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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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70 修学旅行

 70 修学旅行




「それで、夏季施設と言うか、修学旅行なんてどうだろう?」


 俺は大名旅行に修学旅行をセットで行うことを決め、今は生徒代表であるカオルコの裁定待ちをしていた。


 駄目なら、参加者自由にしてやるか。


「遊んでいる場合なの? 通信プロープの実験は?」


 確かに、それも大事ではあるのだが、その前にやるべきことをやっておかないと落ち着かないのだ。

 サンヤの件もだが、生徒たちがこの世界をきちんと見聞し、思い出を作っておくことも大事だと思う。


 修学旅行も学生時代の思い出としては、大事な部類である。


 折角、誰も見たことのない世界にいるのだから、少しぐらいは知っておかないと、経験がサバイバル方面に限定されては寂しいだろう。


「通信プロープは、カオルコに任せた。俺はちょっと旅行してくるよ」

「ふざけないでちょうだい。私も行くわよ」


 横向いて赤くなって、やっと思春期か?


「費用は全部あなた持ちよ。私たちは何にも持って行かないからね」

「スカートぐらいは持ってこいよな」

「当たり前でしょ、変態」

「別にカオルコに言った訳じゃないぞ」

「どういう意味よ」


 俺のジョークはセンスがないらしいが。


「お前はどこも美しいから、無理して隠す必要はないだろ」

「なっ! 馬鹿なの? 殺されたいの? 死ぬの?」


 カオルコは真っ赤になって、近くに立てかけてあった竹箒を持って、俺を叩こうと追いかけ回してきた。


 俺は魚泥棒のどら猫か。


 2段目に走って逃げ込んで、麦ワラを干していた下級生たちを卑怯にも盾に使い、隙を見て3段目に逃げ、家畜の世話をする下級生を監督しながらイケメンの末っ子と遊んでいるチカコも巻き込んでから、4段目に逃げた。


 4段目の草原で力尽きて寝転がると、すぐにカオルコに見付かった。


「しつこいぞ」

「だ、だってぇ」


 カオルコは周囲を見回して恥ずかしそうに竹箒を投げ捨てると、俺の側に来てブラチョッキとスカートを脱いでマッパになった。


 考えてみれば、もう高校生だろう。


 それは少女と呼んでは伝えきれないような女の魅力を発散していた。


 しかし、何この急展開?


「ユウキ、お願い、ちゃんと私を見て」

「ああ、不本意だが目が離せないよ」

「私、大人になっちゃうわ」

「ああ、綺麗になったな」

「えへへ」


 それは素晴らしいボディラインである。

 チカコと双璧を為す、お嬢様の中のお嬢様。

 まあ、チカコは見た目だけだから、こちらは最高のお嬢様か。

 地球ならお目にかかれないだけでなく、相手にもされないだろうな。


「十分、立派なレディになったな。社交界では話題を独り占めしそうだぞ」

「最初の1曲と最後の1曲は、ユウキと踊るわ」


 パーティーでのことだろう。

 ホエールでは、第1夫人の務めであるらしい。

 真面目なプロポーズである。


「戻ったらヨリは軍務、ミヤビは研究者としてとても忙しくなるわ。ミサコは家庭内を守るのは有能だけど、サクラコたちと家事や育児を受け持つ方が向いてるのよ。だから、政治的駆け引きや外交交渉は私がユウキの隣で受け持つしかないでしょ」

「……」

「いい加減に認めなさい。私の事欲しいでしょ」

「俺はただの農民だぞ」

「いつか人類で一番の豪農になるのよ。この星の代表としても責務があるでしょ? 彼等が何者であるにしてもね」

 

 彼等とは、現地人のことである。

 果たして地球外生命体だろうか?

 それとも人類だろうか?

 どちらにしても、現地にとっては厄介なことになるだろう。何しろ人類は、格付けや順番が大好きなのだ。

 劣等民族とか傍迷惑なことを言い出すに決まっている。

 美人で従順なのは、こっちの方が上だろうけど。


 カオルコは裸のまま俺に跨ってきた。


「ギュッとして!」

「う、ううん」


 カオルコは赤くなりながらも冷静である。

 彼女は何でも真面目にするのだ。

 照れ隠しかもしれなかったが。


「でも、人類の元に帰り着けなければ、絵空事になりそうだぞ。絵に描いた餅そのものだ」

「帰れるわ。あなたはどんなときでも思い通りにしてしまう。いつか、人類の貿易船がこの星にやってくるわ。あなたはその時にエリダヌス代表とホエール最大の資産家として、あらゆる交渉をまとめないといけないのよ。あなたにはその責任があるの」

