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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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80 夏休みの宿題2

 80 夏休みの宿題2




 母さんとヨリは、どう見ても姉妹のようだった。


「母さん、誰にも言わないから、そろそろ教えてよ」

「そんなに似ているかしら、ヨリさん?」

「はい、私も少し興味があります」

「ラーマも知りたいです」


 ラーマまでが参加してくる。

 実は、喫茶ギルポンの店内である。

 空港から歩いてきたのだが、母さんが久しぶりにギルポン茶を飲みたいと言い出したので寄り道している。


 俺の右側にラーマが座り、赤くなりながら手に触れたり腕にくっついたりしている。


 可愛い!


 俺の左側にはヨリが座り、腕を取って放さない。


 これも可愛い。


 母さんは向かい側である。

 しかし、一人は若返り、一人は大人っぽくなっている。

 更にもう一人は若返った上に、身体も大きくなっている。

 160センチ近くだから大柄ではないのだが、現地人としてはクラとロマぐらいしか思いつかない。

 何となく、別人といるような緊張感がある。


 しかも処女だとか、どうなってるんだ?


 実は、頭の中が色々なことでごちゃごちゃしている。

 慌てずに、簡単なところから解決していくべきなのだ。


「実はね」


 母さんが小声で内緒話をするように前に乗り出すと、みんなつられて小さく囲む。


「ユウキがマザコンなの」


 はい、聞いた俺が馬鹿でした。


「実は日本人男性の8割はマザコンで、7割はロリコンで6割は巨乳好きなの」

「100%超えちゃうよ」

「併発なのよ。多重債務者なの」

「そんな話、信用できないよ」

「あら事実よ。母親によく似たロリと言えば」

「言えば?」

「妹萌えでしょう」


 がくっ。


「そんな理由で、妹萌えを説明するな!」

「つまり、ユウキはお母さんに会いたくて、会いたくて、ついに天から召喚しちゃったのよ。それがヨリさん」

「トレイン事故の原因が俺みたいに言うな!」

「しかも、12歳のどロリ」

「言い方が、ちょっとさあ」

「しかも、巨乳」

「偶然だよ。それに大きくなくても良かったんだよ。センさんでわかったんだ」

「センさんで?」

「センさんで?」

「センさんで?」


 しまった! 墓穴だ。


「あなた。詳しく聞きましょうか」


 ヨリが指をパキパキ鳴らしているように見える。


「さて、ラーマさん。新メニューにフラッペとかあるわ」

「はい、お母様。食べてみたいです」


 一瞬で見捨てられました。


「さて、あなた。見たの?」

「はい」

「触ったの?」

「はい」

「揉んだの?」

「はい」

「か、嗅いだの?」

「……はい」

「すすっ、吸ったの?」


 ああ、ヨリが涙目だ。

 これは正直に答えない方がいいかも。

 ああ、駄目だ。

 すぐ側に目撃者がいる。


「お母様」

「何かしら、ヨリさん」

「ユウキはマザコンでした。お返しいたします」

「でもねえ、ヨリさん」

「はい」

「あなたたち、確か離婚したんじゃなかったかしら」

「えっ、あああ、そうでした」

「ユウキがセンさんを吸ったのは、離婚後よ」

「ええっっ」

「つまり、浮気じゃなくて、不倫よ!」


 母さんの目が輝いている。

 若返っても中身は変わってないんだなと、少しだけ安心した。


「不倫は、人妻には欠かせない栄養素だわ。いえ、必須アミノ酸かしら」

「ええっ!」


 ヨリまで混乱し始めた。

 母さんの側では、問題は解決するのではなく、増えて複雑になるだけの様だった。


「あの、おっぱい比べの時は、何で私だけ揉んでもらえないのかと熱くなったわ」

「お母様、見てらしたんですか?」

「ええ、ユウキが10人の母親に対して揉んだり吸ったり。でもわかったわ。ユウキ、私と不倫しましょう」

「それ、不倫じゃなくて近親相姦とかになるからね」

「でも、不倫で上書きするのよ。世間には不倫の方が受けが良いわ」

「受けの問題じゃないって」


「実はユウキは祐一の前妻の子なのよ」

