20 儀式2
20 儀式2
儀式は、カカ襲来後も散発的に続いた。
最初は、コラノ家長女『サラサ』である。
第2夫人の子で、年は14歳ぐらいだろう。
カリモシにいれば戦化粧をしていたと思う。
先日、成人した長男と同じ年らしいから。
清楚で温和しく、優しい性格の美少女で年上に見える。
北方系なので従姉妹に当たるレンとよく似ているが、性格はレンに爪の垢を、と言いたい。
サラサラの金髪、と偶然にも覚えやすいぐらいに一致している容姿で、タルト領にいればよく目立つ。
あんまり目立っても本人が一番困りそうだ。
そう、どういうわけか子ジャケの世話を焼く。
お陰で子ジャケは開墾に力を発揮してくれるのでありがたいことだが、何となく、何となくむかつくので、おっぱいは念入りに洗いまくり、股洗いは涙目を確認するまで行ってしまった。
清楚な美少女が紅潮した顔で、声を上げまいと我慢する姿はとても良いものだったが、悪者になった気分だった。
忘れてくれるとありがたい。
コラノ家次女は『カズネ』である。
長女と良く似ているが第1夫人の子である。
年は12か13か、タルト家のナナと同じぐらいだろう。
おっぱいはナナが一番でかいのだが。
まあ、こちらは控え目のおっぱいだが、大人になりきっていないまぶしさがまぶしい。
盗賊に攫われて気絶するぐらいだから気が弱いのかと思っていたら、好奇心が旺盛なのか、儀式に臆することなくおっぱいまでは笑顔で乗り切った。
実に天晴れな性格である。
だが、股洗いの後は真っ赤になって俯くばかりだった。
ちょっと、可哀想だが、可愛かった。
「ラーマ、やっぱり恥ずかしいんじゃないのか、この儀式」
「意味がわからないだけです。誰も経験したことも想像したこともないことですから。理解するのは何日かお風呂に入って清潔にするという概念を理解してからですよ。それからが恥ずかしいのです。清潔という意味でですが」
「でも、皆恥ずかしそうに見えるんだけど」
「何故こんなことを、と思うのでしょうね。理解を超えているだけです」
「でもさ、男に見られたり触られたりって、問題にならないの」
「何故ですか?」
本当に、不思議なようだ。ラーマは決して俺に嘘をついたりしない。
「だって、嫁入り前の娘が、風呂で男にあんな事をやらされているって」
「清潔で、美しくなる上に、名誉まで頂いて誰が文句を言うのでしょうか」
「でもさあ、俺は一応男なんだし」
「ご主人様が娘たちを森につれて行くのなら、一言でも親にことわりを入れた方が良いと思います。多分、反対するものはいないと思いますが」
「いや、そんな気はないけど」
森につれて行く、と言うのはこの世界では子作りすると言うことだ。
部族なら結婚しなくてはならない。
しかし、俺は部族の一員ではないから、他部族の男に攫われたのと同じ扱いになる。
つまり、父親が取り返しに攻めてこない限り、許されるのだ。
まあ、コラノが攻めてくるとは思えないけど。
サラサならともかく、カズネは喜んで差し出すだろう。
妻でも巫女でも侍女でも名誉なのだ。
「オペレッタ様が言っておられたのですが、この世界での性交は昆虫の交尾よりひどい、のだそうです。女のお尻に止まった蚊が血を吸うのだってもっと時間がかかると笑っておられました。私も、キスなんて知りませんでしたよ。後で自分がキスというものをしたんだと教えて頂いたのですが、お風呂にも入ったことがない男女に理解出来るとは思いません。胸だって綺麗にしているから触って欲しいと思うのですよ。そうでなければ、とても恥ずかしくて、ご主人様のお側にも寄れません」
うーん、確かにお風呂前は、不潔すぎていやかも。
おっぱいだって、洗ってからじゃないと触れないよね。
汚くないと思っても、毛皮のニオイとかすると、もう駄目だろうな。
「それに部族で寝るときは、子供以外は男女別なんですから、何かをすることはありません。まあ毛皮を敷かないで寝る男は、ご主人様以外見たことないですけど」