「ピンと来ないんだが」

「だからこそ、私が必要なんでしょ」


 カオルコはそのまま被さってキスして来た。


 エリダヌス代表かあ。


 確かに人類の法律では、最初に発見し定住した俺にエリダヌスの開発と交易をさばく権利がある。

 スポンサーが祖父さんだけだからでもある。

 祖父さんはホエールの母体になった企業体の出資でホエールを開発したが、俺は言うなれば自前で、ここまで来てしまったのだ。

 所謂、惑星開発がファミリービジネスでなされている。

 惑星一つが個人の私有地になるなど、馬鹿馬鹿しくて誰も考えてなかったけれど。

 そんなことを考えながらカオルコとキスできる余裕が今の俺にはあった。

 右手で背中を撫で、左手でお尻の上の方を触る。

 怒られなかった。

 もう少し下を触る。


「本当は恋愛でも第1夫人になりたかったわ」


 カオルコは俺に抱きついたままそんなことを言った。

 ちょっと、上の方に戻してしまった。


「でも、ユウキは私の事、本当は好きでしょ」

「何とも言えんな」

「何よ、それ!」

「だってさあ」

「きゃあああ」


 カオルコは全裸のまま、3段目の方に逃げ出していた。

 脱いだスカートなどはちゃんと持っていった。

 冷静である。

 何故か竹箒まで持っていった。

 非常に冷静である。


 いつの間にか俺たちのまわりには、スカートを脱ぎ始めた下級生が30人も集まっていたのだった。

 全生徒のお手本であるカオルコは、こんなことのお手本にはなりたくなかったのだと思われた。


 何故か、周囲に巻き込まれて混乱しているチカコも混ざっていた。


 おいチカコ、涙目でスカートを脱ぐなよ!

 跨がろうとするな!




 大名旅行と修学旅行は合同で行われることになった。

 行列の先頭はハインナの運転するカートで、俺にミヤビとミサコ、サクラコとアキが乗り込んだ。

 カオルコは生徒の代表で後ろの馬車群であり、ヨリは警備で最後尾だった。


 クラたち侍女もその後ろに続く馬車で荷物の管理をしている。


 その後ろに、タルト村の幹部と家族が幌馬車で5台、その後ろには、カマウに頼んだリヤカーの荷車隊が30台は続いている。

 馬車はイケメン2世が指揮していて、リヤカーは人力である。


 豪華である。


 ラシ村で贅沢なお昼を食べてからラシを同行させ、カリモシ村で1泊してカリモシを同行させた。


 二日目の昼に、サンヤ橋でサンヤの出迎えを受けた。

 簡単な昼食と休憩があり、その後は徒歩で山登りをする。

 安全だが、周辺にはサンヤ兵が見回っている。

 イケメン2世は鹿モドキたちを指揮して先に荷物を運んでくれている。

 彼等はこの後サンヤ牧場に行って、歓待を受ける手はずだった。帰る時まで遊んでくるらしい。


 俺はお腹の大きいナナにしがみつかれて、それを介助するサラサにもしがみつかれて山登りをしていた。

 ミヤビたちは修学旅行なので生徒と合流している。

 懐かしい白糸の滝で涼んでから、七湖へと向かった。

 七湖を眺望できる高台にでた。


「うわあ、凄い」

「綺麗ね」


 ナナとサラサは、美しい湖沼地帯に歓声を上げた。

 関係ないが、彼女たちは相変わらず全裸である。

 領内の衣料品を供給している会社の代表ふたりだったが、どうにも古い因習が抜けきれていないようだった。

 出逢った頃と同じ姿をしている。

 いや、姿はあの頃とは違っている。

 美しくなり、人妻の色気も半端ではない。

 しかし、この何でもして構わない感は、俺の古い因習には毒でしかなかった。

 お陰で大変だった。

 観光地で見るところが増えてしまうのだ。


 そこから30分ほど歩くと木造2階建てのレイクサイドホテルがあった。

 迎賓館と比べても5倍ぐらいの建物で、この世界では最大の建築物になるだろう。

 特に、1階の天井が高く、高級感が良く出ている。

 八さん熊さんがいたとはいえ、父ジャケと弟子たちが頑張った自信作のようだった。


 父ジャケが出迎えてくれ、早速ホテル内を案内してくれた。


 ホテルは中央にサービスおよび従業員の設備が集中していて、左右に西棟と東棟が三角形を形成するように作られ、大広間が三角の中央部にあり、中央棟で、すべてが繋がっていた。。

