを手伝ってくれたし、少女たちに教えてもくれた。


 ラーマやタキは夜、不安で泣いたりする子を癒やしたりしてくれたし、レンはアンドロイドを指揮して100人分のパジャマやマントを作ってくれた。


 比較的自由時間が多い、ヨリとチカコも日本語を教えたり農作業を監督してくれたりした。


 何しろ学校は休みじゃないからだ。


 しかし、ようやく、少女たちは自分たちの食べるものを自分たちで育てるという、根本的な概念を理解し始めた。

 初めて農業を理解した頃の、タキを思い出す。

 関東平野では当たり前になってしまったが、これは狩猟民族時代には考えられないことなのだ。


「ユウキ様、このお茶美味しい」

「今までと何か違う」

「緑茶と言うのよね」

「普通の緑茶じゃないみたい」


 新潟娘たちは、何故か黒髪と白い肌が多かった。

 ロシア系もポリネシア系もチベット系もいるのだが、何故か関東平野と少し感じが違う。

 髪や肌の色より、瞳の色が違う場合が多いような気がする。

 同じ黒髪白い肌でも、瞳が青かったり灰色だったりするのだ。

 まあ、この1ヶ月で、肌は更に白くなったのかもしれない。


「これは玄米茶と言って、今食べているおにぎりと同じ米がお茶に混ぜてあるんだ」

「へー」

「ふーん」

「凄い」

「不思議」


 俺はこの100人が何とか様になってくると、逆に自慢になってきた。


 意外と心配性のキンの前で新潟娘たちを褒め称え、様子を伺いに覗きに来るススの前でいちゃついて見せ、ギンの前で『新潟の開拓は俺がやるか』とか大声でわざと言ったりした。

 聞こえよがしというのだろうか。

 いかにも心の狭い、嫌みっぽい男がするようなことをしてしまった。


 ドウの前では、『新潟に新領地を作って移住する』などと、態とらしく言ったりした。


 ドウは驚いたことに泣き出して『領主様の意地悪ー』などと子供のように泣きじゃくり、周囲をも仰天させた。


 一番、そう言うタイプに見えなかったのだが。


 実は、かなり堪えた。

 翌日、四阿にセバスが来た。


「ユウキ様にお仕えすることが孫たちの誇りですが、女として子供を産むのも大事です。ユウキ様がお気に召さないのでしたら、タルト村長に婿を推薦して頂きます。もう曾孫が4,5人はいてもおかしくないはずなのですよ」


 藪をつついて蛇というのか、自業自得か、因果応報か、これが身から出まくるサビなのだろう。


 そういえば、ワサビも早く栽培しないとなあ。


 などと、現実逃避しても赦されないことが現実である。


「4人の長官の好意を利用して働かせ続けて、結婚しないのは結婚詐欺です」


 彩子さんとツバキさんが、いつの間にかそこに立っていた。

 彩子さんは法律の先生で、ミサコの母親である。

 豪華さんは法律の顧問であるからドウよりになるが、彩子さんは中立だけに、まるで『ギルティ』と宣言されたような気がした。


「しかし、4長官は大事な役職で、替えが効きません」

「ですが、それとこれとは別の話ですよ」

「確かに」


 俺は両膝をつき、脱力して有罪判決を受け入れた。


「人材がいないのなら、何故輸入しないのですか?」


 今度はツバキさんだ。

 この人はカエデさんの妹だが、カナホテルチェーンで働いていて、今度の湘南リゾート計画の責任者として送り込まれた。

 目玉が、カエデクリニックだからだ。


「失礼ですが、ユウキ代表は関東平野には移民を受け入れてませんよね。それは領民を自立させたいからでしょうか」

「それとも、女を独り占めしたいとか」


 前者だからね。


 村長たちを移民が支配するような体制は作りたくないのが本音だ。

 ロシア大陸や中国大陸は男が入れば豊かになるが、ここは領民たちが苦労して豊かにしてきたのだ。

 今更、移民を入れて現地人を下に扱うような国にはしたくない。

 移民が下になるのも見たくない。


 それに移民は農地開発が義務づけられていて、官僚にはなれない。

 というか、農民のために官僚機構があるのだから、当然農地開発をする男は、官僚機構には入れない。


「ならば、閣僚や官僚を外国から雇いましょう。セリーヌや豪華を顧問にしているし、先生方も雇っているじゃないですか。不満はありましたか」


 ツバキさんの提案は魅力的だが問題もある。

 女を採用しても、後に男を連れて来られると、立場を確立できないからだ。

 といって、結婚退職で追い出せないだろう。


「大丈夫ですよ。男嫌いの処女を募集すればいいのです」


 彩子さん、そんな条件で有能な人材は集まるのでしょうか?


