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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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57 移住

 57 移住




「つまり、オペレッタは役に立たないと?」

「そう言うことになります」


 カレンは大きな胸を大きく張って答えた。

 ブラチョッキはオーダーメイドではないので、カレンのおっぱいを包むと言うより先に張り付いている感じに見えた。

 革紐を強くすると結構かゆいらしい。

 緩くするとサクラコみたいにゆれまくる。

 難しいところだそうだ。


 昼食会、第2夫人会、セカンド派閥、ミヤビ会、と色々と呼称が増えている会合での事である。(正式にはゲート研究会)

 俺が大きくへこむと、サラスとイリスが慰めてくれる。

 この二人は従姉妹同士だ。

 良く似ている。

 会合の世話をするためにいる。

 しかし、今はあまり慰めにはならなかった。


「ミヤビ、何か良い使い道はないだろうか」

「樹脂・金ナノプログラム結晶鋼は成功してるから、その製造を続けて新たな船の保護膜に使うのね」

「それじゃただの工場だよ。宇宙船とは言えない」


 ゲートの研究と観察を続けて、いよいよゲートに通信プロープを侵入させて反応を見るところまで来た。

 先が地球に繋がっていれば、すぐにでもオペレッタで戻る事を計画していたが、オペレッタはベテルギウス対策と通常のプラズマエンジン航行で設計したために、図体がでかくなりすぎて、ゲートは通れないとカレンが指摘してきたのだった。