 2階は主に宿泊客の部屋であり、ここからの眺めはそれぞれが趣が違っていた。


 特に西棟からは例の中国の観光地のような美しい湖沼地帯が眺められ、生徒たちは感激していた。

 カオルコに部屋の割り当てを任せて、クラたちと荷物の様子を見に行った。


 サンヤがロンを連れて来た。

 ここにいる間は、サンヤとロンの世話になる。


「ロン、今回の滞在費として小麦を30石、米を20石、メープル酒を20樽、ワインを20樽、清酒を10樽、小麦酒を30樽持って来た。味噌や醤油、油や塩も持って来たぞ」


 ロンと第1夫人は大喜びである。

 芋ではなく、米や麦をこれから生産するロン族には、主食はもちろんのこと、塩や味噌、酒も貴重品である。

 保存食は、まだまだこれからだからだ。

 もてなせと言われても、出すものが無いのに、相手側が持って来てくれたのだから助かることだろう。

 ちなみに30石は3万食である。


「サンヤ、ここの管理は今後お前に任せる。七湖に観光産業を興してくれ」


 名前は、『七湖荘』にしよう。


 皮肉屋のサンヤも、これには驚いたようだ。

 自分たちの部族以外の人間が遊びに訪れて来る。

 いや、サンヤの部族外だからこそ遊びに来るのだ。


 それをもてなして、大きな利益が出るだろう。

 いや、利益などは出なくても良いのだ。

 外との交流が大事なのである。


 何しろ、俺とタキやレンとの新婚旅行先みたいなものだし、今日はこうして女神様が遊びに来ている。

 更に、実際に観光地として人を魅了する景色が、ここにはあるのだ。 


 本農として地位をかためた者たちのバカンスになるし、避暑地としても七湖は優れている。

 農閑期には、本農と合力先の従農や小作が我先に押しかけてくるだろう。

 土地はロン族の支配地ぽいが、橋も道路もサンヤの管理だし、サンヤの庇護を受けているのだから協力していくだろう。

 特に従業員として、女たちに仕事ができ、更に高度な仕事が覚えられる。


「人を疑うより、自分が信用される方が解決になるだろ」

「ユウキ様」


 サンヤは泣き笑いして、他の村長たちに背中を叩かれていた。



 夕食は1階の大広間で、修学旅行では定番とも言える『すき焼き』大会になった。


 白滝はないが、ネギはある。

 肉は牛肉ではないが、最高のサンヤ肉に産みたての卵がある。

 焼き豆腐は八さんが今朝作ってくれていた。

 春菊の替わりにニンジンや大根の葉を使ったが、これはサクラコのアイデアで凄く美味かった。


 タルト村の幹部も村長たちも大喜びだった。

 サンヤの肉の良さを褒めちぎっている。

 何故か、ロンが一番食っているが。

 ナルメは新型の土鍋が役に立って嬉しそうだった。

 流石に鉄鍋はまだ出せないのだ。


 サンヤの女たちが中心になって、ロンやギルポンの女たちに、女中だか仲居だかの経験を積ませている。

 すき焼きの指導は、何故かお客のカオルコやサクラコたちが行っていたが。


 関係ないが、従業員は殆どが女たちで、表現はおかしくなるが、露出度の少ない裸エプロン姿だった。

 これでも、スカートがやっと普及し始めた世界では画期的である。

 何しろ、お客である村の幹部の妻や娘たちは全裸率が高いのだった。

 スカートは侍女のステイタスだから、正式な侍女(ここでは俺の侍女のことだ)たちがいるところでは、村人は恐れ多いのか脱いでしまうのだ。

 村長たちの何度かの『お達し』でスカート着用の義務を促したが、スカートは外出着扱いであり、特に屋内では裕福な村でも裸に干し草やワラで過ごしているのが現状である。

 もっとも、この世界の干し草は温かく気持ちの良い寝床であり、男たちの毛皮の万年床よりはずっと清潔で良い匂いがする優れものである。

 しかも、干し草は何処でも誰にでも簡単に手に入るのだった。


 俺は幹部連中に『清酒』を振る舞った。

 夏場だから冷酒であるが、皆、驚いていた。

 米からこんなに美味い酒ができるとは思っていなかったのだろう。

 ニタ村のアカニシキで作ったのは、実はニタにも内緒である。

 どうも米とリンゴは、味で北に負けてしまう。


「俺のワインも美味いが、これも美味い」

「メープル酒も負けていられない」


 酒好きのタルトとカリモシは特に感激しているようだった。

