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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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54 14の裸

 54 14の裸




 事実上、領主はキンに代行させ、俺はミヤビとひたすら研究を行った。


 オペレッタにはゲートドライブの研究と、真実すべてではないが間違っていない事実を告げて強引に納得させ、端末を使い、あらゆるデータベースを閲覧させてもらっている。

 ずっと誤魔化しているが、オペレッタも忙しいので今の所は何とかなっている。

 みんなには、畑などに出かけていると偽って、2階のゲストルームでミヤビとふたりで勉強と研究を続けた。

 イリスとカオルコ以外は、知らない事になっている。


「最近、また夜の生活が激しくなってない」

「ああ、キン、ギン、ドウが、役職を与えたのは誤魔化しだと思い始めて、夜の順番に割り込むようになった。別に誤魔化しじゃなく、本当に経営を任せたんだがな」

「偉くなりたかったんじゃなく、偉くなれば妻にしてもらえる思ってたんでしょ」

「嫁に出してしまえばよかった」

「そればっかり、どうせ仕事を替われる人材なんかいなかったくせに」


 イリスが紅茶と芋餡のケーキを持ってきてくれた。


「少し、休憩にして下さいね」

「イリスも一緒に休憩しましょう」

「はい」


 30枚以上のディスプレー端末を脇に寄せて、テーブルを露出させた。

 幸いなことに、イリスには俺たちの研究内容までは理解出来ない。


「何で、イリスがキンたちを拒絶出来ないの。妻なんだから偉いんでしょ」

「妻は、そう言うことはしないものです。張り合ったりするのは娘時代の競争みたいな時だけに許されるもので、妻は受け入れることが正しい姿勢です。順番を作ってあげられないようでは、妻とは言えません」