「ええっ、そうなの?」

「そう言う設定なら大丈夫でしょう」

「いや、それでも母さんは母さんじゃないのか?」

「母さんでも不倫できるのよ」

「何か間違っているような気がするけど」

「良いのよ、ここはエリダヌスだから」

「エリダヌスでも駄目だと思うよ」

「だって、ナルメやギルポンでは、父親の妻は跡継ぎの妻となるのでしょう。だったら大丈夫じゃない」

「いや、親父死んでないし、それに部族の風習だからね、それ。今ではなくなったから」


 小部族には『近親者』の概念がない。

 部族内には強い男と弱い女子供しかなく、男は狩りをして部族を養い、女は部族の存続のために子供を産み育てるのが仕事である。

 狩りが上手くいって部族に栄養が行き渡ると、子作りが行われる。族長からお相手を選んでいくが、丈夫な子を産んだ実績のある女から選ばれていく。

 女に拒否権はない。

 これが年に何サイクルか繰り返されるが、妊娠した者はお相手から除外されるから、お相手は固定されない。

 女の数が少なくなれば、族長は少女を成人させる。

 だから、部族内では配偶者の概念はない。

 当然、誰が父親かなどわからなくなるが、部族の子である。

 跡継ぎも同じで、普通は1番強い男が次の族長である。

 近親者と言えば、部族の者は全員が近親者である。

 もし、それを近親相姦というなら、部族の概念では日本人同士、アメリカ人同士の結婚も近親相姦である。

 彼等には、部族が国家であり、世界なのだ。


 とは言え、それももう昔の話だった。

 その証拠に、ギルポンのウエイトレスたちが驚いている。

 彼女たちは、既に新しい価値観を持っているのだ。

 また、変な噂が流れるに決まっている。


「でも、でも、村民法解釈には、経過処置とするって書いてあるわ」

「部族の経過だからね」

「うちもユウイチ族よ」

「3人の部族なんか認められません」

「そして、父親は失踪して残されたのは若い男女」

「普通に母子家庭だってば」

「夫に逃げられた妻と、妻に離婚された夫が残ったのよ。しかも妻は処女」


「何だって!」


「実は、母さんもオプションで処女にしてもらったの」

「若返りに、そんなオプションがあったのか」

「いいえ、実はラーマさんの症例が初めてらしいわ。でも、解明できたから、母さんもついでに処置して貰ったのよ」

「お、お母様。それってヨリも受けられるでしょうか」

「部分治療になるから、30前でも受けられるでしょうね。何、ヨリさんも傷物のままじゃ再婚相手がいないの?」

「いえ、ちょっと思うところがあって」

「まさか、ヨリ!」

「あなたには教えません」

「そんな、ヨリ!」


 プイ!


 ああ、30センチも離れてしまった。


「実は、若返りの処置を受けているときに、ラーマさんの遺伝子の中に不自然に止まっているものがあったの」


 やっと本題である。

 全く、話を聞くだけで問題が増えていくなんて。


「多分、成長期に飢餓があって止まってしまったのでしょうね。試しに促してみると、身長が25センチ以上伸びてお尻も大きくなり、おっぱいも、いえ、おっぱいは大きくならなかったわね」

「お、大きくなりました。ただ、身体も大きくなったので、比率的には……」

「比率的にはマイナスよね」

「そ、そうなんです」

「それは、ユウキに一杯揉んで貰えば少しは解決するでしょう」

「本当ですか。良かった」


 ラーマがピトッとくっついてきて微笑む。

 ヨリが少しむっとして寄ってくる。


「それで、処女とどうつながるんだよ」

「そうでしたね。その成長遺伝子の中に、何故か処女回復の遺伝子があったのです。私たちはこれをラーマ遺伝子と名付けて研究しました」

「私たちって?」

「お母さんとカエデよ」


 確かカエデさんは、見習い選抜の時にドクターだって言ってたなあ。


「カエデはスカイホエールジーンクリニックの理事長よ。まあ、遺伝子治療のエキスパートなの」

「でも、母さんまで」

「あら、遺伝子研究をリーナに教えたのは、お母さんよ。宇宙に行かなければ、地球で最初の遺伝子治療院を作るつもりだったの」


 何、その後付けの設定のような事実。

 でも、まあ、本題には関係無いからいいか。


「今は、母親十人委員会で予約が一杯だわ。何故か最初がセンだったけれど。何か思い詰めるようなことがあったのかしら」


 プイ!