 カマウは下戸らしく、酒は運搬専門らしい。

 サンヤは、今日はとことん村長たちに付き合うことを決めたようだ。


 やがて、宴会がいつも通り進むと、俺のまわりはロンやサンヤの女たちで一杯になってきた。

 特にサンヤは、娘に見えても既婚者ばかりだから危ない。

 ロンの方はみんなまだしゃべれないが、珍しさからか取り巻いてきた。


 しかし、俺の左右はサラサとタバサがしがみついて離れない。

 カズネはタルト村枠ではなく女官枠なので参加していないが、色っぽいサラサと若いタバサのコンボは俺的にかなりきつい。

 クラは、サンヤの女たちに押し出され外側で涙目になっている。

 ナナは妊婦なので、お酒を禁止したからむくれていた。


 突然、タバサが姉のサラサに挑んだ。

 もう自分の方が、おっぱいが大きいと。


 確かに身長はタバサが大きい。

 しかし、サラサも子供を産んだ経験からか引かない。

 すぐに二人のおっぱい勝負になり、俺は二人のおっぱいを揉んで判定しなければならなくなった。


 まだ、2杯しか飲んでいないから、これぐらいの鑑定はできるのだ。

 おっぱい鑑定歴6年の実績は伊達ではない。(うそ)

 今では、侍女のおっぱいを揉まずに、柔らかさを想像できるくらいだ。(勝手に妄想しているだけだが)


 だが、クラが割り込んできて判定が微妙になると、ロンの女やサンヤの女が参戦してきて混沌状態になったが、最後にリリが飛び込んできて優勝した。

 元ズルイ族に多い3美人の家系は、大きく無いのが特徴であるから不利だったのだ。

 ロン族も3美人の家系が多いようだった。

 惑星最大級のナナは『妊娠中は卑怯だ』と言われて参戦できず、ずっとそっぽを向いていじけていた。

 どうも、ナナとサラサは何時までも娘意識が高いように見えた。



 翌日は、綺麗な遠浅の湖で130人が水遊びをした。

 勿論、男は俺しかいない。

 サンヤ兵も流石に女神様を覗いたりしない。

 観光地としてのビジョンを持ったサンヤも、信用を失いたくないだろう。

 ロン族と合同で女たちが世話してくれている。

 大広間での夕食の時以外は、男たちとは顔を合わせないスケジュールになっている。

 今日の村長たちは、ロンの水田を視察に行っている。


 裸の女神たちは、昔の臨海学校の時のような子供体型ではなかった。

 マニア向けではなく、男全般向けになっている。

 ホエールでも、地球でも女神になれそうである。

 10人委員会の最上級生以外でも、十分に女らしくなってしまった。


「まさしく、男の夢ってところね」


 カオルコが隣に来た。


「現実にはあり得ない光景だよなあ」

「羞恥心を忘れてしまったかも知れないわね」

「でも、はしたない感じはしないぞ」

「まあ、一応男の目があるからよ」

「一応って、俺は身内みたいなものか」

「全員が受け入れてしまったのよ」

「受け入れた?」

「ええ、全員があなたを」

「それはあり得ないだろう」

「ええ、もう一つの非現実。この前のアンケートでユウキを望まなかったのは、チカコだけになったわ。あの子は例外だから、100%と言っても良いでしょう」


 130人いて、誰も拒まない?

 そんなことがあり得るのか?


「選択肢が戻れば、夢になるんだろうな」

「そうだと良いけれど、多分全員が初恋の相手はユウキだったと言うでしょうね」

「青春の思い出か」

「こんな経験ができるなんて、誰も思っていなかったでしょう。お嬢様に経験できることなんて、たかが知れているもの。ピアノ、バイオリン、琴、ダンス、パーティーに上流の男たちとの顔合わせ、ドレスにお遊びのスポーツにお茶やお花。でも、命がけのサバイバルなんてないわ。命がけの恋も本当の命はかかってない」

「だが、俺たちは命がけで、そんな現実に帰る」

「そうね。でも、夢の続きが見たくなると思うわ」

「どういう意味だよ」

「覚えておいてね。女が裸を見せてもいいと思う相手は、常にこの世にひとりだけなの」


 カオルコは立ち上がると、男の夢のような見事なお尻を見せつけながら、皆の所へ戻っていった。

 修学旅行中なので、妻ですら性的な接触は禁止である。

 しかし、裸でいることが、本当は十分に性的な接触ではないだろうか?


