60 我が儘
60 我が儘
ケースのベルベットに埋まった『50銭貨幣』を取り出して眺めてみた。
デザインは熊さんに丸投げしたもので、裏返すと撓わに実ったモモの実を背景にサクラコが浮き彫りされていた。
「とても綺麗ですね」
「素敵です」
「美しいです」
ススたちが見て褒める。
トレインの外壁によく似た素材の白銅貨による試作品だった。
つや消しにはなってなく、ぴかぴかだった。
直径5センチ、厚みが3ミリの迫力があるコインだった。
本当に良くできている。
土建業は芸術的なセンスも要求されるから、熊さんに任せて良かった。
氷の彫像を見たことがあれば、誰もが納得する『うで』だろう。
次に10銭を取り出す。
50銭よりも少し小さくなっているが、それでも大きめのコインである。
裏返すと、ブドウの房を収穫する美しいヨリの姿が背景に彫ってあった。
ヨリとブドウの関係はよくわからなかったが、これも良い出来である。
直径4センチ、厚みが3ミリ。
縁に刻み目が入っていて、持ったときに違いがわかる工夫もされている。
まさしく職人芸である。
「ヨリ様ですね」
「ヨリ様」
「凄いです」
5銭貨幣は、1銭の消耗度を少なくするために導入した貨幣であり、更に一回り小さくなっている。
直径3・5センチ、厚みが2ミリ。
穴あきや四角も検討したが、シンプルにしようと図柄で勝負することにした。
裏返すと、イケメンとチカコの組み合わせが、少しコミカルな感じで描かれていた。
「驚きました」
「チカコ様です」
「楽しそうです」
意外と受けている。
デザインは熊さんに丸投げしたので、誰がモデルに選ばれるかは俺も知らなかった。
現地人は弾いたからラーマやタキやレンはあり得ない。
勿論、男も弾かれている。
架空の人物も無しにしておいた。
まあ、10人委員会からの人選が順当になる。
ヨリとカオルコ、ミヤビとミサコが入るだろうと思っていた。
別に美しさの順ではないが、指導的立場だからだ。
しかし、もう予想から二人外れてしまった。
最後に1の文字が入った貨幣を取り出す。
一番小さくて、素っ気ない感じがとても良い。直径は3センチで、厚みは2ミリだった。
軽く、使いやすい。
裏返すと麦の穂の中にリーナさんが描かれている。
予想外に、凄い衝撃が来た。
初めてこの星に降り立ったときのリーナさん。
初めて2段目に行って、小麦を見つけたリーナさん。
初めてキスしたリーナさん。
当たり前すぎて存在が希薄になっていたが、ずっとこの星の女神はリーナさんだった。
「領主様、どうされたのですか?」
俺は涙を拭うと、工作船に行き、今では年下に見えるリーナさんを抱きしめてキスして、甘えて、困らせたりした。
最後は仕事にならないと追い出されたが、俺は気分が良かった。
俺は、この通貨の単位を『リナ』に決めた。
八さんが作ったそろばんを見本にして、タルト村の竹細工と木工の職人に量産させた。
ミヤビに試験してもらったが、彼女はそろばんを同時に3つも使っていた。
「一つでも十分に『桁』は取れるだろ?」
「2つは、仮想演算領域みたいなものね」
何のこっちゃ? である。
できあがりを侍女に配り、そろばんができる下級生たちを見つけ出して『そろばん塾』をお願いした。
農作業のない午後には、学校外からも沢山の侍女候補生が習いに来るようになった。
侍女試験のハードルが上がるだろうが、仕方がないと割り切った。
ススたちも、毎日計算問題に取り組んでいる。
八さんと熊さんは四阿の奥に銀行(商品取引所)を建てている。
お金より物資を多く扱うから、かなり大掛かりだったが、やがてはお金だけを扱うようになるだろうから、貯蔵庫の部分は切り離せる。
念のため、金庫室だけは煉瓦造りにした。
銀行の隣は、農機具店ユウマを建設し、隣にはナナ&サラサ本店も建てる。
出資者が今のところ、俺だけだからだ。
今後は目抜き通りに裕福な村の小売店が並んでいくだろうが、権利はお金ではなく許認可だ。