「でも、その前に、ね」


 俺は彩子さんとツバキさんに引きずられて行政庁舎に行き、4長官に土下座して謝り、プロポーズまでさせられた。


 不思議なことに、気分が良かった。

 何故、もっと早くにこうしなかったのかと思うくらいである。


 思えば、ナナとサラサが結婚した後も、いつまでもグズグズと未練を引き摺った経験があるのだ。

 それが、キン、ギン、ドウとススとくれば、未練と後悔はどれぐらいになるのだろう。

 それほどに、身近で一緒に苦労してきた仲なのである。 




 チベットも男は開発、女が行政となっていた。

 まずは、ちゃんと食えるようになることが優先事項だからだ。

 飢えた小部族が多いらしく、遺伝的に近親婚が限界に来ている。

 少女がお荷物になっているから移民は今のところ独身の男だけになっている。

 一夫多妻制で、男たちは何人もの少女を妻として養わなくてはならないが、海外からすればうらやましい話でしかないようだ。

 ゲーモの周囲も有能な少女が集められ、ダライラマ氏が教育しているという。


 ロシアは、村運営方式をとっていて、基本的には村ごとの自給自足であるから、官僚機構は必要ないらしい。

 妻は3人までと決められていて、ロシア系に人気が集中することはなく、ロシア系、チベット系、ポリネシア系の妻をきちんと3人持つことが主流らしい。

 ヴラジヴォストーク(ウラジオストク)には鮭の遡上があり、移民団は喜んでいる。


 ボルネオ自治国では、ポリネシアから連れてきた男たちを女たちが共有財産にしているという。

 女が選択するという特権は、エリダヌスでは基本であるから文句は言えないが、過渡期としての処置であって欲しいものだ。

 だが、男を共有財産にすることによって、男の子を産んでも出て行くことはなくなった。

 マザコンが生まれないことを祈るばかりだが、男に対して厳しい部族だから、甘やかされる男などいないだろう。

 きっと、成長したら飛び出してくる奴ばかりになるに違いない。

 そうしたら、こっちの少女たちが女神様にも思えるに違いない。


 コーヒーとオリーブが絶品であり、主要な輸出品になっている。

 カボチャが主食で、毎日食べるという。


 パドマは、バラモン4人から報告を受けていて、色々実験をしているらしい。


 一度、ホエール人観光客が潜入したことがあり、殺されはしなかったが、一晩に20人の女の相手をさせられて、3日で逃げ出すという事件があった。

 性の伝道師みたいなバラモンに教え導かれたアマゾネスなのだ。

 元大統領と元副大統領は、『死ぬ、枯れる』とか言ってるらしい。

 俺なんかじゃ、ひとりでももてあまして逃げ出すことだろう。


 しかし、一番の騒ぎは、やはりカエデクリニックである。

 毎週ホエールから届けられる申し込みは、既に20万人を超えていて、湘南リゾートの客も常時1200人以上となり、クリニックの空きを待っている。


 今は不妊、不感症、苦痛症の人が優先的に処置されているが、そうした病気治療以外は、エリダヌス憲章により再選択法が定められた。


 人生を再選択するための処女再生が基本であり、子供を作らない場合は25歳、一子希望者は23歳、二子希望者は20歳、三子希望者は17歳までの若返りが認められた。

 それでも財産の問題とかあり、処置前に二人のカウンセラーと一人の弁護士と一人の医者の証明が必要であり、カエデクリニックは100名ものスタッフがいても、常時戦場のようだった。


 最も、17歳の処女に戻れれば、財産なんかいらないという人が多かったが、その通りかもしれない。


 勘違いした未婚の芸能人が良く現れるが、お断りされて、慌てて誰かと結婚して離婚したりした。

 アメリカでは未婚の女優が実は既婚者だったというニュースが沢山流れた。


 イギリスでは、ナタリー王女(推定83歳)が17歳の処女に戻ったら、何億ドルでも積むという富豪が沢山現れたが、王女は未婚なので、再選択法によりはじかれていた。

 昔は凄い美女だったらしい。


 日本のマスコミが、『現代の縁切り寺』とか揶揄してきたが、七湖荘で待つ夫候補や恋人が、若返った処女と再会するシーンが女性たちの支持を集め、肯定的な論調ばかりが残った。

