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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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50 増村と不安

 50 増村と不安




 ニタと息子2人が、侍女やタマウの夫人たちに子供などを連れて出発した。

 リヤカーと荷車は8台が限界だったが、小麦と大豆、鶏、酒、味噌と醤油を持って行かせた。

 定期的にカマウが往復するので、焦ることはない。


 侍女がどうくっつくかは、ニタと息子の頑張り次第である。

 別に無理に結婚しなくても良いとは思う。


 最も侍女たちはズルイ出身だから、北に帰れるのが嬉しいようだった。

 道路があるので、女でも一週間もあれば帰ってこれるという安心感も大きいようだった。

 まあ、ニタは女好きだが、大切にするから大丈夫だろう。

 砂金で小麦や大豆が手に入れば、文句など出ないと思う。


 餞別に平鍬5丁、備中鍬10丁渡すと、ニタよりも侍女たちの方が驚いていた。


 金属の価値と威力がわかるからだ。


 ズルイに攫われ、親兄弟もどうなったかわからず、ただ女であるだけで期待されて引きずり回されてきた少女たちは、今では部族の女たちが羨望する侍女として、これからのニタ村を発展させていくのである。

 それだけの努力はしてきている。

 期待していいだろう。


 第二陣は翌日、サンヤの部隊30人と囚人29名だった。

 父ジャケの二番弟子と若い見習がついていく。

 橋の作り方は湿地帯で現物を見るから良くわかるはずだ。

 先発したニタやカマウとも合流するだろう。


 囚人たちは、前に尋ねておいた。


「橋作りをして解放されれば、ニタ村で妻たちが待っている。嫌ならボルネオ島に送る」


 資材船が飛ぶのを2度も目の当たりにしてきたので、脅しとは思えなかったろう。

 カカの配下には妻がいないが、仲間と離れる方が嫌だったのだろう。

 全員が橋作りを選んだ。

 逃げても空飛ぶ船が現れたら、ボルネオ島に連れて行くから覚悟しておけと、たっぷりと脅しておいた。


 サンヤの兵力がガタ落ちになるが、普通の部族ならば訓練されたマリブの指揮する10人で倒せるので、あまり心配していない。

 当分は、街道沿いにいて、交代したりすると言うことである。

 中央の部族と言うことになるかも知れない。


 橋の警備で美味い酒が飲めるというので、サンヤの男たちはやる気満々である。

 一方で、乳飲み子を抱えた妻たちは、ラシ村で芋畑を開墾しながら待てるというので喜びにわいている。

 一度収獲すれば実感もわくだろう。


 父ジャケの一番弟子が長屋作りにカリモシ村から派遣されてくるので、一時の辛抱だろう。


 ラシが出発したのはその3日後だった。

 従うイタモシの戦士10人は元部下である。

 サンヤの妻たち30人と乳飲み子30人、戦士の妻子と、侍女10人を連れて行く。

 侍女のうち3人はラーマ、タキ、レンが一人ずつ推薦した直属の部下である。

 村の運営にラシが煩わされることは無いだろう。

 サンヤの兵も10名がオフの期間はいるし、泥炭の掘り出しもある。

 村長として指揮していたら大変なのだ。



「カリス、お前ラシについていったんじゃないのか」

「サラスです。ラーマ様に言われて残りました」

「そうか、それは残念だったな」

「いいえ、サラスはカズネ様が嫁いだら、代行になるんです。ラーマ様は子育てでお忙しいでしょうから、役に立つつもりです。ラシ村なんかに行っている暇はありません」

「だが、それじゃ婚期を逃してしまうかも知れないぞ」

「何言ってんですか、代行が補佐になれば、領主様の奥方じゃないですか」

「ああ、奥向きというのか。侍女より上だな。俺の食事も作ってくれるか」

「まあ、作れと言うならいつでも作りますが、何か変な気がします」

「そうかな、まあ頑張ってくれ」

「はい、頑張ります」


 その後、カリスとトリスとも同じような話をしたが、忙しいので忘れていると、キン、ギン、ドウが私たちの方が先のはずですと怒っていた。

