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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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27 陰謀(前編)

 27 陰謀(前編)




 鮭は5日間遡上した。

 カリモシの話だと、10月に利根川で、11月の始めに荒川で遡上があったらしい。

 塩鮭や干し鮭の技術向上もあってか、カリモシは豊作が続く村の庄屋のように機嫌が良かった。

 浮かれるカリモシのそばにひとり変な戦化粧がいたが、誰も気にしないので忘れてしまった。


 こちらの村長はタルトなので、対応はタルトとカリモシの孫のレンに任せ、俺は鮭食品の加工業に専念した。


 鮭ビン10Lは、50食のおかずになる。

 シャケドッグ用ソーセージも、燻製して水分を減らせば1年以上保つ。

 フレークやジャーキーも酸素を抜いて保存できればかなり保つのだが、酸素を抜くのも窒素を封入するのも上手くできない。

 アルコールを燃やして、酸素を減らしながら密封する実験を始めた。


 八さんたちが来期予定されている3区以外の6区まで伐採と整地をしてくれたので、一辺300mの土地が出来ていた。

 そこで、干し鮭は漁村の光景のように干されている。

 コラノによる引き抜き工作は、あまり芳しくないようだ。

 豊作の年に無理する奴はいないだろうから仕方がないが、反応が鈍すぎておかしいと言っていた。

 まあ決行はカリモシが旅立ってからになるから、焦ることはない。


 スルトやカカも現れなかった。

 北の川で大漁だったので、それで気が済んだのか。

 隅田川の上流部分で、漁に励んだのかも知れない。

 商売も、相手が大漁に沸いている部族相手に、無理に売り込む必要がなかった。

 毛皮と鮭には、こちらも魅力は感じないからだ。


 一応、タルト村入口には木戸を作り防御センサーを設置した。

 死角になるリンゴ街道の北側も進入路となりそうなイケメン道(ブドウ林に繋がる道。俺命名)入り口付近にセンサーを設置しておいた。


 カリモシは隅田川国技館が気に入ったようで、レンが巫女として成長し、行司までこなすとわかると、連日のように相撲大会を開催していた。

 まわしを6つほど贈ると、更に熱気を増し、タルトやコラノまで引っ張り出され、二人はラシと5分の成績を収めたらしい。



「ユウキ様。チュ」


 隅田川で寝ているときに、ラーマとタキにはさまれていたのだが、朝起きるとラーマがいつもキスしてくれた。

 タキが怒るのでタキにもキスをすると、毎朝の習慣になってしまった。

 今では、起こしに来なかった方は風呂場でキスを待っているルールになっているらしい。


 どうにも寝起きが悪い俺は、朝の対応が上手く出来ない。

 為すがままになってしまうのだ。


 お陰でリーナさんはまた岩戸隠れをしている。

 変な研究をしているのだろう。


「おはよう、タキ」

「おはようございます」


 タキからパンツを受け取り、風呂場に向かう。

 途中、ラーマがいた。


「おはよう」


 キスすると固まってしまった。

 ラーマじゃなかったかな。まあいい。

 脱衣所にラーマがいた。


「おはよう」


 キスすると倒れてしまった。

 ラーマだよねえ。まあいい。

 風呂にラーマがいた。


「おはようございます。チュ」


 そうか、向こうからしてくるのがラーマか。

 俺は渡された歯ブラシで歯を磨きながらシャワーを浴びてぼんやりとそう考えた。

 やがてシャッキリしてきたので『ウオー』をやり、いつもと違ってモジモジしている夫人たちを見送った。


