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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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12 嫁取り相撲

 12 嫁取り相撲




 まず模擬戦をしようか。


 槍持ちこと『タルト』を呼んだ。

 タルトは、スルトの甥だそうだ。

 愛嬌があるサル顔のタルトは、またかという顔をしながら土俵に来た。


 タキに足の裏以外が土俵についたら負け、反則はこれこれで負け、名乗り、仕切り、塩まき、水などをふんふんと聞いていた。


 とりあえず一回やってみようということになり、正式にやることにした。

 俺がカリモシ側、タルトがスルト側である。

 行司はタキ。


 まず土俵脇にある水の壺から柄杓で水を飲む。

 塩を軽く取り、土俵に上がると中央部にまく。

 パンパンと、手を叩いて塩を払い取ると名乗りだ。

 俺はユウキと大声で名乗った。

 まあ、スルト族は知っているか。

 タルトも付き合った


「たぁーるとぅー」


 何となく相撲にあってる。

 呼び出しが欲しい。


 中央で両コブシをついて仕切る。

 タルトは落ち着かず恥ずかしいのか、腰も上がらない。

 仕切り直して、塩をまき、コブシを付いて見合う。


 タキが手を下にして『はっけよい』と言い『のこった』と手をあげる。

 タルトが上体を起こしたところで飛び込み土俵際にぐいぐい押していく。

 後が無くなったタルトの腰が入り四つに組む。

 向こうが押し返してくるが、予想通り大した力ではない。

 ぐいっと押して抵抗が増したときに左足をちょっと下げて右上手投げ。

 見事に決まり、タルトは土俵中央へ転がった。


 タキがすかさず「ユウキー」と勝ち名乗りをした。

 巫女が神に告げるみたいで、いい感じだった。

 タルトは少し悔しがった。


 次はカカを呼ぶ。

 タキに説明させる。

 カカは雪辱戦と思っているようだが、そうは簡単に譲らない。

 今度は真っ向、力のぶつかり合いになった。

 やはり四つでお互いぐいぐい押す。

 スルト族から『カカッ』と声援が飛ぶ。

 ぐいぐいぐいとカカを土俵際に追い詰めると、カカの上体がのけぞっていき、ついには後ろに倒れ込んだ。

 タキがすかさず「ユウキー」と勝ち名乗りを上げる。

 カカはタルト以上に悔しがった。


 次はカリモシの戦士長「ラシ」を呼んでみる。

 嫌がるかと思ったら結構乗り気だった。

 タキの説明を熱心に聞いている。

 塩をまいたら、カリモシ側から『ラシー』と次々に声援がかけられる。

 人気者だな。


 さて、本番。


 ラシはもの凄い勢いでぶつかってきた。

 胸で受け四つにする。

 そのまま力一杯押されて俺の両足がずるずる後退する。

 観客は大声援だ。

 土俵際まで追い詰められたが、うっちゃりをかましてやった。

 「ユウキー」とタキが言う。

 ラシは信じられないという顔をしている。


 さて、観客の熱気が冷めないうちにもう一戦。


 カリモシの息子『コラノ』を呼ぶ。

 対戦相手はタルトにさせる。

 俺が行事だ。

 族長の子孫対決だ。

 盛り上がる両観衆。


 勝負は一進一退。

 観客も声援したり、固唾をのんだり、悲鳴をあげたりしている。

 双方力を出し切る勝負だ。

 最後押し出されそうになったタルトが踏ん張って残した後、左下手投げ。

 両者ともに転がっていったが、俺は「タルトー」とスルト族側に手をあげた。

 コラノとタルトは笑ってお互いの土を払いあっている。

 「またやろう」とか言ってそうだ。


 両陣営から「コラノ」、「タルト」と声援がかけられる。

 族長たちも相撲のおもしろさがわかってきたようだ。


 さあて次はと思っていると、正面に花嫁候補たちが現れた。

 付き添いもいる。

 皆美しく戦化粧で飾られている。


 全裸の花嫁に驚かない自分に驚く。

 慣れてきたのだろうか?