 まあ、食事作りが好きなんだろうと考え、そのまま本当に忘れてしまった。


 イタモシが出発するときに種芋を渡し、『3ヶ月で戻る場所があるようだったら試してくれ』と伝えた。

 3ヶ月ごとにその場所で芋が取れれば、とりあえず飢えることは無くなるだろう。

 いい場所なら村を作れるかも知れない。

 一カ所が駄目でも、別の場所では上手く行くかも知れないから、試す価値はあると思う。


 多分、何処でもそれなりに育つと思うが、一番ありそうなのは猪に先を越されることだった。

 上手く育っても、先に猪が食ってしまうのである。

 まあ、その時はその猪を仕留めて食糧にしてもらうしかない。


 サンヤも順調に出発し、街道沿いを一巡りしてくれると言っていた。

 俺には新たな侍女見習いとの儀式が待っていたが、キン、ギン、ドウの3人が専用のはさみを使えるようになり、かなり楽できるようになっていた。

 命名と、股洗いだけは別だったが。


 ラーマとタキとレンの側付き侍女のうち各1名は、右筆という肩書きにし、木簡というか25×30の薄い板に炭で記録を書かせるようにした。

 完成した書類は樹脂を塗っておけば消えないし、割れにくい。

 畑の権利についてはタキが記録し、所有権と言うより認可にした。


 土地争いが起こらないようにである。


 人事関連のレンには、日本語会話、読み書き、大工、酒造り、竹細工、草鞋やジカタビなどの許認可も木簡で作り、技能に達したものに発行して与えるようにした。

 勿論、ラーマには料理、加工、備蓄と3段階の許可を発行させた。

 カズネが代行している。



「何故この星には牛がいないんだろう」

「猪や鶏がいる方が奇跡だと思いますけど」

「鹿や狼がいるんだから、いてもおかしくないだろう」

「いいえ、ここの動物も植物も何か変です。サルは見つかりました?」

「いいや、サルぽいのは見たこと無い」

「ウサギがいるのにネズミはいないんですよね」


 午前中の勉強が一段落ついたので、ミヤビと休憩中である。

 村作りも順調に進んでいる。

 リーナさんは研究に打ち込んでいて、最近は外のことには関心がないようだ。

 資材船の往復すら気にしなくなっていた。


 オペレッタも軌道上で金と樹脂による保護膜の形成に忙しく、領内の覗きが息抜きぐらいしかならなくなっている。

 新エンジンが出来るまでは二人とも邪魔しない方が良いようだ。

 下手に構うとリータが現れるから恐ろしいし。


「そもそも、人間がいるのが不思議です」

「進化の頂点なんだろ」

「だって、ユウキさんと子供が作れたんですよ」

「似たような進化を遂げたんだよ」

「普通はあり得ません。ゴリラとオランウータンは遺伝子的に近くても繁殖は出来ないと思います」


 ラーマは定期的に検査しているがとても順調である。

 安定期とやらに入ればムフフである。


「まあ、知性体は似てくると言う証拠みたいなもんだ」

「でも、鹿モドキはまったく別の動物です」

「馬の仲間だろ」

「いいえ、あんな動物、地球にはいません。そもそも知性がありすぎます。テレパシーみたいに心が通じるなんて、人間以上ですよ」

「まあ、犬より理解力はあるよな」

「しかも、あの草原です」

「草原は変じゃないだろ」

「いいえ、だって何処まで行ってもあの草原なんですよ」

「森や林もあるじゃないか」

「でも草原は変わりません。普通草原って言ってもススキの原やクローバーとか菜の花とか種類が変わるはずなんです」

「酸素濃度のせいじゃないか。二酸化炭素を取り込めなかった種はなくなったんだよ」

「じゃあ、何故米や麦はあるんです。トウモロコシもありましたよね。大豆と小豆、まるでどこかの農村が移転してきたみたいです」


 俺はぎょっとした。

 ミヤビも自分で言っておいて、同じくぎょっとしている。


「まさか、ゲートで飛ばされたのか」

「それも地表から」

「待て、じゃあ何故狩猟民族なんだ。農村なら農民であるべきだろう」

「こちらが先祖かも知れませんよ」


 俺とミヤビはいつの間にか小声になり、抱きついて話していた。

 途方もないことを思い付いて、何だか急に怖くなったのだ。

 宇宙、ゲート、地球、人類、ベテルギウス。


 俺たちは何もわかってないのではないか?