 口を濯いでいるとタバサが来て、


「おはようございます。チュ」


 リリと交代して、


「お、おはよう、ございます。…… チュ」


 タバサは何にも疑問に思っていないようだが、リリは真っ赤だ。


 やっと事態を飲み込めてきた俺がラーマを見ると、フリーズしてたラーマが気づき、ごめんなさいと頭を下げてきた。

 小さい女の子の可愛いキスは許せるみたいだ。

 しかし、儀式化のこともあるので一応注意しておく。


「タバサ、キスは好きな人とするものだぞ」

「タバサ、ユウキ様大好き」


 うーん、初潮で寝込む前のタキと同じような気がする。


「リリ。好きな男の子が出来るまで、キスはとっておくものなんだぞ」

「はい。今までとっておきました」


 うーん、何て言えばわかってもらえるのだろう。


「リリはきっとナナみたいなおっぱいになって見せます」

「タバサもナナおっぱいになるー」


 ラーマが自分の胸を見て、『私は、私も』と混乱している。

 話がややこしくなる前に、逃げ出すことにした。



 トリノ邸の仕上がりを父シャケと確認していると、スレンダー母がお茶を入れてくれた。

 以前の柿の葉だと思ったら笹の葉茶だった。


 竹の湯飲みが渋い。


 サラサが来て干し芋を出してくれる。

 こうしてみると、これ以上ないと思う嫁と姑の組み合わせである。

 二人とも温厚で気が利くのだ。


「人と争ってばかりだった俺が、こんなに幸せな生活をしても良いのでしょうか」


 父ジャケは、息子以上に嫌われ者の暴れん坊だったらしい。

 今は大工仕事が出来、家畜を育てるのも上手い。

 妻は温厚でラーマの一番弟子、嫁は美人で気が利く。

 父譲りの暴れん坊だった子ジャケも、嫁が来てから真面目に働くし、家の建築費用は2件で10石の手間賃を領主が出したから食うにも困らない。

 猪も鶏も良く育っているし、腹一杯食える。


「確かに領内に火を付けて周り、仲間はサラサまで攫っていったんだから、こんな生活が出来るのは不思議だな」

「ユウキ様。意地悪は駄目です」


 サラサに咎められた。


「サラサは最初から子ジャケをよく世話していたな。あの盗賊の仲間だから怖くなかったのか」

「あの人たちは怖かったですが、夫は平気でしたよ。顔に幸せになりたいって書いてありましたから」

「ちぇ、俺もどっかで火を付けて暴れてくるかな」

「ユウキ様は違います。幸せになりたいではなく、幸せにしてやるぞって書いてあるんです。だから女の子がいっぱい集まってくるんですよ」

「確かに、俺にもそう見えます。きっと神様だけですよ、そんな顔の人は」

「俺は女神様に仕える凡人だよ」

「凡人の筈はありません。ねえ」


 母ジャケが、笑いながら夫を見る。

 父ジャケは、うなずく。


「空から猪を降らせる人なんて見たことがありません。その上、いつの間にか上等の肉を食わされて酒まで振る舞われたんです。あんな悪事を働いた自分たちがですよ。きっとこの人は神様で、自分はもう死んでるんだと何度思ったか」


 思い出して震える夫を、スレンダー母が優しくさする。

 やせている分、大きくせり出したお腹が目立つ。


 実は、何も考えてなかったんだけどね。

 酒と肉と美人を出されて不満な男なんかいないだろうと思ったからさあ。


「ところで、あの時の変な戦化粧した男たち、何者だったんだ」

「あれは西の部族です。カカに負けて配下になったんです」

「あれによく似た化粧をしたのが、カリモシの所にいたんだが、何だと思う?」

「変ですねえ。カリモシは西の部族だったから嫌われているんですが。配下にするような時期じゃありませんし、どこかに襲われて助けを求めに来たんですかね。カリモシが動く気配はないから、見捨てたんですか」