 丸太を切っただけの花嫁席に、カリモシ族の一人目の少女が座った。

 瞳が美しく、栗色の髪をしている。

 おっぱいも、とても美しい。


 スルトの男たちが、6人も出てきやがった。

 やっぱり、おっぱいなのか。

 目的はおっぱいか。

 俺も並ぼうとすると、タキが恐ろしい目で見て引っ張ってきた。


「すみません。調子に乗りました」


 タキは小さくため息を漏らすと、自分の胸あたりを見た。


 ラーマも、あんまり大きくないからなあ。


 俺もため息を漏らすと、キッと睨まれた。


 さてと、相撲は本番だぞ。真剣にやろうや。

 石灰を縁に撒き直した。


 事前に花嫁たちには説明してある。

 嫌なら断ってもかまわないと。

 ただし、真剣に男たちの勝負は見て欲しい。

 それで何かを感じ取ったら、ちゃんと考えて欲しいと言ってあるのだ。


 彼女らも族長に結婚を言い渡された立場だから、簡単には断れない。

 でも、選ぶことができるのだ。

 ちゃんと真剣に見て、それでも嫌なら仕方がないだろう。


 結婚に反対の者は対戦者となる。

 美乳の結婚を阻止したいカリモシ代表は、ごついおっさん二人が登場だ。

 きっと父と叔父だろう。

 若者どもはどうした。

 あきらめたのか。

 それとも、この兄弟がいれば大丈夫だと思ったのか。


 スルト側は若輩ながら6人だから、一人か二人は抜けられそうだ。

 真剣に勝負して3人抜きはかなり難しい。

 ましてやあのおっぱ、いや結婚がかかっているのだ。

 普段以上に力が出るはず。


 一人目はスルトが誇る『チャラオ』(俺命名)だ。

 相手は花嫁の父、『チュウネン山』(俺命名)だ。

 負けたなこりゃ。


「はっけよい。のこった」


 2秒でチュウネン山の勝ちー。


 二人目はスルトの『ヒョウロク』で相手は『姪は俺嫁』だった。

 3秒で叔父さんの勝ち。

 盛り上がるカリモシ陣営。


 三人目はスルトの『真面目くん』で、再登場の『チュウネン山』が相手だ。

 あっさりと真面目くんが負け、と思ったら粘る粘る。

 投げを残し、押し出しを躱し、足を引っかけたり、引き倒しを狙ったりで3分以上粘り続け、さすがのチュウネン山も息が上がってきた。

 最後は真面目くんの押し出し、と思ったところで痛恨のうっちゃり。

 真面目くんの負け。

 両陣営からもため息だ。


 四人目はちょっと年食った『ヤモメ山』で、相手は『姪は俺嫁』の対戦である。


 名前はタキがきちんと呼んでいる。

 俺命名は、おれの頭の中だけでよ。


 20秒で叔父さんの勝ち。

 ドンだけ姪のおっぱいが好きなんだよ、あんた。


 3戦はさすがに疲れたかチュウネン山。

 ここは父の意地を見せて欲しい。

 五人目はスルト族で一番のイケメンこと『イケメン乃海』である。

 見た目だけならこいつが選ばれるのに納得しなくてはならなかったが、今回は相撲で勝負だ。

 頑張れチュウネン、父親の威厳だ、意地だ、経験だ。


「何だか、ユウキ変」


 何だよ、お前もイケメンがいいのか。

 まだ、おっぱいも無いくせにイケメンがいいのかよ。


「スルト勝ちが無い。応援正しい」

「俺は行司だから、スルトもカリモシもない」


 勝負は、疲れの見えるチュウネン山をいなし続けたイケメン乃海の勝ち。

 最後は足がついていかず、膝をついた自爆だった。

 観客も今ひとつ乗ってこない。

 父の無念に花嫁の瞳がゆるんだような気がする。

 タキだけは素直にイケメン乃海の勝ち名乗り。

 空気読めよな。

 無理か。

 タキの仕事だものな。


 ラスト。

 『姪は俺嫁』に対するは、おお、初めてのアンコ型だ。


 こいつどれだけシャケ食ったんだよ。


 お前は『シャケの川』にする。

 花嫁の叔父さんぶちかましてこい。

 さて立ち会い、叔父さん必死で押すがシャケの川が重い、重い、重いぞ、シャケの川。

 さあて単純な押し合いはシャケの川優勢で終わり、今度は横に投げ合いだ。

 投げられない、投げられない、投げられないー。

 残したー、と思ったら叔父さん右下手から左上手の切り返し。

 ごろんごろん転がるシャケの川。

 立ち上がる花嫁。

 驚喜する叔父さん。

 盛り上がる大観衆!


