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8話 天使、降臨!


 医師の診察が終わったあと、ルルーシュの手により身支度を整えられたメロリーは、姿見の前で目を丸くしていた。


「これが私……?」


 さわり心地の良いシルクの淡い水色のドレス。

 腰のあたりに金色のリボンがついており、とても上品で高級そうな一品だ。

 露出が少く、かなり痩せているメロリーでも、あまり体型が気にならない。


 白い髪は見違えるほどツヤツヤとしていて、後頭部でふんわりと結われている。


 化粧を軽く施された姿なんて、まるで別人のようだ。


「はい。メロリー様でございます。大変お美しいです」

「信じられない……。ルルーシュって、本当に凄いのね!」

「何を仰いますか。私はメロリー様の良さを引き出しただけのことでございます」


 そうルルーシュは言ってくれるが、未だに本当にこれは自分なのかとメロリーは信じられないでいた。

 今までは遠目からなら老婆と言われても仕方がない見た目だったのだから。


「では朝食に参りましょう。別のお部屋に食事は用意してございますので、ご案内しますね」

「ありがとう!」


 メロリーは見違えるほど美しくなった姿で、ルルーシュと共に部屋を出た。


 しかしどうしてだろう。朝食を準備された部屋に案内されたメロリーだったが、入り口にはロイドではない人物が立っていた。


 大きな瞳に、ピンク色の髪の毛が可愛らしい少年だ。

 とりあえず挨拶をしたほうがいいのか、ルルーシュにこの少年が誰なのか聞いたほうが良いのかとメロリーが迷っていると、少年が先に口を開いた。


「メロリー様、初めまして。僕はブライアン子爵家の次男──アクシス・ブライアンと申します。ロイドの側近です。昨日は挨拶に伺えず申し訳ありません」


(側近! こんなに若く可愛らしい少年が!)


