番外編 ある男と組織の末路
ここはどこだ?頭がぼーっとする。
目を開こうとするが瞼が重い。
自分の部屋…じゃない多分
目が霞んでよく見えないがこんな灰色ばっかりじゃなかったはずだ
手足の感覚がない。動かせてるのかよくわからない。
なんでこんな状態になっているのか記憶をたぐり寄せる。
たしか仲間たちと酒場で一緒に呑んでいて
そのあと仲間の秘密基地に行って
いつもみたいに楽しんでたはず
そのまま寝ちまったか?
頭が痛い。内側から棍棒で殴られてるみたいだ二日酔いだなこりゃ
調子に乗って一気飲みなんてするんじゃなかった
いや
違う
俺たちは襲われたんだ
いきなりマントを被った男が基地に来て
追い返そうとしたら全員返り討ちにあったんだ
記憶がだんだんと鮮明になっていく
てことは俺たちは捕まっちまったのかあいつに
あいつは誰だ?どっかの組織のやつか?
派手に遊んでたから目をつけられたか?
まぁ俺がいなくなったと知りゃ親父たちは血眼になって俺を探すだろうからここから逃げるのも時間の問題だな
クソ…やっぱ体が動かねぇここがどこなのかくらいははっきりさせときたいんだが…
「目が覚めたな」
声が聞こえた方向に目をやると
黒いシルエットが見える
おそらく俺らを襲った男と同一人物だ
お前何者だ
そう言おうといた時異変に気づいた
声が出ない。
いくら声を絞り出そうとしても空気しか出てこない
「悪いが喋れないようにさせてもらった。
用が済んだら戻してやる」
こいつの仕業か
襲われた時は声が聞けなかったから気づかなかったがかなり若いな
俺より年下か?少なくとも成人ではなさそうだが
「今から俺が調べたデータを読み上げる。間違いがないか確認してくれ。ん?あぁお前はただ聞いているだけでいい。私にはそれだけでわかる。」
データ?何言ってんだこいつ?
くそっ体が動けばぶっ飛ばしてやるのに
「ライオ=レビアント 28歳 独身
王宮の財務大臣であるタイム=レビアントの一人息子。王都でゴロツキを集めて『グリード』という組織を結成……安直なネーミングセンスだな…」
このガキ何企んでやがる。
親父のことを知ってるってことは強請る気か?
てことは目的は金か?
ツバでも吐きかけてやりてぇが今は我慢だ
薬か魔術で体がまともにうごかねぇようにしたんだろうがそうはいかねぇよ
エリートの血である俺はアンチスペルくらい詠唱なしで使えんだよ!
詠唱できねぇから効果が出るまで時間がかかるが問題ねぇ
ベラベラ喋って油断してるとこに1発入れて
親父の迎えが来るまで痛ぶってやる
「罪状は数えているとキリがないが
ここ数日のもののみ挙げると
農業区に住んでいたバナイ老夫妻を『作っている野菜が不味そうだから』と暴行を加え殺害
商業区で働くミルトンという少年を『俺のことを睨んでいた』と言いがかりをつけてハンマーで彼の右手を砕いた。
居住区に住むメアリア姉妹を集団で襲い強姦
その後二人を奴隷商に売り払い、売った金と二人の財産で豪遊…どこかに買われる前にもう一度楽しみたいからと自分たちのアジトに連れ込み再び強姦。許しを乞う姉に腹を立てて
姉妹共に殺害。」
こいつ…どこまで調べてやがる…ッ
今回の件含めて全部親j
「全部親父が揉み消していたはずなのに か?」
冷や汗が流れる。
恐怖に囚われそうになったがグッと奥歯を噛み怒りで誤魔化す
心を読めるのか?だから俺の返答は必要ないってことか?
