75 エリダヌス沖会戦
75 エリダヌス沖会戦
僅かずつだが、少女たちは母親と共に帰郷し始めた。
一人ずつ挨拶に来ては、最初で最後のキスをしていった。
泣いて縋る子や、離婚は認めないと言い張る子もいた。
しかし、みんな母親が何かの策を授けると大人しく帰って行った。
「まったく、結婚の支度金として分配するという私のアイデアを台無しにして!」
カオルコは怒っていた。
そう言えば、カオルコの出番が無かったっけ?
「まあ、株で娘たちを買うようなまねはできそうもないし、良いんじゃないか」
「結婚の支度金は、人身売買じゃないわよ、失礼ね」
「そう言えば、お母さんたちはどうしたんだ?」
「それが、ユウキのお母さんと一緒にタルト村の夫人会に参加して、帰りそうもないのよ」
「それって、もしかして」
「トップレス集会よ」
先日届いたホエールのタブロイド紙の一面は、畑で作業するナナとサラサが裸で写っていて、『異星人を発見』と衝撃の見出しが入っていた。
隅の方に、母さんがトップレスで写っているのは良く見ないとわからないのだが、困ったものだ。
真面目な配信もあるのだが、こうしたタブロイドの方が過激である。
何でも、このタブロイドはホエールで20億、地球では30億ものアクセスがあったらしく、もの凄い売上げである。
一方、今手元にあるイギリスの権威ある科学雑誌には、結構丁寧にここでの生活が紹介されていて、トップレスの侍女たちや、裸で農作業する手伝いの少女たちの写真がちりばめられていた。
特にキンとススの写りが良く、人気が出そうだ。
記事は憶測で書かれているが、一夫多妻制度や基本的には裸での生活などが紹介されている。
真面目な科学雑誌としては異例の20億配信が起こったそうだ。
いつもは3万配信ぐらいだから、出版社はおかしくなっていることだろう。
母さんはパンツが見えそうなミニ丈のスカートを気に入ったらしく、文句を言ったのだが、
「パンツは見えないから良いでしょ」
と、下着を穿いていない宣言をしていた。
そこに、あの母親軍団が加わったのか。
ホエール軍は、マットレスや毛布にシーツ、タオルなどを持って来てくれたし、支給品の下着類も置いていった。
後で、衣類メーカーが何社か来てくれることにもなっている。
樹脂の輸出と交換と言うことで、青鯨氏が請け負ってくれたのだ。
それに、ショーツ類は帰りがけの母親たちが幾つも置いていったのに、穿かなくなる人の方が増えているっておかしくないか?
「母親たちのチキンレースなのよ」
「なんだよそれ!」
「まずは、トップレス。次はノーパン、そしてミニ丈の順番で自信の有り無しを判断するんだって。きっと最後は全裸だわ。領地の外ではやめてって、言ってるのだけれど」
しかし、領地内ではチキンレースにならないか。
もう、男も僅かしか残っていない。
軌道上には、艦隊が入れ替わりで来ているんだが、帰りの人員輸送で上陸してこない。
「しかし、みんな若いよな。タルト村の夫人たちが30代なのに、それよりずっと若く見えるもんな。豪華さんのおっぱいなんてこんなに……」
「そう、やっぱりおっぱいの順だったのね」
「いや、それは誤解だからね」
「どうして、私よりミサコが先だったのよ。私の方が大きいでしょ」
「いや、だから誤解だって」
「やれやれ、朝からうるさいわね」
「ミサコさん程度と張り合っても仕方ないですよ。どうせなら、サクラコさんと張り合って下さい」
「なっ」
ミヤビとカレンが入ってきた。
最近は宿舎の食堂より、ユウキ邸の食堂の方に来るものが増えている。
今は朝と言うよりお茶の時間だが。
すると、サクラコがお茶を持って来た。
顔が赤いから会話を聞いていたのだろう。
いやそうじゃないぞ。
「ミヤビ、カレン、何でトップレスなんだ」
「良いじゃない、ここではこれでも正装よ」
「パジャマは着ていたのですが」
「TシャツでもYシャツでも、揃っているだろう」
「それが、着ると結構洗濯が面倒で」
「そうなんです。身体をお風呂で洗っておしまい、になれてしまって、脱いだ衣類を洗濯機を使ってから干したりするのが面倒で」
「文明社会に戻れないぞ」
「ええ、どうしましょうか。カレンはお兄様と再婚するから良いのですが、お姉様はもらい手が」
「そうなのよ、私は傷物だからもらい手がって、違うわよ! あんたは処女なんだから帰りなさいよ。私はユウキと再婚するんだから」
