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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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30 7人の農民

 30 7人の農民




 俺たちは、北森街道を熊さんリヤカーで国技館近くまで贈ってもらい、そこからは徒歩で戦場に向かった。


「敵の戦士は、140人て話なんだが」


 タルトも、今度ばかりは無理なんじゃないかという顔をしている。

 コラノは静かに瞑想し、父ジャケは闘志を燃やしている。

 子ジャケは少し蒼い顔をしているが、隣でトリノが怯えているので精一杯虚勢を張っている。


 ラシがついて来たのは良くわからない。


 マリブにはひとつやっかいなお願いをしたが、借りを返すチャンスだと張り切って出かけていった。


 タキとレンには、お留守番を頼んだ。

 ラーマが目立たないと困るからだ。

 そのラーマは俺の腕の中にいて、変な脳内物質の原料になってくれている。


「ひとり、たったの20人じゃないか。いつもの訓練より早く終わっちゃうよ」

「計算ではそうかも知れんが、ひとりずつかかってくるわけじゃないぞ」

「まあ、一度にかかってくるのは精々5人が良いところさ。次の5人はもっと弱いのが出てくるだけ、つまんないよ」


 父ジャケがラシに通訳すると、ラシが驚いた顔をする。

 ラシは防御に重点を置かないので、5人がかりを毎日させていたのだ。


「だが、抜け出てラーマ様を襲う奴もいるかもしれんぞ」

「そうそう、抜け出て後ろを走り回る奴を、タルトに任せたい。コラノは子ジャケとトリノのお守り。ラシは父ジャケとコンビの訓練ね」


 年長組は両方子ジャケの畑を手伝っているので、結構気が合うようだ。


「最大で最強の部族が、可哀想に思えてきたよ」

「農民は最強なんだよ。戦士で一日中鍬を振れる奴がいるか?」

「そうだな。あいつらは精々一週間に一度ぐらい真剣に棍棒を振るぐらいか」

「そうだろ。コラノの腕がどれだけ太くなったか見てきただろ、マメを何回つぶしたと思ってるんだ」

「戦士見習い以来だ。こんなに手にマメを作ってつぶしたのは」(コラノ)

「しかも、あいつら。普段は20ぐらいで狩りをしている小部族が暴力で無理矢理集められただけだってさ、マリブからそう聞いたよ。連携も出来なけりゃ、忠誠心も義理もなさそう」


