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血塗られた入学式

昭和初期。山深い奥地に、その全寮制高校は建っていた。表向きはエリート養成校だが、その実態は、敗戦後の日本の兵力強化を目的とした秘密裏の機関だった。

政府の役人が、素質を見込んだ子供の親に好条件の働き口を提供する代わりに、子供を入学させるという、人身御供にも等しい仕組みで運営されていた。

外界から隔絶された学舎は、軍隊さながらの厳格な上下関係と、暴力が支配する暗黒の王国だった。


入学式当日。体育館裏の薄暗い射撃場に、新入生の一年・オクヤスと、隣に立つリンは呼び出された。

二人とも、学舎の規則に従い、頭は丸坊主だ。

オクヤスは、その丸坊主の下に、鍛え上げられた筋肉質の肉体を隠していた。リンとは初対面だ。


「おい、新入り。お前ら、ここで度胸試しだ」


上級生が、冷酷な笑みを浮かべながら、古びた拳銃を二丁、オクヤスたちの前に突き出した。

その上級生は、オクヤスと同じ四人部屋の寮で生活する先輩の一人だった。


その時、射撃場の隅に、一人の新入生が引きずり出された。彼は、入学式に遅刻したらしい。


「規則は規則だ。この学舎に、規律を乱す者は不要」


上級生は、躊躇なく拳銃を抜き、その新入生の頭を撃ち抜いた。


パンッ!


乾いた銃声と、血の匂い。新入生は、泥のように崩れ落ちた。

オクヤスとリンは、その光景に言葉を失った。この学舎では、死は当たり前のものとして存在していた。


「さて、気を取り直して。的は、これだ」


上級生が指差した先には、木製の古い的があった。その的の中央には、米兵の顔写真が貼られていた。


「ルールは簡単だ。先輩と一年生が交互に撃つ。的の中心を外したら、懲罰。つまり、死だ。撃てるのは、一人一発。さあ、始めろ」


上級生が先に撃ち、的の中心を正確に射抜いた。


次に、オクヤスの番だ。彼は、震える手で拳銃を握った。狙いを定める。米兵の顔写真の、眉間を狙う。


パンッ!


乾いた銃声が響き渡る。弾は、的の中心をわずかに外れ、米兵の顔写真の額の生え際をかすめた。ギリギリの成功だ。


「ふん。運がいいな、一年」


上級生は鼻で笑った。


次に、リンの番だ。リンは、華奢な体躯ながら、その整った顔立ちは、恐怖に歪んでいた。

彼は、オクヤスとは初対面だが、その精悍な顔つきに、どこか頼もしさを感じていた。


リンは、拳銃を握りしめたが、手が震えて狙いが定まらない。


「撃て!一年!」


上級生が怒鳴る。リンの瞳から、一筋の涙がこぼれた。


その時、オクヤスが動いた。


「待て!」


オクヤスは、リンの前に躍り出ると、リンの手から拳銃を奪い取った。


「俺が撃つ」


「馬鹿な真似はよせ!お前はもう撃っただろう!」


上級生が叫ぶ。


「ルールは、一人一発。だが、一年生が撃つ回数の制限はない」


オクヤスは、リンを庇うように立ち、再び拳銃を構えた。狙いは、的の中心。


パンッ!


二発目の銃声が響き渡る。弾は、一発目の弾痕の、真横を正確に射抜いた。


「…合格だ」


上級生は、オクヤスの度胸と技術に、一瞬言葉を失った。


「お前、名前は?」


「オクヤスです」


「リンだ。助けてくれて、ありがとう、オクヤス」


この一件で、オクヤスとリンの間には、血よりも濃い絆が生まれた。

彼らは、この地獄のような学舎で、互いを守り合う親友となった。


その場には黒髪長髪の女子高生、リンの幼馴染であるユキ(二年生)も、こっそりと身を潜めていた。

リンが殺されずに済んだことに、ユキは安堵のあまり、その場で泣き崩れそうになった。

ユキとリンは、将来を誓い合った両想いの仲。

リンの無事を確認したユキは、この秘密の逢瀬を胸に、そっと学舎を後にした。

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