 少数で行くか、全員で行くかとか議論していたのだが、そう言う問題ではなくなった。

 折角、エンジンまで新型に改良したのに。


「地球にはゲート母艦はないのか」

「国連に貸与という形でありますが、精々が5000トンクラスです。それでも直径30mぐらいでしょう」

「トレインより小さいんじゃないのか?」

「そもそも、小さい直径を通るから、トレインなんです。大きければゲートシップになると思いますよ」

「確か昔は、20万トンタンカーが通れたんじゃなかったか」

「固定ゲート時代は、200両編成とかいう馬鹿げた車両がありましたね。不経済なので廃止されました」

「俺たちはオペレッタであのゲートを通って来たんだが」

「推進剤を使い果たし、2基の補助エンジンも溶融してペシャンコだったとか。ゲートのお陰で15m以下のダイエットに成功していたのでしょう」

「余計な部分は千切れ飛んだのではないでしょうか? 我々の乗ってきたトレインの動力車両にもコクピットなどの区画があって、随分とゴテゴテと張り出していましたから」

「私たちも、かなり危険でしたね」

「後はホエール警備隊が頼りか。イリス、ヨリを呼んでくれ」

「はい」


 ミヤビはムッとした顔をするが、軍に関してはヨリの方が詳しいはずだ。


「無理矢理押し広げて入ることは出来ませんよ」

「カレン、この人の得意技がそれなのよ」

「お姉様は、そんなことされたのですか」

「痛かったわ。ねえ、サラス」

「おい、ミヤビ」

「無理矢理じゃあなかったけど」


 ヨリが来るまで女どもはキャアキャア言いながらおしゃべりしていたが、俺は泣きたかった。

 最終手段は全員でオペレッタに乗り込んで、ベテルギウス経由で帰ることだったからだ。

 そのために樹脂・金ナノプログラム結晶鋼(実はゲル状)を沢山作って来たのに、それが原因で、大きくて通れないなんてあんまりである。


 ラーマとタキとレン、子供たち、イリスとサラスは連れて行くが、キン、ギン、ドウの3人には残って領民の世話を頼む予定でいた。

 45年飛ばされても、おばあちゃんとなった3人と再会は出来るだろうと考えていた。

 しかし、肝心のオペレッタが通れないのでは話にならない。


 ヨリはすぐに現れた。

 笑顔だが、オフの顔じゃない。

 相変わらず、真面目に警備しているのだろう。

 夜も、週に一度しか現れない。


「ヨリ、国防の機密事項かも知れんが、ゲート母艦の大きさが知りたい。あのゲートを通せるだろうか」


 最悪、救助を頼んで、オペレッタを回収してもらう。置いていくわけには行かないからだ。


「ホエール警備隊の最大艦は、現在ヨリ級で12000トンです」

「ヨリ級って」

「お祖父様と父上が決めたので」

「うん、それで艦の直径は?」


 あまり詳しく尋ねない方が良さそうだ。


「約30mです。戦闘艦ですから乗客ゲストは最大で10名でしょう」


 駄目だ。オペレッタより小さい。これではオペレッタを曳航できないばかりか、仮に天然物のゲートが安全だったとしても、今度は大きすぎて通れない。

 帯に短しタスキに長し、とはこのことである。

 時間はかかるが、ピストン輸送とかで少女たちはホエールに帰れるだろう。

 だが、俺がホエールに行くと、地球経済は破綻しそうである。それにオペレッタを置いてはいけないだろう、着陸船の方は曳航できても、本船の双子の片割れを残していくことになってしまう。

 いや、これは先走りすぎだった。

 そもそも、ホエールがこの星を見つけてくれるまで何年かかるか見当もつかないのだ。


「あのトレインなら、6mもあれば通れます」

「軌道上で、樹脂・金ナノプログラムを分けてもらうのはどうでしょう?」

「それだ!」


 カリモシ村の先には、トレインが残されている。

 動力部がないから小さく、動かすだけなら2両を引っ張るだけで良い。

 宇宙船として作られたのだから、手を加えるだけでも、十分な密閉空間が出来るだろう。

 元々130人の少女は、この2両に乗っていたのだから、狭いことはないだろう。

 ベテルギウス経由の可能性がなくならないだけだ。

 けれど、地球直行便なら何とか使えるだろう。

 可能性は何も潰したくない。


 カオルコに緊急10人委員会の開催をお願いすると、


「私のお茶会に参加してくれるならね」

「それどころじゃないんだが」

「こっちも説破つまってんだから協力してよ」


 そう言われて、仕方がなくお茶会に参加することになった。


 そのお茶会では、俺の隣で女主人役のカオルコが得意になっていた。

 反対側には真っ赤な顔したサクラコが座り、アキが世話してくれていた。

 50人近い参加者を前にして居心地が悪かったが、取引だから仕方がない。

 俺はギルポン茶の善し悪しを説明するカオルコに失礼のない対応をし、それなりの好印象を与えられたと思う。

 手が触れ合う度に、お茶をひっくり返すサクラコは気の毒だったが。

 ま、初回だから様子見の客が多いようだった。


 それより、10人委員会が大事だ。

 これから、帰るにせよ救助を求めるにせよ、積極策に移行する大事な会議なのである。

 例によって、チカコが遅れているが、いなくても構わないので早速進めさせてもらった。


「俺とミヤビはカリモシ村付近に引っ越す」

「ええっ!」


 ミヤビを含めて、全員が驚いた。


「どういう事です」(カオルコ)

「許しません」(ヨリ)

「ずるいです」(ミサコ)

「そんな、私だけが毎日なんて、えへへ」(ミヤビ)


 などといきり立つので、理由を説明する。


「トレインの客船を改造し、ゲートを通れるようにする」

「ゲートの先はベテルギウスじゃなかったのですか?」

「それは、まだわからない。だが、準備は始めておきたい。皆も地球やホエールに帰れるなら帰りたいだろう」


 ミヤビとヨリは頷くが、他の反応が鈍い。

 何故だろう?


「それほど急がなくても」(ミサコ)

「もう少しだけ時間が欲しいわ」(カオルコ)

「今日は失敗しました……」(サクラコ)

「私のチャンスは」(カナ)

「ヨリの後に続きたいです」(リン)

「妹どまりですし」(アキ)

「どうなるか、見物よね」(ルミコ)


 ここでのサバイバル生活が、そんなに楽しいのだろうか?


「何故、ミヤビなのです?」(カオルコ)

「トレインにエンジンを取り付けて、ゲートまで飛べるようにしたい。そのためにミヤビと研究会の技術畑の連中の力が必要なんだ」

「なんだ、私だけじゃないのか」(ミヤビ)


 皆が安心する。

 ミヤビはがっかりしている。


「カリモシ村に行かなくても、エンジンをここで作って持って行くのでは駄目なのでしょうか」(ヨリ)


 ヨリの心配はわかる。

 ひどいケガをした場所であるから、思い出すのもいやだろう。


「船体の改造もあるし、まだ貨物には金属類が大分ある。貨物の船体そのものも価値があるだろう。持ってくるのは難しいから現地で改造して、飛べるようにした方が早いと思う」


