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夢の処女惑星  作者: 菊茶
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10 襲撃と収獲

 10 襲撃と収獲




 夕暮れ近くになって、俺がタキを領地から送り出すと、橋の向こうに少女が5人ぐらい迎えに来ていた。

 最年長の子もいる。


 夕日よりも真っ赤な髪。

 青いシュシュ。

 照り返すかのような白い肌。

 見たこともない純白の巻きスカート。

 そして巫女の証である飾りの付いた首輪。


 荘厳な雰囲気を醸し出すタキの姿に、少女たちは少し怯んだかのように見えた。

 確かにスラムの孤児たちと上流階級のお嬢様ぐらいの差があるように見える。


 見たこと無いけど。


 しかし、タキはタキだった。

 友達と手を握り合いあれこれしゃべると、お土産の飴玉まで配ってわいわいと帰って行った。

 ぐずらなかったのは、首輪があればここに入っていいという安心感なのだろう。


 それにしても一度ぐらい振り返るとか、手を振るとかあっても良いのではないか?

 一歩外に出たら存在を忘れられたみたいで、お兄さんちょっぴり寂しいぞ。


 と、森の片隅に白髪のおばあさんがいる。

 タキを心配そうに見ているようだが、理由までは、わからない。

 何だろう。

 タキとカカとおばあさんか。

 一体どんな関係なんだろう。


 やめやめ、今は仕事が先だ。

 それで、八さんがいる水車小屋に行く。

 丸太が臼を突く装置は止めてあったが、石臼を回す方は動いていた。

 小麦粉を作っているのだろう。


 八さんは24時間働けるからうらやましい限りだ。


 そう言えば振動カッターが一つ折れたとか言ってたっけ。

 ダイヤモンドみたいなものなのに、もう折れるって働き過ぎじゃないだろうか。

 ここのロクロも八さんに作ってもらったんだよな。

 俺も早く壺作りしないとな。


「ユウキ。八さんが塩田から帰ってきて、壺20個分の塩は確保できたって言ってるわ。早く次の壺を焼いてちょうだい」


 八さんはさっきまで近くで炭焼きしてたのに、もう塩田に行ってきたのか。

 湘南の塩田までは15キロはあるよね。

 しかも平行して小麦粉作りもやってるし、まったく働き者である。


「徹夜しても20個なんて無理だよ」

「まったく、女には手が早いくせに仕事は遅いのね」

「言いがかりです」

「ユーキ、明日も新しい女を連れてくる」

「オペレッタさん。それイジメですからね」

「今日だって食料庫ほっぽり出して、タキといちゃいちゃしてただけでしょ」


 リーナさんが連れてこいとか、巫女にするって言ってきたのに、何この理不尽なお怒りモードは?


