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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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28 陰謀(後編)

 28 陰謀(後編)




「オペレッタ、西の部族は?」

「ブドウ山ではなく、北の隅田川に向かって逃走中」

「逃げてるのかどうか、わからないよ」

「逃げてる」

「カリモシは?」

「母猪と若い子供3頭、それにうり坊4頭を引き連れて国技館へ向かっている。雄2頭は殺され、解体されて運ばれている」

「やっぱり敵なのかな?」

「敵と言うより黒幕」

「西の部族を嗾けたの?」

「隅田川で分け前を払う。朝には逃走」

「直ぐ逃げないのは?」

「多分、猪食べてからだと思う。焚き火が沢山ある」

「余裕じゃん」

「犯人は西の部族。カリモシは街道で猪捕まえただけ」

「そいつはラッキー?」

「でも、運の尽き」

「そうだな。犯人を調べてみる。監視をよろしく」

「了解」


 タルトたちが人質、いや犯人を集めている。

 途中でロープが足りなくなったのか、後ろ手で二人ずつ縛られているのが混ざってる。


「ユウキ様!」


 父ジャケが興奮している。


「26人ですよ」  


 タルトは意識がしっかりしている奴に話しかけている。


「どうやら、カリモシと共同作戦だったらしい」


 コラノは首を振る。

 馬鹿な奴だと思っているのだろう。

 一応、父親だからな。


「何故、こんな馬鹿なことをしでかしたんだろう」

「多分、猪を捕まえただけ、とか言い訳するんじゃないのか。猪には名前を彫ったりしないからな」

「今度から名前を彫っておこうか」

「そんな方法があるのか?」

「残酷だからやめよう」

「そうか」

「こいつ、さっきから何を言ってるんだ?」


 犯人のひとりが盛んに何かをわめいている。

 角材を肩に当てると黙った。


「自分たちをどうする気だ、と言ってる」

「猪が居なくなったから、替わりに太らせるか」


 タルトが凄い顔で通訳すると、ダメージの少ない連中は引きつった。


「これから、どうするんだ」


 コラノが聞いてくる。


「コラノがカリモシの族長にならないか」

「断る。やっと戦士をやめられそうなんだ」

「じゃあ、トリノ」


 トリノはビックリして、ナナの所に走って行ってしまった。


「あまり、からかわないでくれ」

「本気だったのに」

「なお、悪い」


 明け方までに終わらせないと、いけないんだよねえ。


「オペレッタ」

「熊さんなら、もう到着」

「リヤカー」

「3台引いている」


 何で俺が考えてること、わかるんだろう。


「みえみえ」


 うーん。そんなにわかりやすいのだろうか。


「ユーキのことなら、生まれたときから知ってる」

「それだけで?」

「ユーキが今までに出したセーシの量だって……」

「やめて、オペレッタさん。それ以上はやめて」


 心が折れてしまいそうだ。


「ユウキ様。みんな乗せたぞ」


 お仕事早いのね、タルト村長。

 尊敬は少しだけどしているから。


「父ジャケ、これより細身の棒を29本用意してくれ」

「長さは?」

「2mだな。軽くて折れにくいのを頼む」

「はい」

「タルト。女たちにパンと水を用意させてくれ」

「ひょっとして、こいつらの分か。戦士だぞ。施しなんか受けるもんか」

「重傷者はいないんだろ」

「鎖骨は重傷か?」

「鎖骨とあばらは、痛むけど折れやすいから軽傷」

「なら軽傷者だけだ。ひとり右足が腫れている奴は、わからん」


 どれ、ちょっと見てやるか。

 おお、確かに腫れている。

 でも、折れていないな。

 ひびは困るか。


 筵を切って水に濡らし、脚に巻く。

 添え木を付けて筵を巻いて、革紐2本で締め付け固定する。

 皆が仰天して見ているが気にしない。


 女たちがパンとコップを持ってきた。

 リヤカーの連中は、後ろ手で縛られているので手出しできない。