 もう2月だ。

 カリモシは国技館で完全に冬越しモードになっている。

 真冬に戦争なんて、カリモシはやりそうもない。

 鮭が長持ちするようになったからなおさらだ。

 春までは動いたりしないだろう。

 こっちはもう春の作付けの準備で忙しい。

 新たな3区は腐葉土を入れ、灰も混ぜている。

 鶏糞の量も多くなってきたから、去年よりも楽だ。

 カリモシが下手に動かない方が安心だな。



 それから、俺は産院を作り始めた。

 早ければ3月の中旬ぐらいには出産ラッシュが始まるかも知れない。

 猪や鹿モドキが出産していて、八さんが忙しくしているので、気が付いた。


 医療行為は出来ないが、清潔な場所があるだけで、少なくとも産褥の死亡率はかなり下げられるはずだ。

 出血と感染症のうち、感染症は準備すればかなり防げる。

 清潔な部屋で、石けんとアルコールを使うだけでも違ってくると思う。

 いや、そう信じないとやってられない。


 栄養状態は良いし、皆健康そうだ。

  領民に元気な子供を産んでもらうのは、領主の努めだろう。


 ところが、夫人たちは反対してきた。


 子供は森で授かり、森で生まれるのが正しいやり方なのだそうだ。

 ずっとそうしてきたから、というのは本当は正しい理屈では無いのだが、どこかに合理性があって続けてきている習慣というのもある。

 立ったまま出産したり、四つん這いで出産する文化もある。

 水中出産とか。


 妊婦全員とラーマを連れてオペレッタの向かい側にあるナラやカシワの森に入った。


 出産のための木を選んでもらうためだ。


 その木を分娩室に取り込んだまま、産院を建てれば良いのではというラーマの案に乗ってみることにした。


 ひとしきり様々な木を試した後、出産経験が豊富なタルト第1夫人とコラノ第1夫人が選んだ一本が候補となった。


「試してみましょう」


 タルト第1夫人がそう言うと、無理矢理実験が始まってしまった。

 最初はコラノ第1夫人だった。

 彼女は予定の木にしがみつくとお尻を突き上げ、脚を少し開いて立つ。


 童貞の心臓には良くないポーズである。


 タルトの二人の夫人は俺の両腕を掴んで連れて行き、、その位置に立たせると、両手をコラノ第1夫人のお尻にあてがわせる。

 体格差がありすぎるので肝心の部分は触れ合わないが、まるで俺が何かをしているみたいである。


 アノ、ナニヲシテイルノデショウカ?


「ああ、ユウキ様」


 コラノ第1夫人の声は俺の心臓を貫き、俺は頭の中が真っ白、いや真ピンクに染まって判断力を失った。


 きっと、子ジャケも、トリノも初夜にこれをやらされたのだ。


 俺がスキンスーツを着ていなかったら、危ないなんてものじゃあない。

 その後も次々と夫人たちは入れ替わり、俺はその儀式を続けることになった。

 もう、死んでしまうかも知れない。


「ユウキ様、ユウキ様ー」


 最後のアンは崩れ落ちてしまった。

 夫人たちはアンを介抱しながら連れて行った。

 アンはラーマと間違えてキスしてから、俺にくっついて来るようになってしまっていた。

 ラーマひとりが残った。

 ラーマは木にしがみつくと


「ご主人様。本当にして下さい」


 涙目で訴えた。


「ごめん、ラーマもう少し待って」


 俺はラーマのお尻を優しく掴んだ。


「そんな、嫌です。ちゃんと、ちゃんと」


 などと言いながらお尻を動かすラーマを見て、危なく出してしまうところだった。

 いや、ちょっぴり…… 男子高校生は悲しい。


 その夜、俺はリーナさんに例の木まで引っ張って行かれた。

 リーナさんは白いワンピースを脱ぐとすっぽんぽんになってしまった。


「あああの、リーナさん?」


 リーナさんは木にしがみついてお尻を見せた。

 マネキンのようにツルリとした下半身で未完成だったが、お尻の形は美しかった。

 夏の水着の時より更にヒップラインが高く見える。

 サイズが地球サイズで脚も長い。


「ユウキ、私のお尻はどう?」


 リーナさんは涙目で尋ねてきた。何で人間と張り合いたがるのだろう。ただの意地っ張りか。


「とても綺麗です」

「本当?」

「本当です」


 リーナさんは抱きついて泣いた。


「ユウキ、ごめんね。我慢してるよね」

「いや、俺は領地経営と領民の安全確保で日々忙しいから」

「嘘よ。今月は先月より5ccも増えたわ」


 なんてことしてんだ!

