59 貨幣経済
59 貨幣経済
フェスタが終わって時間が出来るようになると、ススたち侍女は以前よりも熱心に勉強するようになった。
俺の身の回りの世話だけでなく、料理もサクラコから熱心に学んでいるし、他の仕事も積極的にお手伝いをするようになった。
言葉も上達し、自信も威厳も身につけ始めると、褐色の三人娘たちは大人っぽくもなり、特に漆黒の豊かな髪が伸び始めて侍女らしくなってきた。
(髪を伸ばすのは、侍女たちにはまだまだ贅沢ではあったが、徐々にヘアケア用品が充実して来ると年長の者たちが伸ばし始めたので、ある意味で地位を表すものになってきている。妻になるための準備とも言われ、脈もないのに伸ばしたりする恥ずかしい見栄っ張りはいない)
ナミは俺の側近として、ギルポン族の誇りとされ賞賛を浴びていた。
髪は右側頭部にクルリと巻いて花を飾っている。
ナリ方は、ギルポン族の手伝いで暮らしているナルメ族の希望になっていた。新たな技術を学んで部族を一段上に引き上げてくれる事を期待されているのだが、ナミと同じ顔と性格をしていて無口で無表情だから、プレッシャーを感じているのかサッパリわからない。
ナルメ族にも特産品を、とか期待されているのは確かである。
髪は左側頭部にクルリと巻いてナミと色違いの花を飾っている。
二人はいつも一緒で、仲の良い双子のようである。
ススに至っては俺の側近の筆頭侍女と言うことで、族長のサンヤやカリモシでさえ『スス様』と頭を下げてくるのだから、身分に見合うだけの実力を身につけようと毎日毎日頑張っている。
フェスタではアイドル扱いだったが、キンのせいで先輩侍女たちを部下として使うことになり、元はキンがいた俺の専属というポジションにいるから、美しい娘でもあるし、俺のお気に入りとしてキンの後継者だと思い込む人は意外と多かった。
未来の侍女筆頭、代官である。
本当に力をつければ、現実にキン、ギン、ドウの次くらいの格になってしまうだろう。俺の側近というのは、そうしたこともあり得るポジションなのである。
一種のエリートコースであるが、今回のは各村長のバランスを考えてのキンの思惑でもあった。
まあ、サクラコに直接料理を教わっている所などを見られているから、キン以上に評価されているかも知れない。
だけど、エリートコース=妻コースではない。
キン、ギン、ドウもそこは長く勘違いしているのだった。
ススの髪は俺の手作りである革製の真っ赤な筒状の髪飾りで左右に纏められている、お下げである。
江戸時代の側用人というのがいかに力があったかを、この3人は実感させるが、本人たちはそれどころではないようだった。
まあ、こんな真面目なところがキンに選ばれた理由なのだろう。
しかし、真面目すぎるのもどうかと思う。
「おい、スス。侍女の仕事はこんな事まで入ってないぞ」
「いいえ、今夜はミヤビ様の『お渡り』があるのです。清潔にしてなかったら、我々の責任です」
実は、風呂で3人に丸洗いされている。
頭をナミに洗われ、上半身をナリに洗われている状態で、ススが下半身を洗い出したのだ。それも念入りに洗ってくる。
シャンプーのせいで目が開けられないが、凄いことをしているのは良くわかる。
ススたちに経験があるわけないが、ヨリとミヤビと何をしているのかぐらいはわかっているのだろう。
今のススは、ナナに初めてあった頃と雰囲気が似ている。
半年足らずで別人のように、おっぱいが成長したのだ。
「ユウキ様がおっぱいよりも白い肌が好きと聞いたときは、何日も泣いて暮らしました」
ナナはそんなことを言っていたが、そんなことはない。
褐色の肌も大好きである。
褐色のおっぱいというのも何と言うか、すべすべで弾力があってとても良いものだ。
「領主様ぁ、かゆいとこないです?」
「ゴホッ、すまんナミ。大丈夫だ」
ナミとナリは少しずつ話すようになってきた。
まだ、侍女試験を受けられるほどではないが、頑張っているのがわかるぐらい進歩している。
3人が、特に変わったのは責任感である。
以前、カリモシが下働きに3人の女を連れて来た。
3人とも未亡人で、夫が不足のこの時代では、なかなか生きるのが難しいらしい。
朝早くに来て、夕方にカリモシ村に着けるように帰るが、それまで雑用をして働き、俺が毎日謝礼を出す。
カマウのリヤカーが泥炭を運んできたり、領地から品物が届いたりと、結構男たちも出入りするので取り次ぎとしても重宝していたのだが、時々俺の風呂に乱入してきて誘惑をしてくるのが困りものだった。
ススはこれを知って、何とカリモシを呼びつけて叱りつけた。
「ラーマ様は指導者になられてから領主様と結ばれたのです。ただ、未亡人であれば良いなどと考えてはなりません」
カリモシは深く考えてなかったとススに謝り、3人を連れて蒼くなって帰って行った。
まあ、神母とか呼ばれているラーマに言いつけられたら大変だと理解したのだろう。
次はちゃんと小作の妻を連れて来た。
いや、人妻の方が問題なんじゃ?