キンが許可を出すが、彼女が賄賂を要求するわけがないから安心である。
貨幣のナノプログラムはミヤビがあっという間に作ってしまったので、ハインナのカートを仕立て、農業用アンドロイドを3体借り出し、ヨリとミヤビとミサコを乗せて赤城山に向かった。
ススたちは泣いて縋ってきたが、勉強しろと言ってキンに預けた。
「どうしてその3人だけなのよ」
「私も、ご一緒できます」
カオルコとサクラコがついて来たがったが、断った。
「理由は、内緒だ」
「何よ、それ」
「ふえぇ」
ミサコは不安そうだったが、ヨリもミヤビも理解しているので、ミサコが忘れているわけはなかった。
ただ、彼女の倫理観とためらいは理解出来るので、側にいるだけで良いと思っていた。
カマウ村によると、都合良くカマウがいた。
小型の4輪リヤカーを預けて、量産するように頼んだ。
高級馬車まで研究しているカマウなら、簡単にコピーできる技術で作っておいた。
この村には独身者も多くいるみたいなので、未亡人にもチャンスはあるかも知れないと、脳内にメモしておく。
相変わらず女神人気は高く、ヨリが立ち上がるとみんな跪いてしまうので、ヨリが一番困っている。
警備する癖がついているだけで崇拝されることに慣れていないのだ。
まあ、慣れるのは難しいけど。
ミヤビは、『知恵の神』として認識され始めている。
「俺が馬鹿だと、いつかは気付かれるだろうな」
「突き抜けた馬鹿は、意外と気付かれないものよ」
「それより、『えっち』で有名なんじゃないですか」
「ふ、普通だからね」
「普通にえっち?」
珍しく、ヨリが悩んでいる。
くそ、貨幣の図柄をおっぱいにすべきだった。
単位もおっぱいで、ヨリが100おっぱい、ミヤビが50おっぱい、サクラコが30おっぱいで、ミサコは10おっぱいだな。
「何を見比べているんです」
「どうせ、ろくでもない思いつきでしょ」
「普通にえっち?」
ラシ村では挨拶だけで済ませ、夕方にカリモシ村に着くと、カリモシから賄いのできる村の夫人を3人ほど借り受けた。
別に侍女である必要はない。
カートに乗せると、女神様とアンドロイドが乗っているので、生きた心地がしないようだったが、すぐに着くから我慢してもらおう。
やがて、懐かしい? 赤城山に戻ってきた。
設備はカリモシが維持してくれているので、すぐに使えた。
早速、風呂と食事の準備に取りかかる。
アンドロイドは見張りに配置した。
夫人の一人は話ができた。
侍女試験に受かる前に第2夫人になってしまったと言っていた。
カリスたちよりお姉さんだったらしい。
ズルイではぎりぎりでした、と苦笑している。
残りの二人は、ヒアリングは大丈夫で、話す方はまだ片言だった。
全員で夕食にした。
夫人たちは恐縮していたが、同じテーブルに着いてもらった。
その方が安心できるし、打ち解けられる。
軽い小麦酒をみんなで飲み、食事が進むと、口調もなめらかになっていった。
女神様は、別に怖くないとわかってきたのだ。
カリモシ村では、もうすぐ風呂が完成だとか、メープルの出来が良いとかの日常会話から、俺のズルイ戦の話になり、ミヤビは色々と質問をして、話を盛り上げた。
考えてみれば、ズルイが攻めて来たことにより侍女が生まれ、農業技術を取得してくれたからこそ、各村を開設することになったのだ。
その後、少女たちが漂着し、タマウの戦士が無謀な事をして経営が成り立たなくなり庇護した結果、畑の手伝いが生まれ、侍女はあこがれの職業になって、定住化を促した。
夫人たちは、女神様のお陰で豊かな生活が送れるようになったと言っているが、ズルイやタマウを嗾したのは、犯罪者のカカである。
そして、カカが陰謀を企んだのは、ラーマに懸想していたからだ。
何と言う皮肉な結果なのだろう。
カカがいなければ、カリモシは有能な部族長として、いまだに狩猟を行ってたかもしれない。
ズルイは北の地で暴れ回り、タマウは東の部族として、今までどおりの生活を送っていたかも知れないのである。