 いやー、面白かったが、最後は花嫁の判定だ。

 ただ一人勝った『イケメン乃海』の得意顔。


 くそー、イケメンのおっぱいになるのか。父親と一緒に泣くぞ俺は。


 花嫁の付添人(母親か)が花嫁の意見を聞き、スルトの側に来た。

 OKか、NOか。

 運命の分かれ目だー。


 あれ、連れて行かれたのは真面目くん?

 うわー、まさかの大逆転!

 花嫁と真面目くんが二人で両族長の前に来る。


「神様も喜ぶ、いい相撲だった」


 と、カリモシ族長のコメント(タキ訳)!


 真面目くんと花嫁、族長に認められ、族長後ろのVIP席に。

 母満足、父・叔父号泣。

 しかし、カリモシ側からも不満そうな声はない。

 確かに一番良かったよなあ。


 はいはい、次ね。

 真面目なんだからタキさんは。


 次はスルトのスレンダー少女。

 カリモシからは挑戦者3人。

 阻止側は、シャケの川親子だ。

 いや絶対親子だって。


 でも、あのスレンダーは?

 妹?

 うそー。


 父シャケ2勝、子シャケ1敗。

 順当に勝った男と族長の所にご挨拶。


 三人目の花嫁はカリモシの砂髪少女。

 線が細く、気が弱そうで守ってあげたいタイプ。

 スルトは二人。

 シャケの川とヤモメ山だ。

 まさかのシャケの川、三連戦かー。

 阻止したいカリモシも二人だ。

 それもヒョロヒョロ二人組だぞ。

 解説のタキさん?

 ええっ父と兄? 助太刀は?


 最初はヒョロ父とシャケの川。

 あまりの体重差に、ヒョロ父、大丈夫か。

 しかし、シャケの川も三連戦、疲れがー、見えないが大汗かいているぞ。

 ヒョロ父突っ張る、突っ張るが、あまり効いていない。

 シャケの川前に出る。

 思わずヒョロ父の張り手、シャケの川から大量の汗が飛ぶ。

 花嫁の足下まで飛ぶ。

 花嫁悲鳴をあげて仰け反る。

 怒ったシャケの川、ヒョロ父をつぶしに行く。

 浴びせ倒しか、鯖折りか。

 ヒョロ父も仰け反る。

 つぶれるか、つぶれるか、いやそのまま持ち上げたー。

 吊り出し、まさかの吊り出しでヒョロ父の勝ち。

 観客呆然。

 声も出ない。

 父よ、あなたは強かった。


 二人目、ヤモメ山の相手もヒョロ兄。

 父と区別がつくのかー。

 親子なのに双子だ。


 ヤモメ山前に出る、出る、出る。

 ヒョロ兄嫌がるように張り手、張り手、張り手、張り手、張り手だー。

 ヤモメ山の顔が赤く腫れ上がる。

 それでも前に出る。

 張り手、前。

 張り手、前。

 張り手、張り手、張り手、前、前、前。

 ヒョロ兄、涙目だ。

 しかし、ヤモメ山は前に出る。

 それでも張り手、張り手だ。

 ヤモメ山、顔が腫れ上がって前が見えないか。

 それでも執念で前に出る。


 どれだけ花嫁が欲しいんだヤモメ山ー。


 ヒョロ兄涙目。

 ヤモメ山も涙目。

 花嫁も涙目だー。

 ついにヒョロ兄の足が土俵を割り、前が見えないヤモメ山がそのまま突っ込んで倒れる。

 ヤモメ山、勝ったぞ。勝ったんだぞ。

 いや本人には見えてない。顔は通常の二倍だ!


 さて、花嫁の判定は。


 砂髪母が行く。

 おお、前が見えないヤモメ山の手を取ってもどり、花嫁に渡す。

 ヤモメ山号泣。

 ヒョロ父兄も涙。

 母も涙。

 そして花嫁も涙だ。

 顔を腫らしたヤモメ山を連れて、気弱な少女が生涯初めての勇気を振り絞って族長の前に来る。


「その根性、神様も見届けたぞ」(タキ訳)


 カリモシ、神様の代理役、もしかして気に入ったの?