そう言えば、ミヤビの妊娠は間違いだったのだ。
出来の悪いごま油を作って、天丼にして食べた翌日から吐き気があって、周囲につわりじゃないかと言われた。
セルターに調べてもらったのだが、微妙に早すぎて『暫く様子を』と言われたのに、本人は有頂天で妊娠したと触れ回っていただけだったのだ。
その後、誰も気にしなかったので、妊娠しているものだと信じていたのだが、豪華さんのゲンコツでちゃんと調べ直して、妊娠じゃないことがわかったのだ。
「さてと、今日は見習い選抜だったな」
「ユウキ、昨日は行かないって言ってなかった?」
「ユウキ、逃げるんじゃないわよ」
「お兄様、カレンは再婚しますよ」
「わ、私も……」
サクラコまで何か言おうとしていたが、俺は全力で迎賓館まで逃げていく。
だが、喫茶ギルポン前で豪華さんに捕まった。
「ユウキ、そんなに慌てて何処に行くの?」
母親十人委員会は、娘たちより過激で強引で手に負えない団体だった。というか、豪華さんひとりでも俺の手に余るのだった。
大体逆らうより従う方が上手く行くし、それで早く解放されることの方が楽なことを学習した。
毎朝、目覚めるたびに母親が添い寝しているのも驚かなくなって来ている。
風呂など、必ず誰かは入ってくる。
娘たちと違って、遠慮などしないのである。
「今日は、侍女見習いの試験があるんです」
「ああ、例のおっぱい検査ね」
一体、何がどんな風に伝わっているのだろう。
「じゃあ、小手調べにこっち来て」
俺は強引に喫茶ギルポンに連れ込まれた。
母親たち以外にもナナとサラサがいた。
そう言えば、この二人は夫人枠なんだよな。
俺は、どうもなじめないのだが。
「さて、今日やっと全員がトップレスになりました。記念にユウキが順番を決めてくれるそうです。皆さん、許嫁時代につかなかった決着をつけましょう」
順番とは不吉な言葉だ。
決着って何の決着なんだろう。
「さあ、ユウキ、誰のおっぱいが魅力的か良く見て決めてね。驚いた事に、誰も手術などの処置を受けていないのよ。公平でしょ」
「豪華さん、おっぱいの魅力と言っても、大きさ、形、弾力、色つや、それに匂いとか味とか色々あって、一概にどれとは言えないんですが」
墓穴だと思いながらも掘り進んでしまう。
「そうなの、流石に専門家は違うわねえ」
いや、専門家ではないです。
「じゃあ、部門別に勝ち抜けでいって、総合での決勝戦を行うことにしましょう。まずは大きさから行きましょうか」
当然、豪華さんである。
体型の比率ではナナになるが、体積では一番大きい。
ふふん、と得意満面である。
まあ、美人だから、様になる。
「一人決勝進出ね。次は形よ」
「母さんかな」
「祐貴、マザコンは嫁に嫌われますよ」
しかし、母さんは嬉しそうだった。
母親たちも嫁と呼ぶのは勘弁してほしいものだが。
「そうよ、マザコン。伶子は許婚じゃないでしょ」
「うーん、じゃあチカコのお母さんかな」
「セリーヌね、決勝進出よ」
「次は弾力? 揉んでみるのね。二人ずつ選んで揉み比べてね」
うう、これは苦行だ。
今までの経験で拒絶できないのはわかるが、娘たちにも、夫たちにも見せられない。
始めにカオルコとサクラコの母親である。
「駄目よ、私は左側の方が大きいのよ」
「どうせ私の方が大きいでしょう」
「弾力は違うわよ。たれてないし」
「私だってたれてないわよ」
サクラコの母親は、別に恥ずかしがり屋ではない。
おっぱいは大きく、一番娘と似ている。
次はカナとリンの母親である。
そして、ヨリとルミコの母親、アキとミサコの母親と続いていく。
「ぜいぜいっ」
「どうなの?」
「ヨリのお母さんで」
大きくないが、感触も匂いも最高である。
ヨリのおっぱいが小さくても、俺は絶対に惚れてたと思う。
不思議なものだ。
「センね。決勝では負けないからね。次は何だったかしら」
「色つやは形に含みましたから、匂いでしょうか。しかし、個人的に好き嫌いがあるものですから、正確な判定は難しいかと思います」
俺は少しやけ気味だったが、とりあえず言ってみた。
匂いもセンさんが良いと言ったら、拙いような気がする。
「いいのよ、ユウキが選ぶのがポイントだから」
「では、サクラコのお母さんで」
「カエデね。おめでとう。さすがに専門家は仕事が早いわね。すでに匂いをかいでいるとは。次はいよいよ味ね」
母親たちは少し顔を赤らめた。
正常な反応である。