文化の違いなのだろうか。
しかし、タルトたちは屋内での生活を覚えつつある。
徐々に変化していくかも知れない。
直ぐには価値観は変わりそうもないからなあ。
「しかも、この領内でのことは秘密厳守になっています。儀式などは特にきびしいです。女神様に追放されるのは、誰でも怖いですから何しても大丈夫ですよ」
何してもって、しないからね。
コラノ家三女は『タバサ』である。
ツバサかタバサかで迷ったのだが、タバサの方が女の子らしいと思ったので決めた。
第2夫人の子で8か、9歳ぐらいか。
年齢の見当は身長、おっぱい、奥歯の数で見当を付けている。
抜けている歯が生え替わりを示すから、前歯なら8歳より下だし、奥歯が揃っていれば大体12歳よりは上である。
タキの年齢はそれで見当を付けたのだが、急速に成長して良くわからなくなった。
栄養が良くなったせいだろう。
身長なら15歳、おっぱいはオマケして11歳、奥歯は精々今年で12歳ってとこ。
まあ、三女は本当に子供子供してるから全然気にせず丸洗いできた。
髪は長女を長めにしたが、次女からは短めにした。
自己管理が楽だし清潔に出来るからだ。
しかし、コラノ家は美形揃いだ。
突き抜けてはいないが、長男以下みんなそう感じる。
男の顔なんか洗ってやらないからね。
「ユウキ様」
「朝から何だよレン。儀式は、昨日で終わりだろ」
「まだまだでございますね、ユウキ様」
「まさか、コラノ家の赤ん坊が女の子だとか言うんじゃないだろうな」
「その、まさかでございます」
何だかレンがとても嬉しそうなのは何故だろう。
オペレッタは、レンにどんな教育をしてるんだ。
「仕方がないな。赤ん坊なんだから泣いたらレンが面倒見るんだぞ」
レンからパンツを受け取ると、渡り廊下を歩いて風呂場行く。
レンが嬉しそうに付いてくる。
風呂場に入り、愕然とした。
ナゼカ、大人の女がイル!
母親付きだった。
働かない頭でどうすればいいのか考えていると、ラーマが歯ブラシを渡してくれた。
シャワーを浴びながら歯磨きをする。
ウオーをやってしまった。
いや、やらずに出て行く方が拙いだろう。
今年17歳になる童貞男子高校生のパワーは、どんなことをしても押さえられない。
ラーマが気遣って第3夫人を湯船に入れていたのだが、振り返ってしっかりと見られてしまった。
顔に書いてあるから良くわかる。
しかし、考えたら赤ん坊を洗ったことなんてないぞ。
小さい子供なら大丈夫とか思っていたが、赤ん坊は違うよな。
「ご命名を」
「へっ?」
「ルルルゥゥネェェィ」
最初のは巻き舌ってやつだ。まねできん。
「ルルネ」
母親が頭を下げた。
もうこれって、洗礼名みたいな扱いになってるよね。
母親に協力してもらって洗髪する。
未だ薄く長くもないので軽くで良い。
それより洗顔が難しい。
お勉強でお疲れモードのタキにフェイスタオルを何枚か用意してもらう。
お湯に一枚つけて軽く絞り、そのまま顔を拭っていくと、一度湯船に入っているお陰で結構綺麗になる。
しかし、耳の後ろから首にかけては拭うだけじゃ駄目そうだ。
タオルに軽く洗顔石けんを付けて撫でるように洗っていく。
母親が気を遣って赤ん坊の向きを変えてくれる。
何だか首筋がチクチクするような感じがするので、チラリと見るとラーマさんが少しお怒り気味。
そうだよね。
何だか夫婦の共同作業みたいになってるよね。
ボディ洗いは気が楽だと思ったら、もっと大変だった。
何しろ、横抱きにした赤ん坊のこっちではなくあっち側を洗うときに、赤ん坊とおっぱいの間に手が入り、はさまれたり、先端をこすったりするのだ。
母親は必死で気づかないが、ラーマが気づいた。
慌てて洗い終わり、流して湯船に入れるとホッと一息。
しかし、無情の声が。
「ご命名を」
ナンデデスカ、れんサン。
「領地に入った女が、儀式をしないで帰れるはずがございません。ご命名を」
ラーマさんのお怒りがまた一段上がった。
ナゼなの?