 今度は、全員が俺を抜きにして話し合いを始めた。


「本気みたいね」

「前回のミッションも本気に見えたけど」

「ついで、だったのでしょう」

「私はついでなんかじゃないわよ」

「自分は計画してましたが」

「サードがあれば私だってちゃんと」

「きっと、おっぱい順よ」

「じゃあ、次はサクラコ」

「ひえっ」

「次は私も」

「私が先よ」

「ずるいわよ、いつまでも譲れないわ」


 サラスが紅茶を持って来てくれた。


「夕食は、皆さんの分も用意しましょうか」

「そうなりそうだ。宿舎のキッチンにも何人か派遣してくれるか」

「キンに言っておきます」

「頼む」

「妻たちは、部屋で夕食にしますね」

「ラーマに言っておいてくれるか」

「わかりました」


 妻たちというか、現地人の方が話が早い。

 同じ年齢層なのだが、精神年齢が高い気がする。

 そもそも会議や議論をする必要がないのだ。

 しかし、技術面では現地人を頼るわけにも行かない。


 やがて夕食になり、席順でもめてから、食事後ももめていた。

 これでは、いつまで待っていても終わらないだろう。


「適性順位で、人員を選んでくれ。まずはエンジン班、船体改造班、ゲート通信班、警備班は居残りと2組、それに食事などの支援班だ」


 その日はそれで解散し、俺はラーマたちの部屋に行った。


「暫くしたら出かける。何ヶ月かカリモシ村の近くに滞在することになるけど、留守を頼めるかな」

「危ないことはないのですか」

「カカはもう何も出来ないし、敵対する部族も残っていないと思うよ」

「でも、安全ではないのですよね」

「サンヤに兵を出してもらうよ。カリモシも近くにいるし大丈夫だと思う」

「出かける前に、ラーマの順番を頂けますか」

「大丈夫なの」

「もう大丈夫です。お腹も大分戻りましたし」


 タキとレンがお腹を隠す。

 まだ、無理だろう。

 ユキとランは生まれたばかりだ。

 妻と子供たちにキスして、部屋に戻った。


 翌日、タルト村に出かけて、父ジャケに会う。


「カリモシ村の先に、宿泊施設が欲しいんだが、協力してくれ」

「はい、全力でやらせて頂きます」

「八さんも行くから、そんなに意気込むことはないぞ。手伝いに弟子を何人か寄越してくれれば良いんだ」

「いいえ、これも勉強する良い機会です。俺がスジの良いのを率いて行きますよ」

「まず、先行して水を確保してくれ。赤城山から水が引ければ楽になる」

「水場に風呂ですね」

「酒と食事は良いものが出せると思うぞ」

「そいつはありがてぇ。いや、ありがとうございます」


 八さんと話すことが多くなり、大工言葉がうつってきたようだ。

 両国橋建設では、ずっと一緒に仕事してたからなあ。


「シャケ家も賑やかになったな」

「へい、おかげさまで」


 父ジャケに妹、妻が3人に子供が3人、第2第3夫人は次の子供がお腹にいる。

 子ジャケは、隣に住んでいて、サラサと第2夫人と子供が二人だが、こちらももう子供が出来ている。

 弟子は二人が独立したが、ヤモメ山を始めとする新弟子が4人とその家族がいる。

 ヤモメ山は二人の子持ちである。

 最近、第2夫人が出来た。

 イタモシから押しかけてきたらしい。

 妻たちは家畜の世話と子供の世話で忙しそうだ。


 タルト村は、他の村より一段豊かである。

 開発が2年先行しているだけで、備蓄に格段の差がついている。

 新たな開発者も、その豊かさの恩恵を受けるだけでなく、ベテランの農民たちが指導しているから、収獲も良い。

 安心して田畑が作れるし、子供も作れる。