 ああ、折角10センチまで近寄ってきたヨリが、また遠くなってしまった。


「でも、凄い人気になりそうなので、カエデと相談して治療院はエリダヌスに作ることになったわ。名物にもなるでしょう?」


 そんな、嫌な名物はいらないかも。


「でも、技術が確定していれば、何処でも治療できるのでは?」

「大丈夫。ラーマ遺伝子は多分エリダヌス人を研究しないと見つけられないし、そう簡単にはまねできないと思うわ。特許、実用新案、商標登録も済ませたわ」


 医療技術ではないのか?


「カエデは日本に行って、男が童貞に戻るか研究したいって言ってたけど、却下したわ。童貞は日本の名物だけど、これ以上日本に童貞が増えたら、世界中に迷惑をかけそうだったから」


 そんな研究、誰が得するんだよ!

 あと、名物って本当なのか?


 しかし、結局のところラーマはまだ身体が安定していないので、1ヶ月は処女のままでいるように言われて落ち込んでいた。

 何故かそれで、ヨリがピタッとくっつくようになった。



 その後、俺は仕切り直して、今までの経緯を話した。

 特に、ダライラマ氏とチベット人と、受け入れが始まる300人のチベット移民についてである。

 チカコのせいで移民が繰り上げられたので、夏休み中に片付けねばならなかった。

 できれば、ダライラマ氏が湘南にいるうちに片付けておきたい宿題である。


「まずは、ダライラマ氏がどこから送り込まれたかなんだ。亡命チベットと言ってるけど、中国、インド、モンゴルと他に3つも候補がある。パキスタン、香港、台湾、タイ、マレーシアは調べたけど絡んではいない」

「そこから疑うの? 別にダライラマ氏におかしなところはなかったわよ」

「では、何で従ってきたのは中国からの亡命者ばかりなんだろう。亡命チベット人がいないんだよ」

「亡命チベット政権は疲弊して、動かせる人材がいません。中国内部に呼びかけたのでしょう」


 ヨリの分析である。


「だけど、ダライラマ氏本人が、傀儡かいらいみたいな発言をしたんだ。チベットができたら、捨てられるみたいな」

「成功するまでの捨て駒? 失敗した時用とも言えるわね」

「確かに中国に阻止されたときのために、消耗品として送られた可能性もあるけど。でも、彼女は本物じゃなくてもかなり地位が高いよ。知識も知恵も捨て駒とは思えない」

「立候補と考えるべきでしょうね。ダライラマの名前を代わりに背負っているのでしょう」

「すると、成功したら、ダライラマ本人が功績を取り上げに来るのでしょうか?」

「しかし、そのダライラマも4人いるよ。望まない相手では報われないんじゃないかな?」

「特に中国は大人しく見てそうにないわね」

「そうなると、決め手は50人のチベット人ではないでしょうか。幹部が裏切り者ならひとたまりもありません」

「そうね。ヨリの言うとおりだと思うわ。それで、ユウキはどうなれば納得できるの。彼女が望むダライラマを呼び寄せたいの?」

「いいや、彼女をダライラマというか、チベット王にしたいんだ」


 母さんもヨリも、少し驚いたようだった。

 しかし、すぐに笑い始めた。

 ラーマだけは話しについてこれなかったが、隣で幸せそうだった。


「ユウキならできるでしょう。ここはユウキの星で、地球人なんかには手の届かないところにあるのですよ」

「ヨリもそう思います。それにホエール軍が警備している星系に地球軍が乗り込んではこられません。現地に移住して来た人間だけは心配ですが、ここでユウキに逆らう人間など滑稽なだけです」