「まったく、一夫多妻文化ってろくでもないわ」

「でも、ミヤビ様だって順番から外されたらいやでしょう?」

「ま、まあ、いやかな」

「自分からお休みを言い出すならともかく、夫から拒絶されるような事は、女にはつらいものです」


 休みは、妊娠、出産などの長期と、生理や体調不良など短期があるらしい。

 それらを管理するのが妻の役目である。

 今はラーマが産後の休み、タキとレンが妊娠中の休みである。


「それに一夫多妻は安心できます」

「どうして、ろくでもないじゃない」

「ズルイ族やギルポン族では、毎日のように男が変わるんですよ。女にはそれの方がつらいです」

「そんな! ズルイの女はズルイだけじゃないの!」

「いいえ、ズルイに選ばれなかった女は別の男に選ばれるのです。それが狩りのない日はずっと続きます」

「それって、毎日違う男に犯されるってこと?」

「犯される? 良くわかりません」


 ミヤビは絶句しているが、何を考えているかはわかる。

 毎日、違う男が来て森に連れて行くのだ。

 娼婦以下の生活である。

 ある意味、奴隷よりひどいかも知れない。

 しかし、小部族では族長が女を独り占めにも出来ない。

 部族が纏まらないからだ。

 勿論、いつも同じ女を選ぶことはあるかも知れない。

 しかし、それを続けられるのは族長だけだ。

 下位のものは残された女から選ぶことしかできないのだから、同じ女がいつも残ることはないだろう。

 当然、一人に執着することは出来なくなってしまう。


 女はもっとひどい。

 好意や愛情を持つ以前に、生理が来れば族長に連れて行かれ、次々と違う男に犯され続けて、誰の子供かも良くわからないまま妊娠するのだ。

 誰かを愛する事など無く、ただ子供だけが確かな絆なのだ。

 それなら、一夫多妻のカリモシやサンヤの方が良いだろう。

 ズルイの女たちはサンヤに嫁ぐときには喜んでいた。

 ある意味、初めて夫を持てたのである。

 それでも、自分の好みで嫁げるわけではない。

 我が儘を言えば『貝の審判』が待っている。


「ユウキ、今晩私を抱いて、お願い」

「おい、ミヤビどうしたんだ」

「だって、好きでもない男に処女を奪われ、その後次々と別の男に抱かれ続けるなんて」


 ミヤビは涙を流している。

 想像しすぎか、感情移入しすぎか。


「落ち着け、そうならないように俺の領地に住んでいるんだろう。安全だから、大丈夫だ」

「でも、事故の後、ユウキが助けに来なければ、部族に攫われてそんな生活に」

「ちゃんと助かったんだから、大丈夫だ」

「でも、私をちゃんとユウキの女にして。他の男に犯されるのはいやー」

「だから、落ち着け。お前、言ってることがチカコみたいになってるぞ」

「チカコが正しかったのよ。野蛮人は女の気持ち何か考えずに犯すだけなのよ。そんな男がこの星には満ちあふれているのよ。私も、私もそんなことに……」


 とりあえず、ミヤビをベッドに寝かせ、イリスに落ち着くまで世話を頼んだ。

 情緒不安定ではないと思うが、ここ3週間も缶詰状態だったから、少し参っているのかも知れない。


 明日は、ヨリかカナに頼んで、一緒に2段目か3段目に散歩に行こう。


 俺も運動不足だし、アリバイ作りにも畑に顔を出すのは良いことだろう。


 そう考え、ラーマたちがドウの部下におやつをもらっているのを確認すると、気分転換に2段目に降りていった。

 祐馬が元気そうなので、気を遣わせたくなかったからだ。


 畑には丁度誰もいなかった。

 冬場なので、冬小麦以外はなく、堆肥や腐葉土が幾つか山となっているだけで、少しがらんとしている。

 水田と小麦だけで800石。

 2期作で1000石を遥かに越え、今では3段目に野菜類は移っている。

 一通り見回って、足湯につかり休む。

 ここは人間だけでなく、農業用アンドロイドたちにも評判が良い。

 足回りの土を落とすだけで、耐久力が格段に上がるとか言っていた。

 土とか砂というのは、どれだけ防御しても突破してくる。

 まるで、トンネル効果があるみたいだ。

 確率がゼロにはならない。

 足湯で流すだけで、その確率が下がるのは誰にとってもありがたいことだ。


「や、野蛮人」


 振り向くと、チカコがいた。

 また、一人でイケメンたちと遊んできたのだろう。

 一人では行くなと禁じてあるのに。


 ふと、ミヤビを思い出した。

 別にこいつが何かをしたわけではないが、ミヤビがチカコみたいに怯えるのを思い出すと、何だかむかついた。


「お、犯しに来たのね」


 チカコが両手で身体を守ろうとする。

 俺はゆっくりと立ち上がり、振り向くと両手を挙げた。


「ガオー」

「きゃわー」


 チカコは驚いて逃げていく。

 何故か1段目でも3段目に引き返すでもなく、2段目の奥に行く。

 まったく、何も考えてないな。

 領内は安全だと信じているのだろうか。


 俺は走って追いかけた。ついでに『ガオー』を続ける。

 チカコは1キロ以上も逃げ、ハウスの向こう側の草の山に倒れ込んだ。

 流石に1000mダッシュは息が上がる。

 涙目で俺を見るチカコにゆっくりと近づく。 


「お願い。犯さないで。いやなの」


 俺はハアハア言ってて、答えられない。


「お願い、怖いの。キスするから、それで勘弁して」


 何言ってんだ、こいつ。

 俺は息を整える暇がなかった。


「わかった。これで許して。見るだけなら」


 チカコは、ブラとタンクトップの間のようなチョッキを脱いだ。

 冬用の革製である。


 去年より随分と大きくなったおっぱいが見える。

 今なら、残念とか言えない。


「お、お、お前、何やってんだ」

「これでも、許してくれないの。見るだけじゃ駄目?」

「お前なあ」

「わかった。わかったから」


 チカコはそう言うと、スカートも脱いでしまった。

  パンツはなく全裸だ。


「うっ!」


 チカコは、見るだけならリーナさんタイプの美人である。

 14歳の美少女の全裸は、普通、屋外で見れるものでは無い。


 いや、そうじゃない。


 しかし、こいつは凄い成長ぶりだ。少女としては、これ以上色っぽくなる奴はいないだろう。

 母親がフランス人とか言ってたっけ。

 くびれも去年とは比べものにならない。

 脚も長く、美しい。

 しかも、肌つやが異常に色っぽい。

 オリーブオイルか何かを塗ったかのように照り輝いている。


 乗馬は何か効果があるのだろうか。

 黙っていれば、人気ナンバーワンのお嬢様という噂は納得できる。


「さ、さわるまでよ! それ以上は怖いの」


 だから違うんだ。


 そう思いながらも、ガン見である。

 あの肌に触れてみたい。


 俺には幾つか弱点がある。


 例えば、ラーマの無邪気な笑顔、盛り上がる涙。

 例えば、ヨリの一途さとおっぱいのコラボ。

 例えば、レンの涼やかな声と愛撫。


 タキの安心感や、イリスのかゆいところを掻いてくれるような満足感とは違う、情欲に訴えてくるものだ。

 滾るとでも言うのだろうか?