しかし、良かったなヤモメ山。

 結婚できるなら、どんなおっぱいでもいいよな。


「ユウキ、顔、いや」


 いやあ、タキさん。

 おっぱい隠さなくても、どうせ何もないでしょ。


プイ!


 さて、気を取り直して次、次。

 四人目の花嫁は、あれ、この前の最年長少女?

 昨日までは戦化粧してなかったんじゃ?

 えええ、カカの娘?

 あいつ息子じゃなかったっけ?

 二人目の奥さんがあの息子を産んだのね。

 あんないい子がカカの娘だったなんて。


 早くも阻止側にいるカカが、こっち見てにやりと笑いやがった。

 「おめえにゃ、やらねえよ」という声が聞こえたような気がする。


 ド畜生め。


 ふと花嫁と目が合う。

 俺の中で何かが溢れる。

 ガシッと腕を捕まれる。

 タキが涙を流してる。

 イヤイヤをする。

 花嫁が一粒だけ涙を流すと、二度と見てくることはなかった。


 そう、彼女とは何もない。

 気持ちもわからない。

 俺がカカに煽られただけだ。

 タキの方がずっと彼女のことを良く知っているのだから。


 ふー、と大きく息を吐き気持ちを切り替える。

 お節介な性分はタキに知られているのだ。

 タキはカカと訳ありだろう。

 それが何だかわからない部外者の俺が、煽られてどうなるんだよ。


 タキの頭を撫で、シュシュのバランスを直してやる。

 タキは申し訳なさそうにする。


 さて、カリモシ側は、若い戦士が5人出てきた。

 どいつも精悍な顔つきで、簡単には負けないって雰囲気を持っている。

 人材はカリモシの方が豊富だ。

 スルト側の花嫁の数が少ないから、急遽繰り上げられたのだろう。

 それで年頃の男が5人も出てきたなら、スルトのメンツは守られたようなものだ。

 通りすがりの部外者だが、花嫁の幸せを祈ろう。


 阻止するスルト側は、カカとカカの息子だ。

 こいつもかり出されたのか。

 姉に対する未練か何かを断ち切って大人になれって、カカならやりそうなこった。

 俺が冷静になると、会場の雰囲気も元に戻った。

 カカは3人投げ飛ばし、息子は二人に投げ飛ばされた。

 花嫁は最初に投げ飛ばされた、若手のホープを選んだ。

 彼は花嫁の隣で幸せそうな笑顔を見せた。


 そして花嫁は、最後のひとりとなった。


「ねえタキ、あの人って」

「夫亡くして子供いない。再婚?」


 ぽっちゃりしすぎのような気がするが。

 何と挑戦者がスルトから7人?

 シャケの川もヒョウロクもイケメンも参加してる。

 タルトまで出ようとして奥さんに叩かれてる。


「男は、ぽっちゃり好き」


 タキさんが悩み始めたー。


「ラーマもお尻ぽっちゃり」


 あれはぽっちゃりではなく、むっちりというのだ。


「ユウキ、顔、変」


 阻止側から戦士長ラシが出てきて、7人みんなぶん投げたが、花嫁はイケメンを選んで無事に婚姻の儀式は終了した。

 未亡人はラシの妹?

 違うの? ええ! カリモシ族長の娘だったのか。


 いやー皆さん、今日はありがとうございました。

 次回のワールドカップは、ここ隅田川で。

 そういえば国技館って隅田川のそばにあったよなあ。


 まあ、これで役目は果たしたと一安心。


 土俵で興奮状態の子供たちを、相撲をしてなだめていると、深刻そうな顔をしたタキが呼びに来た。

 相手はカリモシだった。


「相撲は素晴らしい。反対勢力もみんな味方になった。神様のおかげだ」


 この人見てると、スルトの方が単純に思えるよ。


「そこで、うちにも巫女が欲しいのだが」


 タキと同じくらいに見える女の子を、巫女にして欲しいとのことだ。

 まあ、タキの巫女姿を見て、憧れない女の子はいないだろう。


 今朝もブラッシングしてやったしな。


 リーナさんは、どうせ族長の血縁だろうから大歓迎というのだが、住み込みになるのだろうか?