『ラーマみたいな女を『傾国の美女』と言うのよ。美人で男の心をつかみ取り、子供を産んでも更に美しくなり、本人はとても無邪気で悪意もないの』
リーナさんが、いつかそんなことを言ってた。
傾国とは国を傾ける、すなわち国を滅ぼすという事だ。
実際、狩猟民族が滅んだのだから、その通りかもしれないが、こちら側にいるから『建国の美女』とでも言うべきか。
『鮭が食べられないなら、ハマグリを食べればいいのよ』
なんて、ラーマが言うわけないが、確かに彼女に悪いところは一つもない。
良いところはいっぱいあって、抱きしめるとやわらかくて、良い匂いがして……。
「カカは結局、どうなったんですか?」
夫人から、あまりにタイムリーな発言が出た。
ちょっとビックリした。
そうか、ズルイ戦の最後のくだりはカカだよな。
「ああ、ニタ村では一日中空を見ていたそうだが、今はギルポン村でズルイと一緒に、お茶を育てているかも知れない。詳しくは聞いてないんだ」
「農民になれたのなら幸せになれますよ。飢えることはないのですから」
夫人たちは心からそう信じているようだった。
俺も、そう信じたい。
見るからに筋肉崇拝のギルポンが、知性派のサンヤに下っただけでなく、今では紅茶作りをしているのだ。
その後、女6人で風呂に入り、ヨリは髪のカットまでしてあげたようだ。
夫人たちは、一生自慢できると喜んでいた。
ヨリは、ひげ剃りだってできるのだ。
俺の髪のカットは、最近はヨリの仕事になっている。
侍女たちは少しずつできるようになっているが、まだ、俺の方が少女たちには評判がよい。
夫人たちには部屋を用意して休んでもらった。
普段なら、夕暮れにはカリモシ村に帰ってもらうのだが、今日は夕方に借り受けてしまったので、泊まってもらうしかない。
筵の布団に毛布だったが、贅沢なようだった。
普段は、干し草を使っているのだ。
ヨリたち妻には、豪華な布団を用意した。
例のリータの付属品だが、ものは最高級品である。
3つ並べると、何だか大昔の吉原とか妓楼だとかを連想させる雰囲気ではあったが(良く知らない)、3人とも大喜びだった。
「ああ、この感じ久しぶり」
「うちのより高級です」
「ふかふか」
「ところで、するの?」
「し、しないぞ」
「しないの?」
「しない」
「あの、私のせいでしょうか?」
「違う。今日は早く寝ろ」
「ふーん」
ミヤビは、わかっててやっているのだ。
ヨリはもう寝ている。
いや、寝てはいないが寝る体勢に入っている。
俺は自分のベッドに入り、照明を落とした。
いつだったか、3人には妻にすると約束した。
実際は許嫁になるのだろうが、16になるまではと思っていた俺だが、なし崩し的に婚前交渉に及んでしまった。
だが、ミサコは違うのだ。
許嫁は了承。
一夫多妻もホエールでの習慣で了承。
婚前交渉は、多分だが16歳まではキスまでと決めているのだと思う。
ひょっとしたら二十歳とか、親の了解を得るまでとか考えているのかも知れない。
だが、ミヤビとヨリとの関係に気付いて、悩んでいるのだ。
許嫁として、どうしたら良いのかわからないのだろう。
それも、ミヤビやヨリのせいではなく、カオルコとサクラコにも後れをとるのではないかという、非常に少女らしからない、いや少女らしいのか、良くわからない悩み方をしているのだ。
カオルコは単純だ。
第1夫人じゃなきゃいやなのだ。
サクラコは、自分から言い出すことはないから、随分といじましい努力はしているが、俺から誘わない限りは大丈夫なのだ。
例え無人島で二人きりになっても、サクラコから誘ってくることはないと思う。
俺はぐらつくだろうが……
ホエールでは、第3夫人までしか同居できない。
何故だかわからないが、明文化されていないのに、3人までしか正式な妻は持たないことになっている。
4人目以降は普通別宅で暮らしているという。
愛人扱いなのだろう。
しかも、妻は別居すると愛人扱いらしい。
事実上の離婚なのだろう。