 下半身に力がこもってくるのだ。


 これは愛情とかは関係なく、反応してしまうものだ。


 だが、涙目で裸のチカコもそれに通じる何かがあった。

 下半身がズキズキする。


「服を着ろ」

「いやよ、怖い顔してるから」

「普通に戻せないんだ」

「やっぱり、犯すの」


 チカコは涙を流した。

 駄目だ、このままでは俺が壊れる。


「早く、服を着てくれ」

「着たら、犯さない?」

「着ないと、犯すぞ!」

「わかった、わかったから」


 震えながらスカートを着るチカコは、急いでいるのだろうが上手くヒモが結べない。

 もどかしく、手伝ってやりたかったが、今の俺では引きちぎって脱がしかねない。

 もう一度見たかった。

 だが、きりがないのはわかっている。

 やがて、上も着終わると、俺は座り込んで、ふーと息を吐いた。

 目線をやっと離すことが出来た。


 チカコも草の上に座り込んでいる。


 これは一種の悪夢だ。チカコに発情し、その裸を忘れられない。

 こいつの頭が残念でなければ、普通に口説いている事だろう。


 口説くだって? 俺が、チカコを?


 どうやら、俺は半分壊れたらしい。

 出来れば、このことはなかった事にしたい。


「帰るぞ」


 俺は、やっとの思いでそう切り出した。


「腰が抜けたみたいなの。立てないわ」


 手を引っ張ってみるが、脚がついてこない。

 一度抱っこしてみるが、俺が耐えられなかった。

 視界に入ると押し倒したくなる。

 もう一度裸にしたい。


 強烈な欲望を我慢しながら、何とかオンブする。

 こいつもでかい方だから、結構重い。

 現地人が小さすぎるのか。


 暫く、トコトコ歩いていると、チカコがモジモジし始めた。


「トイレなら我慢しろ」

「ち、違うわよ」

「なら、動くな。重いんだからな」

「し、失礼ね。私はそんなに……」


 語尾ははっきりしなかった。


「私、重いかしら」

「ああ、重い」

「そう。でも、ヨリほど大きくないわよ」

「そうだな」

「し、身長のことよ」

「そうだな」

「残念な所じゃないわよ」

「残念って、確かにそうだった」

「変ね。あんた、さっきの怖い顔じゃなくなったわ」


 ある意味、今の方がチカコにとって怖い男になっている。

 欲望が強くなっているのだ。

 意識できるほどだから、逆に隠しているのだが。

 嫌われたくないという気持ちが、こいつに働くのが少し苦痛だった。


「もう、裸になるなよ。犯されたくないんなら、逆効果だからな」

「さっきは怖かったから、何でもして許してもらおうと焦ってたの。でも、あんたは残念なら見逃してくれるでしょ。さわりもしないんだから」

「うっ」

「何よ」


 こいつ、自覚がないのだ。

 成長してないと思っている。

 だが、自覚させないでおこう。

 トラブルを避けるためには、こいつに近寄らない方が良い。

 今度は俺の方が逃げることにしよう。


 14歳の裸は、心臓にも悪い。


 宿舎の側でカナとリンを見つけたので、チカコを任せる。


「こいつが一人で3段目に行かないよう厳重注意してくれ」

「何度も言ってるんですが」

「はあ、チカコをお守りするのか」

「何よ。私は一人でも大丈夫よ。今日だって野蛮人に追いかけられたけど、おっぱいで許してもらったわ」

「なっ」

「なっ」

「なっ」

「ユウキ様、あなた何したんです」

「ユウキ様、私はいつでも触らせますよ」

「違うんだ。チカコが勝手にさあ」

「何よ。キスで許してくれないから、ちゃんと見せたでしょ」

「ユウキ様!」

「ユウキ様!」

「ご、誤解だよ。後よろしく」


 俺は走って逃げ帰ってきた。