 現地人は人妻ですら拒まない。

 女神も誰も拒まない。


 これは夢だ。

 夢ならば現実に戻らなくてはならない。


 俺はチカコを見つけておっぱいを揉み、殴られ、罵られ、怯えられ、拒絶されて、何故か気持ちが良かった。


 翌日は七湖見学ハイキングを行い、その翌日は雨だったので、屋内での研究発表会を行った。

 農業に関するものか、料理や食料の保存、加工、商品化関するものが多く、この星の未来に関係する研究となった。


 夜には、クラス別に出し物を披露した。

 コント、合唱、歌劇、漫才、手品などなど。

 観客も、世話役で仕事をしている侍女と一部のお手伝いの女を除けば、自分たちだけだ。


 そして、最後に、ルミコが脚本を手がけた劇で、9人もジュリエットがいるロミオ役を俺がやった。


 終盤の山場で、敵役のビンボーリオという金貸し役のチカコに、ジュリエットたちはみんな連れ去られた。


 処女をカタに借金があったらしい。


 だが、判事役のタケコが『処女だけを連れて行け』と裁定を下し、ジュリエットたちはみんな処女ではないと申告した。


 その後は何故かベッドシーンで、誰も処女ではないはずなので恥じらったら駄目という罰ゲーム的展開があり、ジュリエットたちは俺の前で裸になり、両脚を広げるという苦行をこなさなければならなかった。


『これ、お芝居だよね』


 ミヤビはウインク付きで広げた。

 ヨリはちょっとじらしてきた。

 ミサコは初々しくて、処女のようだった。

 アキは真っ赤な顔で涙目だった。

 リンは何度か観客の下級生にNGを出されて、最後は見事な180度開脚を見せた。

 カナはいつもは平気なのに顔を両手で隠して広げた。

 カオルコは真剣な顔をして広げたが、脚が震えていた。

 ルミコはニヤリとして広げてみせた。


 サクラコがかなり危なかったが、最後に何とかこなし、下級生たちから盛大な拍手を貰っていた。

 これで、9人全員が処女ではないことが証明された。


 哀れ、ビンボーリオは破産して、島流しにされて魔法使いのカレンに出会って、処女をカタにして弟子になったという。

 チカコは何故かカレンに脚を広げて見せたが、処女認定されていた。


 一体、何の劇だったんだ?