 ドラマ『再選択する女たち』や『夫と夫の間で』などというのが流行し、再選択する喜悲劇を女たちは夢中になって話題にした。


 処女たちは恋人と過ごしたというのに、エリダヌスを出て行くときにも殆どが処女のままだった。

 大半は、処女である時間をじっくりと味わいたいようだった。

 それからもう一度、青春を、恋を、やり直すのである。


 日本の男たちは、生まれて初めて処女を経験できる可能性が出てきて、非常に肯定的だった。

 あるマスコミの発表では、高校を卒業する男子の99%が童貞で、女子の99%が経験者だった。

 政府は勿論、無視している。

 有権者ではないからだ。

 金にもなりそうもないし。


 ある宗教団体が猛反発するのではないかと予想されていたが、お金持ちの女性たちが処女に戻り、凄いお金を持ってきて、修道女として神に仕えたいと言い出すと、手のひらを返すように承認するようになった。

 修道女が処女ではないことは、体裁が悪いらしいのだ。



 ラーマは処女のまま、俺ともう一度恋をしていた。

 また、子供を産めるので焦りはないようだった。

 キスもゆっくりじっくりになっている。

 鴇色の髪は以前より照り返しが強くなり、白い肌は少女と大人が同居しているかのようだ。

 何処を触ってもくすぐったそうにして可愛い。

 失われてしまった俺との感覚は、ゆっくりと取り戻そうと言ってあった。

 だが、4長官との結婚も話さざるを得なかった。


「遅いくらいです。十分待ったのだから幸せにしてあげてください」

「ラーマは不愉快じゃないのか」

「どうしてでしょう。妻が増えると、ユウキの愛がなくなるのですか?」

「いいや、そんなことはない」

「100人いても1000人いても、ラーマを愛してくれているのがわかるから平気です」

「タルト村だって1000人もいないからね」

「1000人の妻がいて、二人ずつ赤ちゃんを産んだら3000人! ユウキ村が一番になりますね」


 子供が大好きなラーマはぶれないな。


「いや、無理だからな」

「5000石になったから、できるかも?」

「無理だって、5000石関係無いし」

「地球には80億人ぐらいいるそうです」

「だから、違うんだよ」

「ロシアとチベットとボルネオとマサイから100人集めて、新潟の100人でもう500人になります。それからホエールから……」


 ラーマさん、俺が死んじゃうからね。



 外国人官僚候補の面接は、セリーヌと豪華、マナイとメナイ、侍女に昇格したササ、ミヤ、レナのメンバーで行った。

 4長官は迫る結婚式で、使い物になりそうもなかったからである。


 面接官は俺と左右のセリーヌに豪華だが、二人とも再選択して18歳に戻ってしまい、どうにもやりにくい。


 ノーパントップレスが恥ずかしいらしく、きっちりとしたスーツとワンピース姿である。

 はにかんで可愛いのが別人のようだった。


 記憶がなくなるわけじゃないのに、身体の代謝とかが活発だと、キュンキュンしたりドキドキしたりするらしい。

 外見は17でも、女性の機能は15歳だからなあ。


 羞恥心は間違いなく処女のものだという。

 ポリーナが脱げない理由が、よくわかると言っていた。

 ファーストキスを考えただけで、心臓が爆発しそうだと言う。


 いや、ファーストキスじゃないし。

 初対面でいきなりブチューとかしてきた人たちとは思えない。


 カエデさんの『夫のことをどう感じるか』という質問に、


「故郷に残してきた父親みたい」


 などと、二人して笑って答えていた。


 まあ、頭がとろけていて現実に帰ってこない4長官よりは使えるだろう。


 モンゴル人30人を面接し、日本人30人を面接し、ホエール人30人を面接し、ヨーロッパやカナダ人を10人ほど面接し、ようやく最後の一人になった。


 セリーヌと豪華はもう限界で、だいぶ前にいなくなってしまった。子供か!

 いや、まだ安定してないんだよな。カエデさんがまだ駄目と言ってるし。

 いや、ずっと駄目だろう?