 流石トラブルメイカー、気が抜けない。

 勝手に見せといて、俺が強引にしたことになっている。

 しかも、キスまでしたかのようだ。


 その後、チカコを脅して、全裸にさせたとの噂が駆け巡り、少女たちの積極性が増した。




 夜にはキンが現れた。

 キン、ギン、ドウは、まだ避妊に同意しないから、指輪は渡していない。


 避妊はキンたちには理解出来ないのだ。

 14歳か15歳の処女では無理だろう。

 子作りしないなら、エッチもしない方が良いのではと思っている。

 何故か、頭の奥がズキリとする。


 イリスは経験が豊かになってきたから、わかってきた。

 本音は妊娠したいそうだが、時期を調整する事の大事さも理解してきている。

 祐馬や、ラーマとタキとレンの世話をするのが仕事で、大事なことだからだ。

 だが、子供を作らないが、しないと言うわけではない事を理解している。

 子作りを離れて、愛し合うことが出来る事を理解してくれたのだ。


 キンは前回と同じで、1時間弱俺を誘惑して、避妊を撤回させようとしたが、俺が譲らないので、諦めて戻った。

 その後、すぐにミヤビがやって来た。

 一応、キンに譲った所は認めてやろう。


「避妊するなら、私はOKよ」

「駄目だ」

「もう14歳よ」


 俺はドキリとする。

 今日は駄目だ。

 絶対に駄目だ。


「半年ぐらいで3年生だわ。地球なら経験済みも一杯だと思う」

「公式データにはない」

「公式になるわけないでしょ。プライベートな事なの」

「最低、満16歳が地球の法律だ」

「重婚してるくせに」

「だ、だから、満15歳まで引き下げたじゃないか」

「もう一声」

「たたき売りじゃないぞ」

「力ずくで犯してやる」


 ミヤビは襲いかかって来たが、腕力では俺のが上である。

 簡単に押さえ込んだ。

 しかし、ミヤビはマッパで、14歳の裸は俺の記憶を刺激する。


「うっ」

「何よ、したいんじゃない」

「違うんだ。今日は諦めてくれ。頼む」

「変ね、何かあった?」

「いや、何もないぞ」

「うーん、とにかく、私としてもいいのよ。夜中に宿舎に来てみなさいよ。くぐもった声であなたの名前を呼ぶ声が下級生からも聞こえるから」

「それって」

「そうよ、自分で処理してるのよ」

「女の子もするのか」

「当たり前でしょ」

「明日から、恋愛ものの映画でも流すか」

「ポルノの間違いでしょう。でも、結果は逆効果になるわよ、きっと」


 確かに、ミヤビの言う通りになったら恐ろしいのでやめておこう。

 ミヤビが帰り、一人になるとやはりチカコの全裸映像が脳内再生されてきた。

 これでミヤビなど抱いたりしたら、一生後悔すると思ったのだ。

 うめいていると、イリスが来て優しく跨った。


「イリス」

「良いのです。私が何とかしますから、楽になって下さい」

「わかるのか」

「女の影で苦しむぐらい、妻ならわかります。でも、何度しても強くなるようなら、それは妻でも消せない方ですから、ご自分で妻にして下さい」


 いつもは受け身のイリスが、俺の欲望を摘み取り、何度も上書きしてくれた。

 欲望は、イリスへの感謝に変わっていった。

 だが、イリスもせいぜい14歳なのだった。



 数日経ってから、ミヤビを連れて居住区画に行った。

 リーナさんが来て、ゴミを見るような目で説明を求めてきた。


「まさか、結婚式?」

「違うよ」

「それもコミで」


 ミヤビの頭を軽く叩く。


「リーナさんもオペレッタも考えて欲しい。何故、俺とラーマに子供が出来たか」

「やったからでしょう?」

「見てた」


 俺は一度こけた。見てたんかい!