「ユーキの仕事はお尻の丸洗い」


 そうか、あれを見られていたんだ。

 タキは暴れたり叫んだりしてたからな。

 レッドカードを握りしめて見てたんだろうな。


「今度、リーナさんのお尻も洗ってあげるよ」

「私にお尻なんて不潔な場所はありません」

「わたしも無い」


 あれ、オペレッタはともかくリーナさんはお尻あるよね。

 胃までしかないから、排泄はしないのか。

 穴は無いってことだな。


「と、とにかく、壺を20個。早くしてね。プツン」


 あれ、オフラインにはならない回線が切れたような音が。


「大変ですね、若旦那」


 八さんが現れ、手早く小麦粉を壺にしまっていく。

 その壺も、俺が焼いたものだ。


「八さんが優秀すぎるから、俺がいじめられてんだよ」

「いやあ、若旦那のこの壺がいいもんだから姐さんもせっつくんでやすよ。この大きさでこの軽さ、びっくりしやした」


「落とすと割れてしまうし、ゆがんで蓋が閉まらないし」

「落としても割れない壺なんて風情がありやせんや。割れたり欠けたりするから大事にするんでやす。強化プラスチックの壺なんて絶対にお断りしやすよ」


 それだけ言うと八さんは小麦粉の壺を4つも担いで出て行った。

 駄目だ、俺のまわりには優秀な者が多すぎる。


 タキも優秀そうだよな。

 俺の居場所って狭くなりそう。


 俺は壺作りに専念した。



「ユウキ、ユウキ」


 うーん、眠いぞ。

 昨夜は4時まで壺作りをして、9個目をウトウトしてて駄目にしたら、八さんが8個とも焼いておくから寝てくれと言いにきて、その後の記憶がない。


「おはよう、オペレッタ。今何時かな」

「おはよう、ユーキ。8時20分」


 あれ、オペレッタが起こしてくれたんじゃないぞ。

 ぬぼーと焦点の合わない目玉と頭で見回すと、タキがいた。


「どうせなら、揺れるおっぱいで起こされたかった」

「ユーキ、寝起きから変態」

「おはよう、タキ」

「おはよ…う?」


 俺がうんうんと頷くと、タキは嬉しそうに微笑んだ。


「おはよう。ユウキ」


 こいつも何やら目のまわりが赤い。

 早速、夜更かししやがったな。

 まあ、色々あったから興奮して眠れないということもあるだろう。


 無理矢理身体を起こすと、タキをソファに座らせて紅茶を淹れて出す。

 角砂糖はビンごと置き、昨日焼いたパンを1枚出すと、トーストしてイチゴジャムをぬりつけ皿に載せて渡す。

 レタスをちぎり、合成ハムをのせ、マヨネーズをかけて簡易なサラダとして出す。


 タキは、いきなり何千年か後の朝食にびっくりしているようだが、好奇心が強いから直ぐにジャムトーストにかぶりつき、『んんん』と声にならない声を出して、紅茶に角砂糖を2個入れてかき回す。