 マナイとメナイの方は、交代で休んでいた。

 ササたちは、もう夕食の支度に行っている。


「ナタリーさんはイギリス人でいいのですよね」

「はい、イギリス系ですね」

「姓がないのは、移民希望であるということですが」

「はい、人生をやり直そうと決心してやってきました」

「それなら、再選択でも良かったのではないですか。官僚機構で下っ端から始めるのはつらいですよ。移民となると、いつかは夫も選ばなきゃならないですし」

「実は、結婚を望まない人生を送ってきたのですが、こちらの再選択の話を聞いて、今更ながらに疑問を持ってしまいました。夫や子供のいる人生も悪くはなかったのではないかと。過去のしがらみがなければ、それなりに楽しめるのではと考えると、どうしても試してみたくなりました」


 俺は、この40代後半の、身体の線が少しだけ緩んできたが昔は美人だったんだろうな、という感じのナタリーがとても気に入った。

 何というか上品で細やかな感じがするのだ。


 カレンが年をとると、こんな感じなんだろうという気がする。


 しかし、30ぐらいに処置できるはずなのに、この容姿でいるというのは、処置してないからなのか。

 貧乏だったとは思えないのだけど。

 きっと、不幸なしがらみがあったんだろうな。


「それで、希望する官庁はありますか」

「できましたら、閣下の側付きを希望します」

「それって、秘書か侍女を希望するってことですか」

「はい、私、メイドの仕事は詳しいので。イングランド風がお嫌でなければ、メイドとして使って頂きたいのです。閣下の侍女ですか、その方たちにも色々と参考になるかと思います」


 ははあ、どこかの貴族に仕えていて、没落して行くところがなくなったんだな。

 主人だか、女主人だかに一生仕える気でいたのだろう。


 没落して行く段階で、処置も受け損なったのか。


 しかし、行儀作法を教えられるのは好都合だ。

 何しろ、今後は偉い人が現れる機会が増えるだろうし、俺は農民だから作法なんてわからないし。


「実は、侍女にはもうそろそろトップレスを卒業して貰って、メイド服を試そうかと思っていたのですが」

「それは閣下の特殊なご趣味ではないのでしょうか」

「違いますよ。ただ、生まれてから洋服など着たことない連中ですので、地球人のような下着を着けたがらないのです。メイド服なら、下着も締め付けたりしないもので、ざっくりと着られるものがあると出入りの業者に教えて貰いまして」

「シュミーズとかドロワースですね。18世紀ぐらいに戻ってしまいそうですが」

「まあ、最近まで石器時代でしたから、それでも早い方かと思いますよ」

「おっぱいを見せるのは、閣下の趣味かと思ってました」

「そんなわけありませんよ」

「そうですか。私も崩れて醜いおっぱいを見せるのが一番の悩みでしたが……」

「この世に、醜いおっぱいなどありませんよ」

「流石、専門家と呼ばれる方は……」

「いいえ、専門家ではありません」


 とりあえず、マナイも気に入ったようなので、おっぱいを出してくる前に、特別に侍女として雇ってみることにした。


 一週間もすると、妻たちとヨリ以下元許嫁たち、母さんと母さんは、ナタリーがいないと不便で仕方が無くなった。

 それは俺やマナイやメナイも一緒で、新たな見習いは全部ナタリーに預けてしまった。

 カレンもミサコも時間があればナタリーについて回り、色々と技術を磨き始めた。


 特に英国風紅茶は絶品で、ギルポン茶のグレードが上がった気がするほどだ。

 中国風の黒茶や日本の煎茶も上手に淹れてくれるし、アフタヌーンティーと呼ばれるちょっとしたお菓子や軽食がつくお茶も3時頃に出してくれる。

 こちらは夕食が早いから、3時でも仕方が無いのだ。


 毎朝のスケジュールも、入ってきた最新情報も、その分析も一流のものだ。

 情報をただ伝えるだけではなく、原因や関連事項、今後の波及効果から、解決策まで用意してくれている。


 メイドどころのレベルではない。

 家令とかバトラーとかすら超えているような気がする。

 今すぐホエール大使に任命したいぐらいだった。


 だが、俺が一番手放せなくなってしまった。


 今まで何でも俺の所に来ていた問題が、半分は部署の判断で処理されるようになり、何処に持って行けばいいのかという問題は、的確に各部署に引き渡され、俺が悩んでいると俺の頭を整理するかのように相談に乗ってくれた。