公式行事に連れてくることはないし、妻の権利は与えられない。
『イスラム圏は4人だし、キリスト教国は一夫一婦制だから、嫌がらせと慎みで決めたんだと思う』
ミヤビはそんな解説をしていた。
ホエールでは、女性の若返りとか長寿化が進んでいるらしい。
60代の妻でも、まだ30前後の若さである。
平等に愛するには、多少処置を受けても60代、70代の男には、3人以上は厳しいだろう。
『そんな細かいこと言ってたら、あんたは現地人に5人も妻がいるじゃない。人類認定されたら、私は第7夫人かも』
いやはや、言い訳のしようもないのだ、
『気にせず、現地法で無制限で良いのよ。いや、無制限もいやかな。本当なら、もっと気になるのは中学生と子作りしたって事かも、それこそ現地法でないとどうにもねえ』
いや、タキとレンは成人してるからな。
『それこそ初潮が成人の現地法よ。10歳から12歳ぐらいね。タキは14、レンは13と見たわ。キンが14で、サラスが13、イリスは12でススは11ね』
イリスが12! あの優しくて気遣いができるうえ、俺の夜の生活を取り仕切ってくれているイリスが12、イリスが12……
頭の中の、過去のミヤビと会話しながら、俺は眠っていた。(悪夢の中でだろうか)
翌日、4人でトレインに行き、ナノプログラムを3両目の貨物に仕込んだ。
電気を流し続けると外壁が溶けるように崩れ始め、夕方には骨格だけになる。
骨格には、バッテリーやプラズマ発電機が仕込まれていた。
「外壁は30センチから50センチの厚みがあるわね。計算では5000万枚のコインができるわ。1リナ3000万枚で3000万リナ。5リナ1000万枚で5000万リナ。10リナ500万枚で5000万リナ。50リナも500万枚で2億5000万リナ。合計で3億と8000万リナね。1石4000リナだから9万5000石。10万石にまで対応できなかったわねえ」
「今後、10年間は安泰か。駄目ならもう一両つぶすか」
「骨格で今度は100リナ硬貨を作ればいいわ」
「インフレになりそうだな」
「作物の収獲が安定すれば20年は大丈夫でしょう。貨幣経済が浸透すれば逆に貨幣価値の方が上がるかも知れません」
「ミサコは物価が下がると予想するのか」
「食品に付加価値がついたものが上がり出すと、原料は下がるものです。投資家がいない生産者ばかりの世界ですから。今はまだ食糧生産に価値がありますが、安定供給され手に入れやすくなれば、酒や醤油といった加工したものや衣装が値上がり、その後は家や馬車、農機具となります」
「食べるのが暫くは優先と言うことよ」
醤油はまだ領地でしか作れない。
味噌はタルト村でも成功したが、やはり領地の塩を使わないと上手く行かないらしい。
酒は各村で造っているから大丈夫だろう。
タルト村には、既に独自のランビキがあるから、焼酎も提供できる。
「しかし、やはりタルト村が金持ちだな。味噌にワイン、焼酎。ナナ&サラサがなくても売り物がたくさんある」
「その豊かさが暫くは各村の産物を買い支えてくれますよ。メープルや泥炭を一番消費するのはタルト村になるでしょう。そうなれば徐々に他の村から廉価版の味噌やワインが出てきます。それもタルト村用にです」
「なるほど、タルト村をターゲットにすれば良いのか。パルタがワインを作れそうだからな。タルトワインは高級品になるのかな」
「笑ってると、カリモシやニタの米が出てきて、領地の米が売れなくなるわよ。800石も食べきれないんだから」
俺たちは笑いながらドル箱作りを始めた。
1箱に300枚が20列30行、18万枚入る。
300箱近く作らなければならない。
アンドロイドがいるからできるのだ。
翌日から詰め込みと発送を行った。コインにシリアルも入れられたが、敢えてやらなかった。
悪質なもの(偽金)が現れたら考えるが、今からそこまでの心配をしていても仕方がない。
箱詰めは一日30箱作れたが、カマウの手配したリヤカーが毎日20箱しか運べなかった。
