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9-1.対峙

車は駅の反対側の高台に向けて猛スピードで走り、少しすると目の前に大きな屋敷が見えてきた。

生徒会長の喋り方や身のこなしからどこかのお嬢様だろうと思ってはいたが、ここまで大きな屋敷に住んでいるとは思わなかった。

巨大な門をくぐりかなりのスピードの車で走っているにもかかわらず屋敷の入り口まで数分を要した。

執事の様な人の案内で生徒会長と雪菜の元に急ぐ。

屋敷の奥からガラスの割れる音や物が倒れる音が聞こえ。廊下の角を曲がると生徒会長と雪菜の姿が見えてきた。

生徒会長は大きなドアの所で立ち尽くし、雪菜は廊下の壁に背中を着いてしゃがみ込んでいる。

「雪菜!」

俺が叫ぶと生徒会長が振り返ったが、雪菜は何かを見つめて視線を外そうとしない。

雪菜の元に駆け寄り雪菜の視線の先に目をやると髪の長い小柄な少女が虚ろな目をして髪を振り乱して暴れていた。

「雪菜、大丈夫か?」

雪菜を見ると口元に血が滲んでいて手にはガラスで切ったのだろうか血で赤くなっていた。

「私は大丈夫」

「大丈夫じゃないだろ」

生徒会長に目をやると体を震わせ立ち尽くしている。

これが生徒会長でなければ今頃腰を抜かしているか気を失っているだろう。

恐らく強靭な精神でギリギリの所で耐えているのが判った。

「雪菜、何があったんだ?」

「様子を見にきたら急に暴れ出した。私の霊力に反応したのかもしれない。このままでは祓う事が出来ない」

雪菜は抑揚のない言葉だがしっかり答えた。

「どうすれば良いんだ? 教えてくれ」

「強い力で押さえ込むしか方法がない、でも私にはそれだけの力がない。それか直接取り憑いている霊に衝撃を与えられれば一時的に収まるはず」

「衝撃って会長の妹さんなのだろ。俺には……」

そこで俺は1つの仮説にたどり着いた。

俺は幽霊と同じように物を通り抜けることが出来るそれならば直接霊に触る事が出来るはずだ。

あくまでこれは俺の仮説に過ぎない。

これ以上雪菜を傷つける訳にいかないし、それに生徒会長の妹さんも苦しんでいるはずだ。

雪菜と同じように覚悟を決めて、俺に今出来る事をするしかない。


「俺がやる」

「真琴、でも」

「雪菜は俺の正体を知っているはずだ。これは俺にしか出来ない事なんだ」

ジャケットを脱いでシャツの袖を捲くりながら暴れ回って人とは思えない程になってしまっている生徒会長の妹に向かい歩き出す。

少しずつ集中しながら。

「な、何をするつもりなのだ。日向」

「俺が妹さんを止めます。一か八かです」

「止めろ! 妹にもしもの事があったら」

「それじゃ、妹さんはこのままで良いんですか? 違うでしょ一番辛いのは妹さんのはずだ」

生徒会長の目を真っ直ぐに見て叫んだ。

「頼む、妹を助けてくれ……」

「大丈夫です。俺に任せて下さい」

それは何も確信のない言葉だった、それでもやるしかなく。真っ直ぐに妹さんの方に歩き出す。


俺に気付いたのか俺の方に向って猛獣が獲物に飛び掛るようにもの凄い形相で襲い掛かってきた。

それは人間では考えられない跳躍力だった。

寸前の所でかわし、何かを掴み取るように右手を妹さんの腹に叩き込む。

すると人間の体では無い何か得体の知れないネットリした手にまとわり付く様な物を感じる。

とても嫌な感じがするがそのまま右手に力を込めて押し込むと生徒会長の妹さんの体が俺の右手の上でぐったりとした。

「やったのか?」

そう思った瞬間、ニヤっと笑って俺の方に上半身を捻り。

俺の顔面目掛けて腕を振り下ろして爪で引っ掻いてきた。

それは猫なんて生易しいものではなくライオンや虎といえば良いだろうか直撃を食らえば唯ではすまい程の勢いで。

咄嗟に避けるが近すぎて避けきれなかった頬の皮膚が切り裂かれるのを感じ。

一瞬、意識が遠のく感覚に見舞われ全身が大きく鼓動する。

「ふざけるな!」

全身全霊に力を込めた瞬間、「駄目!」と雪菜の声が俺の頭を打ちぬいた。

すると右手に今まで感じなかった重みを感じ落としてしまいそうになり、慌てて左手で支えるとそれは力なく気を失っている生徒会長の妹さんの体だった。

雪菜と生徒会長を見ると、明らかに俺を見て固まっていた。

「目が赤く、そんな……あり得ない」

抑揚の無い雪菜の声と。

「日向、お前は一体……」

そんな生徒会長の声が聞こえてくると目の前が真っ白になり俺の意識がフェードアウトした。


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