 優しくパンを口に入れ、時々水を飲ます。


「何で戦士が施しを受ける。それも女にだぞ」

「タルトは慣れてしまったんだな」

「何にだ?」

「浜辺で貝の審判を受けるラーマを覚えているか」

「ああ、忘れられない。あんなに美しい女を見たこと無かった。暫くはあのラーマ様だとは思えなかった」

「今は、お前の妻たちや娘たちがラーマのように見えるんだよ」

「そうか。確かに以前の妻たちとは違ってきたが、そこまで違うか」

「毎日見ているからだ。見ろ戦士のだらしがない顔を」


 夢を見ているとしか思えない、そんな顔だ。


「なのにあいつら、猪を盗んでいくんだぞ」

「確かに、命がけならあっちの方が良いな」


 俺たちに笑われているのに、戦士たちは誰も気づかない。

 たったひとりが美しいなら受け入れられるだろうが、何人もの美女に来られると、現実感は無くなってしまうのだろう。

 特にサラサなんか笑顔で振る舞っているのだから、もう言いなりだな。

 しかし、夢の時間ももう終わりだ。


「ユウキ様。こんなのでよろしいですか」


 父ジャケが樫の棒を持ってきた。

 軽くはないが細身に出来るからだ。

 俺の角材の半分以下の重さだが、まあ上等だ。


「よし、模範演技を見せてやろう。父ジャケ、相手しろ」

「はい」

「戦士の皆さん、注目」


 俺が言うと、タルトが通訳して視線が集まってくる。

 コラノはやれやれという顔をしながら、一本持って重さを確かめている。


「始め」

「イヤーァ」


 父ジャケの気合いだけで戦士たちは仰天している。

 お前らが弱いんだよ、見てろよ。

 俺は父ジャケに向けて二段突きを放った。

 奴らが受けることも出来なかったワザだ。

 しかし、父ジャケは棒の先でそらし、反撃までする。

 俺が逆襲の突きを弾き回転して胴を薙ぐと、父ジャケはきっちり受け止めて弾く。


 それからは火の出るような弾き合いだ。

 最後に俺の大上段を父ジャケが受け止めたところで終わりにする。


「お前、カカなんか敵じゃないな」

「いいえ、油断は出来ません」

「そうかな。とにかく強くなったなあ」

「ありがとうございます」


 体育会系だよな。武道系か。


 本来、槍で突くというのは最強である。

 弱兵でも戦いでこれをやると大体相手は手こずる。

 相手が弱ければ、遠くから上段で叩きつけるだけで勝てる。

 50センチ足らずの棍棒なんか近寄らせなければいい。


 あれは野生動物のとどめ用なのだ。


 棍棒でサービスエースは取れない。

 破壊力はあるが、実際に動き回る動物の足を止めるのは弓や槍である。

 棍棒で槍に勝つには、相当な修練が必要になる。


 だが、この世界には修練どころかワザもないのだ。


 だから、領民には槍を持たせて棒術のように使わせる。

 これで隙を作らなければ、大体時間は稼げる。

 領地を持つものは、負けなければいいのだ。

 相手は引き上げるしか手がないのだから。


 コラノとタルトもやらせる。


 タルトはパワーで攻め、コラノはカウンターだ。

 どちらも相手には嫌な攻撃だ。

 ゆっくりと始まった攻防戦は、やがて白熱してくる。


 やれやれ、周りを忘れてるよ。

 熱い親父たちだこと。


 頃合いに割って入り、両者の棒を右足で踏みつけて止める。


「模範演技なのに熱くなったら、あいつらが理解出来ないだろ」

「すまん」

「申し訳ない」

「じゃあ、出かけるが、コラノは留守番だ」

「ええ、ユウキ様、それはない」

「守りも必要だし、相手はカリモシなんだぞ」


 父親を、棒で叩くわけにいかないだろう。


 リヤカー3台を熊さんに引いてもらう。

 時速30キロぐらいだろうか。

 車種によってはかなり跳ねるが、ここは勘弁してもらおう。

 カリモシ対西の部族の戦いが始まる直前に、隅田川のそばまで来れた。


「いいか、お前らはカリモシに騙されたんだ。カリモシが分け前なんか払うものか。お前たちが時間稼ぎしている間に、あいつは北に逃げてしまうつもりなんだ。自分の部族の危機だぞ。ちゃんと戦って見せろ。戦士ならな。戦えないなら戦士はやめろ。小作として使ってやる」


