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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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63 一盗二卑

 63 一盗二卑




 通信プロープは、半年待っても何の成果ももたらしてくれない様子だった。

 時期をずらして3機送り出したのだが、ゲートの向こう側からは帰ってこなかったので、通信不能なのか、ベテルギウスで焼けてしまったのか、故障なのか、何にせよ、何もわからなかった。

 それとも、まだ知らない、不思議空間とかに行ってしまったのだろうか。

 まあ、何でもあり得るし、何が起きても不思議ではないだろう。


 秋の収穫、祐馬の誕生日、鮭の遡上、そして納税の儀。

 これらの一番忙しい日々を終えると、長く使える時間がようやくできる。

 しかし、また1年が過ぎてしまったという、焦燥感はある。


「オペレッタ、本当に大丈夫なのか」

「基本的に太陽光、レーザーより安全」

「しかし、向こう側に誰かがいたりしたらさ」

「ベテルギウスを乗り切れるなら、これくらいはそよ風」


 今、オペレッタ本船は、衛星軌道から離れて太陽の光を集めようとしている。

 ゲートは、細長く繋がった物質でも飲み込んでしまった。

 探査ワイヤーで何回か実験したので間違いない。

 少なくとも数キロ単位に延ばしても、飲み込まれてしまうのである。


 そこで、太陽光を集めてゲートを通してみることにした。

 ゲート自体は何も起きないだろうと言うのが殆ど全員の見解だったが、活性化したり、大きくなったり、消滅したりと、何が起きてもおかしくないので、一番惑星から遠いところで実験することにしたのだ。


 オペレッタは樹脂金ナノプログラムを変更して、でっかいおっぱいを、でかいパラボラ状態に変えている。

 直径30キロ。

 宇宙空間では小さく感じるが、人類の構造物としてはかなりでかい。

 面積は東京の23区と同じくらいだ。


 それが太陽光を集めてゲートを照射する。

 それでも安全なのか?


 パラボラ表面のなめらかさを変化させると、照射角度が変わり、ある意味、オンオフができるようになるので、モールス信号のように情報を送れる。

 ナノプログラムで凝集光による温度変化を利用して、パラボラ表面のなめらかさを変えるのである。


 俺は何か不測の事態の時のために、二人のオペレッタの間の空間に探査艇で浮かんでいる。

 通信が、惑星の影では確認できないからだ。

 ちなみに今は、関東平野では真夜中である。


 通信内容はあらかじめ決めていて、


 ①救助を請う

 ②こちらの場所

 ③人数


 だけである。


 政治的・経済的問題を抱えているかも知れないので、こちらの名前は伏せておく。


「照射開始」

「照射開始を確認」

「ゲート通過」

「ゲート通過を確認。異常なし」


 オンオフによりモールス信号ができあがる。

 長短の照射で2秒間と1秒間になっている。

 人類なら気が付くだろう。

 太陽光なので、可視光線だった。

 きっと発光信号に見えるだろう。

 照射と照射の間にオペレッタが光り輝く。

 凝集光が拡散光に変わるからだ。

 運が良ければ、火星軌道ぐらいの距離が離れていても十分に気付くだろう。


「ミッション終了」

「ミッション終了を確認。どうだ何か変わったことないか」

「何も」

「そうか、ゲートは見えるのか」

「見えない。でも位置は把握」


 それから5日間、衛星軌道にとどまったが、何も収獲はなかった。

 向こう側には、誰もいないのだろう。

 それともベテルギウスなのか。



 納税後の人事で、代官はカズネに代わった。


 キンは自ら銀行の頭取に就任し、専従侍女5人と侍女5人、見習い6人を連れて、銀行に住み込んでしまった。


 カズネは侍女ではなかったので、侍女筆頭はギンになったが、ギンは農地開発および徴税官となり、専従の部下5人に見習いを5人連れて迎賓館脇に税務署を建てて住み込んでしまった。


 ドウは法律、教育、記録を管理していたが、事務所を税務署の隣に建てて公文書館とした。

 勿論、専従を5人と右筆を3人連れての住み込みである。


 ラーマとタキとレンは政治に興味などなく、今更『そろばん』を覚えて仕事に復帰するなら、領内の畑で働きたいと言い出して、子育てしながら農作業するという、タルトやコラノの夫人たちのような生活を始めてしまった。