 話しているうちに戦場に着いた。

 情報どおり、敵は国技館の西側に集まっている。

 だれているのが一目でわかった。

 女子供は更に奥にいる。

 年寄りや、戦士以外の男の姿がないのは、こいつらが山賊や破落戸であることを物語っている。

 食い物、女、酒ぐらいしか頭にないのだ。


 戦士の間から、破落戸の首領が出てきた。


 これがズルイだろう。

 見るからに見かけ倒しっぽい。

 タルトが通訳する。


「何だよ、がたいがでかいだけのが7人に、女がひとりか。その女ひとりで、許してもらおうとか考えてんじゃねえだろうな」

「まあ、そう慌てんなよ」


 俺はそう言って、ラーマを国技館の土俵に立たせる。


「ラーマ、ここで俺だけを見ていてくれるか」

「はい、ご主人様。絶対に目を離したりしません」


 ラーマは精一杯伸び上がるとキスをした。

 400人の観客がどよめく。

 胸には鴇色のバラの花。

 国技館の紋章だ。


「じゃあ、ちょっと行ってくるね」

「はい」


 ラーマは笑顔だった。

 この前もそうだったなと思い出し笑いしながら、角材を抜いて破落戸どもに突きつける。


「農民はな。百の仕事が出来るんだ。戦士しか出来ない奴なんか100人集めたって俺たちひとり分にしかならねえんだよ。7人の農民と戦うなら、700人連れて来やがれ」


 タルトが訳してズルイたちに告げる。

 ズルイは『こいつら馬鹿か』という感じで不遜に笑うと、部下たちの後ろに引っ込んだ。


 カカと同じタイプだ。

 自分より強い奴とは戦わない。


 右の棍棒20をラシ、父ジャケコンビに任せ、左の棍棒、石斧混成部隊20を、コラノ親子と子ジャケに任せた。

 俺の目標は目の前の槍部隊100。


「いくぞー」


 左手で角材を持ち、右手をぐるぐる回す。


 槍部隊のど真ん中に突っ込み、角材をハンマー投げの要領で地面ぎりぎりに振り回す。

 敵は次々に脚を叩かれ、引っかけられ、半回転して地面に頭からめり込んだ。

 一回転すると、約10人が倒れてのたうち回る。


 俺は5回転して、周りの連中が倒れているのを確認すると、落ちている槍を拾って、次々と倒れている奴らのお尻に突き刺していく。

 刺された奴らは、絶叫して飛び上がって走り回る。

 尻に槍が刺さったまま走っている。


「ギョエー」

「ヒエー」

「キャワワー」


「タルト、俺は田植えの練習するから、騒ぐ鶏を黙らせてくれ」

「わかったよ」


 タルトは折角の緊張感が台無しだと言うように、ため息をひとつつくと、走り回る連中の頭を叩いて回った。

 敵は、タルトに叩かれると直ぐに崩れ落ちる。

 うめきながら起き上がる奴らも多いが、俺は獲物が多そうな場所に突っ込んでは角材を振り回し、槍を奪っては突き刺していく。

 ぐったりしている奴でも、尻に槍を刺されると飛び上がって走り出す。


「はい、21、22、23、24、25っと」

「グワー」

「ギャベー」

「ガバババー」

「35、36、37、38、39と」

「キュバラバー」

「ドウエー」

「ビャリャリャリャー」


 尻を刺され絶叫する鶏と化した連中は、味方の間も走り回って士気を削いでいった。


 驚いた味方の棍棒にやられる奴もいた。


 棍棒たちが味方だったと愕然する間に、ラシに突かれて倒れる。

 その間にも俺は次々と角材を振り回しては槍を補充し、尻を向けている奴に突き刺していった。


「ええと、46、47、48、49、50だ。タルトー、半分終わったよー」

「あーそうかい。今俺は非常に忙しい。まったくあちこち走り回りやがって」


 タルトは敵を追いかけては、容赦なくベシベシ叩いて黙らせていく。

 槍衾も作れないバラバラで士気も低い連中は、俺が飛び込むと、あっという間に角材にやられて倒れ伏していく。


「61、62、63、64っと。おかしいな。槍の数のが多いんだけど。タルト、どうしてだろー」

「尻を刺されないで逃げちまった奴らは、川に飛び込んでるぞー」

「そっかー、じゃあこっちに使っちゃおうっと」


 俺はコラノの方に対峙している連中の所に走って行き、後ろから尻に刺して回った。


「ギョガー」

「グベー」

「オーワッチー」


 突然叫び声を上げて走り出す連中は、コラノたちの棒に自分から突っ込んで倒れていく。

 突き出すだけで倒せるので、トリノも次々と倒していく。

 後ろを気にすれば子ジャケに突かれる。


 ラシと父ジャケは、棍棒隊がふたりずつしか襲ってこないので、つまらなそうに片付けている。

 確かに棍棒って、連携しては使わないね。

 同士討ちが怖いもんなあ。

 結局、数で圧倒して合併してきた連中なんか、こんなもんだ。


