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12話 高橋さつきの後悔

灯の蝋燭が溶け切り灯火が消える。

外はすでに真っ暗になっており

部屋は静寂と暗闇に包まれる。


何をするわけでもなくただベッドのうえで

ジッと体を丸めていた。


どうしてこうなっているのかわからない。

ただ自分が思うままに過ごしてきただけなのに


誰かを殺したわけでもない。

誰かからものを盗んだわけでもない。

ただ他に好きな人ができただけ

たったそれだけなのにみんな私を罪人のように

扱う。


近所の顔馴染みはみんな侮蔑の眼差しで見てくるし

友人はみんな薄情者だと私から離れて行った

家族は私を恥知らずだと罵った

最近じゃ唯一の味方だったレビくんも

私にキツくあたるようになってきた。


もともと私とレイドは幼馴染だった。

両親同士が仲が良くよく両家で食事に行ったり遊びに行ったりもした

一緒にいることが当たり前で

家族みたいだけど兄妹とも違うような関係だった


そんなある日 レイドの両親が亡くなった。

賊か魔物に殺されたんだと街の人たちは言っていた。

ウチの両親はレイドを引き取って一緒に住もうと提案したがレイドが断った。

両親が残してくれた家で生きたいからと


彼からプロポーズされた時は純粋に嬉しかった。本当の家族になれるんだって思えた


幸せだった。だけどそんな平穏な日々に

飽きちゃったのかな?

ある日を境に彼のことがどうでも良くなった

まさに運命とも呼べるような出会いをしてしまったから


レビくんは強気で自信家で強引なところがあってレイドと違って男らしく思えた。


最初は貴族である彼に逆らえずなぁなぁで済ませるつもりだったし恋人だったレイドに罪悪感があった。


けれど彼を知るたびに私は彼の物になるべきだという気持ちが抑えられなくなった。


だから私はレイドを捨てた。


子供の恋愛なんて大人がアレコレいうようなものではないから周りの目や意見なんて気にも留めなかった。

けどそれが間違いだった


あれ以来レイドの様子がおかしくなった

いつもへらへら笑って、自分から雑用を引き受けたりするようなお人好しで

喧嘩だって近所のガキ大将のトモキにいっつも負けてたのに


いつも無表情で近所との付き合いも最低限になって

私にフラれたことをトモキに揶揄われた時

逆に返討ちにしてた。


近くに来た大人が止めに入って何事もなかったみたいになったけど

トモキの首を絞めていた時の目が明らかに異常だった。本気で殺す気だったんじゃないかと思うくらいには


トモキもそれには気づいていてあれ以来

レイドに近づこうともしなくなった。


それからは散々だった。

レイドがあんなにも荒れたのは

あんな境遇の彼を薄情にも捨てて

他の男のところに行った私たち一家が悪いとなり

近所の人みんなからじゃけんに扱われるようになった。


父も母も私の育て方を間違えた

昔はそんな子じゃなかったと毎日のように私を責めた。

そんな家の空気に耐えられなくて

いつもレビくんの屋敷に入り浸っていたが


最近 懇意にしていた貴族家が無くなりかなりバタバタしているらしく尋ねても

迷惑そうに客間に通されるだけで

彼の部屋に入ることどころか仕舞いに彼に会うことすらままならなくなった。


学園内では同じクラスだが取り巻きの人たちと喋るだけで私には見向きもしてくれない

もう私の味方はどこにもいない。


何がいけなかったんだろ?

地味子地味子って馬鹿にされてたのに

貴族に口説かれてその気になったのがいけなかったのかな?

あの時レイドのこと捨てなければよかったのかな?


あぁ……なんでだろ?


今すごく 会いたい。


レイドに会いたい。


家に行ってみようかな?

いや会ってもらえないよね。


学園にいる時は?

ダメ 綺麗な貴族令嬢と仲良くしてるのに

私なんかが間に入れない。


会いたいなぁ


目を閉じて 夜が明けて 朝になったら

私を迎えに来てくれないかな?


1人ってこんなに辛いんだね。


初めて知ったよ。


ごめんねレイド




天井に吊るしたロープに首をかけ


足場にしていた椅子を蹴り倒す


体が宙に浮きブラブラと揺れる


しかしすぐにロープがちぎれ床に体が叩きつけられる。


どうして……


何度やっても失敗する


ナイフで手首を切ろうとしても


高台から身を投げても


死ねない。いつも助かってしまう。


神様…どうして死なせてくれないのですか?


力なくあかりの消えた暗い部屋の中

ただ啜り泣くことしか私にはできなかった。





       遺書


私 高橋さつきは自らの浅慮な行動により

あらゆる方々を不快にさせ

家族を不幸にしたこと

そして

『月島レイド』を深く傷つけたことを

この命を持って償います。

本当にごめんなさい。

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