55 衛星軌道で詰み
55 衛星軌道で詰み
「何故、ミヤビなんですか」(カオルコ)
「自分が行って、ユウキ様をお守りします」(ヨリ)
「仕掛けは、地上で作って打ち上げれば良いじゃないですか。ミヤビは地上で支援できます」(ミサコ)
「生活の面倒は誰がみるんです。私なら、宇宙空間でもユウキさんのお食事ぐらい」(アキ)
「私も…… 」(サクラコ)
「ヨリは地上での守りに必要ですから、代わりに私がユウキ様と」(カナ)
「カナ、私に譲ってちょうだい」(リン)
「わたし、ちっちゃいから宇宙では有利かも」(ルミコ)
「私はイケメンと残るわよ」(チカコ)
「私以外に役に立たないわよ。ヨリは訓練受けているから大丈夫かも知れないけど、それじゃあユウキの代わりに私と行くことになるだけよ」(ミヤビ)
衛星軌道から、ゲートを探すミッションになるのだが、探査艇は二人がリミットである。
「お世話するだけなら、イリスでも」(イリス)
みな、一瞬ギョッとするが、流石に何の知識もないイリスでは、負担が大きくなるばかりだ。
でも、心意気は伝わったのだろう。
頬笑ましい目を向ける。
「同行者にしてもらうのは、ナビゲーションだな。宇宙空間のある範囲を区切ってもらい、俺が機材を打ち出す。後は引っかかる反応があるかを確かめる。反応がなければ次のセクションで同じ事を繰り返す。その間、一人で簡易居住区での生活だから、タフさも必要かも知れない。無重力での生活は、思った以上に大変だぞ」
そう考えると、ヨリの方が適任にも思える。
ナビゲーションも出来るだろうし、タフさなら一番だ。
だが、相手はゲートだ。
何が起こるかわからない。
未知の現象を解析するのはミヤビが適任だろう。
カオルコも頭はよいが、ここ数ヶ月、一緒に問題を研究していたミヤビにはかなわない。
体力がミヤビよりはありそうだが。
「だが、1ミッション7日からせいぜい10日だぞ。それ以上は肉体が無重力に馴致してしまい地上でリハビリが必要になる」
「リハビリは得意です」(ミサコ)
ミサコも器用そうだから、訓練すればナビゲーターは出来るだろう。
だが、知識はカオルコと変わらないし、体力はミヤビ以下である。
「やはり、ファーストミッションはミヤビと行う。成果が上がらない場合は一度戻って検討し、ヨリとセカンドミッションを行う。駄目なら、サードはカオルコとする」
「サードで終わらなかったら?」(ミサコ)
「その時は何が上手くないのか検討して、ミヤビに戻る。勿論、やってみて不都合があれば、途中で誰か適任者を選定し直そう」
何とか、10人委員会の了承得てミヤビだけが残り、打ち合わせをしていると、一人飛び込んできた。
「お姉様!」
ミヤビの妹のカレンだった。
ミヤビも去年より成長して157ぐらいになったが、カレンも同じぐらいに成長した。双子と行っても良いくらい似ている。
ただ、カレンを見ると、ミヤビの童顔も少し大人びてみえる。
「危ないところに行っては駄目です」
「多少の危険は仕方がないの。でも、ちゃんと戻ってくるから心配しないで」
「でも、一週間もだなんて、危険すぎます」
「ちゃんと準備していくから大丈夫よ」
カレンはミヤビにそっくりなだけでなく、優秀でもある。
姉に憧れて尊敬しているのだろう。お手本と言うのだろうか。
努力もしているようだ。
手を握り合う仲の良い姉妹の姿は、頬笑ましい光景だった。
おっぱいがぶつかり合わなければだが。
「いいえ、そんなに長くかかったら、処女喪失どころか妊娠まであり得ます」
「ごほっ」
「げほっ」
「あなたの言う危険て、そっちなの」
「ええ、他に何があるんです?」
「真空とか、無重力とかあるでしょう」
「そんなのは事前に準備すれば危険ではありません。危険なのは妊娠です」
「ちょっと、カレン。そんな大きな声で言わないでよ」
「排卵日の計算はしましたか」
「ちょっと」
「前回の生理はいつでした」