「だけど、もう300人も移住者が来るんだよ」

「全部が敵ではないでしょう。少なくとも農業をやりに来た人間は敵ではないと思いますよ」

「しかし、もやもやするのも事実です。あなた、得意分野で一人籠絡してみてはどうです」


 得意分野じゃないぞ。


「誰かを味方にするのか。誰だろう? サンリンかサンホセか」

「相変わらず、変な命名してますね。でも、彼らは男でしょう。しかも味方かもしれません」

「じゃあ、敵を籠絡するのか?」

「いいえ、敵の敵ですよ」

「誰なんだよ」

「教師ですね」


 ヨリは微笑んだが、その瞳はマサイの虎でも逃げ出しそうだった。


 ヨリの指示で、母さんとラーマは帰し、タルト村に寄ってタルトとコラノの村の幹部に、サンホセとサンリンを呼び出させた。

 サンホセは『サンポ・セー』とかが本当らしいが、面倒なので名誉称号にしていた。

 本人は苦笑しながらも受け入れていた。

 サンリンは何度聞いてもサンリンだから良いだろう。

 予想通りサンホセたちは味方だったので、今後の計画を話し、50人を調べてスパイや裏切り者がいないか確認して貰う。


 嬉しいことに裏切り者はいなかった。

 中国を命がけで逃げ出してから苦労の連続できたのだから、裏切り者がいたとしたらたいした根性であるが、それほどの大物を仕込むほどの価値ある集団とは思えないだろう。

 だいたい、そんな大物は侍女の風呂場を覗きに行ったりはしないものだ。

 いやいや、半年以上の農業訓練に耐えながら、裸の少女が沢山いる星で風呂場覗きぐらいしかやらかさなかったのだから、たいした連中である。


 それから、ヨリと一緒にカートに乗り、念のためサードを一人、運転手にして連れて行く。

 湘南に着くまでに、作戦担当ヨリ、情報担当カオルコ、謀略担当チカコと役割を決め、仲間にすることにした。


 湘南カナホテルに到着したときは、夕食前の最後の講義で、大食堂に全員が集まっていた。

 講義しているのは地球史のマリーだった。


「このように、中国の皇帝は生まれながらにして、4夫人、9嬪、27婦、81妻と少なくとも100人以上の妻を持つことになっていました。第1夫人とかはこの頃の名残です。美人とか別嬪とかもそうなります」

「先生、多いときは何人ぐらいになったのですか」

「正確な記録はないのですが、3000人だろうと言われています」

「3000人」

「順番は?」

「10年に一回よ」

「ふわー」


 いったい何の講義をしているんだよ。


「しかし、祐貴君は日本人ですので、日本的な区分けの方が良いでしょう。日本では皇后1人、妃2人、夫人3人、嬪が4人までとされています」

「10人!」

「たった!」

「あー、それじゃ入れないじゃない」

「静かに。日本では人数よりも位、品位が大事でした。皇后は最高位の位ですからとても重要で、最高位の娘から選ばれました。今なら、ホエール代表の娘であるチカコさんですね。後は国連総長の娘ですが、ここにはいませんね。次の妃ですが4品以内の内親王ですが、祐貴君には親戚がいないようなので、ここは空席です。エリスさんが祐貴君の親戚でしたら、ここに入ります。次の夫人ですが、大体、従三位じゅさんみ辺りまでですから、星系首相の娘なら入れます」