母親の必死の願いを込めた瞳を見たらもう断れない。
これが、へたれというものか!
「ラーマ、バスタオルを」
こんな時は、ゴチャゴチャ考えないで進めた方が被害は少なくてすむ。
赤ん坊をバスタオルでくるむ。
「ラーマ、暫くお願い」
「はい」
ここは子育て歴のあるラーマにお願いするしかない。
「湯あたりするから、少し部屋の方で面倒見ててくれ」
赤ん坊を抱っこすると、少し嬉しそう。
ご機嫌直るといいなあ。
「ご命名を」
レンがすかさず進行する。
「アァァィンン」
何て色っぽい名前なんだ。
童貞の心臓に良くないぞ。
今後は、伏せ字展開になるのか。
「アン」
ドイツ語の名誉の為にも『アイン』にはしないぞ。
洗髪し髪を切り洗顔する。
金髪のラーマが現れた。
いや、かなり若い。
16か17か、下手すると年下なんてこともあるのか。
コラノめ、タラシに改名してやろうか。
「タキ、親戚か?」
「いいえ」
「しかし、似てないか」
「ラーマにそっくりかも?」
しばしタキとアンの会話。
「何も知らないと言っています」
他人の空似か。鏡を見てみろ。
「らぁまさま…… 」
本人が驚いているようじゃ、無罪だな。
ボディ洗いだ。
考えるのも意識するのも拙い。
俺の脳は、ラーマ大好き物質が出やすいからな。
あれが出ると何故かカカが攻めてくる。
「オペレッタ」
「何」
やっぱり風呂も監視対象になってるじゃねえか。
随分調べたんだけど、センサー類は見つからなかったぞ。
「外の監視を強化してくれ」
「いや」
「何でだよ」
「いま、儀式の最中」
「やっぱり覗いてるんじゃねえかー」
おおっ、若いラーマがオペレッタの声に驚いている。
「ユウキ様、儀式に集中を」
レン、それ絶対洗脳だって。
集中したら拙いだろう。
しかし、ラーマにそっくりだよなあ。
おっぱいはこっちの方が大きいけど。
ああ、授乳中だからか。
あれ、授乳って受けてる方だっけ。
する方は何て言うんだ。
哺乳か。
哺乳びんって言うからな。
授乳びんとは言わないだろう。
紛らわしい日本語のひとつだな。
保険者と被保険者とか、選挙人と被選挙人とか関わりがない人間にはわかりにくい場合がある。
宅配便が受取人と被受取人とか書いてあったら受け取り拒否みたいじゃないか。
差出人と受取人、何てわかりやすいんだ民間企業。
すまん、その間に一気に終わらせたぞ。
精神的な変わり身の術だな。
あれ、若いラーマさん。
何で、すがりつくんですか。
「女神様への直訴は禁じているんでございますが」
いつの間に、そんな掟が出来ていたの。
レン、君は法律家か何かか。
俺は被法律家だぞ。
意味わかんないな。
「残念ながら、俺は女神じゃないからな」
「はい。どうやら歯磨きを習いたいと申しておりますわ」
「構わないが、何で涙目で必死なんだ」
「痛みが激しいようでございます。無理して来たのでございますね」
アゴを持って、アーをさせる。
下の奥歯が結構ひどい。
こりゃ痛いなんてもんじゃないぞ。
ほっぺを軽くつんつんすると、涙目でうんうんうなずく。
何だか可愛いぞ若いラーマは。
そして俺に拙いぞ若いラーマは。
俺は待っているように言い、パンツを穿いて風呂場を飛び出す。
工作船の扉を開けるとゴン。
「変態!」
「ごめん、リーナさん。急いでいたから」
リーナさんは画面表示を全部切った。
多分、下半身の映像だった。
この人、まだ設計してるんだ。
しかし、これはガラスの花瓶? バカラ? モーゼル? 祖父さんの遺品じゃねえか。
絶対にパチモンだって。
