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おひとりさまで生きていきます!  作者: 鳥柄ささみ


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第二話 いらないものは捨てていきます

「何が占いよ。バカじゃないの? 占いなんか信用して婚約破棄だなんて、今まで聞いたことがないわよ。もし占いで全てが決められるというなら、その占い師の独裁国家ができちゃうじゃない。そもそも、誰かが占い師を買収したら、その人が意のままに国家を動かせることだってできてしまうでしょ!? いくらまだ国王になってないからって、王太子だと言うのにそんなことさえわからないだなんて……! というか、ついさっきまで婚約者だった相手を処刑しようとするなんて、頭おかしすぎでしょ」


 ぶつぶつと先程言えなかった文句を言いながら、フェリシアは帰宅早々家の中を漁っていた。

 もちろん、ヤケになっているからでも気が触れたわけでもない。

 現実主義なフェリシアはとにかくこの国から脱出するため、必要なものをかき集めていたのだ。


「えーっと、服は最低限詰め込んで、食糧も保存がきくものを詰められるだけ詰め込んで……地図は、頭に叩き込んでるからどうにかなるか。あとはお金お金……」


 日々、王太子妃教育に忙殺されてお金を使う暇さえなかったフェリシアは、持てるだけのお金を持つ。

 一応、何かあったときのためにメインのリュックとサブのバッグ、それから下着と靴の中にとそれぞれ分けてお金をしまっておく。


「何も悪いことはしてないのに、勝手に罪状つけられてギロチンで処刑だなんて、まっぴらごめんだわ。何が物分かりのいいキミなら、ですか。ふざけんじゃないわよ! 結婚すると思ってたのに……好きでいてくれてると思ってたのに……っ」


 荷物を乱雑に詰めていると、先程まで気丈に振る舞っていた反動か、突然勝手に涙がぽろぽろと溢れ出す。

 拭っても拭っても次々に溢れるその涙は、なかなか止まる気配はなかった。


 __初めまして。僕はエドワード!


 かつて初めてエドワードと会ったときを思い出す。あれは、フェリシアが五歳のことだった。

 初めて会ったエドワードは当時十歳。五歳の差は当時にはとても大きく感じられて、初めて会ったときは彼の大人びた印象に心が躍った。


 __キミがフェリシア? 素敵な名前だ。決められているとはいえ、こんなに可憐で可愛らしい子が僕の婚約者だなんて嬉しいよ。

 __光栄なお言葉をいただき、どうもありがとうございます。あ、あの、エドワード様と結婚するために、私頑張ります!


 当時の感情が呼び起こされて胸が苦しくなる。

 あのときは、ただ純粋にエドワードに好意を持っていた。例え決められた婚約だったとしても、エドワードのことを好きになったのだから関係ないとフェリシアは婚約に前向きだった。


 エドワードもきっと自分と同じように想ってくれているのだろうと、そうずっと思っていたのに。


「全部全部、無駄だったということね……」


 エドワードのためだけに捧げていた二十年。いくら物覚えがいいと言っても毎日毎日、遊ぶことすらさせてもらえずただひたすらに知識を詰め込まれるのは苦痛だった。

 けれど、エドワードはこれから国王になったら重責が山積みになるだろうからとフェリシアは少しでも彼の役に立てるならと頑張ってきた。それなのに……。


「これももういらないわね。元々趣味ではなかったし。伸ばしていた髪も切ってしまおう。雰囲気を変えたほうが逃亡するのに適しているだろうし」


 エドワードの好みに合わせて服は可愛らしいガーリーテイストのものばかり身につけていたが、フェリシア自身はもっとシンプルで綺麗なもののほうが好みだった。髪型もエドワードが伸ばせというから伸ばしていたが、毎日手入れが大変でできればショートカットにしたいと常々思っていた。

 どれもこれもエドワードの好みに合わせてフェリシアは自我を押さえていたのだ。


 フェリシアは思い切ってバッサリと髪を切る。

 すると、腰まであった長い薄花色の髪はバサッと音を立てながら床に落ちていった。


「あぁ、なんて軽いの」


 髪を切っただけなのに心が軽くなる。

 今までどれほど我慢して窮屈な生活をしてきたか、その象徴を取り払ったような気持ちになってなんだかフェリシアの心は晴れやかだった。

 先程まで流していた涙もいつのまにか引っ込み、溜まっていたストレスを一気に解放した心地になる。


「必要なもの以外全部捨てちゃおう。過去も過去の私も。これからはもう婚約だの結婚だのはこりごりだわ。私はおひとりさまで生きてやる……!」


 口に出しながらそう決心すると、エドワードからもらった指輪やネックレス、ブレスレットに髪飾りなど不要なものは全部置き去りにしていく。

 髪はショートカットで整え、服も買ったものの袖を通す機会がなかった好みの動きやすい服に着替えた。


「うん。いい感じ」


 鏡を見れば、目元は腫れて顔がぐしゃぐしゃになりながらも晴れやかな顔をしている自分がいた。

 いつも気難しく眉を寄せて、疲弊している表情をしているフェリシアはそこにはいなかった。


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