 それを一口飲むとまたかぶりつく。 


タンスからパンツを出すと風呂に行った。

 脱衣所にパンツを置き、歯ブラシを用意するとシャワーを浴びる。

 なかなか頭がシャッキリしてこない。

 朝立ちはシャッキリするのに頭はシャッキリしない。

 ゆっくりと両腕を持ち上げると『ウオー』と気合いを入れた。


 するとドドンと脱衣所から音が聞こえる。


 見るとタキが裸でへたり込んでいる。

 涙目で、私凄いものを見てしまいましたって顔に書いてある。

 説明のしようがないので、そのままシャワーを浴びながら歯磨きを開始する。


 暫くすると折り合いが付いたのかタキが来て隣でシャワー浴び始める。

 俺の歯磨きを見ている。

 仕方がない、理解するためには教わるか、まねするかが近道なのだ。


 脱衣所から予備の歯ブラシを取り出す。

 ピンク色だからいいだろう。

 ミントの歯磨きを少しつけて戻る。

 タキにイーとさせると白い歯が並んでいる。

 生え替わっって、そんなに経っていないのだろう。

 歯ブラシを持たせて一緒に動かす。

 泡立ってくるのがわかるのか、自分でブラッシングし始める。

 湯船に移動して入りながら歯磨きを続けているとタキもまねをする。


 まあ、外は寒いから仕方がないのだが、利点もある。

 風呂の外側に排水溝が走っているから、吐き出しやすいのだ。

 歯ブラシを外に出し湯船のお湯で洗う。

 タキもまねする。

 次はお湯をすくって口をすすぐ。

 タキもまねする。

 調子に乗って口の中のお湯をピューと飛ばしてみた。

 タキはまねしようとするが上手くできない。

 もう一度ピューとやってるところでリーナさんが怒鳴り込んでくる。


「ユウキ。あんまり変なことは教えないで! 歯磨きは洗面所で教えればいいでしょう」

「そうだけど、寒いからさあ」

「寒いのは関係ありません。まったく朝から一緒にお風呂なんて、文明人のやることですか!」


 ひどく怒られたが、その後も俺が風呂に入ると、いつもタキが入って来るのだった。



 それから8日間、食糧倉庫作りと壺作りに邁進し、タキは朝から夕方まで日本語の勉強だった。

 発音が現地語より単純なので、覚えやすいみたいだった。

 その代わり膨大な単語や熟語があるため、概念を教えるのは難しそうだ。

 甘いはわかるが、甘みとの意味の違いがなかなか理解できない。

 それでも、少しずつ話が通じるようになるのは嬉しかった。

 朝、食べた、とか、いのしし取れた、とか。

 部族の生活も、少しずつだが理解できるようになってきた。


 お昼にパンと小豆餡をタキが台車で運んで来ると、毎日ジャンケン大会が開かれるが、タキが仕切り俺は傍観者になっている。


 ログハウス1号も完成間近で、屋根の丸太に樹脂を塗って防水はできたし、床の丸太は漆喰で平らにし、上に樹脂と石灰を混ぜた床材を敷いて乾くのを待つばかりになっている。


 壺も順調に焼き上げ、塩だけでも200キロを越える蓄えになっている。

 小麦粉はトン単位だが、みんな八さんの手柄である。


 夕方、タキが領地から帰るときに神田川に鮭を見つけた。


 この時のタキの興奮状態は、今までに見たことがないものだった。

 早口で現地語でまくし立てると、族長を捜しに飛び出していった。


 翌日、タキは領地に現れなかった。

 寂しく朝湯に入り、寂しく朝食を取り、寂しく出かけた。

 ログハウスの床は乾いていい感じになっていたが、誰も見に来なかった。


 その次の日、また一人で出かけ、ログハウスの正面の開口部に3枚の引き戸を溝に差し込んで可動式にする。

 みすぼらしく見えるが、八さん作の指物である。

 釘を一切使っていない。


 一度領地に戻り、塩の壺をリヤカー2号に乗せる。

 作業テーブルとまな板、簡易コンロを二つのせ、特産の炭を木箱いっぱいに詰めていく。


 塩鮭の作り方を誰か聞きに来てくれればいいのに。

 スモークサーモンも可。

 魚肉ソーセージだって挑戦したいのに。

 助手用に銅製の出刃包丁も用意したんだ。


 出かける前にリーナさんを呼ぶ。


 疲れた顔をしている。

 見た目ではわからないかもしれないが、生まれてからずっと一緒だったからわかる。


「部族は隅田川で鮭漁をしているわ。槍で突くだけの感じだから効率は良くないけど、獲物の絶対量が多いから何とかなるでしょう。これから1週間か2週間は、体重が2倍になるほど食べまくるんだと思うわ」

「それで何を悩んでいるの?」

「………」

「タキが来なかったのがショックだった?」

「ショックではないわね。価値観の相違ってやつかしら」

「タキは腹一杯になって帰ってくるよ」

「でも、その後は? 春になったら? 狩猟民族は北に行って狩りをするのよ」

「そうだね。冬を越す手伝いって約束だもんね」

「ユウキ、耐えられるの」


 タキは確かに何らかの理由があって、将来誰かの嫁になる可能性を捨ててまで俺たちの領地に来た。

 俺はタキの結婚の可能性まではって思っているけど、現時点で部族内ではタキに結婚話は無いはずだ。

 族長も巫女の地位は理解してないが、俺の領地との大きな可能性をつぶしたくはないだろう。

 しかし、それだけ大きな賭をしたタキでさえ、鮭の遡上には目の色を変えて領地のことを忘れ、部族の習慣に疑問を持つこともない。


 きっと春には部族とともに旅立つだろう。


 そして、また冬が来れば当たり前のように巫女としてここに通うのだ。


 リーナさんにしてみれば、こちらが優先されるべき場所なのだが、タキにとっては季節の一部になっているのだろう。


 そして、部族を定住化をさせない方針では、俺はずっと孤独に過ごさなければならない。

 タキを見送り、戻ってくるまでの1年が過ぎるのを待つ生活になる。


 誰もいない世界での孤独には耐えられても、いると知っている世界では耐えられないかもしれない。

 そして俺の負担は、リーナさんの負担に変換される。


「俺がタキと一緒に行くって言っても、みんなはついて来れないよね。待っててって言うのも」

「当然よ。そんなことになるなら、オペレッタちゃんと衛星軌道にいるわ。ユウキが死んだりしたら、もう一度ベテルギウスに突っ込んでやるし、地球に帰れたら委員会を吹っ飛ばしてやるんだから!」

「今では十分に宇宙戦争だよね。何百光年を支配する委員会に戦争を仕掛けるって、どれだけスケールでかいか」

「私だってある意味無限の存在なのだから、無謀な戦いにはならないはずよ」

「きっと、負けない」

「うーん、委員会が滅ぶ時、その原因は『タキが鮭を捕りに行ったからだ』なんて知ったらどんな顔するかな」

「バタフライ・エフェクトも因果応報に含まれるわ」


 地球とのつながりが切れた人間。

 やっとできた絆がタキなのだ。

 そのほかの者はタキによってのみ繋がっている。


 タキは俺の右手で繋がっていて、その先には部族やこの星の未来が繋がっているのだ。

 一方の左手にはリーナさんとオペレッタが繋がっているが、その先には何もない。

 リーナさんは、俺ら以外に価値を持たない。

 神の機械が持つただ一つの制約。


「定住化の目処めどが立ってから考えようよ。できないことはないリーナさんと違って、人間は不自由な生き物なんだからさ。俺も定住化の目処が立たないうちは寂しいからって理由で部族を足止めしないよ。だから何処にも行かないって約束する。ここで、この星の未来を探すよ。出て行くときはみんな一緒に引っ越ししよう」