「それは、その、ゴニョゴニョよ」
「それじゃあ、ゴニョゴニョじゃないですか」
「大丈夫よ、ゴニョゴニョしてもらうから」
二人で時々小声で話しているが、ろくでもないことだけはわかる。
「ユウキさん!」
「はい!」
「姉は危険日です。カレンが代わりに行かせてもらいます」
「はい?」
「ちょっと、カレン。あなたには無理よ」
「大丈夫です。カレンは初めてが騎乗位でも受けきって見せます」
「カレンちゃん、受けきるなら後背位だよ」
「そうそう、それでこそ受けよ」
心配して見に来たのか興味本位の野次馬か、同級生が入り口に来ていた。
俺はこめかみを揉みながら頭痛を消していた。
「ミヤビ、追っ払ってくれ」
「はいはい、みんな。続きは宿舎の食堂で話しましょう」
話すなよ。
「ミヤビ様ー、最初は痛いのですか」
「2回目は痛くないって……」
「ユウキさんのが大きすぎるって……」
「右と左のおっぱいで感度がち……」
小学生、いや中1の野次馬たちは口々に質問しながら、ミヤビが連れて行った。
「本当は私が行ければ良いのだけど」
キッチンからリーナさんが現れた。
人が大勢いるところにはあまり来ないのだ。
「リーナさんにはオペレッタを見ててもらわないと」
「代わりにハインナと思ったんだけど」
「ハインナじゃ不安だよ。相手はゲートなんだから」
ハインナは相変わらず、カートの運転と入り口の警備をしている。
最近は熊さんと棒術の稽古まで始めていた。
「じゃあ、リータを連れて行く?」
「それこそ、何しに行くんだって感じだよ。却下だね」
「でも、私は下半身が未完成だし」
「だから、そっちから離れてよ。俺はゲートの探索に行くんだから」
「でも、もしユウキがゲートに飛ばされたりすると困るのよ」
「大丈夫、ゲートの位置は予想範囲からそんなに外れてないと思う」
「いい、ユウキの子供を産めなかったら、宇宙戦争でも何でも起こすからね」
「それは別の科学技術の問題だと思うけど」
「ユウキの子種は冷凍保存してあるけど、やっぱり子作りは生に限ると思うのよね」
「わかったから、研究に戻って。ベテルギウスのウラシマ効果を何とかしないと、時間だけはどうにもならないからさ」
「ユウキ、最近は扱いがひどいわよ。下半身が完成したら、毎日私の順番にするから、覚えてらっしゃい」
「はいはい、ゲートを片付けてからね」
むずがるリーナさんを追い出し、イリスが淹れてくれた紅茶を飲む。
「リーナ様も順番に入れた方がいいのでしょうか」
「いいんだ。あの人には時間が無限にあるんだから」
「年を取らないのですか」
「ある意味、年は取らないし、死ぬこともないんだ」
「それって、幸せなのでしょうか」
「わからない。でも、幸せは自分で見つけるものだよ。心配は要らないと思う」
「そうですね。イリスも幸せを見つけました」
イリスは俺にキスして来た。
段々、情熱的になり、椅子の上の俺に跨る。
俺もイリスのおっぱいを揉みながらキスを続ける。
「お休みはつらいです」
「俺もだよ」
夕食後なので、このままイリスを部屋まで連れて行こうかと考えながらしていると、入り口からミヤビが覗いているのに気付いた。
スカートの中に手を入れている。
ギョッとしたが、イリスも止まらない。
イリスを抱き上げ、キスしながら2階の部屋に運び、そのまま最後まで続けた。
ミヤビが覗き続けているかは、わからなかった。
翌日、ラーマと祐馬に挨拶して、タキとレンにも挨拶した。
臨月の二人は、何も心配していないようだった。
イリスとタルト第1夫人が『任せて下さい』と胸を張って言ってくれた。
カオルコが生徒代表なので、ミサコとヨリを不在の間の副領主に任命した。
実際の仕事は、すべて代官のキンに頼んだ。
キンは拗ねていたが、仕事はちゃんとやる奴なので大丈夫だろう。
俺とミヤビは、食堂で宇宙服を着込んだ。
探査艇は安全だが、宇宙空間では何が起きるかわからないからだ。