 急に世界はあやふやなものになり、地面が地面として存在していないかのようだった。


 まだ、何も明らかになったわけではないので、ミヤビにきつく口止めして(キスだったが)、午後はタルト村に行った。



 芋焼酎とメープル酒にワインを試飲した。

 タルトが引き抜いた酒造りは腕が良く、初の焼酎もすっきりとした味を引き出している。

 これなら割って飲む酒に適している。

 1樽で小麦酒5樽分のアルコールになるだろう。

 輸送を考えるとこれの方が良い。


 メープル酒は強烈だった。

 蒸留せずにこれだけ強い酒はないだろう。

 甘みと風味はいかにもメープルという感じだったが、これはかなり酔っぱらうだろう。

 ワインは1年と2年ものを飲み比べたが、やはり寝かした方が味はいい。

 俺は地球でワインを飲んだことはないが、かなり良い酒になっていると思う。

 野生のブドウでこれだけの味が出せるのだから、毎年のブドウ狩りはやめられないだろう。


 タルトに頼んで、酒造りをカリモシ村に派遣してもらう事にした。


 サンヤやニタにメープル酒を送るのは、カリモシ村からの方が早い。

 すぐにカリモシ村も生産できるようになるだろう。


 ナナとサラサが迎えに来た。

 タルト村に風呂が出来たのである。

 ラシが送ってくるようになった泥炭を迎賓館で試行錯誤して、炭の何倍も効率がよいことがわかってきたので、特に火保ちが長い必要がある風呂には最高だった。

 炭より癖のある香りがするが、慣れてくれば何でもない。

 経済的にも炭の5倍から10倍はいくだろう。

 日々の料理の火力も炭に取って代わりそうだ。

 炭は高級品になるかも知れない。


 泥炭を燃やした上に炭を置き、送風機で風を送ると、金や銅が溶ける事は、今のところ秘密である。


 風呂は完全室内で、岩場側に明かり取りはあるが、少し暗かった。

 シャワーは無理だから、湯船ですべてをまかなう。

 女たちが取り仕切り、男たちは今のところ週一しか入れないらしい。


 湯船は大きく無いが、深さがあった。

 1mはあるだろう。

 湯船のお湯を使うための工夫だろう。

 水も竹筒を降ろせば入って来るようになっていた。

 これは、父ジャケの工夫だろう。


 俺は石けんがないか探してみるが、流石にない。

 甕があり、中に水石けんが入っている。

 これは領内の少女たちが質の良い石けんを確保してしまったため、急遽ヒマワリ油とコーン油に豆乳を足して作ったものである。

 勿論、油はそのままでは石けんにならないから悩んでいるとミヤビが教えてくれたのだ。


「石けん? 天然石けんはきつすぎますよ」

「ヒマワリ油かコーン油で石けんを作れないかな。領内で独占して、少し肩身が狭いんだ」

「水石けんで良いでしょう。シャンプーは二、三日に一回だけですよ」

「で、炭の灰とか集めたんだが、灰汁って何が良いんだ」

「灰汁で煮出すんですか?」

「違うのか」

「時間がかかるし、出来もばらつくので面倒です。水酸化ナトリウム溶液で良いでしょう。大豆と卵から界面活性剤を取り出すのも飽きましたし」

「?」

「この前、マーガリンを作ったでしょう」

「ああ、マヨネーズかと思っていたら、違ったな」

「エマルジョンといって、我々の化粧用乳液を作った残りを使ったんです」

「?」

「まあいいです。とにかく苛性ソーダですよ」


「何処で取れるんだ」


「はあ、チカコの言う通り野蛮人ですね。こんな人がガラス煉瓦なんて良く作れたもんです」

「あれは砂浜が石英だったからさあ。偶然?」

「そう言えば、分離した炭酸カルシウムはどうしたんです」

「?」

「だから、砂浜の石英を分離すると、残りは炭酸カルシウムですよね」

「ああ、あれは川に流した」

「今度は取っておいて下さい。歯磨きを作りますから」

「わかった。それで灰汁なんだが」

「だから、灰汁に戻らない」


 ミヤビに怒られた。


「はい」

「我々は現代人です。現代人は工業製品で石けんを作ります」

「工場を造るのは嫌なんだが」

「当たり前です。工場ではなく、工業製品ですよ。まず、シャンプーやボディソープはカリウムが必要です。しかし、見付からないでしょうから、普通は灰汁からカリウムを取り出します。ですが、それも一週間以上かかって大変なので、今回はナトリウム石けんを作ります。まあ、洗濯石けんみたいなものです」

