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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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35 女神と保険

 35 女神と保険




 乗客130名の代表は、下半身がサイボーグのような少女だった。

 実際は遺伝子治療中であり、医療用アンドロイドの付き添いがいた。

 彼女が一番の重傷者だった。


「ミサコ様は電源の喪失により、治療器に不具合が生じてしまいました。早く再起動をかけないと治療が無駄になるばかりでなく、二度と脚が使えなくなります」

「セルター、こんな事態です。私だけ我が儘を言うわけにはいきません」


 セルターと呼ばれる、付き添いのアンドロイドが訴えてきた。

 ミサコには、委員長タイプのいかにも代表という雰囲気があった。

 だが、治療器の不具合で苦痛を感じているのかも知れない。

 病気を抱えているのはもうひとりいて、4年生だった。

 彼女は所謂小児喘息で、治療薬はリキッドに汚染されて使い物にならなかった。

 8時間もすると症状が現れる可能性があった。

 リキッド解放後も影響があるのか、顔色が悪い。


 レンは簡易コンロで紅茶を淹れて、疲労している者たちに角砂糖で糖分を取らせている。


「ヨリ、助けが来る可能性はないのか」

「ここが、本当にエリダヌス座なら、絶望的です。我々は首都ホエールシティからブルーホエールに転校の途中だったのです。これでは誰にも見つけられないでしょう」


 ヨリは黒髪の少女で、ヨリコが本当の名前だが、最初から従順で軍隊教育を受けたかのような対応が見事なので、側に付いていてもらっている。

 非常事態の中では人材の確保が明暗を分けるのだ。


「それにしても、それが学校の制服なのか」


 俺が思わずうめくと、ヨリは面白そうに胸を張った。

 セーラー服に良く似た形状だが、全部透けて見える。

 下着も透ける素材で、もはや何も隠せていない。

 ヨリは中1のくせに170もあり、巨乳でもある。

 スカートの中のパンツにうっすらと黒い恥毛まで見えている。

 救助の時は動転していたのか、それとも、この星に長くいたせいか、裸が透けて見えていても気にならなかったが、一段落すると明らかにおかしく見える。

 地球まで、裸が流行っているのだろうか。


「あら、これが最新の素材なのよ。野蛮人のお兄さん」


 リーナさんを金髪にして少し幼くし、生意気にするとこうなる感じの少女が割って入ってきた。

 チカコという引率の上級生だ。

 人に絡んで足を引っ張ってくるようなタイプだ。


「忌ま忌ましいリキッドでこんなになっているけど、本当は上品に重なった部分が隠れるように出来ているのよ。だから、あんまりいやらしい目で見ないでちょうだい。我々はみんな上流階級のお嬢様なんだから」