「それは色々とまずいかと思いますが。一人怖いおじさんが睨んでいますので、これ以上は無理かと」
入り口から大男のごついアンドロイドが覗いている。
ミサコの父である赤鯨真吾氏である。
実は真吾氏は小男で、いつもごついアンドロイドを連れている。
それで余計に小男が目立ってしまうのだが、本人はアンドロイドがいないと不安らしい。
リーナさんと話が合うらしく、アンドロイドの調整もしてくれるので残ってくれてありがたいのだが、妻と娘をひどく気にしている。
ミサコが俺のお手つきだと知ったときには、アンドロイドが唸りを上げて襲いかかってきたものだ。
ミサコの命令も聞いてくれたので助かったのだが、母親の胸を揉んでいたら、早速登場したのである。
「真吾!」
「は、はい」
豪華さんに呼ばれると、アンドロイドの陰から小男が現れた。
「こっち来て両手を出して」
「はい、うひゃあー」
真吾氏は、ナナとサラサのおっぱいを鷲掴みにしていた。
「はい、これでおあいこよ。大人しく仕事してきなさい」
「はは、はいー」
真吾氏は真っ赤になって飛び出していった。
妻以外は絶対に知らないタイプである。
ナナとサラサは文句を言っていたが、豪華さんの命令で俺が触って上書きさせられると、もう満足したようである。
「あああー」
「うーんんん」
「そ、そこは」
「いー」
「もっとぉ」
「ああ、なんか変、変よ」
「こ、こんなのが」
「駄目になっちゃう」
「すごいですぅ」
「うあああーん」
結局、決勝進出したメンバーも加わってきて、勝負はあやふやになって、俺は隙を見て逃げ出してきた。
母さんは入っていなかったと思う。
ナナとサラサは入っていないことを祈る。
特に豪華さんを念入りにしておいたから、きっと暫くは動けないだろう。
ギルポンのウエイトレスが何人か気絶していたが、気にしている暇はなかった。
迎賓館ではドウとススが待っていた。
野次馬や付き添いが多く、迎賓館前はごった返している。
「領主様」
ススが抱きついてきたが、何だか久しぶりのような気がした。
サンヤが選び抜いたこの少女には感謝している。
この星の未来を託せる人材の一人に育っている。
いや、この少女自身が、未来であり希望なのだろう。
その希望を託す人材を、また今日見つけ出すのである。
侍女見習い希望者は、相変わらず盛況であり、何処にこれだけの少女が隠れていたのか不思議な感じだったが、各村では未だに難民が現れているので、当初2000人だと思われた人口は、村ができた頃から上方修正され3000人に、現在では4000から5000人に修正されていた。
考えてみれば400キロ四方というのは非常に広いし、隠れ住む場所はいくらでもあるし、山沿いにも沢山の難民や隠れ里があったのだろう。
ギンの調査によれば、安全が確認されないと出てこない住民が山沿いに多く取り残されていて、各村長の腕の見せ所らしい。
イタモシに痛めつけられた東の部族が一番大きな集団だが、他にも小部族や家族、駆け落ち夫婦などはかなりいるそうである。
自然出産で、5人のうち男の子は2人であり、そのうち一人は10歳までに病死する確率が高いことがわかっている。
風土病か遺伝子病なのかと考えていたが、栄養不足という単純な理由であることがわかってきた。
飢餓状態の年が挟まると、男の子は病気して死亡する確率が高いのだ。
女の子の方が、持ち直したり軽症だったりする。
基本的な生命力が高いのかもしれない。
リーナさんの予想では、小部族での異母兄弟婚などでの、男の子の弊害が大きいらしい。
だから、難民にも夫に妻二人、娘が3人などという家族が多く、それが2家族見つかれば、最低でも娘が4人ほど侍女見習いを受験しにくることになってしまう。
しかし、子供4人では人口が横ばいの時代はもう終わりである。
子供たちが大人になるころには、もう少し、幸せを満喫できる世界になっていると思いたい。
早速、ススとドウが試験を開始した。
いきなり、ニタ村推薦が3人である。
ニタは今まで難民しか寄越さなかったが、ドウに尋ねるとどうやら親父の推薦らしい。
皆、美人になりそうなタイプである。
3人とも、『姉が祐一様のところへ』と、申し出た。
あのスケベ親父め!
次の3人もニタ村推薦で、今度はすらりとした美人ばかりである。
親父の推薦が10か11歳ぐらいなら、こちらは13か14である。
全員『妹が正志様のところへ』という台詞が、親父と逆だったが。
あのロリコン校長め!
