12.5話 気になる2人 アルトとレイド
この世界にはさまざまな異能の力が存在する
獣人やエルフ、ドワーフなどの生まれながらに
持っている種族としての力『恩恵』
一人一人全く違う能力で生まれながらに得ている『祝福スキル』
鍛錬や修行で獲れる『通常スキル』
そして攻撃、防御に使用される『攻撃魔法』
戦闘以外には用途に使われる『生活魔法』
である
剣技などは基本的に通常スキルに分類され
一部貴族たちが持つ
自身の血筋の者しか扱えない魔法は『血印魔法』
と呼ばれどこに分類されるかは秘匿されている
生まれながらに得る祝福スキルは
持って生まれる人間とそうでない人間がいる
通常スキルも適正を持たない人間では
何年鍛えても手に入らないスキルもある。
魔法も同様に適性が存在し
『火』『水』『風』『土』『無』の5つの適正があり
基本的には1人一つしか適性を持たない。
しかしアルトくんはどういうわけか
5つ全ての適性を持っているだけでなく使いこなしている。
ごく稀に2つ以上の適正持ちが生まれること自体はある
しかしその場合それぞれの属性が邪魔をして
うまく制御できなくなるのが普通のはず。
彼は一体何者なんだろう?
集めたデータによれば
平民の生まれで佐々木マイとは幼馴染でよく2人でいるところを見かける。
特に誰かに師事を受けていたこともなく
独学で強くなり
学園に入るより以前から冒険者として活動しており
実力はギルドマスターにも認められている。
冒険者の仕事を介して知り合った一部貴族たちからも気に入られており
娘を嫁がせようと動いているところもあると聞く。
おかしな経歴だが気になる点があった
彼は時折「これじゃまだレイドを倒せない」と
呟くことがあるそうだ。
周りの人間は師匠かライバルがいて
その人のことを言っているのだろうと思っていたらしいが
私の調査では「レイド」なる人物は
彼の交友関係には当てはまる人物が存在しなかった。
しかし彼を追って学園に入学して
やっと誰なのかがわかった。
『氷動レイド』彼こそが
アルトくんが勝てないといっていた人物だ。
実際入学試験では氷動くんが一位
破格の実技結果を残したアルトくんは三位だった
だが私は2人の試験内容を見ていた。
アルトくんは自身が使える魔法を使うように言われた際に的に向かって
『ファイアーインパクト』
『アクアドラゴン』
『ストームブレイク』
『グランドバーン』
を放ちかつ当然のように回復魔法までやってのけた。
学園長まで駆り出されるほどの大騒動になったのに対して
氷動くんはよく言えは優秀かつ模範的な内容
悪く言えば面白みのない内容であった。
祝福スキルなし、血印魔法なし
魔法適性は『無』
剣術も剣の天才であるミラーくんには見劣りする。
見ていて華がないと感じた。
しかし主席で入学なんて
それこそ英才教育を受けている貴族でもないのにできるなんてそれこそ非凡な才とも言える。
そしてなによりあの名前…
姫様から話を聞くまで私も知らなかったが
『氷動』の名はこの国の建国に携わった人間と同じなのだという。
更に彼は入学前まで『月島』の姓を名乗っていたことが調査で分かった。
『氷動』と名乗るようになったのは
入学試験あたりからだとのことだ。
単なる偶然…とは考えにくい
氷動家との関係
そしてなぜアルトくんが氷動くんを敵対視しているのか
まだまだ調査が必要ね
全てはこの国と
そして姫様のために