 5歳以下の子供がいなかったスルト族の時代とは比べる事も出来ない。


 ナナとサラサがやって来た。


 どきりとする。


 村は豊かになったのに、まだ裸なのだ。

 毎日風呂に入っているから、部族時代のような泥を着ているような裸ではない。


 領内は侍女が多いし、少女たちも革のスカートを穿いているから、裸は日の浅い侍女見習いしかいないし、見習いは殆どが迎賓館で暮らしているから、あまり見かけなくなった。

 夏場はトップレスが流行するのだが、まあ、下のスカートは夏用もあるし、マッパはなくなってきている。


 それなのに、豊かなタルト村で侍女より教養があるナナとサラサが裸では、やはり違和感がある。


「ナナ、スカートはいやなのか」

「侍女見習いでも穿けないのでしょう。私たち農民が穿くわけにはいきません」

「何となく、いたたまれないんだよ」

「あら」

「ねえ」


 ナナとサラサは目配せし合うと腰に手をやり、ちょっと色っぽいポーズをする。


 今度はズキリだった。


 小麦色の肌と白い肌が二人並んで裸でポーズをとるのだ。

 子供がいるとは言え、まだ15か16である。

 これからが女盛りであるのだ。

 ああ、夢に見そうだ。


「あんなに美しい妻が沢山いる領主様が、そんなに気にするんなら、ずっと裸で過ごします」

「脈有りね。今夜、押しかけていこうかしら」


 すぐに他の若い妻たちが聞きつけ、並び始める。


「何でも、気に入れば領主様の子種が頂けるらしい」


 などと、最もらしい噂を流す奴もいる。


「ははは、ユウキ様の子供が頂けるんなら、村は安泰ですな」


 父ジャケがそんなことを言う。

 どうもこの世界では、倫理観や貞操観念より俺の地位の方が上らしい。

 人妻だったラーマが、一番のあこがれの存在だからかも知れない。

 騒ぎになりかけているので、タルトとコラノが飛んできた。


「ユウキ様、リリは気にいらんのか」

「サラサでも良いが、先にカズネと子を作ってくれ」


 この親父たちの認識では、リリとカズネは俺に嫁いだことになっているのだろう。

 タキやレンが子供を産んでから、少し期待をしている。


「タルト村の女は、全員スカートを着用すること。これは領主の命令だ」

「まだ、言葉を覚えていない小作もか」

「全員だ。子供用も作れ。ああ男の子もだ」

「しかし、侍女でもないのに」

「別に侍女の価値は下がらないだろう」

「そうか」

「そうだ。カズネやリリは侍女の先生だぞ。おかしいだろう」


「そうだな」

「もう、部族時代の掟は古いんだ。村には毛皮が余ってるだろう」

「他の村から、小麦や大豆と交換に来る。値下がりするばかりだ」

「なら、丁度良い。女たちがスカートを穿くようになれば、革の需要は伸びるぞ。他の村も穿き出せば、ああ、そうだ。今度カリモシ村に暫く引っ越すから、タルトやコラノの妻たちにスカートを沢山作らせてくれ。タルト村の名産品を作ろう」


「?」


「どうも、女たちの方がわかっているようだ。後は女たちがやるから、タルトは掟を徹底してくれ」

「わかった」


 すぐにナナとサラサにに引っ張っていかれて、タルト家の一室で、ファッションショーが始まった。

 ナナもサラサもスカートを作ってはいたのだが、掟があったから外では穿いていないだけだった。

 タルトの夫人たちやコラノの夫人たちも集まり、次々に披露する。


 段々、ファッションショーかストリップかわからなくなってきたが、ここは大事なところなので、俺は我慢して付き合い、巻きスカートの長さや遊びの設け方をじっくりと説明した。