しかし、それ以来ススたちは、俺の風呂の世話までするようになり、ここまでエスカレートしてきたのである。
ススは石けんを洗い流すと、俺の先端部を掴んで鼻でニオイを嗅いで、『大丈夫です』と言うと俺を湯船に入れた。
凄いことをしているのだが、凄いことをしている自覚がないみたいなので、俺は何も言えなかった。
ススの言う通り、夜にはミヤビが来た。
ミヤビは一晩一度で満足だが、満遍なくしたい、とか文句を言っていた。
確かにヨリは何か理由があって週に一日だけしか来ない。
その替わり、一晩に3回とかいう日もある。
しかし、それを満遍なくしたら、俺が保たないだろう。
翌日の風呂は更に念入りだった。
「スス、今夜は誰も来ないからさ」
「いいえ、油断してはなりません。いつ、サクラコ様が来られるかわからないのです」
「いや、そんな気配はないからね」
「いいえ、サクラコ様は週に一回は来られます。ただ、どういうわけか扉の前で立ち止まったまま、入って来ないのです」
「いや、サクラコはそんなタイプじゃないと思うけど」
「最近は、とどまる時間が長くなってきました。もうすぐだと思います」
何がもうすぐなんだ?
「それに、最近はミサコ様も扉の前を窺うようになっています。とどまるようになれば、ミサコ様にも備えなくてはなりません」
いや、俺はススに備える方が正しいと思うんだけど。
それ以上洗われると、ススで一回したことになりそうなんだよ!
6月の危険なゲート大接近をやり過ごして、2期作の2期目に入ってあっという間に夏になった。
そして、領地からハインナのカートに乗って、カオルコとキンがやって来た。
「最高責任者二人が、護衛もつけずに来るなんて」
怒るべきか呆れるべきか。
「大丈夫だったわ」
「何にも危惧すべき点はありません。あれば村長たちに文句が言えました」
俺は頭をガリガリ掻くだけで、何も言えなかった。
確かに敵対する部族はもういない。
だが、頭のおかしな奴だって一人ぐらいは、いや、一人じゃハインナに勝てないだろう。
あいつの棒術は師範代クラスだ。
疲れがない分、誰よりも強い。
大体、カマウのリヤカーは、武装もしないで平野どころか山間部にも出かけているのだ。
襲われたことなどないから、安全なのだろう。
「カオルコ!」
「はい、ミサコ」
「どうしたの? 急用?」
「それがさあ、退屈で……」
カオルコはミサコと別のテーブルに行ってしまった。
こちらはキンが残り、侍女たちに挨拶している。
「スス、女になりましたか」
「いいえ、まだのようです」
キンはススのおっぱいを鷲づかむ。
「もうそろそろでしょう。その時は無理せずお休みするのですよ」
「はい」
本当にそんなんでわかるの?