 二人目を考えているのだろう。

 イリスも妻兼妻のお世話係を辞める気はないようだった。


 子供たち3人は順調に育って、祐馬は最近立って歩く事も覚えたので、妻たちはお守りが大変になっている。


 ユウキ邸も2棟目を増築し、旧玄関は新館への渡り廊下になり、手前にできた新邸には執務室や会議室が多くなった。


 新邸を合わせてイリスが管理し、サラスも領内の食糧管理から離れ、家族や客に飲食を提供するだけですむようになった。

 領地内外は、銀行でキンがやってくれる。


 それで事実上、領地の侍女筆頭はススだった。

 ススはリリと共に侍女教育担当官となり、迎賓館で座学を行い、領地の田畑で農業の実践教育を行った。


 だが、夜は様子が変わってしまうのだった。


「私は週一で我慢しますね」(ラーマ)

「タキもそれで構いません」(タキ)

「では、私もそうなりますね」(レン)

「自分はずっと週一です」(ヨリ)

「できれば、私も」(サラス)

「私は週2ね」(ミヤビ)

「ミヤビ様、それは困ります」(イリス)

「そうよ、私の順番がないじゃない」(ミサコ)

「私も入ります」(キン)

「私たちだってこれからなのに……」(ギン、ドウ)

「これからは私も入ります」(リリ)

「困りましたね。私はずっと待っているのに」(カズネ)

「ススも、ススも、時々入りたいです」(スス)

「これでは2週に一回になってしまいます」(イリス)

「ラーマは困ります。すぐに次を産みたいです」

「タキだってすぐに産みますよ」

「次はもっと上手く作りましょう」(レン)

「この際、処女は遠慮してもらったら?」

「ミヤビ様、ひどいです」(キン)

「処女だからこそ、必要なのです」(ギン)

「でも、添い寝だけなんだから、例えば二人とか三人一緒でも構わないんじゃないの」(ミヤビ)

「いいえ、処女でも添い寝だけじゃありま……」(スス)

「ミヤビ様こそ、子供を産むつもりがないなら遠慮しても良いのでは……」(ギン)

「私、最近父にまだかって聞かれて」(カズネ)

「ああ、うちもそう」(リリ)


「何だか、皆様凄いです」


 クラが俺の隣で赤い顔して寄り添っている。

 腕を取るとかは、まだ恥ずかしいらしい。

 勿論、キスもあれっきりしていない。

 ただ、ナミとナリと一緒に侍女になり、一緒に俺付きになったから、風呂に入ったりはする。

 下半身洗いは恥ずかしくて、まだできないらしい。

 ナミがススの替わりに洗うようになった。

 ナリも時々交代するが、この二人はまだ子供で女になっていない。

 クラの方が年上なので尋ねてみたら『内緒です』と言って教えてくれないから、多分もう女になったのだろう。


 俺がクラを見てると、クラは恥ずかしそうに目を伏せ、そっと見上げてきては、また伏せてしまう。


「こら、そこのバカップル! これ以上順番を増やさないこと。わかった?」

「へいへい」


 俺はクラの手を引いて、お風呂に向かった。

 ナミとナリが戸口で待っていた。

 偉いか怖いか(その両方か)の女の集まりには、近寄りたくなかったのだろう。


「これ以上増やしたら、ちょん切るわよ」


 ミヤビの恐ろしい声が、追いかけてきた。



 ところが、翌週には順番で悩むことはなくなってしまった。

 オペレッタが、赤城山のプラズマエンジンが完成したとミヤビに伝えたからだ。

 俺たちは、再び赤城山の住人なることが決定した。


 プラズマエンジンは、リーナさんが研究開発し、ミヤビが設計したナノプログラム製で、半年かけて形成された。

 これで在庫のエンジン用補修部品は殆どなくなってしまっただろう。


 赤城山を留守している間も、発電機とソーラーでずっと電気は流し続けていたのだ。

 3日に一度は、発電用水槽を満杯にする仕事があったが、カリモシ村に頼んであった。

 畑も風呂もあるのだから、喜んで協力してくれたのだ。

 きっと、トレインの内装も骨格はできあがっているだろう。

 制御部が複雑なので、もう少しかかるという見積もりだったが、以外と早くできあがった。


 再びの引っ越しだが、移住組の人選で難しいのは、侍女を連れて行くかどうかだけだ。

 ススは責任者になっているので、連れて行きたいが難しい。

 クラとナミとナリは、きっとミヤビが却下するだろう。

 最近の俺たちのラブラブ状態は秒読みに入っているとか言われているからだ。

 まあ、確かにクラとはべったりだし、ナミとナリはまだ女になってはいないが、長年の部族の習慣から、女になれば俺に抱かれるものだと思っている。

 そのために送り出されてきたのだから、まったくぶれてない。


 だが、クラ以外は料理専門ではないから、結局カリモシ村の夫人たちの世話になりそうだ。

 それなら前回と同じように、ミヤビとミサコとヨリだけ連れて行っても良いのではないかとも思うが、多分人手はもっと必要になり、技術班全員を連れて行けば、サクラコ班も必要となる。