オペレッタは本船の点検区画に簡易の居住区画を作ってくれていたが、エアロックなどは初めて使うので、念のためにも、着込んでいた方が安全だろう。
部屋を出ると見物人が沢山いたが、不安そうな現地人に対して、少女たちは見慣れているような感じだった。
まあ、たった1週間の旅だから、そんなに感傷的になる必要はない。
ハインナのカートに乗せてもらい、発着場として固定化されつつある4段目の探査艇に向かった。
ミヤビはずんぐりした宇宙服姿で皆に手を振った。
4段目には、10人委員会とキンたちだけがいた。
少し遠くに立って探査艇を見守っている。
チカコがイケメンに乗って遠くから見ている。
手を振ろうとして、トラブルの元を刺激するのは馬鹿げていることに気付いた。
「チカコを裸にして何しようとしたの」
「勝手に脱いだんだ」
「キスしたんでしょ」
「嘘偽りだ」
「私を抱きもしないくせに……」
ミヤビに無理矢理ヘルメットをかぶせて黙らせた。
安全チェックをし、後部座席に抱え上げて座らせる。
センサーを叩くと、ミヤビはシートに沈み込んだ。
俺は、もう一度見送りの連中を見回すと、自分用のヘルメットを取り出し、被ろうとした。
そのとき、キンが走ってきた。
キンは宇宙服の上から抱きつくとキスした。
「帰ってきたら、妻にして下さい。避妊しても構いません」
「まだ、時間はある。良く考えろよ」
「いいえ、今日から妻になります」
キンは涙を拭うと、走って戻っていった。
ヘルメットを被ると、ミヤビの声が聞こえてきた。
「もう、土壇場で次々と、私は何番目なのよ」
聞こえないふりして探査艇に乗り込み、指2本で挨拶すると、冬の空に飛び出した。
オペレッタ号は大分外観が変わっていた。
3基あった補助推進器は2基に変更され、大型の推進剤貯蔵タンクがすらりと伸びていた。
前方にあった本船は中央にレイアウトされ、前方には二つの巨大なおっぱいができあがっていた。
「何だよ、これ」
「空飛ぶおっぱい」
「本当に作ったのか」
「実際は樹脂・金ナノプログラム」
「耐熱防御なら、全身に施すべきじゃないのか」
「大きくなりすぎる。これで熱源を遮断する」
「動くのか」
「そう、可動式」
「おっぱい型にするなよ」
「この方が色っぽい」
「怖いからな」
どうもオペレッタの美意識に問題があるようだ。
だが、実用的なら仕方がない。
探査艇用のエアロックは、コクピットだけを収納する形になっていた。
少しずれても樹脂がシールして空気抜けは起きなかった。
ドッキングすると箱形の一部がスライドした。
苦労して通り抜けるともう一つエアロックがあり、二人でぎりぎりの広さしかなかった。
俺が一人で探査艇で出かけるときに、残されたミヤビが安全に過ごすためだろう。
簡易居住区画はコンソール、シャワー、キッチン、トイレを含めても6畳間ぐらいしかなかった。
樹脂と金網で強化しておいた食料品の箱は全部大丈夫だった。
しかし、区画の殆どが黄金で輝き、趣味が悪く感じる。
樹脂シートが敷いてあるので、冷たくはないが、何となくひんやりとしている気がする。
コンソールが輝いた。
環境の数値が表示され、室内に異常がないことを確認する。
火は使えず、電磁調理器も必ず蓋をして使う。
シャワーは密閉空間で、全身用のドライヤーを使ってから出てくるなどの諸注意も表示されている。
無重力に慣れていないミヤビが部屋を飛び回っている間に宇宙服を脱いでロッカーに片付ける。
それから、ミヤビを捕まえて、宇宙服を脱がし、これも片付ける。
タンクトップにショーツを繋げたようなボディスーツ姿になったが、いつもより露出は少なめに感じる。
「いざというときは、一人で着るんだぞ」
「練習したから大丈夫よ。でも、無重力は少し苦手だわ」
「液体を零さないよう気をつけてくれ。鍋なんか零したら大変なことになるからな」
「何となく想像できるわ。ラーメンとかは食べられないわね」