 俺は、胸を隠すチカコを無視する。


「ヨリ、回復した者から私物を取りに行かせてくれ。毛布やシーツがあればそれぞれが身体に巻いても持ってくるようにしてくれ。布はこの星では貴重どころか重要品になる」

「わかりました」

「ハインツとセルターは貨物船を見てきてくれ。使用可能なものは荷物にならなければ持って行く。リストアップしてくれ」

「私はミサコ様専用のメディカルアンドロイドです。離れるわけにはいきません」

「お前の仕事は暫く変更する。全員のために働け」


 俺はミサコを抱き上げ、レンに喘息の子を連れてこさせるとホバーに連れて行く。


「私の仕事は……」

「私を無視するな……」


 騒いでいる連中は後回しだ。

 部族が現れたら少女たちは攫われてしまうだろう。

 そうなれば、焼いた肉と木の実、毎日草の上で寝て歩き回る生活だ。

 上級生は森に連れて行かれるだろう。

 ここにいれば確実にそうなる。

 お嬢様にはきっと耐えられない。


 ホバーから携帯できる武器を外し、食糧とコンロをザックに入れる。

 炭をまとめて縛り、シュラフも丸めて縛る。

 使えるものを取り出すと、ホバー前部にミサコを乗せ、後部には4年生の子を乗せる。


「ミサコ。俺の領地まで頑張ってくれ。メディカルルームなら、その治療器も何とかなるだろう。200キロあるが、1時間はかからないと思う」


 ミサコはシートに沈みながら俺を見つめて、


「皆のこと、よろしくお願いします」


 と、涙目でいった。

 悔しいのか、辛いのか、両方だろうな。


「引き受けた。それより後ろの下級生のこと頼むぞ」

「わかりました。頑張ります」


 責任感が強いのか、下級生を預けられて、逆に瞳に力が戻った。


「オペレッタ、頼む」


 キャノピーが閉まり、ドンとホバーが舞い上がった。

 南の方へ飛んでいく。


 俺はでかいリュックとザックを担ぎ、レンにはかさが張るが見た目ほど重くない炭を担いでもらった。

 ひ弱に見えるレンでも、この世界出身だから、お嬢様方よりも頼もしく見える。

 歩くだけなら、部族で鍛えられているだろう。


「レン、暫く辛抱してくれよ」

「130人もの女神様を助けるなんて、誇りになると思いますわ」

「我が儘な連中だと思うが、よろしく頼むよ」

「女神様は、ユウキ様の部族のものなのでございましょう?」

「まあ、そうなるかな」

「ならば、レンはきちんとお仕えするでございます」


 去年のレンならホバーに無理矢理乗せてるところだ。

 だが、今のレンは頼りになる仲間だ。


 戻ると、丁度ハインツが船から出てきたところだった。

 俺の荷物に仰天しているが、それどころではない。


「何かめぼしいものはあったか」

「可燃性のものは燃えております。もう一両は鉄やアルミなどの金属板ばかりでしたよ」

「奥に汎用アンドロイドがありました」


 セルターが出てきて報告する。


「いくつかの状態は良いようです。けれど、ここでは起動できません」


 使えそうなものはなかったか。

 今回の非常事態をしのいだら、アンドロイドは取りに来よう。

 動けば畑の作業や子供たちの世話に使えるだろう。

 工作船でリーナさんが起動してくれる。

 損傷もある程度なら直せる。


「お前たちは戦えるか」

「戦闘などプログラムにありません」

「私は医療用です」

「そうか、ならば子供たちの世話を頼む。はぐれないように注意してくれ」


「あなたの権限を確認しても良いでしょうか」

「俺はこの惑星の人類の代表だ。どんな権限でも俺の権限より上はない」

「しかし、あなたは医者ではないでしょう。医療アンドロイドに命令を下すには医者か指定された患者である必要がありますが」

「緊急事態だ。お前たちは惑星代表により徴発されたことになる」

「私は医療用です」

「俺が医者を任命できる。推薦者はいるか?」

「おりません」

「ならば、医者が来るまで、惑星政府の直轄とする」