 飛行試験ともなれば、一人でも多くの目で確認した方が安全である。


 ベッドで悩んでいると、イリスがサブルームから現れた。

 最近は、隣にイリスが待機している方が喜ばれる。

 お茶や冷たいもの、ワインなども用意してくれるからだ。

 途中で、夜食を食べる猛者もいる。

 誰だかは言わない。


「ミヤビ様がいらっしゃいました」


 一拍おいて、チュ。


 すぐにサブルームに退く。

 最近、イリスのこのワザがひどく効く。

 最初は焼き餅か何かだと思っていたのだが、何となく背徳的で、悪いことをしているかのようなドキドキ感があって、興奮するのだ。


 是非、男友達にも勧めたいが、殴られるからやめておこう。

 勿論、女性陣にも内緒だ。

 お陰でミヤビにも大変喜んでもらえた。


「15で、慣れているって少し嫌かも」

「処女のままが良かったのか?」

「ううん、喜びを知らないままも勿体ないし、片思いみたいに悶々として過ごすのもつらいわね」

「贅沢な悩みか」

「あんたに言われたくないわ。でも、そうなのよ。下級生たちを見ていると可哀想にも見えるし、羨ましくもあるわ」

「男は経験者の方が崇拝されるけどな。童貞だというのは恥ずかしい気がする」

「女は、処女の方が相手に選ばれやすいんでしょ。そんなに気持ちいいの?」

「別の意味で気持ちいいんだろうなあ。征服欲とか、全部自分のものだとか、そんな感じだな」

「じゃあ、本当の意味で気持ちいいわけじゃないの?」

「それは経験者の方が上手だからな。反応だって違うし」

「今の私の方が気持ちいいの?」

「そう言うことだ」

「じゃ、何故、マンネリとか飽きるって起きるのよ」

「それは何年も連れ添った夫婦とかじゃないとわからないよ。若いうちは精力もあるし」


「でも、やっぱり男は処女が好きよね」


「若い女が好きって事が混同されているんだと思う。生物学的には若い方が安全に子供を産めるとか、そんな所だろう。母体の保護という説もある」

「何、それ?」

「マウスの実験でオスにメスのマウスを与えて飽きるまでやらせる」

「嫌な実験ね」

「オスがしなくなったら、別のメスをいれる。するとまた飽きるまでやる」

「家畜の種付けで、時々起こるわね。何度か繁殖した組み合わせだと、オスが種付けをしなくなるわ。贅沢な奴と思ってたけど」

「メスに対して、身体をこわすほど子供を産ませるのが嫌だというオスの本能があって、それが母体の保護説の源らしい」

「でも、当て馬というのがあるじゃない」

「それだ!」


 そこで、イリスが紅茶を持って来てくれた。

 長くなるようなら、寝るという意思表示だ。

 二人で、イリスにお礼と、お休みの挨拶をして寝てもらった。


「ちょっと恥ずかしかったわ。それで、何がそれなの」

「実は、俗説だと思うが、『一盗二卑』というのがあって、男が興奮する順と言われている」


「まったく、そう言う話だけは博識ねえ」


 実は、それほど詳しくはない。


「盗は盗む、つまり人妻で、卑は卑しい、つまり下女とか使用人、大昔なら奴隷だな。ついでに三妾四妓五妻という。妾、娼婦、最後に妻なんだよ」

「じゃあ何、私が誰かに嫁いで、あんたと浮気すれば凄く興奮するというの!」

「どうかな、人妻のミヤビが想像できない」

「ええ、全部あんたのものよ。ああ、これがいけないのね。実は私、子ジャケの第3夫人なの、領主様とは不倫はできません。諦めて下さいまし、およよ」

「あはは、それこそ想像できないよ」

「ナナおっぱい!」


「うっ」


「うわあ、凄い反応! あんたひょっとして?」

「違うぞ、ビックリしただけだ」

「でも、さっきの説だと、そうなんでしょ」

「いや、俺が言いたかったのは、男が興奮する相手の中に処女が含まれていないって事なんだ。強いて言えば卑が処女という事かも知れないけど、それでも処女が一番なら一初とかになってると思う」