「うわー」

「きゃー」


 ホエール娘たちは、大はしゃぎである。


「ロシア大統領の孫のポリーナも、ぎりぎり入れるでしょう」

「ええっ」

「きゃー、先生、良かったね」

「当確よね」

「そ、そんな、私なんか、全然駄目です」

「マリー先生はどうなのですか?」

「私は伯爵家ですから、そうですね。イギリスの女王の推薦でもあれば、ぎりぎり嬪に残れるでしょうか。ユウキ君が気に入れば良いのですが」


「ふえー」

「厳しいよう」


「先生、タルト村の娘なんかは有利なのですか」

「品位で言えば、村長の娘たちはぎりぎりで嬪ですか。普通は長女ですからナナさんは大丈夫です」

「えー、先生。ナナさんは人妻ですよ」

「それは関係ありません。帝の嫁ですから、当然身分で上書きされてしまいます」

「へー」

「他にも帝が気に入って皇后並に扱いたいときには中宮とか女御という職も作られました。皇后待遇の二人目とかに使われます」

「先生、私たちは無理なのでしょうか」

「侍女の皆さんは官吏ですね。スス内務卿なら皇后もあり得ます。キン、ギン、ドウクラスなら夫人に入ることもあるでしょう」


「ただの侍女では駄目ですか」

「そんなのないよー」


「大丈夫ですよ。更衣というのは帝のお風呂の世話をしたり、トイレの世話をしたりして気に入られて妻になったのです。他にも女房とか御息所みやすどころというのは食事の世話などをして妻になったものです。サラスさんなどが代表的ですが、これらは侍女でないとできませんよね」


「それで、料理の勉強が大事なのかしら」

「ササ、明日からお風呂当番替わってよ」

「私、トイレで待ち伏せするわ!」


 まったく、変なことを教えないでくれよな。


「他にも、皇太后、つまり祐貴君のお母様に気に入られて、嬪に上げられたり、夫人に推薦されて嬪になったりすることもあります。イリスさんがそうした代表例です」


 偶然、タチアナが現れたので、こっそりとチカコとカオルコとミヤビを呼んでもらう。

 勿論、俺とヨリのことは内緒にしてもらった。




「カオルコ、ホエールと通信してチベットの移住民300を100人ずつ分けて連れてくるよう指示してくれ」

「なんで、いや、はい」


 俺が真剣だと察したのだろう。

 真面目に聞いてくれるようだった。


「ミヤビ、パドマ先生に頼んで、俺と自然と会えるよう説得してくれ」

「もう、わかりました。後でじっくりと説明をしてもらうからね」


 今回、ミヤビは戦力に入れていないが、遊軍としておいておく。


「チカコ、サードと使えるアンドロイドを全部使って地球まで金塊を運んでくれ、3万トンある。地球のロシア大使館に協力して貰い、中国の大豆を暴落させて、天然ガスを暴騰させてこい」