クソクソクソクソクソぜってぇ殺してやるからなクソガキが大人を舐めやがってクソがクソがクソがぁ
「まぁ…クズだとわかってお前をターゲットにしたが…聞いてるだけで気が滅入る内容ばかりだったな。財務大臣はゴブリンでも孕ませてこいつを産んだのか?」
…!アンチスペルが効いてきた
だんだん視界もはっきりしてきた
奴が油断したタイミングで襲えばこっちのもんだ
「はぁ…生まれ変わったらゴブリンかオークにでもなるといい才能あるよお前」
ため息を吐きながら奴がこっちに背を向けた
今だッ!!その耳障りな声を出せなくしてやるッ
ベチャッ
?あれ?なんだ?地面に頭をぶつけた?
俺が?あいつじゃなくて?
だって俺走ってあいつをぶん殴りに行って…
あれ?
俺の手どこだ?
左右確認しても肩から先そこにあるべきものがない
え?足もない…膝から先がどこにも…
ッ⁉︎
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
声が出せるようになった瞬間に体に激痛が走り
叫び声が溢れる
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
俺の手が足が…なんでこんな目にあわないといけねぇんだよクソがぁ!!
「あーあ。お前アンチスペル使っただろ?
せっかく私が拘束魔法と一緒に鎮痛と止血も一緒にしてあげてたのに。解除したから四肢切り取った断面から血溢れ出てんじゃん」
「デメェ!!ごんなごどじで!!ただでずむどおもっでんのが!!親父がだまっでないぞ!!」
「だから?」
「は?」
「だから?」
「おまえもおまえのがぞぐもごろじでやる
濡れ衣着せて全員縛首にざぜでやるがらなぁ!!」
「へぇー」
「お前の父親も母親も兄弟も知り合いも皆痛ぶって殺じでやるならなぁ!!」
「そりゃおっかないな。
で?ダルマのお前に何ができる?」
「デメe
口に蹴りを入れられ歯のほとんどを砕かれた
そしてそのまま靴を口にねじ込まれた
「もう喋らくていい。できもしない妄言を聞いてるほど暇じゃない。」
頭をぶつけた時に出た鼻血で鼻が塞がり
口に靴をねじ込まれて息ができない…
抵抗しようにも手足がないから何もできない
「そうそうお前のダサい名前の組織の仲間たちのことは気にしなくていいぞ。全員生かしてる。」
だんだん意識が朦朧としてきてあいつが
何を喋ってるのかわからなくなってきた
「会得した魔術のなかに生贄が必要なものがいつくかあってな。ちょうどいいから使わせてもらうことにしたよ。」
ガキがいい気になるなよ。
親父が本気を出したらテメェなんてすぐに
捕まって縛首だザマァみやがれ…
テメェなんて…テメェなんて……
「あぁ!言い忘れていたよ。この国の財務大臣
さっき不幸な事故で亡くなったんだってさ
可哀想に。
……もう聞こえてないか。」
四肢が欠損しているとはいえこの死体にはまだ
利用価値がある。
異空間収納にでも入れて保存しておこう。
この血溜まりも何かに使えそうだし回収しよう
悪いな
俺としてはこんな世界の人間、誰が犠牲になってもどうでもいいんだがお前らがいけないんだぞ?
メインヒロインの覚醒イベントに必要な存在だからこうなるんだ。
犯罪組織 グリード
ヒロインとの好感度が一定を超え
1学期終了までストーリーを進めるとイベント発生
ヒロインがグリードに攫われ主人公が助けに行くことになる
その際ヒロインを人質に取られ抵抗できない主人公を助けるためにヒロインが新しいスキルを得る
それが『無慈悲なる裁き』
女神から見て悪人だと判断された者に
カンストダメージを叩き出す最強スキルのひとつ
女神を目の敵にしている俺がこのスキルの対象である可能性が高い。
だからイベントごと潰させてもらった。
そしてもう一つの目的
あのNTR男の家はレビアント家とグリードを後ろ盾にしていた家の三男坊だ
だから後ろ盾を潰して力を削いでやる
奴への嫌がらせとしては上出来だろう
そろそろ帰るか
明日から一番重要な学園生活が始まるんだ。
初日から寝坊なんてごめんだ
今日はよく眠れそうだ