 セルターは男とも女ともとれる曖昧な姿をしている。 

 ハインツはボーイだ。

 戦力にはならないが、子供たちがはぐれないように見張ることぐらいは出来るだろう。


「ヨリ、最上級生を集めてくれ」

「はい」


 全員がそろうと、今後の計画を話した。

 すっ飛ばそうとはしたのだが。

 ハインツとセルターは、見張りに出した。


「まずは本拠地をあの南の山に移す。議論は無しだ」

「横暴よ。救助が来るかも知れないでしょ」


 チカコである。

 議論は無しだって言っているのに、こいつは聞いちゃいない。


「救助なら軌道上でも確認できるし、南の山は直ぐそこだから見逃すことはない」

「移動するメリットは何ですか」


 最上級生なのに小さな子供に見えるのはルミコだ。

 ブラもつけていないが、キラキラの瞳で人なつっこい。

 危機意識が感じられないのは困ったもんだが、怯えて泣かれたりするよりはマシなのだろう。


 9人のうち3人はミサコ派だろう。

 ミサコを最優先にした時点で、俺のやることに文句はないようだ。

 そして、3人はヨリとその友達だ。

 ヨリが俺の副官みたいにしているから二人とも不安はあっても文句はないようだ。

 武闘派は潔い。


 残りの3人が中立だが、チカコは文句を言いたいだけの我が儘娘である。

 ルミコはキラキラのお子様で好奇心がいっぱい。

 もう一人は温和しい、声を聞いたことがない少女である。


 とりあえず主導権は取れているのだが、今後の計画を話しておかないとどんな事故が起こるかわからない。

 ミサコがいれば、彼女を説得すれば済んだのだろうが、仕方がない。


 そこで、時間が惜しいが話をすることになった。


「第一に、ここは目立つ。時間が過ぎればどんな部族が見に来るかわからない。彼らが来れば君たちを攫おうとするのは間違いない」

「話が通じないのですか」


 今度は、カオルコが聞いてくる。

 ミサコ派のひとりだ。


「通じない」

「あなたはどうしてるのですか」

「俺には通訳がいる。皆ももう知っているだろうが、レンはここの部族出身だ。レン」


 レンが隣に来ると、皆がホーと息をついた。


「小さいけど、凄い美人」

「綺麗」


 などと、声が出る。

 俺の美的感覚が、地球人類からは、ずれていなかったようだ。


「女神様方、あなた方はここの部族にとって非常に価値のある存在です。それを自覚なさって、ユウキ様にご協力下さい。あなた方の一人でも攫われれば、ユウキ様は命がけで取り戻さなければなりません」

「私たちの価値って何よ」

「女神様として、子供を産む価値です」


 レンのストレートな言い方に、絡んだチカコも流石に引きつっている。


「野蛮人の星なのね。人類と子供が作れるものかどうかも、わからないの」

「さあ、試してみないとわからないと思います」

「あなたは、その男と試したの」


 チカコは俺を指さすが、指先が少し震えている。


「私は今朝女になったばかりですので、試すのはこれからになります」

「きゃー」


 何人かの女子が声を上げる。下級生たちが注目している。


「おい、レン」

「ユウキ様、レンではお嫌でございますか」

「いや、そうじゃなくって、話が進まないだろう」   

「そうでございますね。では、続きをどうぞ」


 レンは軽く頭を下げて後ろに下がる。


「理由の二つ目は、水が確保できるからだ。南の山には小川があって飲むことが出来る。勿論、水浴びも洗濯も出来るぞ」


 流石はお嬢様方だ。

 水浴びと洗濯には反応する。

 リキッドはさらさらしていたが、気持ち悪いだろう。

 乾きも悪いし、さっきから丸見えだ。


「三つ目は、安全の確保がしやすい。森と小川と崖が緩衝地帯になってくれる。四つ目は、酸素濃度が高くても小川があるから焚き火も出来るし、食事も作れる。この星では命の果実と呼ばれているモモも沢山あって、今が食べ頃だ」