 タルトに通訳させる。

 小作が説明できないらしいが、部下で訳させる。

 ひとりずつ、縄をといて棒を渡す。


 おお、だいぶ戦士の顔に戻ってきたぞ。

 これなら勝てなくても、煩わせるぐらい出来るだろう。


 見てると全員が部族に向かっていく。

 こちらを振り向くが、敵対心はもう無いようだ。

 単純な時代なのだ。

 次があると前は忘れてしまう。

 そうでなければ狩猟民なんかできない。

 目の前の獲物を狩ることが、生きることなのだ。


 俺たちは迂回して、川の方に潜んだ。

 カリモシを逃がさないためだ。

 リヤカー1台だから早い。


 丁度、交渉が決裂し、戦闘が始まるところだった。

 西の部族は圧倒的に不利だった。

 戦士15人程度で、カリモシの本隊50人は止められない。

 ラシが突撃を命令しようとしたところで、援軍が間に合った。

 長い棒を持った集団に驚いている。


 しかし、若手は突撃を開始してしまった。

 同数では若手だけでは不利だ。

 ベテランも手助けに突撃する。

 30対15で乱戦。

 20は様子見だ。

 そこへ長槍風棒軍団が敵の背中に棒を突き入れる。

 あっという間に、10対40になってしまう。


 どうするラシ。


 カリモシは変なことがあると俺が絡んでるとわかるのか、いち早く取り巻きと女を連れて川岸に逃走を開始した。


 おお、レンが無理矢理連れて行かれている。

 あいつ、いつも冷たい態度だが、実は俺に惚れてるな。

 カリモシにすれば、証拠を置いてはいけないか。


 父ジャケに役割を伝え、タルトにはカリモシから目を離さないよう言っておく。


 俺はこそこそとレンを助けにいく。

 岩陰でレンが来るのを待っていると、カリモシが土手を上りきったのだろう。

 父ジャケの『チェストー』という気合いが聞こえた。

 カリモシは驚いて、ひっくり返っている。


 レンを捕まえている奴の顔がカリモシを追いかけたとき、ビシっと俺の角材が首の付け根に打ち込まれる。

 驚くレンを引っさらい、父ジャケの横まで行き、二人ではさむように守る。

 父ジャケは棒を構え、幅広く警戒する。

 俺はカリモシに角材を突きつける。


「俺の大事な可愛い可愛いレンを攫っていくとはどういうことだ、カリモシィ!」


 レンは驚いたような顔をしてから、落ち着いた美しい声で通訳した。

 少し顔が赤いぞ。

 今度何て訳したのか聞いちゃおうかな。くくく。


「レンは俺の孫娘だ。連れて行っても問題ない」

「女神様に預けた巫女を、許可もなく連れて行けると思っているのか」


 カリモシは蒼い顔をして考えている。


「それから、あの猪はタルト村の猪たちだ。食い逃げは勘弁できない。弁償してもらおうか」

「あれは、部族でたまたま捕らえたものだ。タルトは関係ない。村の外にいたのだ」


 カリモシは、自分たちの姿を見られたなんて思っていないのだ。

 あくまでも、村に侵入したのは西の部族だけである。

 しかも、もし西の部族がきちんとした数で現れたなら、殺した雄2頭で手を打ち、奴らが宴会しているうちに逃げ出せば無事だし、西の部族が俺にやられて戦士が減っていれば、ラシがぶちのめして逃げれば良い。