「何でよ」

「お前がゲートを平気で運用したのを見たからな。地球と樽の直接取引をしたのはゲートを使ってだろう」

「知ってたのね」

「派手にやってたからな。どうやったのかはわからないけどな」

「行くのはアンドロイドだけよ」

「お前が運用してくれれば良いさ。ついでに5人乗りぐらいの星系内を移動できる小型機を手に入れてくれ。あとは、大型の旅客用も欲しいな。空港発着できれば良いぞ」

「わかったわよ。イケメン馬車を借りるわよ。銀行の執務室も」

「ああ、自由に使ってくれ。ただ、ホエールにちょっかい出すなよ」

「わかってるわよ」


「さてと、ヨリ。例の二人が逃げ出さないようにしてくれ」

「はい、あなた」


 それから俺は何食わぬ顔で、夕食会が酒の出る宴会に変わっている食堂に紛れ込んだ。


「祐貴君。どうしたの? 今日の補習をサボって」

「済みません、ポリーナ先生。ホエール軍が現れたもので」

「まあ、それじゃ仕方ないわね。明日からはちゃんと受けられるの?」

「それが、色々とありまして」

「まだ、サボるの?」

「夜とかに時間ができたら、ポリーナ先生の個人授業で何とかなりませんか」

「夜! 個人授業!」


 ポリーナ先生は、赤くなったり蒼くなったりして混乱していた。

 ダライラマ氏が寄ってきた。

 ここは、時間稼ぎの一択しかない


「ユウキ、ホエール軍が来たのじゃな」

「ええ、でも移民とは別件でしたよ」

「そうか、それなら良いのじゃが」

「それより猊下、ご相談があるのですが」

「何じゃ、申してみよ」

「それが、人妻が処女に戻って迫ってくるのですが、不倫になるのでしょうか」

「何じゃと、噂は本当であったか。そのような技術まで開発されたとすると、女は再選択可能じゃな。夢のようじゃ」

「俺は、再選択されて良いのでしょうか」


 猊下は、真面目に考えてくれている。

 将来は、美人になりそうな顔だな。 


「ユウキは仲の良い鳥のつがいの話を知っておるか」

「オシドリとかですね。一夫一婦制の象徴のように言われています」

「ふむ、鳥には結婚し巣作りすると、夫婦で力を合わせて子育てするものがおる。しかし、子育てして、雛が巣立った後、その夫婦がどうなるか知っておるか」

「いいえ、知りません」

「離婚して、別のつがいになるの」

「ティパ先生、本当ですか」

「ええ、本当。あなたの推し進める選択肢のある星と同じよ。再選択は女の望みなの」

「一生を共にするのではなく?」

「それは子供や孫を守るための方便じゃな。もう一度青春できるのなら、別の男を試せるじゃろう。種の多様化は男女を超えた本能じゃよ」

「一夫一婦制の危機では?」

「アメリカを見よ、結婚離婚を繰り返し、事実上はとっくに雑婚じゃ」

「一夫多妻なら、男ばかりがやりたい放題だし」

「貞淑さというのはどうなるのでしょう」

「処女に戻れるのじゃ、貞淑さは金で買えるようなものに成り下がるじゃろうよ」


 ついでだから、もう一押ししとこうか。


「それなら俺が猊下を口説いても安心ですね」

「なっ」

「なっ、猊下は駄目ですよ」

「どうしてです。処女に戻れるなら、何も戒律には触れないんじゃないですか」

「なっ、なっ」

「ロリコンは戒律じゃありません。病気です」

「余を子供扱いするな!」

「まだ13歳じゃないですか」

「もうすぐ14じゃ、大人じゃ」

「子供です!」


 予定通り、ドタバタしているとパドマが来た。

 この人は推定25歳で、さらさらの黒髪がティパ氏と被っているが、もう少し小柄で、淡い褐色の肌に少し少女を残した感じのエキゾチックというか、とても魅力的な人である。

 ただ、何を考えているかよくわからない。


 おっぱいも小柄で美しい形をしている。

 あれれ、いつもはサリー姿で、トップレスじゃないはずなのだが。


「祐貴君。大人の先生から相談があります」

「何でしょうか」


 打ち合わせでは物理の補習の相談のはずなんだが、大人は関係無いはずだろう。

 自然に頼むよ。


「実は、右のおっぱいが少し変なので見て欲しい」


 パドマは俺の右手を取り、自分のおっぱいにあてがう。


「そちらは左では?」


 ティパ氏が引きながら突っ込みを入れる。


「正常な方の感触を覚えて貰っている」

「あの、先生。恥ずかしいのですが」

「じゃ、私の部屋に来て」


「なっ」

「なっ」


 実はこの二人、インド系のパドマとはあまり親しくしてない。

 色々と確執があるのである。

 ヨリの言う敵の敵である。


 だが、今はフロアの少女全員の敵のようだ。

 集まる目線が痛い。

 しかし、先生に対する敬意はきちんとあるようだった。


 パドマは俺を部屋に引き入れると冷たい麦茶を出し、そのまま俺の後ろに回ると、俺の背中におっぱいを押しつけた。


「それで、用事は何?」

「あの、凄く話しづらいのですが」

「そんなに複雑な話?」

「いえ、そう言う意味じゃなくて、背中がですね」

「男の背中に押しつけると気持ちいいことを発見した」

「あの、女では試したのですか?」

「試した。面白くない」


 パドマは上下運動を始めて、顔が上気して息が荒くなってきた。


「あの、先生は男嫌いでは?」

「ちょっと待ってて!」


「ふああー」


 何この人、俺はおかずか!


「もう一回していい?」

「駄目です!」

「ケチ」

「あの、先生、外見とのギャップが大き過ぎるのでは?」

「それは勝手な思い込み。私は昔からこんな感じ」


 パドマは俺の前にまたがり、今度は胸に胸を押しつけてくる。

 匂い立つとはこんな感じか。


「む、昔からこんなことをしていたのですか」

「男は今日が初めて。私はマハラジャの宮殿で育てられたまま、生まれて初めて外に出てここに来た。男を見るのは宮殿の庭師を10年前に見て以来2度目。男嫌いとかは良くわからない」


 この人、もの凄いお嬢様なのか。



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