 3人でひと組の班を作らせ、5班を1分隊として年長に統率してもらった。

 4年生には一人足りない班も出来たが、8分隊で127人。

 残りの一人はヨリで、最後尾をレーザーライフルで守ってもらう。

 猪や熊は迷わずに撃てと指示した。


 二人組だと一人を追いかけて二人が消えてしまう可能性があったが、3人組だと一人が消えれば直ぐに報告が来るのである。

 南の山までは4キロ弱だった。

 高低差があるし、歩きやすい場所ばかりではなかったが、2時間で到着した。

 お嬢様には、これくらいが限界だった。


 南の山に到着すると、川と森の間に駐屯した。

 上流で飲料水と調理を行い、下流側で洗濯とトイレを済ませてもらう。

 ヨリと、友達のカナとリンの二人には下流域の警戒を任せ、念のためハインツをつけた。

 セルターにはモモを取って配らせ、俺とレンは食事を作った。


 途中、騒ぎが起こると必ずチカコが犯人だった。

 虫がいただの、モモが採れないだの、水浴びを俺に覗かれるのは嫌だとか、トイレの場所が段々広がってるだの、少しずつだが俺の忍耐を削っていく。


 幸いだったのは、シーツと毛布は全員分あったことだ。

 ミサコと4年生の分と余りは、カナとリンが分担して持ってきてくれていた。


 食事は全員が一度に取るのは無理だったので、2回に分けた。

 チカコは騒ぎを起こすばかりだし、ルミコはマイペースすぎて指揮を執れない。

 ヨリとカナとリンには警戒をしてもらわなければならないので、残り4人のうちのカオルコとミヤビ(この子はコがつかない)を臨時代表と副代表に任命し、指揮を執ってもらう事にした。

 食糧の分配、寝床の手配、点呼、洗濯物の管理、具合の悪いものの配慮と、仕事がいくらでもあるからだ。


 驚いたことに副代表はチカコだったのだが、俺が却下し、二人に強引に任せた。

 この人事に不満があるのはチカコだけだったので、無視した。   


 夜、カナとリンには俺のシュラフを使ってもらい、ヨリには余った毛布を無理矢理使って眠ってもらった。

 今のところ、この3人の体力が一番大事である。早く寝てもらって、朝には見張りを交代してもらう。

 焚き火は3箇所にし、時々見回りながら薪を足しておく。

 レンはヨリに生理用品を分けてもらうと、すこぶる快適なようで、毛布にくるまって寝てしまった。

 元々早く寝る習慣だし、外で寝るのは慣れている。


 ハインツとセルターと俺が寝ずの番だ。


 俺が中央で見張っていると、意外なことにミヤビとアキが話があると寄ってきた。

 ミヤビはゲートの研究者の娘で、アキはゲートトレイン社の幹部の娘だそうだ。


「今までこんな事故はありませんでした」

「俺はこんな所まで吹き飛ばされたがなあ」

「ゲートは距離に干渉するのではなく、時間に干渉するというのが最新の理論です。勿論、すべては未来にしか繋がりません」


「すると君たちは310年後の未来人か」

「いいえ、それではゲートが働いていません。私たちは、あなたが出発された年から60年後の未来の人間です」

「へえ、以外と飛ばされなかったんだな。60年の間に俺の親父は帰ってこれたのかなあ」

「それが重要なんです。あなたは尼川祐一氏の息子ですよね」


「そうだ。親父は無事なのか」


「いいえ、未だ行方不明です。しかし、その名前は絶対に明かさないで下さい。そうですね、あなたは田村祐貴という偽名で、ホエール社が出来る前に宇宙に飛んだ事にして下さい。有名な俳優と同じ名前だと言うことで話がそれるでしょう」

「何だってそんな大げさな話になるんだ」


 ミヤビは仕方がないなと言う顔をすると、アキに一度確認するような視線を向ける。

 アキは口を塞ぐまねをした。


「ホエール社は地球200個分の経済力を持ちながら、未だに独立せず株式会社のままです。そして、そのホエール社とすべての関連会社の株式の45%はあなたの父上の名義なのです。いいですか、ホエール社で一番力がある総支配人でも3%も持っていないのです。あなたの父上には、宇宙の半分を持っているのと同じ経済力があるのです」


「祖父さんは稼いだけど、親父は何もしてないぞ」


「そのお祖父様がゲートの利権を発行株式の30%でホエール社と契約したのです。関連企業も同じです。ホエール社の資金が出たところは、株式の30%を出すのです。尼川祐一氏の名義で。株式と取り替えで、ただで出てくる資金みたいなものです」