 その夜は眠れそうもなかった。

 何度も寝返りして唸っていると、クラとロマが起きてきて開脚した。

 俺は二人を説得して寝かすと、3時間もかけてデカい湖をひとつ泳ぎ切った。



 タルトたちは3泊の間、ずっと夜は『すき焼き』と『清酒』だったらしい。

 まったく、呆れた連中だが、狩猟民時代に鍛えられた胃袋は健在と言うことだろう。


「流石に年には勝てない」


 カリモシが胸焼けしているようなので、豆腐と大根で味噌田楽を作ってやり、キュウリとナスのぬか漬けでお茶漬けを食べさせた。


 それを、サンヤとギルポンが大喜びで新メニューにしていた。

 お茶が超高級品なのだから、お茶漬けがあるわけないのだろう。

 幸いギルポンは、お茶の産地だから手に入る。

 米とぬかは、そのうちにロンが作り出すだろう。

 ぬかは飼料にもなるので、今の所はニタからの輸入になる。大根もだ。

 豆腐は、今回覚えたのを切磋琢磨して貰うしかない。


 そう言えば、おからも食べられるし、飼料にもなるな。


 最後にサンヤは屈託のない顔をしていたので、未来に希望が持てたのだろう。

 女神たちから教えて貰った湖の鮭、多分マスの仲間が閉じ込められて淡水に適応したのだと思うが、それの調理法を女たちに研究させると言っていた。

 マリブに牧場主を譲りそうな感じだ。

 多分、専従の支配人が必要になるから、そうなるつもりなのだろう。


 カマウが全国? に、このホテル『七湖荘』の宣伝をすると意気込んでいるので、すぐに客は来るだろう。



 修学旅行生たちは、帰りの馬車で殆どが寝ていた。

 タルトたちは4日酔いとかで、馬車ですらつらそうだった。


 だが、修学旅行とサンヤの苦悩を解消できたから、大成功だったと思う。


 ただ、クラたち侍女が馬車の中で、開脚を見せつけるのが困りものだった。

 この世界には、まだ羞恥心は育たないのだろうか。



「羞恥心? ある」


 ドウは即答した。


「だが、侍女たちは平気だぞ」

「これ?」


 事務机の上で、ドウが見事に開脚する。

 応接セットの上で、俺は飛び上がった。


「おい!」

「結構恥ずかしい」

「おい!」

「ちゃんと見る。恥ずかしいから」


 全然恥ずかしいって態度じゃ、いや、ドウの顔が赤い。


「恥ずかしいのならするなよ」

「領主様に見て欲しい」

「何故だ」

「喜ぶ?」

「心臓に悪いからな」

「ドキドキ?」

「とりあえず閉じろ。話しづらい」

「嬉しい?」

「はしたないぞ」

「触る?」

「触らないからな」

「へたれ?」

「ち、違うぞ」

「良い情報。侍女辞書に追加する」

「追加するな。禁止しろ!」

「大丈夫。二人きりの時以外は禁止にする」

「大丈夫じゃないぞ」

「人前でしろと?」


 ドウは涙目になっている。


「違う!」

「ならいい」

「良くない!」

「侍女は領主様が喜ぶなら何でもする」

「仕事をしろ!」


 その次の日には、キンとギンとススの、ゲリラ的開脚があった。

 俺はできるだけラーマの部屋にいることにした。

 ここなら、いくら侍女でもふしだらなまねはできないからだ。

 祐馬やユキやランと遊んで気持ちが和んだ。

 サンヤの娘たちも溶け込んでいる。

 いつの間にかニタの長男の娘が混ざっていた。祐馬より1歳ちかく年上らしい。

 母親が5人もいて、更に世話に来るものも多いから、みんな幸せそうだった。


 祐馬は、何故か弟が生まれることを望んでいた。


「男同士の遊びがしたいそうです。チャンバラとか相撲とか」


 レンが、そう教えてくれた。


「3歳になったら、いやでも棒術の稽古を始めるのに、困ったもんだ」


 先日から、ヨリママが教えているが、あれでは甘やかしているとしか思えなかった。


 妊婦の妻を5人と、子供たちも連れて2段目の畑に行き、スイカの収穫をした。

 妊婦はある程度の運動をしないと身体に悪いらしい。

 祐馬が散々スイカ割りをして、飽きた頃に10人委員会が来て、一緒にスイカを食べた。

 祐馬はサンヤの娘たちにスイカの種を取ってやっていて、カオルコたちにからかわれていた。


「祐馬ちゃんのお嫁さん?」


 そう尋ねられると、祐馬は暫く悩んでから、


「ヨリママがお嫁さん」


 と、ヨリに抱きついた。

 ヨリは勿論、グシャグシャになって喜んでいた。


「二人目のお嫁さんは?」

「うーん、サクラママ」

「じゃあ、3人目は?」

「うーんとね、チカコにする」


 チカコは食べかけのスイカを持ったままフリーズし、他の連中も驚きを隠せなかった。


「父親と趣味が同じようね」


 ミヤビが後ろから思いっきりつねってきた。

 ラーマがコロコロと笑っていた。

 10人委員会のメンバーは納得がいかず、更に質問を繰り出していた。


 4人目、アン。

 5人目、アキ。

 6人目、クラ。

 7人目、ギン。

 8人目、タバサ。

 9人目、キヌ。

 10人目に悩んだ末にミサコが入り、それでもミサコは有頂天になっていた。


 カオルコは意地になっていたが、自分が選ばれないのでがっくり来ていた。

 カナやリンも留守番組で祐馬と随分遊んでいたので寂しそうだった。


「ヨリ様は特別ですが、ユウキの妻は候補に入っていないんですよ」


 タキがそう解説すると、カオルコたちは喜び、サクラコとアキは涙目になっていた。

 ミサコは混乱して、どうコメントすればよいのかわからないようだった。


 帰りがけに、チカコはみんなが聞いていないところで祐馬に話しかけていた。


「私はお父さんの、奥さん…… だから祐馬とは結婚できないの」


 幼児相手に真剣に説明していたが、祐馬には良くわからないようだった。

 祐馬はヨリのところに走って行ってしまった。

 チカコは嫌われたのかと心配しているようだった。


 しかし、俺は聞こえなかったことにした。



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