「ナミは話せるようになりましたか」
「少し、ですが」
「ナリはどうなのですか」
「はい、少しです」
「冬には試験がありますから頑張りなさい」
「はい」
「はい」
「それでは、何か冷たいものを持ってきて」
「はい」
キンは、居住まいを正してから俺に話しだす。
「さて、未亡人の件ですが」
「ああ、ナナとサラサは何か言ってたか」
「やはり適性の問題があるので、半年は修行だそうです」
「それぐらいなら、面倒みれるだろう」
カリモシの未亡人事件があってから、ナナとサラサに未亡人を『お針子』に使ってみてくれと頼んであった。
ナナ&サラサブランドでは、現在冬用の衣装を作成中なので腕の良い女は歓迎している。
「問題は、適性がない場合です」
「料理とか、味噌造りとか、他にも何かあるだろう」
「農民は小作ですら農業をしながら料理も、味噌も、草履も作ってしまうのですよ」
「みんな働き者だからなあ」
農業はエリート集団である。
そこに嫁ぐ者も優秀な者から嫁いでいく。
小作も同じで、皆必死で仕事を覚えようとしている。
男は力があれば開拓に使ってもらえるからまだ良いのだ。
リヤカーを引いたりも出来る。
しかし、定住化を望んだ女たちも、夫がいない未亡人までは想定していなかった。
残る仕事は、雑務や重労働、季節労働ばかりだ。
畑の手伝いも、子供たちが成長してくると子育てしていた母親が復帰し、更に子供たちが労働力になれば失業してしまう勢いである。
何しろここ2年ぐらいの子供の数は史上空前なのだから。
開拓が追いつかないほどである。
乳母も経験豊富でないと雇われないし、保育所は村営で第①夫人たちの仕事というか生き甲斐になっているから下働きくらいしか仕事がない。
メイドなどは村長クラスでないと雇用はなく、それも侍女経験がなければ採用されなかった。
一番は再婚なのだが、男不足でどうしようもない。
カカの部下たちですら、畑仕事を始めたら妻が二人も三人も現れるのだ。
今は豊かになろうとする過渡期で、男にも余裕がない。
畑を持つのが先で、妻ばかりもらってられないのだ。
当然、愛人や風俗などはあり得ない。
「タルトたちに、10人ぐらい妻を持てと言うか」
「それだと、比率で言うなら領主様は200人ぐらい持たないといけませんね」
「無理だからね」
「なら、村長たちにも押しつけられません」
「でも、カリモシなんか族長時代に10人とか妻がいたんだろ」
「年齢構成が違います。10歳から40歳ぐらいに開きがありますから。子供を産み育てる年齢ばかり10人いるわけじゃありません。40にもなれば子供や孫が面倒を見ますよ」
「だからさぁ、男がいないと緊張感がなくなるのよ。最近では、みんな平気でマッパよ」
カオルコの文句が流れて聞こえてくる。
ススが、冷たい緑茶を運んできた。
キンが好むのだろう。
「現地人がスカートを穿きだしたのに、こっちが裸じゃあべこべよね」
「それで、何か対策を持って来たんだろ」
カオルコを気にせず先に進める。
どうせ、後でいやと言うほど聞かされるのだ。
「二つ考えたのですが、一つ目が実現すればすべて解決するかも知れません」
「何だ」
「貨幣けいざ」
「却下だ!」
「どうしてです」
「例えばだ、小麦1石200キロある。一人じゃ運べないだろ」
俺は小声で説明する。
「男が10人ぐらいで運びますね」
「そう、みんな協力して運び、みんなで食べる。ところが、それが金貨一枚で運べるとしたら」
「とても便利です」
「だが、協力し合わなくなる。分担・協力が独占・争いに変わるんだ」
「しかし、金貨は食べられませんよ」
「そうだな。何故なんだろう。金には満腹というのがないんだ」
俺とキンが沈黙すると、直ぐにカオルコたちの会話が流れてくる。
「ああ、時々男と思いっきりやりたいと思うわけよ」
「やだ、カオルコったら」
「本当の事でしょ」
「でも、ねえ」
「それが男のいない場所の現実なの」
きゃー、やだなあ、やめてー
まったく、こっちは真面目な話をしているとう言うのに。
「キン。ここは騒がしいから、俺の部屋に来い」
「良いのですか」
「ああ、大事な話だからな」
二人で立ち上がると、すかさず揶揄が入る。
「ユウキさーん、まだ昼間ですよー」
あいつは酔っぱらいの大学生か!