「いや、そうじゃなくて、結婚するとき、リーナさんは人類初の試みって言ってたよね」

「それは、異星人と…… まさか!」

「そのまさかだよ」


 重苦しい空気が支配し、通り過ぎていった。


「ゲートね」

「多分」

「ひどい詐欺にあったような気分だわ」

「実は、大分前にミヤビが気付いたんだ」

「私だけじゃないです」

「まあ、ともかく、動物相と植物相がおかしいとわかったんだ。鹿と猪はいるけど、牛や羊がいないとか、均一の草原とか」

「それで、地球産が飛ばされてきて定着したと。ベテルギウスで焼かれて生き残ったの?」

「笑わないで聞いてよ。ベテルギウスは危険だけど、ゲートは安全なんだ。俺たちだってゲートを抜けてから危ない目にあったはずだよ」

「オペレッタちゃん、再生して」


 リーナさんが確認して考えている間に、オペレッタに異星人の遺伝子サンプルを、人類として並べ替えてもらった。


「確かにゲート内では時間そのものが流れない。見事にゼロだわ。入るときと出てくるときに多少の時間伸長があるだけで、内部に入ったことすらなかった事になってるわ」

「つまり、何も起きない空間と呼んでもおかしくない。だから、ゲート通過中は安全なんだ」

「それでも移動したトンネル状の空間があるわけでしょう」

「理論上、そう説明されているだけです。実際に時間が流れない空間など物理学上はないものと同じです。ただ、空間を移動した見かけ上のトンネルを想定した方が理解しやすいだけなんです」


 ミヤビが多目的ディスプレーを操作して図解する。


「こう、トンネルがあったと説明しないと、宇宙の構造自体が十一次元体に変換でもしない限り、おかしくなります」

「時間がゼロなら空間もゼロにしないとならないのはわかるわ。なら、どうして私たちはミヤビたちより未来にいるのかしら」

「約45年のズレですね。これはベテルギウスの縮退が影響したと思われます。光速以上で縮小する恒星表面を見たのですよね」

「画像が残っていないのよ」

「多分、ウラシマ効果が起きたからです。記録はすべて同期しないので、人間の感覚だけが認識するのです。アバウトさがそう見せるのですよ」

「そう、正確な知性体じゃ無理なのね。私たちはユウキの感覚に任せてしまったわ。でも、トレインは事故を起こした。あなた方が被害者としてここにいるじゃない」

「仮説ですが、ここにある天然物のゲートとトレインの人工物が交錯したのだと思われます。くじら座内に天然物のゲートがあるなんて、誰も考えていませんでした」

「そんなことが起きるのかしら」

「現在は設置型のゲートは使われていません。船がゲートを作り出す、自己生成型に変わってるのです。設置型なら、交錯の証明や事故調査も簡単だったのでしょうが、大きな天然物のゲートでも、宇宙の単位からすれば、糸よりも細いですから、見つけるのは困難でしょう」

「直径が1キロあっても、宇宙では点にもならないわ」


 リーナさんは、ため息をついた。


「それで、この世界の人間なんだけど、オペレッタ、並べ替えは終わったか」

「白系ロシア人、チベット人か琉球人もしくはアイヌ系の日本人、南米原住民もしくはポリネシア人に大別される」


「随分と少ないのかしら、それとも雑多というべきかしら」


「そこで、ベテルギウスを頂点として、ここの星、くじら座のブルーホエール、地球、村長の惑星と並べるとこうなる」

「フラクタルか渦巻き、楕円じゃないわね」

「プロミネンスの先が渦巻くように見えますよね。ここからくじら座を巻き込んで、地球で渦を巻き、双子座で終わる感じです」

「これが今でもあるなら、地球はどうして無事なのかしら。毎年飛ばされる人間がいてもおかしくないわ」

「ベテルギウスが弱まったんだよ。今では大分地球から離れている。校長の飛行記録は公開されていたんだ。ベテルギウスから飛ばされた先が、光の速度で地球から2ヶ月ぐらいか」

「ここのは、どうして移動していないのよ」

「根元に近いからだと思う。ベテルギウスから離れるほど差が大きくなるんだ」

「まあ、今のところすべては仮説なんですが」

「それで、これからどうするつもりなの?」

「とりあえず、ゲートを捕まえる。310光年飛ぶよりも、ゲートに賭けてみようというのは、リーナさんと同じ考えだよ」



 資材船に生活必需品をのせて打ち上げておいた。

 自分自身は、流石に資材船で打ち上げられるのは耐えられないだろう。

 探査機を降ろしてもらった。


 探査機は一人乗りだが、荷物を減らしたので2人乗れる。

 俺はミヤビと行くつもりだったが、当然のごとく横槍が入りまくった。



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