「じゃあ、私で興奮する男が一杯いるってこと?」

「この世界は最初からお手つきが上だからなあ。しかも女神枠だし」

「ナナおっぱい!」

「やめてくれー」


「で、やっぱり、あんたは処女のリリより人妻のナナの方が興奮すると」

「いや、だから俗説だよ」

「内緒にしてあげるから、本当の事をいいなさい。ナナとリリならどっち?」

「どっちも、ダメだからね」

「カズネと妊婦のサラサならどっち?」


 ズキリ。拙いぞ。


「へえ、そうなんだ」

「何が、そうなんだよ」

「あんた、身体は結構正直なのね」

「違うからな」

「ユウキ様、サラサも経験したいです」

「うう、さ、サラサはそんなこと言わないよ」

「ユウキ様ぁ、サラサを抱いてくださいまし」

「擦るなよ、ミヤビ。狡いぞ」


 その後、ミヤビともう一回になったが、決してサラサのせいではない。

 せいではないが、翌日からナナとサラサに顔を合わせづらくなった。



 1月2日は、相撲フェスタの開催日だった。

 領民たちは祐馬2年と言っている。

 祐馬が生まれた年を0年(元年)、去年1歳になった年を1年としている。

 今日は右筆が作った今年の農業カレンダーを村長たちに配るのが最初だが、それには祐馬2年と書き込んである。


 相撲は午後から各村代表による団体戦である。

 明日は個人戦をするそうだ。


 国技館のまわりには東西南北の観客席があり、北は領主に割り当てられた。

 国技館の西側の広場は、様々な屋台ができていて、碁盤の目になっている。

 仕込み、売り子、客、運送でごった返していて、凄い熱気だ。


 昨日は銀行に、凄い数の人が両替に来ていたという。侍女見習いは全員銀行の手伝いに行かせた。

 今日は、銀行などすべてお休みで、侍女と見習いはただの客である。

 売上に貢献するためでもあるし、休暇もあげたかったからだ。

 今回、領主館は店は出さない。

 幾つか、タルト村に委託販売させるだけだ。


 国技館の東側には両国橋があり、人々やリヤカーがドンドン渡ってくる。

 どうやら、どの村も今日は留守にして詰めかけているようだ。

 売りも買いも、どちらも魅力的なのだろう。


 村長たちが挨拶に来た。


 タルト村、村長タルト。

 カリモシ村、村長カリモシ。

 ラシ村、村長ラシ。

 ニタ村、村長ニタ。

 サンヤ牧場、牧場主サンヤ。

 カマウ村、村長カマウ。

 イタモシ村、村長イタモシ。

 パルタ村、村長パルタ。

 ギルポン村、村長ギルポン。

 ナルメ村、村長ナルメ。

 タマウ族、元族長タマウ。

 スルト族、元族長スルト。

 モリト族、元族長モリト。


 モリトは完全にタルト村の一員になってしまった。

 昔はタルトをライバル視していたが、開発区で散々世話になり、タルト村の豊かさも実感して、村民に加えてもらった方が良いと判断したのだろう。


 結局、スルト族の後継者はタルトになったわけだ。


 スルトが俺を敵視しなければ、もっと早く農業が進んだと思うと少し残念だが、きっと別の問題も発生しただろう。

 タルトが農業を決心して来てくれたのだから、これで良かったのかもしれない。


 俺はラーマ、タキ、レン、サラス、イリスと、膝の上に乗った祐馬とユキやランと共に挨拶を受け、ススにカレンダーを配らせた。


「相撲で優勝した村には、鍬とフネを用意したぞ」


 村長たちから歓声が上がった。

 フネは圧搾機で、ブドウや豆乳を搾るのに便利で、知識があれば油も搾れる。

 金では買えない各村垂涎の機具である。

 メープルを、これで何度か搾ると良質のザラメが作れたりする。


 砂糖というのは、精製することを研ぐとか磨くと言うのではなかっただろうか?