でもパチモンでも痛いのは一緒だー。
「医療行為はオーバーテクノロジーよ」
「でも可哀想で」
「可哀想ですめば弁護士はいらないわ」
いや、そこは医者ですよ。
「領内だし」
「でも」
「初診だし」
「医者じゃないでしょ」
「無料だし」
「無料奉仕でも医師免許はいります」
「美人だし」
「ええっ」
「ラーマに似てるし」
「絶対に駄目!」
「ねえリーナさん?」
「甘えたって駄目よ」
「その、下半身のけんき」
「ここ、今回だけよ。絶対よ」
逃げてった。
勝ったぞ、若いラーマよ。
風呂場に戻ると脱衣所でパンツを脱いでアンにって、もう服を着て待ってればいいのにって、あれ、俺がパンツ脱ぐことなかったんだ。
でも相手は裸だしって、俺ひどく混乱している。
変な脳内物質のせいだな。
「相手はラーマじゃない。相手はラーマじゃない。相手はラーマじゃない」
よし、これで落ち着いた。
「ラーマですが」
あれ?
「若いラーマではありませんが」
「俺、口に出してた?」
「はい、若いラーマ可愛いと、走りながら何度も」
「…… それは大変失礼いたしました」
プイッ。
これは拙い。
タキはお疲れ気味で変だし、レンは洗脳されてるし、ラーマまで敵に回したら四面楚歌どころか合従連衡か信長包囲網だ。
武田が動いたらおしまいだ。
「いやあ、ラーマだってわからなかったよ。アンとそっくりだね」
プイッ(反対向き)
「昨夜のポークストロガノフ美味かったなあ」
プイッ(反対の反対向き)
「砂浜にハマグリ拾いに行こうか。二人っきりで」
プー、プイッ(反対の反対の反対向き)
ちょっと違ったぞ。
「暖かいから、お弁当も持って行こうか。何が良いかな?」
「いっ、イチゴの……プイ」
惜しかったな。
「イチゴの小豆餡サンドだね。イチゴと小豆どっちが多い方が好き?」
「イチゴです!」
「そうか。頑張って作るよ。他にも一品欲しいよね」
「あの、焼きハマグリも食べたいです」
「うん、焼きハマグリを食べるラーマは、世界一綺麗だからなあ。忘れられないよ」
「世界一ですか?」
「もちろんだよ。ラーマみたいな美人、この世界には他にいないって」
「そんなことないですよー」
赤くなって満更でもないようだ。
「じゃあ、儀式も終わったみたいだし、ラーマも仕事片付けといて。あ、可愛いお尻はちゃんと隠すんだよー」
「はーい」
上機嫌で、ラーマは朝食作りに行った。
ふー。これは何かの試練か、それとも天罰か。
「たらし?」
「極悪人」
「結婚詐欺師?」
「女の敵」
あー、うるさいうるさい。
風呂場に入るとタキは既に勉強に行ったみたいで、レンとアンと抱かれた赤ん坊だけだった。
早速、アンに消毒剤を口に含ませる。
口の中がアワアワになるが、飲み込まないようレンに伝えてもらう。
その後、アーをさせて特殊な充填剤を虫歯に貼り付ける。
消毒に、軽い痛み止めが入っているから痛くはないはずだ。
二、三度カミカミさせて歯に馴染ませると、アーさせて確認する。
綺麗に治ってる。もう大丈夫だ。
その次の日、コラノ第2夫人が儀式にやってきた。
妹ばかり綺麗になるのは困るのだそうだ。(夫人同士は姉妹と呼ぶらしい)
確かにコラノが鼻の下を伸ばしているだろうね。
俺は第2夫人を徹底的に磨いて送り出すと、そのうちに第1夫人、タルトの奥さんたち、父ジャケの妻と妹まで来て、結局領民の女性は全員儀式を受けることになって、オペレッタを喜ばせ続けた。
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