二人とも未亡人を引き取ってくれればいいのだが、そう上手くはいかないものだ。
ただ、あの二人が北に逃げてから、農機具や包丁の出来が良くなっている。
鍛造品も出てきた。
輸入品ばかりに頼るわけにはいかないから、良いことなんだと思う。
それに、姉妹の一人を育ててくれるというのは悪いことではない。
二人とも侍女見習いになれるとは限らないからだ。
推薦枠も安売りできないし。
きっと娘の両親たちは、喜んで農民を目指していることだろう。
今回の村長推薦は、何処も難民枠からばかりだった。
妻候補は、流石に尽きたか。
侍女が欲しいのは何処も同じである。
キンは、女官100、侍女200、見習い200の体制を考えている。
官僚機構として、それだけの数が将来必要になると見越しているのだ。
現在は、外務貿易担当の人材を探している。
察しの良いイリスみたいなタイプが良いのだが、なかなか難しいそうだ。
試験は自薦が終わり、難民枠に入っていた。
流石に泥を着ているようなタイプは減ってきたが、貧しさは払拭できていない。
去年より年齢が高めになってきているのも、試験が難しくなってきている証拠かもしれない。
そこへドカドカと踏み込んでくるのは、復活した母親十人委員会である。
公務なので、ナナとサラサでさえ遠慮するし、娘たちだって来たことはない。
ああ、母さんが村の夫人たちに混ざって、他人のふりをしている。
「これが有名な、おっぱい検査ね」
「違います。侍女見習い試験です」
「裸にしてから、何をするの?」
「この子は最初から裸なんです」
「へえ、本当なんだ」
「凄いわあ」
どうも観光気分で困ったものだ。
「女官や侍女としての資質を調べるんですよ。言葉が話せないものばかりなので、大変なんですよ」
「そんなに怒らないでよ、おっぱい見せてあげるから、ね」
「最初から丸出しじゃないですか!」
「まあ、いい突っ込みよ」
「要するに、面接と健康診断と料理の実技試験でしょう」
「私は料理ね」
「私は健康診断にします。一応ドクターだし」
「じゃあ、私たちは面接ね。侍女を通訳に貸してくださる?」
話が勝手に進み、侍女たちが慌てて配置換えをする。
しかし、いつもの何倍もの早さで進んでいく。
侍女たちの方が、ついて行けないぐらいだ。
流石にお嬢様で、上流階級のマダムたちである。
ヨリのお母さんだけは、何故か俺の隣に座って何もしない。
「えへっ」
俺がジト目で見ると、可愛い反応をする。
実は、彼女センさんとヨリとは似ていない。
体も小さめで、童顔で舌っ足らずで、少女である。
ヨリの可愛いモードの秘密はここにあったのだ。
「センさんが、得意なことは何ですか」
「お嫁さん、かな?」
「あの、それなら料理とか」
「それが、全然です。婆やが全部してしまうので、箸を持つぐらいで」
「それでも何か一つぐらいは。ホワイト中将が困るでしょう」
「あの人は、軍人さんなので自分で何でもできるのですよ。センは子供を産むだけで良いんだって言われて嫁ぎました。ちなみに後妻です」
確かにヨリのお兄さんはずっと年上だ。
この人が産んだのなら、ホワイト中将と同じ年齢になってしまう。
「達也さんもヨリ大好きで、何年もヨリ捜索隊で苦労していますが、こんなにあっけなく見つかって、しかも嫁に行ってたなんて、寝込んで当然ですね」
達也さんというのは、きっとヨリのお兄さんのことだろう。
もう一人、俺を殺しに来る可能性がある人物がいたんだっけなあ。
ヨリの父親の中将はあんなだけど、ミサコの父親はアンドロイドを仕掛けてきたし、あれ? チカコとカオルコのお父さんとは和解したが、ミヤビのお父さんは? 母親の豪華さんが凄すぎて忘れていた。
「ミヤビとカレンのお父さんは、今回も宇宙で仕事をしていて来れません。代わりに叔父の黄鯨和夫さんが来てましたよ」
ああ、あの豪華さんのパシリか。
可哀想な叔父さんだったな。
侍女を見て移民したそうにしてたっけ。
「あんなですが、豪華さんに惚れています」
「へえ、移民になりそうでしたが」
「確かに、少し目覚めたかも。でも、豪華はモテるのです。ユウキもそうでしょ。ちゃんと帰ってきてたら、豪華をお嫁さんにしたでしょ」
「いえ、俺はセンさんの方が」
「きゃっ、嘘でも嬉しい」
嘘ではない。
何故かヨリと同じで可愛いのだ。
どうも男は客観的評価に関係なく気に入るらしい。
おっぱいの匂いかもしれない。
フェロモンでも出ているのだろうか。
ヨリの母親でなければ、過ちを犯す自信があるくらいだ。
拙い、見つめ合ってしまった。
この人はホワイト中将の妻で、ヨリの母親なんだぞ。
うう、そう考えると何だか余計にヨリの可愛いモードを連想させて、余計にどきどきする。