 全部モニターしてんのかー。

 人がちょっと格好良く決めようとしたのにー。


「ちゃんと作れたら、ユウキのを一滴も残らず絞り出して見せるわ」


 それ、きっと俺死んじゃうからね。

 童貞卒業と同時に、腹上死確定か。


 リーナさんはそのデザインと性能について滔々と語り出したので、俺は強引に抱きしめてキスしながらお尻やおっぱいを触りまくった。


 2時間後、リーナさんはヘロヘロになって、自分でワンピースを着ることも出来なかった。

 翌日からリーナさんは上の空で、暫く使い物にならなかった。


 きっと、何度も再生してるのだろう。



「オペレッタには、おっぱいなんてないだろ」

「わたしも気持ちいい、したい」


 例によってオペレッタがすねている。


「したいからって、リーナさんのデータコピーしてんだろ。同じじゃないか」

「違う。あれはリーナの体験」

「でも、前にもリーナさんを使ってたじゃないか」

「ちょっと違う。あの時は殆どわたしの感覚」

「どう違うのかが、わかんないんだよ」


 どちらにせよ、リーナさんは暫く使い物にならないのだろう。

 だから、すねているのだ。


「ラーマにヘルメットかぶせて、して」


 俺は飛び上がった。


「そんなことも出来るのか、冗談だよね」

「してみないとわからない。実験?」

「嫌だ。ラーマが困るだろ」

「ラーマは喜んで実験すると言ってる。最後まですれば、わたしの方がリーナより先に初体験?」

「それは、ちょっと拙いんじゃないか?」


「リーナ様が先なんですね」


 ラーマが部屋に入ってきた。


「リーナ様もご主人様も、待てとか、後でばかりで、私」


 拙い。

 ラーマの瞳に大きな盛り上がりが。

 これはカカが攻めてくるパターンだ。

 いや、攻めて来た方がいいのか。


「せめて、リーナ様と同じだけしてください」


 ラーマは涙を零しながら抱きついて来た。

 俺の手を取り胸に当てる。

 スッポリ感がたまらない。

 拙いぞ、変な脳内物質があふれ出てきている。

 自分を止められなくなるぞ。


「カリモシの戦士がログハウス前に集結中」

「へっ?」


 カリモシが攻めて来たの? 何で?