 とにかく、最高の人材だった。


 俺の、階段覗きを、怒らなければなんだが。





「その選択で間違いないか」

「ありません」


 法律顧問の豪華が、レースを頭につけた4長官に尋ねて、結婚式は無事に終わった。

 領主でも、一応女性選択法を適用することになっている。


 4長官との結婚式も、まあ、ナタリーのお陰で混乱することなく済み、そのまま、七湖荘への新婚旅行もマナイとナタリーには同行して貰った。


 七湖荘は離れの特別室を用意していてくれて、支配人のサンヤと女中代表として、ロンの第1夫人が挨拶に来た。

 サンヤは非力な男だったから、牧場経営は戦士長だったマリブに引き継ぎ、七湖荘の経営に専念していた。

 着流しスタイルになっていて、それっぽく見える。


「こちらの方が自分には合っているようです。お陰でお客様にはひいきにしてもらっていますよ」


 サンヤは農民たちだけではなく、ホエール人観光客もこちらに来るので、繁盛していると言っていた。

 カナホテルもあるのだが、どちらも予約は一杯で競争にはならず、情報交換をしているらしい。


 ロンの第1夫人の方は、4長官が嫁になったのを喜び、いつかは自分の娘も連れて七湖荘に来てくれと言っていた。

 ロマのことである。


 女中はカナホテルにも雇って貰っているが、七湖荘の方は年配を多くしているという。

 ホテルの方がマニュアル対応が多くなり、若者でも大丈夫だが、七湖荘は自然な接客が要求されるから、年配というか、経験者でないと対応しきれないのだそうだ。

 客も自然と観光はカナホテル、癒やしは七湖荘になるらしい。


 ナタリーは、年配の女たちでもトップレスなのを見て驚いていた。

 いつかは浴衣ぐらいは着るようになるかもしれないが、エリダヌス人に羞恥心が目覚めるのは、まだまだ先になりそうだった。


 新婚旅行での初日はススで、どうやら現実感がないらしい。

 だが、いざ喪失となると現実に帰ってきて愕然としていた。

 涙を流し、痛みをこらえ、必死にしがみついて我慢していた。


「こんなこと、毎日したら死んじゃいます」

「じゃあ、ススは暫く順番がなくてもいいな」

「いやです。我慢しますからちゃんと赤ちゃんを作ってください」

「じゃ、毎日しような」


 ススの顔は恐怖に近かった。


 翌日はキン、ギン、ドウが3人で押しかけてきた。


「ずっと一緒だったから、一緒にします」


 キンは少し緊張気味にそう言った。


「我慢しすぎたのかもしれません」


 ギンも涙目でそう言ったが、顔は一人では怖いと言っているようなものだった。


「一緒で構わない。一緒に出産する」


 しかし、ドウは耳年増なだけだ。

 キスだって、一番経験が少ない。

 俺は3人を立たせて、お尻を見せて貰った。


「昔、田植えで、お前たちのお尻を見て我慢するのが大変だったよ」

「知ってます。その後一人でトウモロコシ畑に行って何をしていたのかも」

「何だって!」

「何故、私たちでしないのか、未だにわかりません」

「変態?」


 こいつら!