キンが立ち止まり、真っ赤になって俯く。
文句の一つも言ってやろうと近づくと、女たちはみんな酔っぱらっていた。
梅モドキジュースではなく、梅モドキ焼酎を氷で割って飲んでいたのだ。
「サクラコ!」
「しゅみません。い、一杯だけってぇー」
「サクラコは悪くないわ。みんなあんたのせいよ」
カオルコは絡む質らしい。
面倒だからつぶしてやろう。
「はいはい、悪いのはみんな俺です。お詫びにもう一杯」
「何よ、これくらいじゃ誤魔化されないんだから」
「はいはい、皆さんもドンドンいきましょう」
「もう、飲めません」
「飲ませてどうするつもり」
「わ、私は、おいしいでしゅー」
「おや、サクラコわかってるじゃない」
「私、本当に、こ、これ一杯だけですよー、もう無理ですからー」
「ユウキ、私にだけサービスしなさい」
「私もしゃーびすしちゃいですぅ」
騒ぎは10分ほどで終わった。
俺も2杯ほど飲まされたが、大丈夫だ。
「まったく、もう」
カレンが顔を出し、惨状を見て言った。
「ああ、カレン。申し訳ないが、後よろしく」
「私は後始末係じゃないんですよ」
「すまない。いつも頼りにしてるって」
チュ。
カレンのほっぺにキスする。
「ひぇ!」
カレンは真っ赤になり、ギクシャク動き出した。
後を任せて部屋に行くと、キンがゴミを見るような目で見てきた。
「いつも、こんな生活しているのですか」
「いや、いつもは酒を飲んだりしないんだが」
「犯人はみんなそう言うんです」
「本当だって、信用ないな、あれ?」
よろけてキンにしがみつく。
「よよ、酔った勢いなんて駄目です」
「いや、酔ってないと思うんだが」
「1時間も飲んでて酔ってないわけないじゃないですか」
「1時間? 10分ぐらいだろ~、2杯しか飲んでないし……」
「自覚がない! もう、お酒臭いですぅ」
「そうか。お前は良い匂いだぞう」
そのまま、キンのおっぱいに顔を埋めて、気付いたら夕方だった。
こういう日に限って、ヨリの順番だったりする。
「すまない。打ち合わせがあるから明日に」
「来週になります。その替わり」
ヨリに思いっきりつねられた。
今夜、他の女としたら許さない、という意思表示だった。
そう言うときに限って色々あったが、何とか乗り切った。
その翌朝、貨幣経済について相談者を探したのだが。
「金勘定なんてまっぴらよ。チカコに相談して」
ミヤビに思いっきりフラれた。
「経済はチカコですね」
ミサコもそう言うと、さっさと自分の仕事に行ってしまった。
「チカコのは経済じゃないわ。博打よ。でも、誰も勝てないわねぇ」
カオルコもそう言うが、最後には参加してくれた。
キンと3人で話をする。
「チカコはお金なんて数字か紙のおもちゃとしか思ってないのよ。でも、それでゲームすると誰も勝てないの。チカコは現実でもゲームだとしか思わないから、いつも一人勝ちよ。カジノで父親が1億G負けている間に、3億G勝っていたのは有名な話だわ。それで誘拐されたんだと言われてるもの」
あの変態誘拐魔の話か。
「何でも、競馬とか競艇とかのギャンブルの予想をさせられたらしいわ。損したらパンツを脱がすとか、犯すとか色々脅かされながら、儲けて儲けて、儲けすぎて助かったらしいのよ。父親が警察に『儲けてる奴が犯人だ』と教えたらしいわ」
何と言う非常識な奴だろう。
誘拐されて変になったのではなく、変だから誘拐されたのだ。
「でも、警察が踏み込んだときは、少女の売春婦が何人も犯されていて、悲惨な状況だったらしいの。儲けたお金で買ってたのね。チカコが地獄のような光景を見てきたのは事実だから、あんまり脅かしちゃ可哀想よ」
そうか、それであいつ、キンが替わりに犯されるなんて、変なことを平気で言うんだ。
確かに、可哀想な境遇ではある。
「なに、そんなにチカコが気になるの? 一度犯してショック療法とかは駄目よ。どうしても仲良くしたいなら、『俺がチカコの処女を守り抜く』とか言ってあげなさい。勿論、本心からよ」
いや、面倒すぎる。関わりたくない。
「それで、金儲けではなく、経済統制をしたいんだ。金の亡者を作らないで貨幣経済を導入することは可能だろうか」
「まあ、日常生活は貨幣で遣り繰りした方が楽よね。ラシ村で鰻丼を食べたけど、代金が小麦10キロだと4杯ずつ食べないといけなかったわ。これはとても不便よ。だから小売りに必要な少額貨幣だけ流通させればいいのよ。元売りや大口取引は物々交換のままにね」
「少額ってどれくらいを目安にするんだ」