 140いても、精々60人ぐらいしか真剣に戦ってない。


 30ぐらいはしぶしぶで、残りは最初から人任せか腰が引けていた。

 タルトが40ぐらい叩いたと言うから、俺の敵は精々70か。

 30は逃げたんだな。

 ズルイの周りで震えているのが20ぐらいで、後は川に飛び込んで逃げ出しているか、倒れ伏しているか、尻を抱えて泣いているかだ。


 ズルイは草の上に座って女たちに酒を酌させてたが、今はフリーズしている。


 何だかあんまり見せ場もなかったなと思ってラーマを見ると、ラーマは土俵の上で胸の前に両手を合わせて握り、お祈りする聖女のようだった。


 ブーケでも持っていればもっと美しいだろうと思っていると、東の森から人影が6人ほど現れ、ラーマに向かっていく。

 確かに俺が戻っても、間に合わない距離だった。

 タルトに戦場を任せると、ゆっくりとラーマに向かう。


 カカは、勝ったと思っているのだろうか。


 土手沿いの岩陰から棒を突き出した少年兵が20人ほど現れ、カカの真横から襲いかかる。

 カカは一瞬悩んだが、部下たちを犠牲にしてラーマに走り寄っていく。

 ラーマは後ろが騒がしくなっても振り返らない。

 ただ俺だけを見つめている。


 バリッ!


「つまらない。たまにはレーザー撃ちたい」

「死んじゃうからね、オペレッタさん」


 国技館の電撃がカカを倒した。

 手早くカカの手下を片付けた少年兵たちは、ズルイの本陣に向かった。

 なかなかやる気のある連中だ。

 途中、指揮官のマリブと握手を交わす。


「ありがとう」


 言葉は通じないが気持ちは通じたようだ。

 ラーマの所に駆け上がった。

 ラーマは抱きついて喜んでくれた。


「ラーマが祈ってくれたから、簡単に片付いたよ」

「ご主人様が強く正しい人だからです」

「美人に見られていると頑張れるからなあ」

「嬉しい」


 俺たちは、再びキスをした。



 山賊どもは、第1夫人だけつけて北に返した。

 10人までのグループに分けてである。

 北では元々小グループでしか狩りを行えない。

 テリトリーを大きくしても冬場までに回りきれないのが理由らしい。


 第1夫人だけにしたのは、どうやら第2夫人以降は、他部族から攫ったり、併合した部族から巻き上げたりと悪辣なことをして手に入れたみたいだからだ。

 それにこれから生きていくのに、あまり人数が多いと食わせていけない可能性も高い。

 まあ、第1夫人たちもかなり若いので、何とかやり直しが出来るだろう。


 第1夫人すらいない連中は、元第1夫人だった女たちを養ってもらうことにして送り出した。

 まあ、これで子供を入れて約300人が片付いた。

 残りは女ばかり100人ぐらいである。

 破落戸どもの集団だったから、残った女たちは子持ちが少なく若い者ばかりで、子供も精々3歳以下しかいなかった。

 子持ちは全部サンヤに押しつけた。

 サンヤには、若い女たちがいないのである。

 少年兵には母や祖母はいるが、姉や妹はまったくいない。

 祖父はいるが、父や兄もいない。

 完全に衰退直前の部族なのだ。


 サンヤやマリブたち幹部は、突然第3夫人まで持たされ、嬉しいような困ったような顔をしているが、強い戦士が育ってきているから、他部族にやられることはないだろう。

 川に逃げた連中は、作戦どおりサンヤの本隊に叩きのめされたのだ。


 少年兵たちも、ズルイ本陣に突撃した。


 今後サンヤ族は、前の強かった部族に戻り、十分に妻たちを養っていけるはずである。

 まあ、冬越しはうちの領地で、ある程度は面倒を見る事になるだろう。

 これで子持ち20人、子供を入れて40人が片付いた。

 さて、独身の男どもには第2夫人以下を押しつけよう。

 彼女たちもこれから生きていくのに、部族と夫が必要なのだ。



 タルト村の住人全部と留守番のタキとレンを熊さんに集めてもらい、食材も持ってきてもらう。


 宴会準備が整うまで、少年兵による花嫁争奪戦を行った。


 15歳から22歳ぐらいまでの花嫁30人。

 12歳から18歳までの戦士が26人。

 国技館で相撲大会だ。


 西側にはサンヤ族が座り、東側にはタルト村の農民6人。

 南には花嫁候補30人と、付き添い役のラーマやサンヤとマリブの妻たち。


 最初の花嫁が花嫁席に座ると、ぱらぱらと少年兵が立候補する。

 東に二人座らせ、西に一人座らせる。

 最初の一番は西の年長が勝ち、次も勝ち抜いて花嫁の前に行く。

 花嫁は立ち上がりサンヤ側に行き、サンヤと少年の親族にご挨拶する。


 さて、次だ。

 花嫁が座ると今度は二人の少年。

 両方15歳ぐらいか。

 花嫁は20ぐらいだぞ? いいのか?

