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8話 昂揚と衝撃と覚悟

自室のベッドに体を沈めているのに

常に心臓が早鐘を打ち爆発しそうだった


彼との決闘の後

勇気を出してディナーに誘ったら

まさかノリノリで応じるなんて思いもよらなかった。


しかも私の手を引いてうえに愛の言葉を囁くだなんてなんて大胆な…!


あぁあの後どうやって帰ったのか思い出せませんわぁ


たしか彼とディナーを楽しんで…

話の内容は…?


ダメ。思い出すと顔から火が出そうになってしまう


私おかしなことは言ってませんわよね?

髪型変じゃありませんでした?

髪留めを蝶にしたの気づいてもらえたかしら?


あーーーー!幸せに殺されるぅぅぅ


身悶えている最中部屋にノック音がなる


「まゆ。ちょっといいか?」


お父様が部屋に入り近くの椅子に座り込む


「寝るところだったのに悪いな…大事な話がある。」


普段温和な父が真剣な顔をしている

気持ちを切り替え話を聞くために対面してベッドに座る。


「実はな……財務大臣であるレビアント卿が遺体で発見された。」


「え?」


寝耳に水だった。レビアント卿といえば

この国で国王の次に発言権があると言われるほどの大貴族。

それが亡くなったなんてとてつもない大ニュースだ


「しかもご子息であるライオ様も行方がわかっていない。よく彼とつるんでいた連中も姿を消したらしく…おそらく卿もライオ様も何者かに消されたのだろう。」


もともと黒い噂が絶えない一族ではあった

しかしこの国のNo.2が何者かによって殺害された

そんな不祥事が知られたら

他国に弱みを見せることになる。


「お前もわかっているだろうがこんなことが知られてはマズイ。だからこのことは公表せずに

内密に処理してレビアント卿の一族は病気にかかり領地で療養されているということになっている。」


それなら頃合いを見て二人とも闘病の末に亡くなったというカバーストーリーが成り立つ

しかし


「どうして…私にこの話を?国家機密にあたる話なのでは?」


父は俯き大きく息を吐く


「……卿の後釜にワシが推薦されているのだ…」


⁉︎父が財務大臣に?突然のことになかなか頭が追いつかない


「財務大臣としての仕事に問題は何もない。

卿の手伝いは何度もしてきたし、それを踏まえての今回の推薦だからな。」


「だが卿とその子息が殺害されたとあっては話が変わる。後釜であるワシの命だけでなく…

その家族であるお前たちも狙われる可能性がる。」


「あっ」


背筋が凍る思いだった。

どこか他人事であった事件に

自分も巻き込まれそうになっているのだと

いうことを理解してしまった。


「他の候補者が選ばれるのならそれでいいが

もしワシが選ばれた場合、ワシはこの家から離れて王宮で暮らす。その方が標的になりやすかろう。

万が一の時はワシのことはいい母と弟を連れて領地に逃げなさい。」


「お父…様……」


嫌だと言いたい。国なんて捨てて一緒に逃げようと言いたい。


けれどそれはできない。


それは私が誇り高き椎名家の長女だから


もし私が駄々をこねて私や父の身に何かあれば


椎名家は弟が継ぐことになる。

しかしまだ年端もいかぬ弟が家督を継げば

権力や金にたかる者たちの格好の餌食になってしまう。


そうなったら椎名家はおしまい。


この家を 家族を守るには


父を囮にし見捨てて逃げるしか道はない。


「…わかりました……椎名の名にかけて

全力で家族を、家名を守ることを誓います。」


「この家名を継いだ時からいざという時の覚悟はしてきた。まゆみよ…女でありながら家督を継ぐために努力してきてくれたお前のことをワシは誇りに思う。」


だめ


「女だからと馬鹿にされたこともあったろう…

それでもめげずにお前は立派に育ってくれた。

それがなにより嬉しい。」


やめて


「貴族としてではなく。成功者としてでもなく。お前たちにはただ一人の人間として幸せな人生を送ってほしい。それがワシのたった一つやね望みじゃ」


そんな最後の別れみたいなことを言わないで


堪えなきゃ


「お前という娘が生まれてくれてワシは幸せだった。ありがとう…」


堪えなきゃ

覚悟が決意が涙と一緒に流れてしまう



数日後 父は財務大臣に任命され

この家から去っていった。

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