「江戸時代なら、1両は4000銭から6000銭だったわね。小麦1石は200キログラムだから1両を4000銭とするなら、1銭は小麦50グラムね。それなら1日に必要な小麦は500グラムだから、1日の最低必要賃金は一人当たり10銭となるわ。1両は4000銭で小麦1石。これを固定相場にすればいいのじゃないかしらね」
「1石以上の取り引きは大口の物々交換になるのですね?」
「待ってくれ、それだと村の人口1000人だから、小売り用貨幣は400万枚必要になるぞ」
「10銭や50銭貨幣を作れば少し減らせるでしょう。ただし、麦とか米とかの交換レートを固定することと、1石単位で動かす村長たちは、物々交換することを義務づけた方が良いわね。貨幣はあくまで小売りなどの日常的なやりとり用にしておくのよ」
「それでも貯め込む奴は出てくるだろう」
「それは仕方のない事よ。麦や米でも貯め込む奴は貯め込むから。ただ、貨幣は食べられないから、流通量が減りだしたら改鋳も有りね」
「金の含有量を減らすとかかな?」
「そもそも、貨幣の鋳造に金は使わないわ。高額になりすぎるし、維持するのにコストが嵩むわ。偽金の鑑定とかも面倒でしょ」
「どうするんだ? 紙幣とかじゃ誰も使わないし、そもそも紙がないぞ」
「トレインの貨物を一つつぶせばいいわ。放置しといても無駄だし」
「それって」
「そう、ナノプログラム結晶鋼の硬貨を作るのよ。すり減っても電気を流せば再生するし、偽造は出来ないし、改鋳もプログラムを書き換えるだけですむわ」
「実際は金貨より高いんじゃないか」
「まあ、一から作ればそうなるけど、もうできてるものだし、ただ同然でしょ」
「カオルコ、お前、天才か!」
「チカコには負けるけどね」
「キン、何とかなりそうだぞ」
「はい。これで後は許認可ですみます」
「何を計画してるんだ?」
「待って、私が当てるわ。多分、油売りか醤油売り、塩もかしら。未亡人なら子連れでもできそうね」
「カオルコ様、凄いです」
キンは心から敬服したようだ。
「じゃあ、迎賓館の横に取引所を作って、侍女を使うのね」
「その通りです」
「領主様が女といちゃいちゃしてるだけだから部下は大変ねえ」
「はい」
「おい!」
「何よ、本当の事でしょ」
「俺も努力はしているぞ」
「侍女にお風呂で擦らせてるくせに」
「げはっ」
「勿論、背中をよね」
「ぐはっ」
「では、一度みんなで領地に帰りましょうか」
「何でだよ」
「退屈だし、やることも色々できたでしょう」
「色々って?」
「貨幣のデザインとプログラム、銀行(商品取引所)の建設、未亡人用のリヤカーの制作、侍女にそろばん塾よ」
「そうなのか」
「それに、臨海学校よ」
「そんな暇は」
「何、知恵だけ出させてお礼は無しなの? キンのおっぱいが左側だけ赤くなってるのをヨリに言いつけるわよ」
キンは両手でおっぱいを隠す。
手ブラという奴だ。
俺には記憶がなかったが、決して無罪は勝ち取れないだろう。
「わかった、一度帰るよ」
休養をかねて、全員で領内に戻る事にした。
決して、脅かされたからではない。
留守はカリモシに任せたが、6町できていた畑はカリモシ村のものにして良いと言ったので、カリモシは有頂天だった。
領内に戻ると、すぐにラーマ、タキ、レン、イリス、サラス、それにヨリとミヤビの順番が入り、それで一週間が埋まるとカオルコに殴られた。
臨海学校は、もう透けるパンツすらなく、もはや開き直りに近かった。
それでも、去年よりも成長した10人委員会のメンバーを眺めるのは、極上の一時だった。
「第3夫人決まりましたか?」
カレンがマッパだというのに寄ってきた。
下級生は、一応遠慮しているはずなのに。
しかし、姉のミヤビと双子のような体つきだった。
「順位をつけるのは好きじゃないんだ」
「順番は好きなのに?」
「からかうなよ」
「じゃあ、もうそろそろ私たちも参加資格をもらえますよね」
「?」
カレンの友達らしき3人がやってくる。
「私たち、先輩たちがグズグズしてるのが歯がゆいので、今日から立候補します!」
4人の少女が全裸でアピールしてきた。
こういう時に、男友達がいればどうすればいいのか聞いたりできるのに。
「そんなわけあるか!」
「私がまだなのに、このロリコン!」
「許せないこともあります」
ミヤビに殴られ、カオルコに蹴り飛ばされ、ヨリに海に放り込まれた。
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