 俺は火がついたように3人をむさぼり、嬌声を上げさせ続けた。

 初体験も、3人は励まし合って乗り切った。


 翌日、へろへろの3人を置いて、ススとマナイとナタリーを連れて七湖観光に出掛けた。

 普段は喜怒哀楽に乏しい感じのマナイも、美しい景色には感激したようだ。

 ナタリーは本物を中国で見てきたらしいが、こちらの方がより自然で迫力も違うと言っていた。


 途中、人気の無いところで3度もススを抱いた。

 一度目は嫌がっていたが、2度目は喜びに目覚め、3度目はどちらともなく手をつないで森の奥に行った。


 マナイは平然として待っていたが、ナタリーは真っ赤になって俯いて震えていた。


「閣下、少し羽目を外し過ぎてるのではありませんか」

「新婚旅行なんですよ。普通ですから」

「ええっ」


 マナイが動じないので、ナタリーも諦めたようだった。


 翌日、キン、ギン、ドウの3人を連れて観光に出かけようとすると、ナタリーは頭痛がするような顔で現れた。


「閣下、今日は片付けものをしたいのですが」

「わかりました。留守番をお願いします」


 これも武士の情けだろうか。

 ナタリーの代わりにサードを連れて出かけた。

 夕食の時にはススも、キン、ギン、ドウも夢うつつで、ナタリーは更に呆れていた。


 新婚旅行先でも、衛星回線で仕事は来ており、まあ、大体はナタリーとマナイが処理していた。

 就寝前に、ナタリーとマナイが報告し、今日の業務を終えると、マナイがスカートを脱いでベッドに入ってきた。


「あの、あの、閣下、これは」

「ああ、マナイも俺の妻なんですよ」


 ナタリーは真っ赤になって走って出て行った。


 その後もナタリーは優秀で、侍女たちの弟子は増えていくばかりだった。

 ヨリやミヤビもナタリーの入れてくれたお茶が飲みたくて、領主館に来るようになった。

 お茶とお菓子に関しては、カレンが一番弟子の座を確保していた。

 母親の豪華さんがあんな姿になっていたから、ナタリーとカレンが親子のように見えた。


 新潟娘100人はナタリーのお陰で、他の侍女たちよりも侍女らしく見えた。

 立ち居振る舞いというのか、とても優雅に見えるのだ。


 ナタリーが側にいると、少女たちが色めき立つことが少なくなることも良かった。

 本人はおばさんであることを気にしていたが、年をとることが単純に尊敬される星にいるのだから、もっと堂々として欲しかった。

 それなのに、尊敬されているタルトの夫人たちのトップレスから目を背けたりしていた。

 自己嫌悪のようだった。


 やがて、専従たちからメイド服を着るようになった。

 下着も圧迫するものは少なく、肩から下がるものだったり、ひもで結ぶものだったりした。

 外で男たちと会うことが多い官僚たちが着始めると、普及は進んだ。

 ナタリーは満足そうだったが、ユウキ邸内では裸に戻る侍女が多いので呆れているようだった。


 特に、裸の階段上りは許せないようだった。


 ジゴロ部屋もできるだけ明るく清潔にするように努力してくれていたが、まあ、無駄だった。

 時々母さんが来ると知ると、怒りまくっていたが、もう一人の母さんも来るので、諦めたようだった。


 あるとき、端末に答えがあった。


 カエデクリニックの見解だったが、俺とマナイとナタリーは情報を共有しているので、ナタリーの私信が紛れ込んでしまったのだろう。


『貴女は、未婚で未経験であるため、一度結婚生活を経験することをおすすめする。万が一、不妊等が発覚した場合は善処したい』


 そういえば、子供を産む人生を経験してみたいようなことを言ってたっけ。

 だが、この星で夫を見つけるのは難しいだろう。

 侍女ではなく、カナホテルとかで働いて、観光客から見つけるぐらいしかないのではないだろうか。


 しかも、カエデクリニックの文面では、処置してない中年女性を想定してないのだろう。

 若返りだけなら、地球でもホエールでも処置できるのだ。

 これから結婚、出産を経験しようとする女性が、中年でいるとは思っていないのは確かだ。


 俺は余計なお世話だと思うが、ナタリーのためだと思い探し回った。


 ナタリーは、ある空き部屋でたらいに水を汲んで、何と白髪を染めていた。

 全裸であるより、白髪が俺に衝撃を与えた。


「閣下、お願い、見ないで!」


 ナタリーはだらしなくなったお腹やおっぱいを必死に隠していたが、俺にはそんなところは目に入らなかった。

 堂々と白髪を見せるのは威厳があっていいものだ。

 だが、悲しむぐらいなら処置を受けるべきなのだ。


 俺は怒りか悲しみか義憤かよくわからない感情に支配され、裸で暴れるナタリーを抱き上げ、サードにカエデクリニックまでカートを飛ばして貰った。


「離して、助けて。いや、お願い、死にますよ、死にますからね」