 そうかお姉さんが好きなんだな。

 勝った方が、やはり花嫁を連れて行く。

 何と嬉しそうなんだ。

 三人目、四人目と進み、五人目は18歳ぐらいの美形だ。

 すらりと背が高く、多分金髪で、おっぱいも大きい。


(ズルイの愛人か?)


 俺が動きかけると、向こう正面のラーマさんが怖い顔で睨んでくる。

 花嫁に何か囁いている。


 ああ、絶対に断れとか言ってんだろうなあ。


 諦めて行司に戻ると、西に少年兵が5人に東にタルトが一人。


 あれ? お前。

 もしかして、鬼の居ぬ間にかー。

 コラノが後ろの方でやれやれとやっている。


 タルトは5人投げ飛ばして、自分の第3夫人をゲットしやがった。

 ラーマも怒ってるが、花嫁が付いていくんだからどうしようも無い。

 悔しがる少年兵。


 それからは最年長22歳(推定)を、最年少12歳(推定)が3回勝ち抜いてゲットしたのが驚きだった。

 自慢げな花婿に、頬笑ましそうに付きそう花嫁。


 うーん、しかし、どうしてこいつら、年上ばかり狙うんだろう。

 ふっとラーマと目が合う。

 そうか、夕方の訓練で、俺とラーマがいちゃいちゃしてるのをずっと見てきたんだ。

 それでか。


 その後、父ジャケも子ジャケも参戦してきて、少年兵の脅威となったが皆頑張った。

 トリノもタルトに押し出されて花嫁獲得に出場し、とても可愛らしい第2夫人をゲットした。



 その日の宴会は、初めてのバイキング形式となった。

 親子ジャケに猪を一頭渡して、ステーキコーナー。

 タルト家は、サツマイモ料理コーナー。

 コラノ家は、鶏の唐揚げにスープコーナー。

 領主館は、ドーナツと卵黄蜂蜜クレープとメレンゲ梅モドキクレープに小麦酒。

 ラシとカリモシは、大豆の炒り豆。


 サンヤ140人にズルイの女子供がが120人、領主館が4人にタルト村が19人に小作が17人。

 あと罪人が5人に妻が3人子供1人。

 総勢300人以上である。


 男たちは猪ステーキと鶏の唐揚げに殺到したが、女たちはサツマイモ料理をたいらげてから、クレープを食べ比べていた。

 一回りすると、男たちは炒り豆と小麦酒で盛り上がり、忙しさは一段落付いた。


 サンヤの男たちの話題は、何と言っても『7人の農民』である。

 特に戦闘に参加した少年兵たちは新妻が気になるのに、いつまで経っても年配の男たちにしつこくせがまれて見たことを説明している。


 サンヤの女たちの話題は、ラーマを巡る俺とカカのドロドロの恋愛模様らしい。

 カカの妻になるはずだったラーマを俺が横取りしたとか、俺を好いているラーマがカカに奪われ、取り返し、また奪いに、などという略奪ものがドンドン創作されていく。

 そこにはズルイがラーマを狙っていたとか、カリモシの妻だったラーマがカカに攫われてとか、あらゆる憶測が追加されていった。 

 何故か、ラーマはタキとアンのお姉さんで、アンの子供は俺の子供になっていたりした。


 母ジャケは、父ジャケの連れて来た花嫁2人が、嫁に出した娘のように痩せているので嬉しそうにしていた。

 確かに親子に見えなくもない。


 タルトは第1夫人に怒られたようだが、嫁は優しく迎えられた。

 これから赤ん坊が生まれて来るので、女手は大歓迎なのだ。


 子ジャケの嫁はサラサの美しさに感動し、直ぐにお手伝いを始めていた。


 トリノは涙目でナナに嫁を紹介していたが、年上なのにリリみたいに幼い嫁を、ナナが歓迎してくれたのでホッとしているようだ。


 そう言えば、花嫁をゲット出来なかった少年兵がひとりいたのだが、サンヤの幹部のひとりが、第3夫人を持て余すとして花嫁を押しつけた。