「冬場は毛皮のスカートでいい」


 加工前の毛皮を使って、サラサの腰に巻き付ける。


「暖かいです」

「それから、冬場や雨の日は毛皮でこういうのをつけるのはどうだろう」


 巻き付けた毛皮を、今度はサラサの肩にかける。胸が隠れるぐらいのマントと言うよりケープだろうか。

 締め付けるブラチョッキは評判悪いから、これの方が良いのではないだろうか。


「首回りで止めれば、両手が使えて農作業の邪魔にならない。夏場でも革なら、雨の日に使えるだろう」


 女性陣は目を輝かして、早速毛皮や革を自分の首に撒いていく。

 下半身がむき出しのケープ姿はおかしかったが、まあ、ケープは女性らしくて可愛い姿に見える。


「カリモシ村で販売するから、沢山作っておいてくれ」


 その日、領内で焼き鏝と沢山のベルト用のバックルを作り、リーナさんに不思議がられた。


 それから、ラーマの順番、ラーマの順番、ラーマの順番があった。

 イリスやサラスの順番もあった。

 長い別れではないし、何かあれば飛んで帰ってこれる。

 いつもどおりに過ごすようにした。


 エンジン班、ミヤビほか6名。

 船体改造班、ミサコほか4名。

 警備班1組、ヨリほか6名。

 生活支援班、サクラコほか4名にメイドロイド1体。

 他に、父ジャケと先発した八さんと、今回は熊さんとハインナも連れて行く。

 農作業アンドロイドも3体連れて行って、畑で野菜を作ってもらう。


 これがカリモシ村移住組である。


 ゲート通信班、カオルコほか3名。

 警備班第2組、カナほか10名。


 こちらは居残り組で、生徒の面倒も見る事になっている。

 特にカオルコには、ゲートの向こう側の特定を頼んである。


 領内の経営はキンに頼み、イリスにはラーマたちの世話も頼んだ。

 サラスはキンの部下だし、仕事があるから連れて行けない。

 キンは、侍女一人と見習い2人を選んで、俺の身の回りの世話係とした。

 最初は断ったのだが、領主として現地人との折衝などもあるはずだから連れて行くことにした。

 全部、サクラコの班に押しつけるわけにはいかないし、通訳も必要だろう。

 まあ、ナナとサラサが来たら、預けてしまえばよい。

 それなら侍女たちも寂しくはないだろう。


 とにかく、トレインを飛ばせるようにすることが、一番の目的だった。


 先頭はイケメンに乗った俺。

 次がハインナのカートにひかれた女神15人と警備のヨリと部下2名。

 次が箱馬車を引く熊さんに女神の残り。

 最後がヒミコと別の妻がひく荷車に侍女。

 後はカマウが、少し後ろからリヤカー2台を送ってくれることになっていた。


 俺は急がずに進み、最初のカマウ村で歓迎を受けた。

 カマウは、リヤカー専従の出稼ぎが増えたことを喜んでいた。

 彼らは運送業をしながら、自らの小部族に食糧を供給していた。

 東西の道路建設も手伝っているらしい。

 リヤカー職人も生まれつつあるという。

 皆、カートに乗った女神様に仰天し、ヨリなどには這いつくばっていた。

 流通の拠点だから、噂があっという間に広がるだろう。


 イケメンたちは、長男とカミナリ3世の歓迎を受けて楽しそうだった。

 どうやらカリモシ村にも、新しい一族のコロニーを作る気らしい。


 次のラシ村では一泊することになった。

 侍女たちが総出で女神様を世話して、俺はラシと畑を一巡りしてから、夕食に招かれた。


「折角、泥炭が取れるから、鮭ビンを名産品にしようとしたのだが、カリモシに取られてしまった。鮭が捕れる川がないのは、ここの欠点だ」

「湿地帯の小川には鮭は遡上しないのか」

「ウナギやアユばかりだ。あれは食べるところがない」


 俺は鰻丼を食べるカリモシを思い出した。


「明日の朝、ウナギを捕ってきてくれ」

「ユウキ様は、何か思い付いたな」


 人嫌いで女嫌いのラシだったが、村長になって思うところがあったのだろう、村人のことを第一に考えるようになった。

 ずっと付き添ってきた押しかけ女房も、普通に妻として暮らしているらしい。


 その夜にサクラコと相談して、侍女たちとウナギのタレを作っておいた。

 カリモシがまねできないように、唐辛子も使う。


 その夜はヨリが俺の部屋に来て、侍女3人に優しく端っこで毛布を被っているように言いつけると、2回も愛し合ってから眠った。

 俺の方がおっかなビックリだったが、ヨリは全然動じない。

 俺もすぐに侍女の存在を忘れていた。


 翌朝、サクラコの指示でご飯が炊かれ、ラシたちが捕ってきたウナギを侍女たちに覚えさせながらさばき、蒲焼きにした。

 秘伝のピリ辛醤油ダレは上手くいき、ラシたちを唸らせる鰻丼を作れた。


「こんなに美味いものは食べたことがない」


 ラシも、カリモシと同じ事をいった。


「街道を通る人間は必ず食べに来るようになるぞ」


 更に、50人前の鮭ビンではなく、4人前ぐらいのウナビンを作り、タレ味にして保存するようにすれば、2年ぐらいは食べられることを教えると、ラシも侍女たちも感激してくれた。


 ラシには、ヤナという竹製のウナギ取りを教えて、ラシ村を後にした。



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