 後は、ぶちのめされた西の部族と、宴会の跡が残るだけだ。


 その程度の筋書きなのだ。


 まあ、確かにカリモシの姿を見ていなければ事情聴取と猪の探索で時間は取られてしまうことだろう。

 20キロ離れていれば、どう考えても明け方に来れるわけがない。

 俺に見られる事無く北に逃げてしまい、後は食っちまえば証拠なんかないのがこの世界だ。

 どう転んでも逃げ切れば、後は来年まで顔を合わせることはない。


 親や子が殺されでもしない限り、1年経って証拠もない話をする部族なんか居ないのだ。


 それが馬鹿げた考えだというのは、この世界の外にいるからなのだろう。

 頭が良いんだか悪いんだか。


 だが、カリモシは逃げ切れず、証拠の部族は目の前で5分以上に戦っている。

 しかも、俺が明け方に川まで来ている。

 カリモシの計画は、見られないことと逃げられることが前提なのだ。

 すべて見抜かれていると知っていれば、こんな馬鹿なことはしなかっただろう。


「戦闘が終わったら、奴らに話を聞く。カリモシは立ち会え」

「いやしかし、出発の時間が迫っているし、準備もしなけりゃならん」

「ラシが勝てなきゃ、出発出来ないだろう」

「ラシは負けたことがない。絶対に勝つのだ」

「へえ、かなり劣勢に見えるがな」


 戦闘は終局に近づいていた。

 50対15が、30対40になり、今は15対20と西の部族大健闘である。

 カリモシ側が押され続け、最前線は俺たちの目の前に移動している。

 ラシはさすがに棍棒の不利を悟ったようだ。皆を槍に持ち替えさせている。

 しかし、相手は執拗に突いてくる。

 突き合いになれば相手の棒が長い。

 引けば叩きつけられる。

 僅かずつだが、戦力が削られていく。


 カリモシが女子供の影に隠れたとき、


「最後まで付き合ってもらおう」


 タルトがカリモシの首を後ろから掴んだ。

 側近の若者は、俺が角材を掲げると動かなくなった。

 カリモシはそのまま父ジャケとタルトにはさまれて動けない。

 ラシはカリモシの姿を確認すると、ベテラン勢で最後の突撃をするようだった。


「ラシに狙いを定めろ」


 俺の大声を、レンが良く通る美声で通訳する。

 ラシが驚き、西の部族の連中がうなずく。

 綺麗ではないが、槍衾らしき形になった。


「突撃!」


 レンの通訳で、20の棒がラシに向かっていく。

 周囲が槍を突き出すが、届かず先に飛ばされる。

 ラシは時間差がついた棒先を二つまでは弾いたが、残りは三つもあり、後ろに飛ばされ動かなくなった。


「勝ち鬨!」


 レンが訳すが、通じない。

 俺が角材を高く延ばして「ウオー」と叫ぶ。

 連中も一斉に『ウオー』と答えた。

 やがて、西の部族全体が『ウオー』と叫ぶと、戦闘はおしまいになった。


 戦士の一人がラシの横で泣いているので様子を見る。

 呼吸が止まっていた。

 鳩尾に棒が入ったのだろう。

 心臓は動いているが、やばいので人工呼吸を行う。

 男とはやりたくなかったなどと言っている場合じゃないな。

 気道を確保し、口に息を吹き込む。

 3度目に、ラシが咳き込んで意識を取り戻した。

 近くで泣いていた男に「顔色が良くなるまで動かすな」と言明し、ラシを寝かせておく。

 ラシに説明はしなくても、後で十分に聞くことになるだろう。


 タルトは側近の若者まで捕まえてきた。

 カリモシの息子だという。

 カリモシは父ジャケが離さない。


 西の部族長は、『シャァンヤァゥ』と言うことなのでサンヤに決めた。

 カリモシの息子は『カラヌシ』だったので、コラノも本当は『コラヌシ』が正しかったのかも知れない。

 トリノは『トリヌシ』か。


 でも簡単な方がいいよね。


 タルトはどんな権限があるのかわからないが、5家族17人をカリモシから引き抜き、猪を全部集めさせると、父ジャケとともに村に行かせた。

 その後、カカの娘婿を新族長に任命し、部族を出発させてしまった。


 カリモシ、カラヌシ親子とラシは人質なのだろう。

 王と王子と将軍を人質に取られたようなものだ。

 国民は、どうして良いかわからないだろう。


 カリモシには妻が8人もいたが、タルトがどう説得したのか、3人は部族とともに3人はサンヤの部族に戻り、残ったのは、白髪交じりの品の良い第1夫人とレンぐらいの歳の第8夫人? だけだった。