 そいつは、13か14にして、3歳の子持ちになった。

 嬉しそうだった。


 それから、俺たち男どもは幹部会を開いた。

 議題は、犯罪者の処分である。


 一人目はラシ。

 ラシは今回の功績により、犯罪は帳消しとなった。

 元々カリモシの部下としてしでかした事だから、あまり気にしてなかったのだ。

 畑仕事さえすれば、後は自由にやらせていた。

 ラシは、小作として残り、修行をしたいと言った。

 自作になるかは、今のところ考えてないそうだ。

 子ジャケの小作として働くことで解決した。


 二人目はカリモシ。

 まだ、反省しているようには見えないので、引き続き小麦10石の刑とした。

 反省が見えるようになれば、息子のイタモシが新族長なので送り返すこととなった。


 三人目はカラヌシ。

 これは畑仕事は馬鹿にしてせず、戦士でもないくせに族長候補だったので偉そうで、サラサにちょっかいかける事たびたびである。

 そこで、サンヤに頼んで連れて行ってもらうことになった。

 戦士見習いから始めさせるそうである。

 12歳の少年兵が嫁をもらったので、一番の下っ端からになる。

 まあ、畑仕事よりは出来そうなのでそうすることにした。

 サンヤにも独身女性が少しは残ってるし。


 四人目はズルイ。

 五人目はカカ。

 二人とも革のロープで縛り付けてある。


 この二人は、どうしようも無いと言うところで皆の意見が一致している。

 追放しても、また部族を集めて悪さをする。

 領内で畑仕事をさせようにも働かないだろうし、監視する方が疲れてしまう。


 カカを殺せ、と言い出したのはカリモシとカラヌシだった。

 ズルイまでが言い始めたので、リーナさんの仮説はどうやら正しかったようだ。

 まあ、国技館に、あのタイミングで現れた時点でわかってしまった事ではあるが。


「ボルネオ島送りにでもする?」


 リーナさんがおかしそうに言う。


「現地の人に迷惑がかかるでしょ」


 ボルネオ島に、人が住んでいるかは未確認だけど。


「無人島送り」


 これはオペレッタだ。


「復讐者として現れそうだから嫌だ」

「電撃首輪の刑」

「非人道的過ぎるよ」

「アフリカに追放」

「手間が大変でしょ」


 俺が突然独り言を言い出したので、知らない連中がびっくりしている。

 タルトが説明すると、犯罪者たちがびっくりする。


「女神様の裁定は出たのか」


 タルトが代表して聞いてくるが、俺は首を振った。

 一応、どんな案が出されたか説明する。


 ボルネオ島は、みんな見たことはあるので納得する。

 しかし、行ったことのある者は皆無なので賛成はしない。

 カカはボルネオも無人島も海の向こうなので蒼くなった。


 電撃首輪はズルイが仰天している。

 そんなことができたら、と考えているのが丸わかりである。


 アフリカというのはもちろん誰も知らなかったが、歩いて3年ぐらいかかるところというと、誰もが考え込んでしまった。


 とりあえず、浜辺に小屋を造って1年ぐらい芋を作って暮らさせるという提案をすると、一同はホッとしたようだった。

 監視はオペレッタが出来るし、飯は熊さんが運んでも良い。

 それで、熊さんを呼んで密かにログハウスまで運んでもらった。

 仮の施設だが、暫くは皆にちょっかい出さぬよう注意しておこう。


 解散すると、今度はタルトが話があるから残ってくれと言う。

 待っていると、タキとレンとラーマが来てから、タルトが一人の年配の男と3人の娘を連れて来た。


「ユウキ様、こいつは俺の部下にすることにした」