これが、禁断の愛だろうか。
センさんは瞬きもしないで見つめてくる。
ああ、もう一度念入りにしたくなってきた。
長屋を借りて待ってますと言われたら、絶対に行ってしまいそうだ。
顔が近づいて、センさんが目を閉じる。
駄目だ、止まらない。
「敵襲!」
オペレッタの声が聞こえてきた。
センサーのどれかから音声を出しているのだろう。
俺は我に返り、元領主執務室に飛び込む。
センさんの両肩をつかんで押し戻すのが、精神的に一苦労だった。
クローゼットから、予備のヘルメットを取り出してかぶる。
「敵って誰なんだ」
「地球艦隊。ホエール艦隊に向かっている」
俺は広間に戻って、驚いている母親たちを見回した。
「ここにいて、安全が確認されるまで領地に近づかないでください。いざというときは現地人のふりをしてください。戦いはこっちでします。侍女たちがお世話しますから」
すぐに母親たちに取り囲まれ、激励の言葉や、激励のキスや、激励の抱擁などになだれ込まれ、どさくさに紛れて俺のお尻や下半身の敏感な部分を触りまくられた。
侍女が参加してきて、侍女見習いが参加してきて、見習い試験中のものまで参加してきた。
ちょうど通りかかった鹿モドキに頼んで乗せてもらい、領地へ帰り着く。
オペレッタの操縦区画に飛び込んで、経過を見てみるが、ホエール艦隊は、生徒と母親を乗せたばかりで、動きが悪い。
戦闘艦も、敵が5隻に対して3隻しかいない。
だが、地球艦隊も様子を伺いながらだ。
勝手がわからないし、狙いは親父だからだろう。
ホワイト中将が交渉を始めているが、親父の所在を尋ねてくるだけで、目的を明かさないようだ。
しばらく悩んで、オペレッタから中将に座標を送り、ゆっくりと移動するように頼んだ。
地球艦隊の動く先にゲートが来るようにである。
太平洋でハワイ島にぶつかるような確率でも、ないよりはましである。
アンドロイドに頼んで、オペレッタを囲む建物を取り払ってもらった。
随行は6人。
キン、ギン、ドウ、クラ、ロマ、それにエリスである。
「なんで、私は居残りなのよ」
「リーナさんには、俺の子供の面倒を見てもらわないと」
「またなの、いやよ」
「でも、どうせ研究があるんだよね」
「そうね。最新のモデルを持ち帰ってくれるなら、待ってるわ」
「ついでに人類学の学者も連れてくるよ」
「遺伝学者が良いわ」
「頼んでみるよ」
「絶対よ」
俺はリーナさんを抱き寄せてキスした。
随員たちが色めき立ったが、気にしなかった。
この引きこもりの知性体が、今では本当に唯一残された女神様だった。
エリダヌス人がバイカル人の子孫で、間違いなく人類であることは彼女が証明してくれるだろう。
俺の子供たちも、領民たちも、みんな彼女のおかげで人類になれるのだ。
工作船に引きこもる女神様である。
「さて、出かけるか」
居住区画に5人を押し込み、助手席にエリスを座らせて出発した。
外で、ススが泣いているが、見られているとは気づいていない。
ススは、侍女と女官の責任者であるから連れてはいかない。
「なんで、現地人を5人も連れてきたの」
「地球との交渉役なんだ、あれでも3人は、この世界では初の大臣なんだよ」
「へえ、てっきり処女だから連れてきたのかと思った」
「一つ間違えば、戦争なんだよ。そんなわけないだろ」
「そんな危ないことに私を巻き込んだわけ?」
「エリスは地球人だろ。少しは協力しろ」
「何よ、偉そうに。私の方がお姉さんなのよ」
「はいはい」
「でも、お姉さんじゃ、いや!」
「どっちなんだよ」
「もう、昔から馬鹿なんだから」
「はいはい」
「ちょっと女を知ったからって、いい気にならないでよね」
「そういうお前はどうなんだよ。ジョージ・ワシントンとかいう彼氏とどうなったんだ」
「ジョージ・ワトソンよ。とっくに別れたわ」
「そうか、残念だな。何となくいい男のような感じがする名前だったのに」
「そんな名前の男がいるわけないじゃない。気づきもしないんだから、この男は」
何か、ブツブツ言っているが、よく聞こえない。
「それで、地球艦隊のことは何かしらないのか」
「国連軍ね。地球には国連に貸与された1艦隊しかゲートドライブ艦隊はないから、間違いないわ」
「何故、国連軍が攻めてくるんだろう。あそこはホエール資金で成り立っているような状態だろ」
「ホエールが独立すれば、資金が回ってこなくなるとか、CIAとかNSAとかが煽ったのでしょうよ。戦争の理由なんか経済以外ないじゃない。人種だとか宗教だとか国家だとか理由は後付けよ。経済しか理由にないわ」
「ぶっちゃければそうかもしれんが」
「どうせそうなのよ。殺人事件と一緒で、動機はやっぱりお金なのよ。得するものが犯人」