運送業を独占することもできないから仕方がない。
途中、ミサコにばれないようにして、ヨリと一回、ミヤビと2回愛し合った。
そんなある日の夕食の時、ミサコがワインを一気飲みして、きれた。
「ユウキさん! これ本当は新婚旅行ですね」
「いいえ、そんなつもりは」
「嘘です、私が妻だから連れて来たはずです!」
「えーと、その、有能だからじゃ駄目でしょうか」
「ダメです!」
ミサコがワインをおかわりした。
「ミサコ、飲み過ぎよ」
「ミヤビは初めての時、ユウキさんと二人っきりだったでしょ」
「!」
「ヨリもでしょ」
「うん」
「なら、何で私だけ二人っきりにしてくれないのよ。狡いわよ。私だって一日ぐらい二人っきりにしてもらったって良いじゃない!」
うわーん。
俺たちは何か勝手に思い込んでいたらしい。
ミサコは、きちんと法律だか親の了解だかが必要なのだと考えていたのだ。
それが彼女の拘りなんだと。
ヨリとミヤビの視線が痛い。
何とかしろと言っている。
確かに、ここで二人に頼るわけにはいかなかった。
俺はひたすら謝り続けて、更にへたれ度を上げていった。
翌日、カリモシを呼びつけて、偉そうに『ヨリとミヤビがカリモシ村を視察するから侍女全員で接待するよう』に言いつけて、カリモシを仰天させ、更に二人からの評価を落とした。
しかし、物理的に仕方がないのだ。
ミサコが二人きりになれれば贅沢は言わないと言っていたし、自分が余所の村に行ったら二人きりではないと主張するのだ。
まさか、宇宙に連れて行くわけにも行かないだろう。
ハインナに二人を守るように頼んで、ヨリとミヤビをカートに乗せ、カリモシを後に乗せて見送った。
「ミサコ様は、見なくて良いのか」
「ああ、俺たちは別の仕事があるんだ」
「ぷっ」
「くくく」
畜生め。次は思いっきり乱れさせてやる。
俺はできもしないことを考えながら、それでも午前中の少しだけは仕事の振りして、カマウのリヤカーの相手をしてから、ミサコ姫と二人っきりで赤城山をハイキングし、お弁当を食べ、栗やメープルを探したり、景色の良いところでキスしたりした。
早めに帰ってきて風呂にすると、ミサコが入ってきた。
小柄で真面目な感じだが、十分に女らしくなっている。
おっぱいが小さめに見えないのは、身体が小柄で細身だからだ。
しかし、お尻は大きめに見える。
「そんなに見られたら恥ずかしいです」
「ごめん、つい見とれっ」
身体を洗いもしないで抱きついて来てキスをせがまれた。
今日一日で上達するわけもないが、一生懸命にするところが可愛かった。
途中からお互いの身体を洗いあった。
ミサコはこういうのが好きなのだ。
ヨリみたいに何でもしてしまうのではなく、ミヤビみたいに甘えて何でもしてもらうのでもなく、二人で一緒にすることが好きなのだろう。
ずっと脚を悪くしていたから、誰かと一緒に何かをすると言うことに憧れでも抱いていたのかも知れない。
それから、二人で夕食を作り、二人で食べて、二人で後片付けをして、どれだけこうしたかったかを話し合い、二人で愛し合って、二人で眠った。
翌日、二人で思いっきり寝坊すると、ヨリとミヤビは既にドル箱作りをしていた。
ミサコが駆け寄り、
「我が儘言って、ごめんなさい」
そう謝ると、3人で笑い出しておしゃべりを始め、何処にも不自然でおかしな所はなかった。
俺も参加してドル箱作りを始めると、ミヤビが寄ってきて囁いた。
「あなた、これでホエールでも死刑だわ」
「な、何でだよ」
「ミサコの母親は判事で、確か専門は未成年の性犯罪だったわ」
「アンドロイドの会社じゃなかったのか」
「それは父親よ。まあ、アンドロイドが殺しに来る確率の方が高いかな?」
「ミヤビ!」
「何よ」
「お前の母親は?」
「学者よ」
「そうか」
「刑法が専門の法律学者だから、謝れば無期懲役ぐらいにする方法を考えてくれるわ。ありがたく思いなさい」
どうせ、謝って、許してもらえればだろ。
61へ