「部下って、小作だろ」

「いいや、小作は若いのがいる。こいつにはユウキ様の補佐官と同じで、俺の補佐官をやってもらう」

「それなら家令とか執事だな。名前はセバスチャ、いやセバスだな」

「おい、名前を頂いたぞ。セバスだ」


 あの、冗談で言っただけなんですが。

 セバスが頭を下げる。決定してしまった。


「これは、セバスの孫娘たちだが、ユウキ様の補佐官に育てて欲しい」


 タキとレンとラーマがむっとする。


「どういう事なんだ。話によっては女神様の権限を侵すことになるぞ」

「いや、そう言うわけじゃないんだ。俺が今考えていることを見せられれば話は早いんだが、上手く説明が出来ん。何と言うか、嫁を育てて欲しいんだ」

「嫁? タルトのか」

「違うんだよ、女神様に育ててもらった嫁をここから出して行きたいんだ」


「行儀見習いのことでしょうね」


 リーナさんが解説してくれる。


「しかし、何のために」

「まあ、ここの領地のためでしょう。啓蒙活動と文化交流、それに交易のためよ。意外と商売上手だわ」

「商売って、行儀見習いと関係あるの?」

「今まで、スルトもカリモシもサンヤも、領地で接待を受けるばかりで、もたらしてくれるものが無かったわ。人材は多少手に入ったけど、来年は? 他の部族は? 何か取引出来るような相手になるかしら」


「直ぐには無理じゃないかな」


「でも、それがタルトにはじれったいのよ。何かを持ってくるような知識を与えたいの。そうしなければ、ここはシャケが取れない年の避難所になりかねないわ」

「じゃあ、行儀見習いを各部族に送り込んで、交易の相手になるよう仕込むってこと」

「そうね、それに名誉もあるのかも知れない」


「行儀見習いが?」


「元々、行儀見習いというのは嫁の箔をつけるために行ったのよ。商家の娘が武家とか大名家で行儀作法を身につけると、良いところに嫁に行けるようになるの。学歴と同じようなものよ。ここの知識を身につけた娘たちが部族にいれば、啓蒙だけでなく、部族の名誉にもなるようになり、皆ここに来るようになるわ。もちろん手ぶらでは来なくなる」

「人身売買じゃないよね」

「馬鹿ね。嫁の方が選べるシステムを考えたのはユウキでしょ。自分から嫁ぐなら人身売買にはならないわよ。行儀見習いは、奴隷制度じゃないのよ」


 うーん、どうなんだろうか。

 タルトは俺が女神様と話してるのを察して、黙って待っている。


「思い切って、迎賓館を造ってしまいましょう」

「迎賓館。規模は」

「そうね、部族が全部泊められるくらい」

「それって、200人規模って事?」

「VIPルームに、領主執務室、会議室、カフェにお風呂」

「ちょっと、リーナさん、無理だから」

「何よ、最近はラーマとキスばかりして!」

「それとこれとは」

「タキとも朝からチューして胸まで揉んで」

「……」

「文句あるの」

「ありませんです」

「じゃあ、お風呂とキッチンも作って、女たちをみんな追い出してしまいましょう」

「あの、目的が変わってませんかー」

「いいのよ。どうせこのままじゃあ…… お風呂に何人の女が集まってくると思ってるの」


 確かに限界はあるよね。

 小作や妻が何人増えたんだっけな。

 時間制にでもしないと、ゆっくり入れないな。


「いい、タルトに38人全部嫁に出すって言っておいて」

「38人?」


 何で、そんな数に?

 俺には事態が全然把握できていなかった。



 31へ

なにやってんだか。

すみません。気にせず流してください。

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