「ミステリーの読み過ぎじゃないか。ファンタジーなら気に入らないから殺すとかあるぞ」
「経済が絡まないお子様の動機よ。大人はみんなお金よ」
「それじゃあ、ミステリーがお金持ち殺人事件ばかりになってしまうぞ」
「そうそう、やっぱりメイドが働いているようなお屋敷じゃないとつまらないのよ。メイドの証言は貴重だわ。で、そのメイドが実はハンサムな次男と密通してたりして……」
何か、エリスのツボに入ったようだ。
延々とメイドと犯人の話を続けている。
これから国連軍と戦うかもしれないのに、お気楽なやつである。
「バイオレッタ、切り離し」
「はいよ!」
「地上でリーナさんと合流してくれ」
「わかってるって。あたしに任せて安心して行ってきな」
「よろしく頼む」
「あいよ」
親父の影響か、バイオレッタは威勢が良い。
八さんが姉御と呼んでいるくらいだ。
3Gで飛ぶのは気合いが必要なのだろうか。
「接続完了」
「すぐに出発だ。国連軍の正面、20キロまで、太陽を背にまわせ」
「了解」
オペレッタは全部で85万トンであり、動き出したら1万トン前後の国連軍なんか問題にならないぐらい暴力的だ。
だが、敵は強力なレーザーで武装している。
オペレッタの二門も強力だが、軍にはかなわない。
しかし、こちらはベテルギウス仕様になっているのである。
可動式樹脂・金ナノプログラム装甲で、熱を循環放射できるようになっている。
今はオペレッタの作り出した『空飛ぶおっぱい』形状であるが、耐熱性はホエール軍もビックリである。
いや、見た目もビックリだろうが。
後は、日陰にしてやり、太陽光を十分に利用できなくしてやれば、レーザーのエネルギーが補充しづらくなるだろう。
「間もなく正面」
「通信」
「了解」
「こちらは、エリダヌス代表尼川祐貴である。国籍不明の艦隊に告げる。ここはエリダヌスの支配宙域である。あらゆる暴力行為、争いは禁止する」
「こちらは国連軍第一艦隊である。我々の目的は、尼川祐一氏の保護と安全な地球への帰還である。お引き渡し願いたい」
「尼川祐一は、エリダヌスの移民である。移民の保護は我が政府の仕事であるから安心して任せてほしい。また、彼の財産については仮称・ホエール星系共和国連合に処分を任せてある。ホエール連合政府に問い合わせ願いたい」
「なんですって!」
横からかん高い女性が割り込んできた。
30ぐらいにも幼女にも見える、小柄な女性だった。
「失礼ですが、あなたは?」
「第一艦隊司令官、ミランダ・コジャクス中将よ、尼川祐貴!」
これが皆殺しのミランダか。
特殊な趣味の人しか殺せそうもないが。
キンキンと高い声が、幼女のままだった。
皆殺しの異名は、訓練が厳し過ぎて味方の兵がみんな死んでしまうというところからつけられた。
確かに爺さんの特徴を受け継いでいる。
「ああ、お久しぶりです、中将閣下。その後のご活躍は伺っておりますよ。確か、退役なされて校長になったと聞き及んでおりましたが。シーン先生はともかく、サンディ先生はご健在でしょうか?」
以前会ったときは、六歳の幼女だ。俺のことを覚えているのだろうか。
「父は引退して、自分勝手に優雅な生活してるわよ。それよりあなた、65年も帰ってこないと思ったら、エリダヌス代表? なによそれ」
「まあ、色々あったんだよ、ミランダ。大人の事情ってやつだ」
「子供扱いしないで、私は今年70歳よ」
「71だろう」
「うるさいわね。失礼よ。私の方がずっと強くなったんだからね」
プンプン怒るところは、6歳の頃から成長していないらしい。
流石にもう、おねしょはしないだろうな。
「それで、俺も親父も破産したぞ。一文無しなんだ。今更国連も用事はないだろう」
「破産ですって! 何よそれ、聞いてないわよ」
「先日、ホエールの株主総会で、破産したんだよ」
「じゃあ、地球に納めるべき相続税は? 無くなると地球は困るの。消費税を60%に引き上げるなんてみんな困るの!」
「ホエールが地球の借款を相殺してくれるはずだ」
「そんなの信じられないわ。CIAは嘘だろうと言っているし」
「CIAは信じたくないだろうね。平和じゃ儲からないから。しかし、地球を助けて、ホエールとエリダヌスが独立し、国連に参加することは、地球以外ではみんな知っていることなんだ」
「司令官、こんなやつの言い分を聞く必要はありませんぜ。こいつと、こいつの親父を捕まえてしまえば良いんですよ」
ごついオヤジが回線に割り込んできた。
中南米出身を思わせる感じだが、この態度はアメリカ人だ。
「あなたは、誰ですか」
「正義の味方、誇りある合衆国海軍大佐、ジェームス・カークとは俺のことよ、小僧」
「すると、その艦はエンタープライズ号ですね」