 株式で金を借りるのか、失敗してもホエール社の懐は痛まないってか。


「所得税はどうしてんだ。関連会社が上手く行ったら配当もあるだろうし」

「地球にいない人の税金は、国連が徴収しています」

「日本は損するよな」

「日本は世界を敵にまわす気はありませんよ。我々ホエールの払う、いい加減な法人税だけで十分に潤ってますから。お陰でホエール人幹部の80%が日本人になっています」


 いまだに日和見の、いい加減な国なのか。


「それで今ではお祖父様の分と合わせて45%もの株式を保有しているのですが、正式な相続もしていない状態で資金は各国に国債という形で貸し付けられて、あなたの父上が相続税を払うぐらいなら何とかなりますが、あなたの代に相続が来ると、もはや地球経済は破綻してしまうのです。それなら祐一氏は行方不明のまま生きていることにして、あなたは死んでいた方が何処の国にとっても都合が良いのですよ」


 ゲートは校長ではなく、祖父さんが発見したのか?

 いや、校長のスポンサーが祖父さんだったんだろうな。

 あの、山師め。孫にも秘密にしていやがる。


「話がでかすぎて、ピンと来ないんだが」

「簡単にしましょう。あなたが相続するのは地球型惑星90個の星系です。日本にあなたが支払う相続税は惑星45個です。どうなりますか」

「惑星45個の反乱か」

「いいえ、200個の反乱です」

「宇宙戦争だな」

「その前に日本が消滅しているでしょう」


「なら、俺を殺した方が早いな」

「同胞が真っ先に来るでしょうね」


「相続の放棄という手は」

「ホエール社が債務を取り立てないと?」

「取り立てるよな」

「つまり、債務が確定するのが拙いのです」


「ホエール連合と地球連邦の宇宙戦争か。俺の帰る場所は何処にもないのか。しかし、行方不明って普通もっと早く整理されるんじゃなかったか」

「ウラシマ効果があるので、委員会が国連に600年の猶予を求めたそうです。資金援助を見返りに」

「600年もかけて帰ってくることがあるからか。確かに船内時間では2年かもしれないな。馬鹿げた事を考えるもんだ」

「その時は誰にとっても、お得な話だったんですよ」


 ミヤビはクスクス笑うと、アキが同意している。

 60年後の少女たちは、こんなにも頭がよいのか。

 帰りたくないな。

 馬鹿の彼女なんか、なり手がいそうにない。


「何故、そんなに詳しいんだ。俺たち親子の事なんて関係ないだろうに」

「いいえ、私たちはある意味で関係者なんです。ホエール社の幹部と言うことを置いとくにしてもです。いえ、幹部だからでしょうか」

「どんな関係なの?」

「私たちの母親が、皆あなたの嫁候補だったのです」

「母親って、常識的には40過ぎているんじゃないの」

「そうです。あなたが普通に帰ってきたときに、15歳ぐらいになるように生まれてきたのです。ホエール株を地球に取られたくないですから」


 俺が何の事故もなく帰っていれば約30年。

 その頃15歳なら、その後30年俺は帰ってないから45歳か。


「君たち二人のお母さんが、俺の嫁になったかも知れないのか。美人だったんだろうなあ」


 ミヤビは知的だが、幼い顔立ちの美少女で、おっぱいがゆれるぐらい大きい。

 アキは家庭的な感じのする、感じのいい女の子で、是非妹にしたい。


「母は美人です。でも、二人だけじゃないんですよ。ここにいる全員が嫁候補の娘たちなんです」

「ええっ、130人もいるんだぞ」

「お静かに!」


 ミヤビに叱られた。


「一応、私たちも嫁候補なんですよ。第二次ですが。だからこそ、誰にもあなたの素性を明かして欲しくないのです。選ばれなかった人があなたを間接的にでも殺す側になったら嫌でしょう?」


 俺は、うんうんと頷いた。

 二人が笑いをかみ殺す。


「あなたは田村祐貴で押し通して下さい。あなたに出会う確率なんてひどく小さいものだから、殆どのものはこんな話を知りません。私たちはたまたま興味があって母親から話を聞いていただけですから。まあ、保険だと思って隠し通して下さいね」


 それで、ミヤビたちとの話はおしまいだった。

 彼女たちは、二度とこの話に触れないと言った。



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