「春には、ちゃんとタキを見送るのよ」

「大丈夫。次に逢うときまでに、100万石の城下町にする楽しみができるから」

「信じるわ」


 やっと妥協案が出たところで、事態は暗転する。


「緊急事態。部族が川で戦闘状態」

「敵は?」

「おそらく、北方の部族。戦士約50名」

「総勢200人以上の部族か。オペレッタ、ホバーを準備」

「了解」


「待ってユウキ! ホバーはオーバーテクノロジー過ぎるわ」

「でも、直線でも20キロ以上離れてるんだ。足で行ったら間に合わない」

「じゃあ、タキが殺されてたら、どうするのかだけ聞かせて」

「間に合うようにホバーで行く」

「馬鹿ね。それは答えじゃないじゃない」

「質問が間違ってるんだよ。襲われているのが俺だったらリーナさんはどうするの」

「生きてても死んでても、敵は皆殺しね」

「俺は誰にも死んで欲しくない」


「じゃあ、敵の族長を最初に捕まえてしまいなさい。それで交渉するしかないわね」

「そんなことしていいのかな?」

「そっちの方が簡単だから信じなさい」

「はいはい」

「ホバー準備完了」


 家の前に前後二人乗りの4輪バギーがある。

 ボブスレーみたいに小さいが強力だ。

 助走なしに飛ぶときには、四輪は横向きの羽になる。

 6本のスポークがプロペラになっていて浮力と姿勢制御に使われる。

 小型プラズマエンジンは下部に2基。主に推進力だが扱い辛い。


 乗ったとたんドンと飛び出した。

 じゃじゃ馬め!


 高度300で3分。

 紛争地帯は、隅田川のこちら側である。

 あちら側の特等席に族長らしき人が見えた。

 取り巻きも数十人いる。

 こちら側は、おお、カカだけは良くわかる。

 敵よりも存在感があった。


 こんな状態でも、鮭は川を遡る。

 川面はキラキラと鮭でいっぱいだった。


 争うなら、鮭漁が終わってからにすればいいのに。


「スタングレネード発射!」

「了解」


 オペレッタとのリンクで精密射撃を行う。

 敵族長の頭上5m丁度で、光音手榴弾が炸裂する。


 ピカリドガーン。


 これで立っている人は川向こうにはいない。


「つまらない。手応えがなさ過ぎ」


 いつも過激な、オペレッタさんらしい意見だこと。


 川の反対側も、光を目にした奴は暫く見えないはずだ。


 できるだけ目立たない場所に着陸し、敵族長席に向かう。

 族長が生きているのを確認すると脇で持ち上げる。

 タキの時はお尻が前だったけど、今度は頭が前。

 川縁まで行くと結構浅瀬が多い。

 冬場は雨が少ないからな。

 夏場と水深がかなり違う。

 ここなら最大で1mぐらいだろう。

 流れは鮭よりずっと遅いな。


 途中鮭の体当たりを食らう。

 シャケアタックだ!