「あの硬い奴か」

「だから水石けんにするのです」


 それからミヤビは、俺にランビキで蒸留水を作らせた。

 ランビキ2号は女性陣の香水用に1段目に設置してある。

 既に何度かバラ水や香りの良い花から香料を作り出している。

 ソーラーと塩に容器、扇風機を用意させると、折角の蒸留水にミヤビは塩を入れてしまう。

 電気分解するのだそうだ。

 扇風機は安全用だ。

 水素と塩素は危険だからという。

 大分時間はかかったが、ミヤビを納得させる液体が出来たようだ。

 鍋で煮るというより茹でる感じで油を入れていくと確かに濁りが出来た。

 たぎらせるように煮ては駄目らしい。

 上澄みを捨て、塩を入れて更にかき混ぜて、ゼリー状のグリセリン(?)をすくい取り、固形化しないように薄めた豆乳に混ぜ込んでできあがりだった。


 それがここにある。

 勿論、米ぬかも置いてあるが、ランジェリーの端布で作ってあるので、手は出せない。

 悩んで、お湯で簡単に流して湯船に入る。


 おお、深いぞ。


 領内の風呂のように寝っ転がっては入れなかった。

 お湯が満杯と言うこともあるのだろう。

 堪能したので上がろうとすると、ナナとサラサが入ってきた。


「流しましょう、ユウキ様」


 二人はそんなことを言って、手に水石けんをつけて俺の両腕から洗い始める。

 二人とも子供を産んで、色気が増したようだ。


 何、この天国。


 最近、正直者に転向した下半身が反応し始めると、ナナもサラサも微笑んで、洗おうとする。


「もう、十分だから」


 俺は石けんを流しきらずに飛び出すと、領地に逃げ帰った。

 小作たちが何事かと見ているが、気にしてる余裕はなかった。



 毎晩、寝る前のラーマとお話しする。

 ベッド脇に座って、ラーマの手を握り、ラーマの笑顔を見る。

 話などどうでもいいのだ。

 大体体調の確認から、今日は何をしていたかぐらいのことである。

 この日はミヤビの発言に動揺していたが、ラーマの無邪気な笑顔を見ていると、異星人でも地球人でも、枝分かれした同胞でも関係ないと思った。

 ラーマを深く愛しているし、ラーマがいることが幸せだった。


 その後、タキかレンが来るまで待っている間にウトウトしてしまった。

 気付くとタキがベッドに潜り込んで来て、キスしている。

 十分に答えてから、上になりおっぱいに吸い付く。

 左右平等になるようにすると、甘やかな声が聞こえてきたので、身体中を愛撫していてやっと気付いた。

 これはタキやレンの身体でも反応でもない。

 薄く照明をつけると、小指を噛んで堪えているミヤビが現れた。

 俺は冷や汗をかいた。

 13歳の少女の股の間で、何をしているんだ。


「もっと、続けて、ユウキさん」

「おい、ミヤビ。これは拙いぞ。危うく……」

「危うく、何です」

「しょ、いや、喪失するところだったぞ」

「許嫁ならいいじゃない」

「親に許可ももらってないから、正式じゃない。それにまだ13歳じゃないか」

「江戸時代なら、立派に大人ですよ。八百屋お七も明けて15と言ってますし、ジュリエットもせいぜい13か14ですから」