「北西側およびタルト村西側岩山上に侵入警報。30人以上を予想。岩山上の敵に電撃攻撃すると墜落死の恐れあり」

「それもカリモシか?」

「多分、西の部族」

「岩山は電撃中止。動向だけ把握しろ」

「了解」

「ご主人様、ケガはしないで下さい。チュ」


 よーし、やる気出てきた。

 今度は完全に完全装備で行くぞ。

 前回はパンツだけでリーナさんにさんざん泣かれたから、木器時代は卒業だ。

 きちんと学習しているのだ。

 装備を確認して、角材を持って出ていく。

 豹子頭林冲は無敵なのだ。


「北西側撃退数3。バッテリー切れ」


 夜だからな。仕方がない。

 森をショートカットすると、タルト村の畑に出る。

 岩山の上から火矢が降りかかっているが、家は樹脂コーティングしてあるので燃えていない。


 どうやら、タルト家の前に村の男どもは集まっているようだ。


 女子供は中にいるのだろう。


 ここまでは訓練どおりだ。俺が着くまでは、防衛に専念しろと伝えてある。


 猪舎と鶏舎の屋根が燃え上がった。

 確かに樹脂は塗ってないなあ。

 手抜きでは無いんだけどさ。

 猪がひどく怯えている。

 鶏も飛び上がって逃げ出した。

 変な戦化粧の連中が柵を壊して、猪たちを走らせる。

 どういうわけか、リンゴ街道の方へ逃げていく。


「こいつら、猪泥棒か!」


 俺はタルトたちに動かないよう伝え、貯水池の方に走って行く。

 どうやら敵は、上手く猪を導いているようだ。


 西部劇の牛泥棒かお前ら。ウ○ンゲート一家とか。


 貯水池前に10人ほど居る。

 黙って忍び寄り、3人ほど池に落とす。

 バシャバシャやっている仲間を捜すため、松明を持った奴が走ってくる。

 そのまま池に放り込む。


 残りが、俺を見つけた。

 崖に合図すると火矢が降ってくる。

 火矢が飛んでくる前に敵中に飛び込む。

 二段突きで二人倒れる。

 角材をぐるりと回し更に二人倒すと左右に4人。

 左の一人はずぶ濡れで震えているから、池から上がってきたのだろう。


 馬鹿な奴だ。痛い思いするだけなのに。


 右の二人が槍で突きかかって来たので、角材で同時に弾き飛ばす。

 くるりと回って両脚を跳ね上げる。

 二人は空中で半回転して頭から落ちる。

 左の二人が怯えながら槍を突き出して来るが、届かない。

 角材で弾いて、軽く腹に突きを入れる。

 うめきながら下がるところにまた二段突き。

 二人は屈んで下がり続け、池に落っこちる。


 タルトたちを呼んで、革のロープで縛り上げさせる。


 そのままリンゴ街道に出る村道に行くと、狭い村道にうようよ居る。

 しかし、同時に二人しか、かかって来れないのは拙いんじゃない?

 先頭の二人が槍を突いてくるが短くて届かないのだ。


 角材は届くけどね。


 得意の鎖骨叩きをお見舞いする。

 振りかぶると背中の裏側まで叩いちゃうから、両腕を下げて叩くのがコツです。

 二人倒すと今度は棍棒二人だ。

 バックステップで鎖骨。

 更にバックステップで鎖骨。

 4人は呼吸が止まり声も上げられない。

 タルトと父ジャケが追いついてきて、驚いている。


 そりゃ、豹子頭林冲は無敵ですもの。

 おほほほ、とやりながら更に鎖骨、鎖骨、鎖骨、鎖骨。


 さて、まばらになってきたなあ。どーする君たち。


 ずいっと前に出ると棍棒が3人並んで飛び込んできた。

 角材を横にして片膝をついて3本同時に受け止める。

 驚いた顔が3つ並ぶけど、君たち振り下ろししか知らないよねえ。

 ドンとしたから突き上げると3人とも片手万歳。

 三段突きー、で次の方どうぞ。


 ああ、もう投げ槍なのね。


 俺は角材を縦にして伸び上がり、横にしてがに股で広がるを何度かやる。

 面白いように付き合ってくれて投げてこない。

 投げようとするたびに形が変わるから、狙いが付けづらいのだろう、たたらをを踏んでいる。


 訓練してない小学生なら、こんなもんだ。


 最後に飛び込んで、投げる瞬間に横棒を突き上げると、槍は上に向かって飛んでった。

 2本とも木の枝に突き刺さる。


 あれは届きそうもないな。


 さて片手万歳の二人を二段突きで転がすと、残りは槍と松明の二人だけ。

 突きの応用で松明に角材を投げつける。

 ドスっと腹にめり込んで、松明が一瞬暗くなる。

 槍持ちがちょっと振り返ってしまった。

 左手で槍の先の方を掴む。

 暫く引っ張り合い。


 付き合ってあげたいけど、松明で火事になったら困るでしょう。


 グイっと引っ張ると前に出てきたので、右回し蹴り。

 くの字に曲がって横の木の幹にぶつかると、そのまま倒れる。

 松明を拾って、木戸の向こうに放り投げる。


 うーん、何のリアクションもない。

 誰も残ってないのかしら。


 左手で角材を木戸から出すと、棍棒が襲ってきた。

 右手で木戸の扉を閉めると、棍棒ごとぶつかって、ドドンと凄い音がした。


 死んでないよね。


 そっと木戸の外を窺うが、もう誰もいない。

 期待した弓も飛んでこない。

 リンゴ園にも誰もいないようだ。


 もう、カリモシったら薄情ね。

 せめて敵か味方かぐらい、はっきりして行けばいいのに。



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