「ドンブリから中身が浮き上がる。すすれば飛び散る。全部を回収するのにどれだけひどい思いをする事やら」
「そう聞くと、無性にカレーうどんが食べたくなるわ」
「カレーはこの星じゃ原料が揃わない。スパイスが手に入らないからな」
「駄目だわ、考えたら頭がカレーになった。食べたい」
「実は、宇宙食にレトルトがある。吸うだけの飲み物みたいなカレーだが、それでも良いか」
「うん、カレーなら何でもいいわ」
確かに領内で食べたい料理ナンバーワンがカレーである。
ルウが300食しかなかったので、1年に1回だけカレーを許可したが、今年はまだ誰も言い出さない。
最後のカレーになるからだ。
唐辛子とごま油でラー油を作り、それで誤魔化した料理を食べているが、内心では皆カレーが食べたいと思っているはずだ。
それからオペレッタと打ち合わせをし、新兵器の実験をした。
新兵器は色々考えたのだが、コストからみて銅線の両端に一回だけ噴射する、推進器とセンサーをつけただけの粗末なものになった。
網状のものが理想だったが、1キロ四方の網を作るのは大変だった。
金箔というアイデアもあったが、ひずみを感知するセンサーが難しく、却下された。
一本の銅線の両端に錘をつけて回転させると大体まっすぐになるので、簡単なセンサーでもひずみを感知出来そうだった。
打ち出すときにはコイル状になっていて、先端が伸びきると後ろの錘が抵抗しまっすぐになる。
そこで噴射させて回転させる。
ゆっくりとした回転だが、線上に探るよりも広範囲に効果が出るだろう。
無重力空間だし、大気もないので曲がる要素がないから、曲がるには何かの理由があるはずなのだ。
それを探り出して、ゲートの位置を特定するのだ。
切れたり、引きずり込まれたりすれば、大当たりである。
ミヤビとコンソールで3時間以上訓練して、あらゆる状況を探った。
その間にオペレッタが探査艇にブースターを繋げている。
ブースターの先端には、新兵器が200搭載されている。
これを想定エリアに打ち込んでいき、ミヤビが監視するのだ。
俺は明日から2日間飛び、ミヤビの指示するところに新兵器を打ち込んで、また2日間以上かけて戻ってくる予定だ。
想定内では、ゲートは6月に最接近する。
今は2月だから、まだ大丈夫だろう。
あまり近いと俺が吸い込まれて洒落にならなくなるが、この辺りから始めればまず安全圏である。
成果が上がらなくても、一度ミヤビと地上に戻る。
ミヤビはこれから約5日間、通信は出来るが実質一人で過ごすことになる。
チューブのカレーやチューブのご飯、チューブのサラダというか野菜の煮物を電磁調理器で作って見せて覚えてもらった。
トイレやシャワーもである。
非常事態はオペレッタが指示してくれるだろうし、守ってくれるだろう。
ミヤビにキスして二人で毛布を被って眠る。
ボディスーツは洗濯にまわしたので、お互い裸である。
だが、この時のミヤビは何かがいつもと違った。
「ユウキ、あなたは役に立つ人間が好きよね」
「まあ、誰でもそうだろう」
「でも、あなたを見てきて、村の経営や侍女の扱いを見て思ったの。あなたは役に立つ人間は厚遇するけど、役に立たない人間には結構容赦がないところがあるわ」
「逆らったり争ったりする奴は、追い出すし、ぶちのめすこともあるよ。でも自衛のためだ」
「女はどうなの。使えない女は要らない?」
「いや、この世界は基本的に女にはつらい環境だから、出来るだけ生きやすくなるように改善させてもらったけど。ずっと見てきたならわかるだろう。女たちが自分で生き方を選べるように変えてきたつもりだよ」
「そうね、普通の女たちは喜んでると思うわ」
ミヤビの言いたいことが、良くわからなかった。
「例えば、イリスよ」
「イリスは役に立つな」
「でも、あなたは村の侍女に出した。イリスはずっとあなたを崇拝してたのに」
「全員の能力までわからないからな。それこそ神様じゃないんだし」
「私は役に立つでしょ」