 明日には、どこかに行くんだよね。

 カリモシは来年のシャケの遡上の時、一緒に顔を見せてくれれば良いという。


「来年も予約したということよ」


 リーナさんがいいというならいいのだが、少女本人は少し涙目のような。

 「いいよ」とタキに伝えてもらうと、カリモシはホッとしたようだった。


 しかし、その少女は眉をつり上げスタスタ花嫁席に行ってしまう。

 どかりと座ると、カリモシ側に視線を送る。

 たちまち、カリモシの戦士長以下20名が阻止側として並ぶ。

 いつの間にか土俵で遊んでいた子供たちが消えている。

 観客が皆、戻ってきて期待に目を輝かせている。


 何、このメインイベント?


 20人ってなんだよ、このロリコン族め!

それより、ラシの隣にいるのカカじゃねえか。

 大胆不敵に微笑む花嫁席の女の子を横目に、20名を全部ぶん投げた。


 参ったか!



 夕刻は、別れの宴だった。


 花婿と花嫁は連れだってそれぞれの親族と挨拶を交わし、戦士たちは次に逢うときは敵かもしれないという思いを抱きながらも、また再会したいという複雑な心境で酒を酌み交わしているのだろう。


 いやいや、違った。


 カリモシもスルトも上機嫌で今日の相撲を幹部たちと語り合っていた。

 戦士たちも顔を合わせれば相撲をし、モンゴル人みたいになっている。


 男の子たちは陽が落ちるまで土俵を離れず、部族の別なく相撲を繰り広げ、親たちの心配や笑いを引き出し続けた。

 女の子たちは、年長の興味は当然花嫁で、選んだ時の感想を聞いたり、自分の時も相撲にして欲しいと夢見るように語る姿もあった。


 年少の興味は食べ物で、そちらには俺が関わっていた。

 ラーマとその助手、およびタキに手伝ってもらい、塩鮭のソテー300、サツマイモのポタージュ300杯、石壺焼きのナン(インド風のパンだな)を数量不明、5斗甕の小麦酒二つ、約10キロの壺入り梅もどき酒10壺を配り、へばっていた。


 梅もどきは四段目で秋に発見した。

 酸っぱい果実で麦焼酎と砂糖で漬けた。

 味はまだ若すぎるので、何とも言えない。


 エールは7度だし梅もどき酒は15度はあるだろう。

 男たちはもう酩酊状態で、女たちは半分以上ダウンしている。

 残った一部の女たちが子供や酔いどれを世話してくれているから、凍死者は出ないだろう。

 しかし、タキとラーマはいつまでもつぶれない女たちと、初めて酔っぱらっている年長の女の子たちに絡まれて大変そうだ。


 あの大胆不敵な少女は、ずっと機嫌は悪そうだったが、俺にくっついていて離れなかった。

 暫く忙しいのでそばに座らせ、あんパンとクリームパンとジャムパンとチョコクリームパンと鮭のバター焼きを3切れあげたところで眠ってしまった。

 今は俺のシュラフでぐっすり寝ている。


 時々ラーマが意味ありげな視線を向けてくるが、言葉が通じてもお手上げの女性陣に、言葉が通じない俺が何とかできるわけないのだ。


「ユウキ消えない、終わり来ない」


 いつの間にか酔っぱらったタキが、そんなことを言い出した。


 どういうこと?


「ユウキ、カカ投げた。ラシ投げた。強い」


 まあ、相撲では負けなかったよ。


「女、強い好き。集まる。タキ、ラーマ、ユウキ守る」


 女たちは俺に絡みたいってことか?

 そりゃ怖いな。


「ユウキ、タキ好き? ラーマ?」

「ああ、好きだよ」

「嘘。ユウキおっぱい、おっぱいない、嫌……」


 そのまま酔いつぶれてしまった。

 まあ昨日から大変だったからなあ。

 まだ幼いのに、ずいぶんと頑張ってくれたよな。

 すばらしい巫女だよ。


 タキをラーマに預けて、シュラフに眠る少女を起こさないように気をつけながら、国道1号線を徒歩で帰った。

 3時間はかからなかった。



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