月下の邂逅
その夜。
オクヤスは、先輩の代わりに、校舎裏の古いプール掃除を命じられていた。
全寮制の学舎では、夜間の外出は厳禁。
しかし、先輩の命令は絶対だ。
彼は、上半身裸になり、汗と水に濡れながら、デッキブラシでプールの底を磨いていた。
鍛え上げられた筋肉質の肉体が、月明かりに照らされ、濡れた肌に張り付いている。
その時、プールの縁に、人影が現れた。
「…誰だ?」
オクヤスが警戒の声を上げると、人影は恐る恐る前に進み出た。それは、二年生のユキだった。
「オクヤスさん…」
ユキは、昼間の出来事のお礼をリンに伝えるために、危険を冒してまで学舎に忍び込んできたのだ。
しかし、昼間は男女の接触が禁止されているため、この時間しか機会がなかった。
「リンは、もう寝ている。それに、ここは…」
オクヤスが言いかけた瞬間、ユキの視線は、月明かりに浮かび上がるオクヤスの肉体に釘付けになった。
水滴が滑り落ちる、隆起した胸筋。引き締まった腹筋。そして、汗で光る背中のライン。
普段は制服に隠された、男の逞しい肉体が、ユキの頬を赤く染めた。
「あの…その…リンを助けてくださって、本当にありがとうございました」
ユキは、目を逸らしながら、絞り出すように言った。
「礼など、いらない。それより、早く帰りなさい。見つかったら、ただでは済まないぞ」
オクヤスは、自分の半裸の姿を恥じ、思わず身を屈めた。
ユキは、名残惜しそうに、踵を返した。しかし、プールの縁は水で濡れている。
ツルッ!
ユキの足が滑り、彼女の身体がバランスを崩した。
「危ない!」
オクヤスは、咄嗟に手を伸ばし、ユキの腕を掴んだ。しかし、彼の身体もまた、濡れたプールの縁で不安定だった。
ドスン!
二人は、そのままプールの縁に倒れ込み、オクヤスの逞しい身体が、ユキの華奢な身体の上に覆いかぶさった。
水に濡れた二人の身体が、ぴったりと密着する。
オクヤスの筋肉の熱が、ユキの肌に直接伝わってきた。ユキの豊満な胸が、オクヤスの胸板に押し付けられる。
オクヤスの脳裏に、ユキの柔らかな感触が焼き付く。彼は童貞であり、女性の肌に触れること自体が初めてだった。そして、その刺激は、彼の理性を一瞬で吹き飛ばした。
ズクン、とオクヤスの下腹部が熱を持つ。
ユキの太ももに押し付けられた彼のモノが、意思とは関係なく、硬く、熱く、膨張していくのが分かった。
(やばい、勃起した…!)
オクヤスは、顔が真っ赤になるのを感じた。
こんな状況で、自分の身体が勝手に反応していることに、彼は混乱と羞恥で頭が真っ白になった。
ゼロ距離まで近づいた顔。ユキの潤んだ瞳が、オクヤスの真剣な眼差しを捉える。二人の頬は、熱を帯びて赤く染まっていた。
「ユキ…」
オクヤスの吐息が、ユキの唇にかかる。
彼の吐息は、熱く、荒々しい獣のようだった。
鍛え抜かれた胸郭から絞り出されるその息は、ユキの唇を湿らせ、彼女の肌を微かに震わせる。
それは、理性を焼き尽くす炎のようで、ユキの身体の奥底に眠っていた女の部分を、無理やり呼び覚ます。
ユキは、目を閉じ、その熱を受け入れた。
彼女の唇から、甘く、微かな吐息が漏れる。それは、蜜の誘いのように、オクヤスの意識をさらに深淵へと引きずり込んだ。
二人の唇が、触れ合う、その直前。
ガタンッ!
プールの奥にある用具室から、何かが倒れるような物音が響いた。
ハッ!
二人は、我に返り、慌てて身体を離した。
オクヤスは、ユキから離れる際、自分の硬くなったモノがユキの太ももを擦った感触に、さらに羞恥心を覚えた。
「…誰か、いる」
オクヤスは、ユキを立たせると、周囲を警戒した。
「早く、ここから…」
ユキは、何も言わず、ただ頷いた。彼女の心臓は、今にも破裂しそうだった。
オクヤスは、ユキの背中を押し、闇の中へと送り出した。
残されたオクヤスは、自分の唇に触れた。まだ、ユキの柔らかさが残っているような気がした。そして、下腹部の熱が引かないことに、彼は一人、夜のプールサイドで悶えるのだった。