「地球では満年齢だ」

「精神年齢なら、ユウキさんより上です」

「とりあえず、パンツをはけ」


 この部屋は改造するときに、3部屋ごと潰さずに2部屋を繋げ、残りの一部屋を支度部屋に残し、ドアをつけた。

 その、準備をしたり、後始末をしたり、軽く飲み物を用意したりも出来る。

 お湯は保温ポットで用意してあるし、簡易式の冷蔵庫には、色々と飲み物が用意してある。


 ミヤビはそこに放り込んだ。


 そこで、ミヤビも準備して俺の部屋に来たと思うと、色々手遅れのような気もする。


 タキもレンも、ミヤビに言われて今夜は譲ったのだろう。

 女神様優先のルールを守りすぎだ。

 阻止は無理でも、焼き餅ぐらい焼いても良いだろうに。


 ミヤビは自分の分だけ紅茶を淹れて戻ると、テーブルについて飲んでいる。

 パンツしか身に着けていない。


「今夜は帰りませんから」


 どうやら色々と気に入らないらしい。

 長めの坊主頭をうつむけているが、むくれているのが感じでわかる。

 俺も別に喧嘩をしたいわけじゃない。


「俺はミヤビが好きだ。抱きたいとも思っている」


 ミヤビは少し驚いて顔を上げる。


「だけど、今夜みたいな不意打ちは駄目だ。ちゃんとお互いに心が通じ合ってからじゃないと、俺はミヤビを抱くんじゃなくて、ただ少女を慰み者にしているだけになってしまう。それではミヤビに申し訳ない」


 今度は涙を流している。

 この感じは以前のタキやレンと同じだ。

 情緒不安定なのだ。

 きっとあの秘密も影響しているのだろう。

 そう思うと何故今夜だったのかが良くわかる。

 俺も不安だったからだ。


 しかし、頭の良いミヤビでも感情は持て余すのか。


 この年齢の少女の恋は、一直線だとヨリも言ってたっけなあ。

 自分を受け入れてもらえるか、自分に価値があるか、好きになってもらえるか、そんなことで心が一杯になってしまい、他は見えなくなる。

 客観性や損得勘定がない分、純粋でもある。

 大人の恋とは違うのだろう。


「心が結ばれないのに、身体だけ繋がってもあんまり意味はないんだ」


 ミヤビは、暫くうつむいてから涙を拭うと見つめてきた。


「私もユウキって呼んでいい?」

「試しに呼んでみてくれ」

「ユウキ」

「うん」

「ユウキ」

「ああ、前からそう呼ばれていたみたいな気がするよ」

「子供だから駄目なんて言わない?」


 確かに、子供扱いされるのが嫌なんだったな。


「童顔を直さないとな」

「ひどい、気にしてるのに」

「うそだよ。一気に大人になる方がつまらないだろ」

「おっぱいみたいに?」

「おっぱいみたいに」

「ああ、これで誘惑できると思って来たのに」

「十分に誘惑されてるよ」


 ミヤビは弄んでいた紅茶のカップを置くと、ゆっくりと歩き甘えるように抱きついて来た。


「ユウキ、キスして。いつものふざけた奴じゃなく」

「うん」


 何度か繰り返したが、俺もミヤビもパンツを脱ぐような事はしないのが、お互いにわかっていた。



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