 タルトはうちのを使ってワインを作っているから、特にカリモシやパルタが欲しがるだろう。


 しかし、まあ、各村に気合いが入った。

 村長たちは、ハッパをかけに散っていく。


 ニタが残って、北の小部族を紹介した。


「元ズルイの配下でしたが、今は真面目にやっている3つの部族です。今年は芋畑に成功しました。村を作りたいと申しております」

「ニタ村長に任せる。指導してやってくれ」

「わかりました。春には侍女見習いを出したいと申しております。村長推薦を許したいと思いますが」

「ズルイの配下は、皆侍女にしたと思ったが」

「逃げたり、隠れたり色々いますよ。それが合流してきたのです」


 ああ、ニタもそうだったな。


「わかった。開発費用として4万リナずつ出そう。明日、ニタが一緒に銀行に行ってやってくれるか」

「勿論です。ありがとうございます」


 4人が頭を下げて下がっていった。


「北に新たに3つの村か」

「子供たちが歩けるようになったら、見に行きたいです」

「そうだな。みんなで見に行こうか」


 ラーマもタキもレンもそれぞれの子供を抱いて、その時を想像しているようだった。


「北の部族は美人が多いですし」(キン)

「領主様の好みです」(ギン)

「若いのが好き」(ドウ)

「えっちですし」(サラス)

「困りますー」(スス)


 うるさいぞ、侍女ども。

 いや、サラスは妻か。


 サンヤが、ごっつい男女を連れて来た。


「ユウキ様、ロン族長と第1夫人がご挨拶に伺いましたよ」


 俺はキンを連れて立ち上がり、ロン族長と握手した。


「良く来てくれた。噂はサンヤから聞いている」


 キンが通訳する。

 夫人にも挨拶する。

 夫婦揃って140はあり、特に夫人はこの世界では珍しい大柄で筋肉質である。

 しかし、それでも裸だった。


「ロン族は鴨を沢山持って来ました。販売の許可を頂けますか」

「美味いのか?」

「結構、いけますよ。湖で捕れるのです」

「サンヤの鶏が、売れなくなるんじゃないか」

「うちも仕入れて売れますから、お互いが良くなるかと」


 サンヤがそう言うなら、大丈夫だろう。


「許可しよう」

「ありがとうございます。ついでに米の試験栽培をしたいそうですが」

「農民になるのか?」

「弱いうちに負け続けたのがショックなのでしょう。ごついだけじゃこれからがないと悟ったようですよ。特に米が気に入ったようです。塩も欲しいみたいですし」

「サンヤが指導してくれ、こちらも今は人手が足りない」

「うちはあまり得意じゃないので、安全確認したら、侍女が必要ですが」

「春に見習いを推薦してくれ。一年間指導しよう。サンヤが確認して推薦するんだぞ」

「はい。ではこれは手付けです」


 夫人が後に声をかけた。

 ごつくないが、140の両親に匹敵する少女が現れた。

 母親似の砂色の髪でおっぱいはふくらみ始めたかと言うところだ。

 当然、父親はロンだろう。

 クラが領地で急成長して150のタキに並ぶくらいになった。

 この子がこれから成長するなら、150以上にはなるのではないか。


「名前は、ロォォミャァァです、命名しますか」

「いや、それは拙い。しかし、配置が春まではなあ」

「直属がよろしいかと」

「サンヤ、クラの騒動聞いたな」

「はい。ススから詳しく。それでナルメは陶磁器を手に入れて万々歳とか」

「そのナルメだってサンヤの配下じゃないか」

「いいえ、独立しましたとも」

「そのうちサンヤ勢力で、俺から独立するんじゃないのか」

「いいえ、ユウキ様に逆らったら、私がマリブや兵たちに追放されてしまいます。マリブ族ができてユウキ様の所に挨拶に行くでしょう」

「それにしちゃあ、マリブはサンヤに従順じゃないか」

「私に従順でも、ユウキ様は崇拝ですから。それに私は牧場経営が気に入ってます。平和が一番儲かりますよ」

「飢えなければ攻めてこないか」

「その通りです」

「わかったよ。サンヤを信用しないと安全問題が崩れてしまうからな。だが、今度からはあんまり知恵で攻めないでくれよ」

「気をつけましょう。ススに刺されるのも怖いですし」

「とりあえず、ロンには2万リナ研究費を出す。明日にで銀行に連れて行ってやってくれ」

「承知しました」


「クラ」

「はぁい」

「ロン族のロマだ。お前直属の見習いとしてくれ」


 クラはギョッとしてから、ロマに何かを話しかける。

 暫くゴニョゴニョやってから向き直った。


「お名前を頂きました。お礼を」

「ありが、とうござい、ました」


 侍女たちに、さざ波が走った。

 俺は国技館前で命名していたのだ。


 サンヤの大笑いが響いていた。



 64へ

評価して頂きました。ありがとうございます。

頑張って書いてますが、基本的に馬鹿小説です。

暇つぶし程度で読んで下さい。

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