 ナタリーは泣き叫んでいたが、俺は強く抱きしめて離さなかった。


 カエデはビックリしていた。


 領主が100人もの人が順番をとろうと並んでいるクリニックに乗り付け、裸の中年女性を運んできたからだ。


「ナタリーは子供を産んで人生をやり直したいんだ。それだって再選択でしょう」

「落ち着いて、山賊みたいよ」


 カエデ院長自ら調べ直してくれて、俺は少し落ち着いた。

 暫くして、カエデさんが色々と書類を持ってやってきた。


「不妊治療で問題ないわね。本人はぐずぐず言ってるけど、子供を産みたいと思うようにはなっているわ。男性恐怖症にしてはだいぶ改善されているわね」

「もう、17歳でも15歳でもいいから徹底的に治療してください」

「でもねえ、祐貴君。ひとつだけ問題があるのよ。名目的なものだけど、こんな商売だから譲れないわ」


「何です?」


「彼女は処女なのよ。処女が不妊というのは形式的にも頂けないわ」

「それって、ひょっとして」

「ええ、近くに手頃な相手が一人しかいないのだけれど、まあ、いいでしょ」

「いや、だけど、それって」

「いいのよ、気に入らなくても再選択してもらうんだから。また、処女に戻るんだし」

「でも、やはり、少しぐらいは相手の気持ちを考えなければ」

「200人以上もの予約を飛ばして見ているのに、こっちの言うことは聞けないとでも言うのかしら」

「カエデさん、顔が怖いですよ」

「わかったら、今すぐナタリーを落としてこい。こっちは時間が無いんだ。何なら強姦でも構わないぞ!」

「ひえー」


 ナタリーはベッドの上で毛布で身体を隠しながら怯えていた。


「ごめん」


 俺はそれしか言えずに少し強引にナタリーを抱いてしまった。

 彼女は間違いなく処女だった。

 また、処女に戻るとわかっていても罪悪感は重たすぎるものだった。

 ナタリーは涙を流し続けている。


「ナタリー、ひょっとして好きな人が……」

「はい、閣下」

「そうか、申し訳ない」


 俺はその後、少しへこんで生活し、教師たちに叱られる毎日だった。


 その日も、マリー先生に叱られて、一緒にポリーナ先生も叱ろうと来たのに、逆に慰められるような状態だった。


 そこへ、何故か2段目の方から人が歩いてきた。

 リゾートには2000人近くいるから、たまには覗きに来る人もいるのだけれど、何となく変だぞ。


 その人は、白いワンピースを着た美少女で、少しくすんだ金髪だった。

 近づいてきて驚いたのは、この領地でもこんな美人に匹敵するのはラーマかレンかチカコしかいないと言うことだ。

 奇跡級の美人である。

 何故か、マリーが飛んでいき挨拶した。


「お久しぶりです、殿下。こんな所へお忍びでしょうか」

「マリー卿ですね。お久しぶりではないのよ。私ずっとここで侍女をしていたのですから」

「へ?」

「あなたが80過ぎても若いので、少しだけ悔しかったわ」

「で、殿下。それは内緒なのですよ」


 マリーは一瞬俺の顔を見て、つらそうな顔をした。


「あら、うちの領主様は気になさらないわ」


 16か17にしか見えない美少女が、俺の前に来た。


「閣下、ずいぶんとお仕事をさぼってしまいました。お許しください」

「あの、もしかしてナタリーさんですか? 殿下とはどういうことでしょうか」

「昔の話ですから、どうぞお気になさらないでください、閣下」

「いやしかし、そういうわけにも」

「今はもう、あなたの女なのですよ、閣下。もう少し威厳を持ってください」

「そう言われても、とてもナタリーさんとは思えませんです、はい」


 俺は緊張してしどろもどろになりかけていた。


「侍女は領主様の女であると散々聞いてきましたから、閣下の女で間違いありません。そして私も侍女のナタリーで間違いありません。キスすればわかると思います」

「ええっ!」

「ええっ!」

「ふええ!」


 ナタリーは伸び上がると、キスしてきた。

 いい匂いは、確かにナタリーだった。


「でも、確か好きな人がいると……」

「ええ、閣下が生涯でたったひとり好きになった人なのです」


 ナタリーはそう言うと、もう一度キスしてきた。


「まさか、以前の姿の方がいいとか?」

「いや、中身まで別人みたいで、あの、その」

「今度は、こっちのナタリーで上書きさせて頂きます」


 ああ、実に有能だからな、ナタリーは。



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評価して頂き、ありがとうございます。

恥ずかしいので、知り合いには内緒で書いてます。

こそこそ書いていますので、評価もそこそこが嬉しいです。

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