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ドレス

【ドレスは洞窟にすんでいる】

【ドレスは全部で3着】

【ドレスは美しい少女の死体を求めている】


 コルトはドレスたちの召し使いなので、今日も学校帰りに友人からの遊びの誘いを断って、まっすぐに洞窟へ向かった。


「おーい、来ましたよー」

「コルトちゃん!コルトちゃん!聞いて!緑色がいじめるの!!」


 黄色のドレスが洞窟の奥から勢いよく飛び出してきた。高い声が洞窟によく響く。ドレスはふわふわと浮いていてそれを着ている者はいない。遠くから見れば、綺麗な黄色いドレスを着た透明人間がいるように見えたかもしれない。


「またケンカしてるんですか。よく飽きませんね。やっぱり脳みそが無い方々は違いますね」

「失礼ね!!脳みそは無くてもハートはあるよ!!!」

「コルト、今日も来てくれてありがとう。何かお土産はある?あると嬉しいな」


 洞窟の奥から緑色のドレスを着た美しい少女があらわれた。


「さっきそこのコンビニで買ったあんパンがあります。あ、ごめんなさい、あるのは緑色の分だけで、黄色の分はないです」

「なんで?!どうして?!またコルトちゃんが緑色を贔屓してる!」

「仕方がないよ、黄色。私はコルトの親友の死体を使ってるんだもの。コルトは毎日、私たちのお世話をするふりをして、本当は自分の親友の死体が、喋ったり歩いたり何かを食べたりするところを見たいのさ」

「なかなか意地悪な言い方ですね」

「そういう風に作られたものでね」


 コルトと初めて会った時、ドレスたちは魔法使いに作られたのだと言った。死体に着せるための魔法のドレス。死体を動かすための魔法のドレス。それが私たちだと。


「さっき黄色があなたにいじめられたと言ってましたよ」


 緑色はあんパンを食べながら面倒臭そうに答えた。


「いつか黄色に使われる死体は、ムグ、毎日、モグ、ぎゃーぎゃー騒ぐはめに、ムシャ、なって可哀想だなって言った」

「あ、食べかすついてる」


 コルトがティッシュで緑色の口を拭いてやる。緑色は大人しくしている。


「綺麗になった?」

「ええ、なりました。それから、意地悪な性格に作られたのかもしれませんけど、少しは思いやりを手に入れる努力をして下さい」

「あはは」

「……」


 緑色が笑うと、コルトはいつも黙ってしまう。


 次の日もコルトは緑色に会いに洞窟に行ったけれど、あらわれたのは赤色だけ。黄色と緑色は眠っているらしい。


「人間の血がなぜ赤いか知ってる?それはね…人間は愛で構成されているから!赤は愛の色だからね」

「人間が愛で構成されているなら、わたしの親友は通り魔にナイフで刺されて死んだりしなかったと思うんですけど」

「うふふ」

「笑い事じゃないんだけどな…」


次の日、緑色はコルトをにらみながら言った。

「なんで昨日はお土産くれなかったの?」

「あなたは眠ってたので…赤色にあげたんです」

「……」

「ごめんね、泣かないで。今日はチーズケーキを持ってきたんだよ」


 緑色がチーズケーキを食べて、口のまわりの食べかすをコルトが拭いてやる。なんか不思議なんだよな、コルトはふとそう思った。親友は食べ方が綺麗な女の子だった。


 笑った顔も、こんなにきらきらしてなかった。


 最後の会話を思い出す。


「ごめんね、嬉しいんだけど…わたしはあなたと友達でいたい」

「……ありがとう。コルトは優しいね」


ごめんね、あなたの気持ちにはこたえられなかったのに。


ごめんね、あなたの死体を好きになって。

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