 しかし、渡りきる。

 敵もそのまた敵も、戦闘は一時中断中である。

 さて、敵族長を猫つかみでお披露目する。

 敵戦士たちは、どうしていいのか迷っているみたいだ。


「スルト!」


 大声で族長を呼ぶ。

 3回目に現れた。

 敵族長を見て、生きてるのか疑っている。

 まあ、ここで会談させよう。


「タキ!」


 俺の巫女を呼ぶ。

 やがてタキが現れた。


 敵の中の唯一の味方。


 慌てて巫女装束を着込んだのか、シュシュが左右対称じゃないな。

 髪も乱れ気味だし。

 俺にしがみつくと泣きながら『ユウキ、ユウキ』と頭を押しつける。

 頭をなでてやると少し落ち着いたみたいだ。

 俺やリーナさんを捨てていったなんて、微塵も考えてなさそうだ。


 じゃあ和平交渉を始めるか。


 敵族長の背中をドンと叩く。

 うめき声がして気がついた。

 俺を見て叫び逃げようとするが、逃がすわけないでしょ。

 押さえつけて、スルトの前に座らせる。

 スルトは状況が有利なので、余裕の顔を見せている。

 とりあえず人物紹介から始めよう。


 最初にスルトに向かって片手を向け『スルト』と言う。

 次に自分に向け『ユウキ』と言う。

 次はタキに向け『タキ』と言って、敵族長に手を向ける。


「カァェリィモスィ」


 直ぐに「カリモシ」と決めると相手は少し苦い顔をするが、スルトの名前を知ってて俺が『スルト』と呼ぶのを理解したのだろう。

 自分で何度か『カリモシ』とつぶやいた。


「何故、戦う?」


 そう言ってタキの顔を見る。


 タキは現地語で尋ねる。

 ここから先はすべてタキの訳で進める。


 先にスルトが何か言う。


「魚、奪いに来た守る」


 今度はカリモシ。


「魚必要、今年少ない」

「魚いっぱいある。スルトいっぱい。カリモシいっぱい」


 俺はそう言ってみたが、不思議そうな顔をされた。

 魚は多いのだが、どうやら漁の効率が悪いせいで漁場の争いが起こっているらしい。

 川の流域で『食べ頃』という理由もあるのかもしれない。

 この辺りで捕れた魚が上物なのだろう。


「スルト邪魔する。川入れない。取れない」とカリモシ。

「俺たちが先」とスルト。

「俺たちの川」

「俺たちの魚」


 まあ、水掛け論だな。


「ここは神の川だ。誰のでもない」


 ちょっと言ってみた。

 カリモシは驚いている。

 スルトが「彼は空から来た」とカリモシに自慢する。

 カリモシは信じたのだろう。

 顔色が悪くなった。


「両方に取らせる。いっぱい」


 と言ってタキに訳させる。


 これは双方信じないようだ。


「見せる」


 と言ってタキを見る。

 タキなりに訳してくれたみたいだ。


「カカ!」


 やっぱりこいつを呼ぶことになった。

 カカが現れる。

 魚を捕まえる人を沢山集めるよう、タキからカカに伝えさせる。

 カカは不満そうだが、状況が悪いことはわかってるのだろう。

 スルトが肯くので、とりあえずは従うようだ。


 集まったのは戦士ばかり16人。

 4人は負傷か。

 死んでなければいいんだが。

 しかし、これじゃあ少ないだろ。


 タキに女たちも集めとくように言う。

 タキは走って行った。

 敵の戦士は、カリモシの近くに集まってきている。


 16人の戦士を川にならべる。

 浅瀬にだ。

 川幅60m、16人じゃカバーできないが仕方がない。

 土手沿いを上流に少し歩くとスタンガンを抜き左手に隠す。

 エリアを川幅、長さを10mに合わせ発射した。

 皆に見えるように、右手を振り下ろすポーズまでつけた。

 ズンという軽い衝撃とともに、遡上中の鮭がエリア内で全部気絶する。


 1平方1尾でも、500にはなるだろう。

 鮭はゆっくり下流に流れ、カカたち戦士の所に次々とたどり着く。

 つかみ取り放題である。

 みな4尾もつかむと限界で土手に戻る。


 そこにタキが女たちを連れてきた。

 タキは俺の言いたいことを理解してるから、女たちにも魚を捕るよう伝える。


 大漁である。


 男も女も、何度も往復して鮭を集めた。

 それでも取り切れない。


 俺が「カリモシ」と言うと、彼は戦士たちに鮭を捕るように命令した。

 戦争より鮭が大事なのは当然である。

 もう一度上流に行きスタンガンを使う。

 また、何百と鮭が浮かぶ。

 もう敵味方なんか関係なく、つかみ取り放題である。


 暫くすると、彼方此方で焼いて食い始めた。


 族長二人も目の前に鮭を山盛りにされ、何だか平和そうに見える。


 鮎っぽい小さな魚がいくつか流れているのを見つけた。

 試しに5匹ほど捕まえてみる。

 ナイフで木串を作り打ち、枯れ枝を集めて火をおこし、Y字の枝を2本たてて串を渡して炙る。

 塩焼きにできないのが残念だ。


 タキが来て、一匹頭ごと囓ってしまった。


「鮭の方が美味しい」


 そんな感想だった。


 熊さんと八さんに北森街道をログハウス前で分岐させて、隅田川まで延ばすよう指示する。

 今なら部族が留守だから、何しても見つからない。

 伐採した木々は、材木と炭の原料にしてもらおう。


 リンゴ園に向かう旧道は、リンゴ街道に改名だな。



   11へ

初日6時間かかった投稿が、20分で出来るようになりました。

これで私もレベル1だな。

しかし、マイページとユーザーページの違いがまだわからない。カチカチやってたら管理ページなんてのもある。凄いサイトです。

おおっ、燦然と輝くお気に入り登録件数!

ありがとうございます。あなたを勇者に認定します。レベル1の私ですが。

ええ、つまらない? 疲れた?

そんな時は是非ともリポDで、HPの回復をしてください。

(すみません、ネタにしてるつもりはないのです。劣等感です)

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