「ミヤビはずっと助けてくれたな。ここまで来れたのもミヤビのお陰だ」
「でも、女にはしてくれない」
「何言ってんだよ」
「私、わかっちゃったの。役に立つだけじゃ女になれないと」
どうもミヤビが変だ。何が悪かったのか。
「あなたは、ヨリが役に立つから好きなわけじゃないのよ。好きになるきっかけが役に立つことだったの」
「……」
「でも、役に立たないチカコが好きよね」
「!」
「嘘は言わないで。ここにチカコがいたら抱きたいでしょ。我慢はするかも知れないけど、大変よね」
「……」
「ヨリもそう、カオルコもそう、みんなラーマさんなの。役に立たなくても好きだし、抱きたいのよ」
「……」
「でも、イリスは違うの。あなたがイリスを好きになったのは抱いてからでしょ」
そう言われると、その通りなので何も言えなかった。
「私はユウキが好き。お金持ちのボンボンだからじゃなく、助けてもらったからでもない。馬鹿で出来ないことばかりでも、何とかしようとするところが好きなの。エッチなくせに我慢したり、子供相手だと思い込んで考えないようにするところがへたれで好き」
こいつ、褒めてないよな。怒っても良いのか。
「でも、私はラーマさんじゃないわ。ヨリコやチカコやサクラコやカオルコにはなれない。私はイリスと同じなの。あなたに抱いてもらって、女にしてもらって、それから好きになってもらうしかないのよ」
ミヤビは泣き出した。
何か変な思い込みをしている。
好きじゃなければ夜の順番に入れたり、我慢したりするもんか。
ただ、ヨリやチカコにズキリとするのは当たっているのだ。
男の本能みたいなものが刺激されるのは確かである。
でも、それで好き嫌いが出来るわけじゃない。
何しろ、ズキリというなら、あのリータはそんなもんじゃない。
我慢できるレベルを超えているのだ。
だからと言って、好きだというわけではない。
コンソールが輝いた。女神様のご光臨である。
「ミヤビ、間違ってる」
「えっ?」
「ユーキはミヤビが大好き。今までミヤビを思って何CC出したか教えられる」
「オペレッタ、やめて! お願いします」
俺は女神様に平伏した。
無重力でやったから、一回転しても止まらない。
俺は無様に裸の股間を晒しながら、ミヤビの上空で回転した。
「ミヤビ、こっち見ないで」
股間を隠しながら回転したので、天井に頭を打ち付けた。
近年まれに見る醜態である。
ミヤビはプーと噴き出すと、大笑いを始めた。
可愛かった。
「ミヤビが間違ったのは、ユーキに安心感を与えたこと」
「そうなの?」
ミヤビが毛布を引っ張る。
俺はオペレッタに言われるままに正座して、毛布で股間を隠しているのに、意地悪く引っ張って来るのだ。
毛布は1枚しかなく、ミヤビは裸でも平気である。
「ミヤビに役割を与えれば、いつまででもユーキの側から離れないと思い込ませた。それはキン、ギン、ドウと同じ間違い」
「そうかな」
「キン、ギン、ドウを嫁に出す、などと心にもないことを言ってたのは知ってるはず」
「確かに、いつも言ってるようね」
「本気ではない」
「そうね。いないと困るのはユウキの方だわ。キンのプロポーズを受けてたみたいだし」
また、毛布を引っ張る。
「例えば、ミヤビがカカに狙われてるとかだったら、ユーキは片時も離れずにミヤビを気にする。領内で安全で役に立ちユーキを好き。これでは他の女を構う時間を与えているようなもの」
くそ、オペレッタめ、言いたい放題言いやがって。変な入れ知恵すんなよ。
それでなくても毎日大変なんだからさ。
「でも、私にはヨリやチカコみたいな魅力がないのでは」
「童顔で巨乳」
「うっ!」
「うっ!」
「ユーキにおっぱい見せて、妻にしてと言えば、詰み」
「えへへへへ」
ミヤビさん、一番大事な知性が感じられないですよ。
その夜、俺は詰んだ。
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