「良くわかってるじゃねえか小僧、気に入ったぜ。ホエールじゃあシマカゼなんてヘボい名前だったが、俺がエンタープライズにしてやったんだ。転送はできねえが営倉には入れてやれるぜ」
「ジム・ゴンザレス、38歳。CIAの外回りよ。50過ぎの大佐のふりをしているわ。CIAに引き抜かれたときは伍長だったわね」
エリスがこっそりと教えてくれた。
回線は、いくつも同時に使っている。
「個人のデータファイルよ。CIAとNSAとDIAの情報だけは入れてきたの」
「へえ、流石にミステリーファンは違うなあ」
「もっと、褒めて良いのよ」
実は、エリスはネットオタクなのだ。
昔、エリスのお袋さんが良くぼやいていた。
『彼氏どころか友達も作らないで、コンピュータとミステリ小説ばかりなのよ。四六時中ジャージで過ごして三つ編みに眼鏡なんて、今時いないわよねえ』
俺の前では一応の格好はするので、ジョージという彼氏のお陰かと思っていたのだが、それも怪しい。
だが、武士の情けである。聞くまい。
「ミランダ。ホエールの情報は正しい。俺や親父が捕まると、反って地球の経済は混乱するだろう。俺を国連総会に出席させてくれ。そこで話をしよう」
「ガキが、国連をなめてんじゃねえぞ。親父は生きてないと困るが、息子のお前は死んでても構わないんだよ」
「カークなら、命令違反も上官反抗もお手柄になるが、ゴンザレス伍長じゃ、手柄にならないぞ」
「が、ガキが、ふざけるな!」
エンタープライズからレーザーが発射された。
空飛ぶおっぱいで防ぐ。
「やめなさい、カーク大佐。相手は民間船よ」
「燃えかすも残さねえよ」
ゴンザレスは最初から生かして捕らえるつもりはなかったのだろう。
国連軍ではないのだ。
アメリカの一部局が送り込んだ刺客だろう。
「オペレッタ、前進」
「了解」
エンタープライズより大きいおっぱいが、レーザーを浴びながら移動を開始する。
徐々に、エンタープライズに接近する。
ホエール艦隊が見ているから、正当防衛は成立している。
「ホワイト中将、残りは生け捕りにしてくださいね」
「難しい注文をするのう」
「ゲート母艦がなくなれば、何処にも逃げられませんよ」
「そんなことができるのか」
「何とか、やってみます。青鯨氏に国連まで迎えを出すように伝えてください」
「わかった。伝えよう」
オペレッタの右のおっぱいにエンタープライズの四本のレーザーが集中するが、ナノプログラムで循環して、後部へ熱が流れていく。
相手には溶け出しているように見えるかもしれないが、基本はゲル状なのだ。
樹脂は燃えないし、金は反射するので、熱循環と発散と光電効果を使った熱防御システムである。
5000度で二〇時間耐えられる設計の外壁は、軍のレーザーなど、針で鉄板を刺すようなものだった。
毎日、樹脂集めをした苦労が報われたような気がした。
エンタープライズのすぐ近くの戦闘艦もレーザーを打ち始めた。
でかい船体が近づいて来るのが怖かったのだろう。
左おっぱいも動き始める。
「おっぱいって、二つというのかな。一組でないと一つと言わないのかな?」
「馬鹿。両足、片足って言うでしょ」
「片おっぱいとは言わないけどな」
「片方って言うから、良いのよ」
「でも、やっぱり二つで一つだよな」
「今は、それどころじゃないでしょう?」
「そうだな。オペレッタ、おっぱいの循環を止めてくれ」
「大丈夫?」
「破裂するだろうな」
「ひどい」
「なあに、小さいおっぱいも魅力的だよ」
「責任とること」
ナノプログラムの電源を止め、循環を止めるとレーザーが四つずつの穴を開けていった。
内部深くまで達するかと思われた瞬間、
ドップン
おっぱい内部の樹脂・金ナノプログラムがあふれ出した。
大きな大きなティアドロップ状のゲルの塊が、左右の艦に襲いかかった。
「どうわー」
「うぎゃー」
すぐに2艦は大人しくなった。
ナノプログラムの塊に押し包まれてしまったのだ。
レーザーも止まり、推進力もなくし、通信もできない。
「何、何、何がどうなっているの!」
「さて、ミランダ。一緒に行こうか」
「何、何処、何なのよ、もう。う、うう、回避よ、回避!」
「遅いよ」
「きゃー、やめて、やめてよ、ユウ兄ちゃん!」
ミランダは6歳の頃に戻ってしまったが、すぐに母艦ごとオペレッタに押し込まれ、一緒にゲートに突入した。
ゲートの周囲は黄金の輝きを放った。
ちょっと、以前よりは周辺部がビラビラした感じになっていた。
親父が強引に通ったせいだろう。
予想通り、地球から二ヶ月という距離に出た。
ミランダの母艦は、半分以上が樹脂・金ナノプラグラムに埋まり、身動きとれないようだ。
ミヤビとカレンのお父さんである黄鯨迎人氏が、通信してきた。