 カラヌシの妻は、二人とも子供を連れて部族とともに行ってしまった。

 ラシの妻はひとりだけで、まだ若かった。

 娘が3歳ぐらいか。

 後でコラノに聞いたのだが、ラシは独身主義者らしい。

 あの若い妻は『押しかけ女房』で正式に妻になったわけではないという。

 つまり、ラシは戦士長だが、身分は戦士見習いのままでカリモシを大きくしてきたのだ。



 サンヤ族には、ログハウスまで移動してもらった。

 族長の相手はタルトに任せ、俺はレンとともに熊さんリヤカーにカリモシ親子とラシを乗せて先に村まで戻った。

 夫人たちはサンヤに頼んだ。


 途中父ジャケ隊を追い抜いてビックリされたが、カリモシ親子なんかは熊さんを見て怯えっぱなしだから、もう気にしてられない。

 先に村へ行き、そこでコラノとカリモシの感動の親子再会劇があった。


「絶対にユウキ様に逆らってはいけないとあれほど言っておいたのに。スルトがどうなったのか聞いただろう」


 しかし、カリモシは鶏舎や猪舎、食糧倉庫に夢中であまり聞いていない。


 猪は7頭、領内で確保された。


 息子のカラヌシなどは、サラサやカズネ、ナナなどに涎を垂らさんばかりで、自分の置かれた立場すら忘れている。

  どうも他部族の女には欲情するらしい。

 こいつが特別なのかも知れないが。


「ユウキ様が、ラーマのお尻を見るときの目に似てございます」


  レンが腐ったものを見るような顔で言う。


 えええっ、そんなこと無いよね。

 ラーマのお尻はルーブル美術館に展示されるぐらいの偉大な芸術だから、厳粛にありがたくおごそかに鑑賞しているよね。

 決して、縞パンやピンクのスケスケを着けたらどんな感じかなんて想像もしてないよ。

 あれ?


「レン。俺をあんな一年中発情期みたいなのと一緒にしないでくれ」

「そうでございますね。ユウキ様はラーマにだけ発情期でございますから、きっと違うのでございましょう」


 うーん。手当たり次第発情するよりも、ラーマにだけ発情する方がまともなのだろうか。

 どちらも変態と言うことなのだろうか。


「あの、ユウキ様」

「何かな、レンくん」


 俺は僅かだが、ふくらみ始めたレンのおっぱいに気づいた。

 元々、うっすらと気配があったレンの胸だが、一年間変わり映えしないので、そんな体型だったんだと納得していたのだが、今回は違うぞ。


「先ほど、わ、私の事を大事だと仰いましたわ」

「ああ、大事だぞ」

「あの、可愛いとも」

「ああ、可愛いぞ、レンは」


 でも、この感じだと、全体的にふくらむより、先につんとなって…… 

 ああ、手で隠されてしまった。


「ユウキさまー!」


 赤いけど怖い顔で睨まれる。


「は、はい、レンさん!」

「私、怖いので、ひとりで帰るでございます」


 ええっ、怖かったら、ひとりでは駄目なんじゃ?


 ああ、胸を隠しながら走って行ってしまった。


 その後、サラサに触ったとかで子ジャケとカラヌシの棒術による決闘があったが、結果は見えているのでひとり寂しく家に帰った。



 29へ

奴隷ハーレムの3巻がアマゾンから届いて、もう一ヶ月ぐらいでしょうか。

読まずに毎日馬鹿原稿書いている自分を褒めていいのでしょうか。

アマゾンから届くのは、実は書店でこの本を見つけたときに

「奴隷ハーレムが出てる」

と声に出してしまったからです。

近くの書棚には女子中学生のグループがいて、それまで楽しそうに本を選んでいたのですが、私の声を聞いてピタッと動きを止めました。

女子中学生と言えばこの世で神様の次くらいに偉い人たちなので、これは立ち直れないなと思っていたのですが、やはり立ち直れませんでした。

お陰で、代引き手数料を払っています。

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