6話 先回りして俺ツエールートをぶっ壊します1
説明やら教科書の配布やらで半日が過ぎ
下校時間となった
明日から本格的に授業が始まるが
その前にやらないといけないことがある
それは主人公最強武器である選ばれし絆の剣の回収である。
剣の入手方法は簡単でこの街に売られている
しかし剣の入手は本来終盤でないと手に入らないようになっている。
その理由が剣の販売価格が金貨100枚であること
金貨50枚で土地と庭付き一軒家が買えるこの世界においてあまりにも高額な値段設定である
じゃあ金さえあれば誰でも買えるのでは?と
考えるかもしれないが
ゲームシステムがこれを邪魔をする
一人につき所持できる金額は
金貨10枚まで
それ以上は自動で強制的に銀行に送金されてしまうのだ
そしてなぜか銀行の金はそれ以上に引き出すことができず
所持金が買いたい品物よりも少ない場合
仮に銀行に金貨が1億枚あろうと売ってもらえない。
これを解消するためには街のお助け依頼
いわゆるサブクエストをこなさなければならない
サブクエストの達成率に応じて所持金の上限値が上がっていく仕組みになっている
そして終盤の最後のサブクエストをクリアしてようやく金貨100枚を所持できるようになる。
つまり現時点で剣の購入は不可能ということになるが
そこは対策を考えている。
1.自分以外の人間に金貨100枚を譲渡し
そいつに購入してもらう。
NPCはプレイヤーと違って所持金制限がないからこの方法なら金貨100枚を持ち運べる
ただあまり現実的ではない。
金を預けられるほど信頼できる人間は俺にはいないし
なにより家が2軒は買える金を渡したら
そのまま雲隠れということも考えられる
現状総資産は金貨101枚ある
売れば金になる素材であれば山のようにあるが
素材の売買は一年生の中盤にならないと解放されない。
2.マジックバッグ系のアイテムの使用
マジックバッグ系アイテムは中に入っているアイテムは自身の所持物とみなされるが
アイテムや所持金の制限に引っかからない効果がある
だからマジックバックに金貨を90枚入れて
所持金の金貨10枚を合わせれば
その時点で購入可能になる。
だがこの方法は使えない。
マジックバックは生産職から金貨30枚で購入するか自身で錬成、もしくはモンスターからのドロップしか入手方法がない
ドロップするモンスターはこことは違う大陸のモンスターなので×
生産職から購入すると剣を買う金額が足りないし所持金制限で買えないという本末転倒である
自分で錬成はできなくはない
ただ素材が足りないのと錬成したからといって
100%入手できるわけではない。
数あるスキルのうちから付与した効果がランダムに得られる錬成では数千分の1の確率でしか手に入らない
モタモタしていられないとにかくこの世界の知識と今の自分のレベルを使ってできることをしなければ…
急がなければならない理由は
主人公も転生者である可能性があることだ
本来主席で入学するはずだったのが
あいつではなく俺であったこと
もし転生者だった場合自身の能力を隠すために
あえて能力を抑えて試験に挑んでいるかもしれないしそいつがゲームクリアを目指している場合ラスボスとなる俺と戦うことになる。
そうなればあのイかれたスキルの餌食になるし
そんなやつに剣が渡れば勝ち目がなくなる
同じこのゲームを知り尽くしてる人間であるなら同じように真っ先に最強武器を手に入れようとする可能性が高い。
そして一番最悪な展開は
転生者としてこのゲームで得られるスキルとは別のチート能力を得ていること
あの女神を目の敵にしていることは女神も気づいているはず
だとしたら邪魔者を排除するために主人公をけしかけてくる可能性もあるし
そのための力を与えている可能性も高い
ならば万が一敵対しても最低限対抗できるように今できることはやらなければならない。
そう考えていたのに
「売り切れ…?金貨100枚の剣が…?」
髭面の満足そうな顔をした店主が嬉しそうに語る
「そうなんだよぉついさっき男の人が買っていってねぇ!いやぁ親父の代から置いてたんだけど全然売れないしもうそのまま飾っとこうと思ってたんだけどまさか売れるとはねぇ!
しかも定価じゃなくてチップとして金貨20枚もくれたんだよぉ!今日は久々に嫁さんと外食にでも行こうかなぁ!」
やられた
あいつだ!
ひと足先に奴に買われてしまった。
必ず購入するからと取り置きしてもらう作戦だったがひと足遅かった。
まずい かなりまずい
剣を手に入れられたことだけじゃない
チップとして20枚の金貨を渡したということは合計金貨120枚を所持していたということだ
プレイヤーがマックスで持てるのが100枚だから
つまり100%マジックバック持ちであるということ
転生者である俺にこの制限がかかっているなら
奴にもかかっているはず
すでにサブクエストを全て終わらせていた?
いやだとしたらマジックバックはどこで入手した?
女神経由か?それとも錬成?
生まれながら前世の記憶があるなら
俺がさつきとのイチャラブ生活にうつつを抜かしていた間に準備を整えていたのか?
今いくら考えても考えはまとまらない
一度学園の寮に戻ろう。
…最悪、今の主人公を殺害して逃げることも検討しなければならないな。
そんなことを考え歩いていると校門前にあいつがいた
「また会いましたわね!私の永遠の旦那s…じゃなかった…永遠のライバル氷動レイド!!」
『椎名まゆみの好感度が999上昇しました』
会っただけで上がりやがった…
金髪のツインテを靡かせ仁王立ちで俺を待ち構えていたのは椎名まゆみだった
そうだった…こいつはエンカウントするとバトルになるめんどくさいやつだった
今日は早く帰りたいからさっさと終わらせよう
「前回のようにいくと思ったら大間違いですわよ?見なさい!!商人たちに集めさせて手に入れた私の眩い装備たちを!!」
はいはいすごいすごい
椎名まゆみは倒されるごとに主人公の所持金+金貨10枚くらいの価値の装備にだんだんランクアップしていくようになっている
だが結局戦略が毎度同じな上に耐性自体は低いままだから毎回同じ戦法で倒せるため正直どうでもいいんだよなぁ
バトルフィールドが形成されていく間
鑑定スキルで相手の装備を見て暇を潰す
しかしえらく豪華になったなぁ
なになに…
頭 黄金王の王冠
銅 女王のローブ
腕 天女の小手
腰 獅子の紋章ベルト
足 戦少女のスカート
盾 聖なる紋章盾
武器 えらばれし絆の剣
うーわ…普通に戦えば単騎でもラスボス完封できる装備してるよ…
ん?
えらばれし絆の剣…?
「驚いたかしら?特にこの剣。この町で一番高価なモノを取り寄せましたのよ!これもあなたに勝利するため!さぁ覚悟しなさい!!
あなたを式場…ではなく墓場に送って差し上げまs
「買ったのお前かい!!」
俺の魂の叫びと共に一撃で彼女は宙を舞った