「初めまして、尼川祐貴です」
「君のことは、豊作から聞いているよ。娘たちを助けてくれてありがとう。二人ともいい嫁になってくれると思うのだが」
「残念ながら、離婚しました」
「政略結婚は知っているが、政略離婚なんて聞いたことがなかったよ。うちは財産なんていらないから、安心して再婚してくれたまえ。ついでに豪華もよろしく頼むよ。あれで、妻は寂しがり屋なんだ。娘たちと婿殿がいれば、僕も安心して研究生活を続けられる。孫でもできたら一度は見に行きたいが、難しそうだ」
この人は、自分の親に追いつきたいのだろう。
ゲート研究の第一人者と呼ばれているが、現実にはミヤビの言うとおり、まだまだなのだ。
何かしら結果が出るまで、ここからは動かないだろう。
「そういえば、豪華は男の子が欲しいと言ってたなあ」
「あの、それって孫って意味ですよね」
「男が欲しいだったかな?」
「余計に拙いわ!」
「はっはっは、きっと豊作は先に地球に行って君を待っているぞ。急ぎたまえ」
そのまま母艦をくっつけて、オペレッタの加速を開始した。
2Gで、一ヶ月過ぎると、身体が動くのは、俺とエリスだけだった。
随員たちはマッサージに悲鳴を上げたが、2G加速はこりごりのようだった。
ミランダたちは、加速でさらに埋め込まれ、ハッチを開けても樹脂が流れ込むだけだった。
やがて、懐かしい地球が見えてきた。
俺が何かを伝える前に、国連総長とホエール代表から通信があり、国連総会の準備は整っていると言われた。
この一ヶ月の間に、すべて終わってしまったのだろう。
地球周辺にはホエールの艦隊ではなく、輸送船や客船ばかりが来ていた。
樹脂に電気を流してミランダを救い出し、着陸船で国連に向かった。
母艦は、念入りにメンテナンスしないと使えないだろう。
残りの乗員は、ホエールが救助してくれるだろう。
国連ビルの周囲は、正規のアメリカ軍が取り囲んで警備していた。
しかし、それよりも集まった群衆とマスコミが凄い数である。
着陸艇は、広場のど真ん中にゆっくりと降り立った。
キン、ギン、ドウ、と出て行くと、シーンとしていた広場から大群衆の歓迎の声が上がった。
情報通りにトップレスの美人が現れたのだから、そりゃあ大歓迎だろう。
クラとロマが続くと叫び声と口笛が重なった。
「ねえ、私出て行きたくない」
「トップレスになるか? 楽になるぞ」
「ばか。あんた以外には見せたくないのよ」
「へえ」
「ち、違うのよ。あんたは、ほら、幼なじみというか親戚みたいなものでしょ」
「エリスは地球人だから、そのままで良いんだよ。誰も期待してないさ」
「あんたも?」
「俺は、親戚だろ」
「そうよね、親戚よね。なら、見せてあげる」
「アホか、こんなとこで脱いだら見られるぞ」
「ああ、そうか。後でじっくり見せてあげるわ」
エリスは少し混乱しているようだった。
「ユウ兄ちゃん、降ろして、自分で歩く」
「ミランダはまだ動けないだろう。ほら、へろへろじゃないか」
「で、でも、おんぶは恥ずかしいかも」
「70過ぎて恥ずかしいも何もないだろ」
「70でも乙女だもん」
「はいはい」
「きゃあ、抱っこはもっと恥ずかしいよ」
エリスはお約束のブーイングを浴びて、真っ赤になって群衆に対して『私はアメリカ人よ!』と怒鳴っていたが、最後はあきらめてジャンプスーツを脱ぎ、上下の下着姿を披露した。
「これで、良いでしょ」
群衆は知っててやっているから、大喝采だ。
しかし、オタクの地味女だと思っていたが、アメリカを思わせる見事に成熟した身体だった。
いや、アメリカ人だもんな。
「だ、駄目よ、私は」
危機感を抱いたのか、ミランダがもがき始めた。
筋肉痛で動けないはずなのに、凄い暴れ方だった。
「大丈夫だ。そんな幼児体型、誰も期待してないから」
「ひどいよ、ユウ兄ちゃん。ミランダはずっと大人なのに」
「どれどれ」
「きゃー、だ、駄目ー」
ミランダのジャンプスーツのチャックを降ろすと、ブラをつけていない、ちっちゃなおっぱいがのぞいた。
特殊な人々から、歓声が上がった。
「流石、アメリカ。いろいろな人種がそろっているな」
「私は、特殊じゃない!」
「別に、特殊だなんて言ってないぞ」
「言ったようなものよ!」
俺はポカポカ叩かれ、群衆の喝采を浴びた。
そんな俺たちを出迎えてくれたのは、
青鯨豊作、ホエール代表。
ヒポポクラテス、国連総長。
チェコフ、アメリカ合衆国下院議長。
この3人だった。
「いやあ、祐貴君は相変わらず面白い」
青鯨氏が大笑いしていた。
いよいよ、国連総会が始まる。
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