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第二話 なんでボクが女の子に?

「な、なんだ。これ・・・・」

 姿見の鏡に写った自分の姿を見て、呆然(ぼうぜん)とするボク。

「こ、これ・・・・ボク・・・・なの?」

 自分の体を手でなぞってみると、鏡に写ったボクも当然のことながら同じ動きをした。

 ボクが頬をなぞれば、鏡に写った美少女も頬を手でなぞる。

 ボクがお胸を触れば、鏡に写った美少女もお胸を触った。


 プニュプニュ・・・・と生まれた初めて触れる少女の乳房の感触にボクは感動して頭に血が上ってクラクラしつつも、その感触が掌だけのものではなく、自分の胸の感触だと感じた。


「あ・・・・んっ・・・・」

 胸に感じる感触にため息を(こぼ)しつつ、鏡に写った自分を改めて見た。

 見れば見るほど美しい美少女だった。


 背丈は150cmに満たないだろう。か細い子の体なら、体重も50kgに満たないだろう。

 明るい赤紫の長い髪は軽いウェーブがかかっていて軽さを感じさせる。

 透き通るように白い肌と光るように明るい青色の瞳と薄く小さなピンクの唇。

 そして、誰がいつ、ボクに着せたのかわからないがフリルがたくさんついたメイド衣装が完全に似合っている。


 100人中100人が見ても美少女と答えるであろう美少女だった。

 その美しさは神がかっていて、この世の者とは思えぬ姿。


「こ・・・・これがボク?

 い、いったい、何が起こったって言うの?」


 鏡に写った美少女の姿にウットリとしつつも、自分の身に起きた怪異に頭が混乱もしていた。

 ・・・・んんっ!? び、美少女だって?

 じゃ・・・じゃあっ、ボクのお○ンチンはっ!?

 

 ボクは慌ててスカートをたくし上げて、その下に着けているパンツを脱いで確かめようとした。

 ボクの男のシンボルはっ!? と、心配になったんだ。

 だが、しかし、そんなボクを引き留める声がした。


「何をしているんだ? お前は?」


 心底呆れたような声が聞こえた。その声のした方を見ると、迷宮ジジィがお茶の入ったカップ片手に立っていた。

「起き上がったかと思えば、自分の姿に見惚れたり、乳を揉んだり・・・・挙句(あげく)にパンツ下ろしてどうしようってんだ?」

 そういうと迷宮ジジィはお茶を一口飲んで笑った。


「め・・・迷宮ジジィ・・・・」

 改めて彼と立ち向かったボクは冒険者を襲う事もある迷宮ジジィの伝説を思い出して、いつの間にか震えながら迷宮ジジィの名を呼んだ。しかし、迷宮ジジィは「迷宮ジジィ・・・・? 何のことだ? そりゃ。」と、首をかしげるだけだった。


「あ、そうか。迷宮ジジィは自分が迷宮ジジィって呼ばれているなんて知るわけないもんね。」


 ボクはその事に気が付いて、少し冷静になった。

 そして、冷静になった頭で今の状況を思い出して、大慌(おおあわ)てする。


「な、ななな、なんで、ボク。女の子になってんですかっ!?」

「なんで、ボクを助けてくれたんですか?」

「このメイド服は何ッ!? 何なのっ!?」

「ボ、ボボボ、ボクのお○ンチンどうなっちゃたんですか?」

「ああっ!? こ、このあと冒険者を倒した伝説みたいに僕を殺すつもりですか?

 やだっ!! 助けてっ!! 殺さないでぇ―――っ!!」


 混乱する頭でボクは迷宮ジジィに(すが)り付きながら(わめ)きたて、まくしたてた。

 しかし、迷宮ジジィの返答は「やかましぃっ!! ガタガタ騒ぐなぁっ!」の一喝(いっかつ)とゲンコツ一撃だった。


「いっ・・・・った~~~~~いっ!!」

 ゴチンって音がした。

 それから少し遅れて激痛が来て、悲鳴を上げたら、次に脳震盪(のうしんとう)が原因の眩暈(めまい)がクラクラきて、ボクはその場に座り込んだ。

 ・・・・あれ? 自然と女の子座りになっている。

 へ~、女の子座りってこんなに体が安定して座りやすいんだぁ。通りで女の子が皆するわけだぁ・・・。


 などと、非常事態にもかかわらずバカなことを考えているあたり、頭のダメージはそこそこ重いらしい。ボクが眩暈で身動き一つできないのが何よりの証拠だ。

 迷宮ジジィはそんなボクと目線を合わせる為か、ボクの前に座り込むと(にら)みつけるように見ながら説明してくれた。


「聞け。助けたときのお前の体は、どうしようもないほど損傷していて再生させることは不可能だった。だから、俺はお前の魂を抜き取り、死体であるその少女の体に移した。

 ・・・・・正直、定着するとは思わなかったがな。魂が他人の体に定着する確率は0.1割。多種族の体を使っての魂移植の場合になるとさらに5割下がる。

 恐らく、お前は世界初の異種族間の魂移植の成功例だ。」


 そこまで説明されて、ボクがどうして女の子の体になったのか、理解した。それはゲンコツのダメージも回復して頭が回り始めたことを意味していた。


「そ、そうだったのですね。ありがとうございます。

 そ、それで、ボクの体はいつ治りますか?」


 僕がそう尋ねると迷宮ジジィは顔をしかめて「は?」と、返事をした。

「い、いえ。ボクはいつ、元の体に戻れますか?

 まさか、ずっとこのままってわけじゃないですよね?」


 ボクの問いかけに迷宮ジジィはしばらくの間、沈黙したまま考え込んでいたけれども、そのうち、僕の話を理解したように「ああ。」と、納得した。

 それから、ボクの両肩に両手を置くと、


「いいか、よく聞け。

 お前の体はオーガに破壊の限りを尽くされて壊れてしまったから、お前の魂はその少女の体に移したんだ。

 それにお前の元の体はお前が気を失っている間に腐ってしまうから焼却した。」と、説明してくれた。


 ・・・・・ボクはまだゲンコツのダメージから抜け出せていないらしい。

 だって、彼の言っている言葉の意味が理解できないもん。


「あの・・・・それって・・・・

 つまり、どういうことですか?」


 現実を受け入れられずに不安そうにそう尋ねるボクに迷宮ジジィは容赦がなかった。


「要するに、お前はこの先、その体で生きていくしかないってことだ。」


「そ、そんなぁ~~~っ!?」

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