 おそらく側近ならばロイドと共に戦争にも出向くのだろう。こんなに可愛らしい少年が剣を振るうなんて、なかなか想像できない。


 そんなことを一瞬考えたメロリーだったが、挨拶を返さなければとハッとした。


「初めまして。シュテルダム伯爵家長女の、メロリー・シュテルダムと申します。えっと、この度ロイド様の婚約者になりました……!」


 なんだか、こう口にすると小っ恥ずかしい。


「メロリー様のことは一度、野外で拝見したことがあります。……しかし失礼ながら見違えました。こんなにお美しかったなんて」


 アクシスはそう言って、メロリーの斜め後ろに控えるルルーシュに視線を向ける。それに気がついたルルーシュは、それはもう深く頷いた。


『想像を絶する美しさですよね? 分かります』というような声が聞こえてきそうなルルーシュの様子に、アクシスは微笑を浮かべた。


「私の方こそ、昨日はご挨拶に伺えなくて大変申し訳ありません。恥ずかしながら、湯浴みの最中に眠りこけてしまいました。気が付くと朝になっていまして……」

「相当疲れていたんですね。お気になさらず。ロイドがえらく心配していましたので、元気なお姿を見せてあげてください」


 アクシスの笑顔につられ、メロリーは頬を緩ませながら「はい」と答えた。


「ブライアン子爵令息様、とお呼びしたら良いですか?」

「アクシスで構いませんよ」

「では、アクシス様」


 呼び方の確認をしていると、アクシスの背後から眉間に皺を寄せたロイドが現れた。


「ロイド様!」

「メロリー!」


 ロイドはメロリーに対して一瞬笑みを浮かべたが、直ぐに厳しい表情に戻し、アクシスを睨みつけた。


「ロイドさぁ、僕とメロリー様が仲良く話してたからってそんなに怖い顔しないでよ。男の嫉妬ほど醜いものはないね。それに、メロリー様を怖がらせるかもしれないよ?」

「! す、すまない、メロリー。君に怒っているわけじゃないんだ! 決して!」

「は、はい! 分かりました!」


 メロリーが圧に押されて頷けば、ロイドは改めてメロリーの姿をジッと見つめ、悶え始めた。


「ああ……! いつも可愛いが、今日のメロリーはより美しい! 天使だ……」

「出たよ、天使」


 歯の浮くような言葉に、アクシスがさらりとつっこむ。


 ロイドが「何か文句があるのか?」とアクシスに詰め寄れば、二人はあーだこーだと話し出した。


「お二人は本当に仲がよろしいのですね」


 二人のやり取りは、主君と側近というより友人同士に見える。

 メロリーが思ったことをそのまま口にすると、二人は少し照れくさそうにして、ロイドは一度咳払いをした。


「メロリー、私とアクシスは幼馴染みなんだ。だから仕事相手でもあり、気軽に話せる仲でもある。あと、こいつはこの見た目だが私と同じ二十一歳だ」


「えっ!?」


(私より年上!?)


 とはいえ、よくよくアクシスを見れば、年相応の落ち着きと品がある。

 反対に大人っぽい顔つきのロイドだが、笑顔やアクシスに見せる顔には幼さが残っているように見えた。同い年なのにも納得だ。


(あら?)


 まじまじと二人の顔を見ていたメロリーは、アクシスの目の下に薄っすらと隈があることに気付いた。

 メロリーは後ろに控えるルルーシュに声をかけ、彼女が代わりに持ってくれていた薬箱を受け取る。

 これは実家から持参したものだ。


 昨日、ロイドにあげた薬が入っていた手持ち鞄よりも多くの薬を保管できる。

 その中から小瓶を一つ取ると、メロリーはアクシスにあの、と声を掛けた。


「アクシス様、もしもお疲れのようでしたらこれを」

「ん? これは?」

「少しお疲れのようですので、『語尾にぴょんがつくけれど身体の疲れが半分になる薬』をどうぞ! お休みになる前に飲めば朝起きた時に語尾の副反応は消えていると思いますので──って、あ……」


 今日、メロリーはロイドに喜んでもらおうと、いくつか薬をこの場に持ってきていた。

 いくつか持ってきていたので、良かれと思いアクシスに薬を出したのだが、メロリーはすぐさま後悔した。


 ロイドは過去の一件でメロリーの薬の効果を認め、求めてくれている。


 しかし、アクシスは別だ。

 アクシスにとってメロリーは主君であるロイドの婚約者だけれど、出来損ないの魔女でもあるのだ。

 昨日からロイドやルルーシュにとても良くしてもらい、アクシスも普通に話してくれることから、すっかり頭から抜けていたが、普通は誰もメロリーの薬を喜んで受け取ってくれるはずがないのだ。


 ──そう。そのはずだったのに。


「ありがとうございます、メロリー様。ロイドから貴女の薬は凄いって聞いていたから楽しみです。寝る前に飲ませてもらいますね」

「は、はい! こちらこそありがとうございます! 受け取っていただけるだけで、とっても嬉しいです!」


 満面の笑みを浮かべて喜ぶメロリーに、アクシスは少し困り顔になる。


 そして隣にいるロイドにしか聞こえないような声で、ポツリと囁いた。


「……ロイドが天使だって言う意味が、少し分かった気がするよ」

「分からなくても良い。欠片も分からなくて良い」


 そんな二人をよそに、メロリーはルルーシュともに、喜びを分かち合った。

読了ありがとうございました! 


読了のしるしにブクマや、↓の☆☆☆☆☆を押して(最大★5)評価をいただけると嬉しいです!

ちなみに作者はアクシスのようなツッコミ役が大大大好きです(๑˙❥˙๑)♡なにとぞよろしくお願いします……!

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美しい表紙と挿絵を担当してくださったのは麻先みち先生٩(♡ε♡ )۶
天然だけど実は天才!?な魔女メロリーと、冷酷と呼ばれているけれどメロリー強火担過ぎるロイドのドキドキラブコメディをぜひお楽しみください♡なろう版よりもとっても読みやすくなっている上、特典もたっぷり!なんとサイン本が当たるかもしれない!?企画も!
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