003話 次期魔王
――村ルシェイ、領主の屋敷
都市イネルダの奴隷市場で、この村出身の奴隷商人からタダで女奴隷を買いました。
それから、村の転送門まで戻った僕は、バレないように『透明化』し、まんまと自分の部屋へ…女奴隷を連れ帰る事に成功したのです。
そして…女奴隷に初めてを捧げてしまったのです。
女奴隷を抱いた感想はと言うと…まるで、夢の中のようでした。彩綾には悪いのですが…彩綾では一度も味わえなかった領域でした。
「ごひゅぢんひゃま…♡ひゅごいでひゅ…♡」
手馴れている感じがかなりしたので、恐らくこの辺はピロートークだと思います。
「こちらこそ。凄く良かった!ありがとうな?」
「はい♡」
女奴隷が、凄く可愛い表情を…ベッドに横たわりながら、浮かべております。
「そうだ…名前は何て言うのだ?」
「りだるゔぇいな…でひゅ。」
さっきの男が、リザちゃんと言っていたのを思い出したので…リザルヴェイナだと思います。
「リザルヴェイナか?」
「はい!!ごひゅぢんひゃま…おなまえは?」
僕の名前まで聞いてこれる事には…驚きでしたが、心が完全には壊れていないようでひと安心しました。
「シェルディスだ。」
「ひぇるでぃひゅ…ひゃま…?ごめんなひゃい…。わたひことば…へん。」
歯が殆ど無いので、言葉が変なのは仕方ないです。
「リザって呼んでも良いかい?」
「はいっ♡ごひゅぢんひゃま…♡」
歯だけでも…先に治してあげたいと思ったのですが、やはり…女性の大事な器官を治してあげる事が、リザと僕にとっての最優先事項と考えました。
「ちょっと…触るね?『治癒』!!」
僕は…リザの下腹部の上に手をかざしました。
――「対象へは効果がありません。」
久しぶりに、かけた魔法に効果が無かった時の…天の声が聞こえました。
「え?!『治癒』が効かない?!じゃあこれは…?『治療』!!」
『治癒』の強化版『治療』を唱えながら、リザの下腹部に手をかざしました。
――「対象へは効果がありません。」
また…天の声が聞こえました。本来、これをかければ…欠損・切断以外の怪我は全快する筈なのです。
「リザ?君は…人間だよね?」
「わたひ、にんげん…。たぶん、にんげん。」
急に…自信なさそうな表情をリザはしました。
幼少期から奴隷の身だと…出自が分かる筈もないので、曖昧になるのは無理もない話なのですが…。
「確かに…奥に感触はあったけど、気のせいだ。きっと…切除されてしまっているのかも!!これでどうだ!!『再生』!!」
一度、先入観を消して『再生』を唱え、リザの下腹部へ手をかざしました。
――「対象へは効果がありません。」
やっぱり、自分の感触は合っていました。普通の怪我にも『再生』は効果があるので、効果がないなんて…昔、死体に使用した時以外、天の声は聞いたことがありませんでした。
「リザ…?君は、僕の回復魔法が全く効かないみたいだ…。少し、君の『状態確認』させて貰うね?」
「ひゅてーたひゅちぇっく?」
『状態確認』とは名の通り、相手の全ての情報を確認できる魔法です。ところが、この魔法を使えるのは…ルシェイ家の人間だけなのです。
恐らく…英雄達が魔王を倒せたのは、祖先がこれを使い…魔王の弱点等を引き出したからなのだと思います。
今から、リザに『状態確認』をして、回復魔法がなぜ効かないのかを調べるところでした。
「君の身体の情報を調べるって事さ。良いかい?」
「はい!よろひくおねがいひまひゅ!」
「『状態確認』!!」
この魔法は、一行毎天の声が読み上げてくれます。
――『対象:リザルヴェイナ=ウィルフェイド』
「ウィルフェイド?どっかで聞いたような。次!」
――『性別:女』
「これで、男だったら逆にビックリするよ。次!」
――『種族:魔族と人間の混血』
「出たぁ…。ファンタジー系にありがちな敵陣営と味方陣営のハーフ展開?!でも、人間の血が入ってるから…回復魔法効く筈なんだけどなぁ…。次!!」
――『職業:次期魔王(継承順位:第一位)』
「は?!ちょっと待ってっ!!」
目の前にいる、今にもボロボロで幸薄い美少女が…次期魔王だったのです。
ウィルフェイドは…現在の魔王の名前なので、人間達には名字のみ名乗っているという事になります。
「天の声さん?」
『違います。誘導師です。』
この天の声は面倒くさい系かもしれませんが、聞きたいことがありました。
「誘導師さん?魔王には、現行の回復魔法は効かないのですか?」
『はい。現行の回復魔法は効果がありません。古の治療魔法のみ効果があります。』
「ありがとうございました。終了。」
とりあえず、不思議なのはリザは何も…魔王の片鱗を見せていない事です。もし何かしらでもあれば…女性の大事な機能を壊されたりしなかったと思います。
もしかしたら、獅子は崖から谷底へ子を突き落とし…這い上がってきた子を育てるという話があります。
魔王も、子供の能力を制限した上で…人間界に放置し、機が熟した頃…能力を全開放させるのかもしれません。
「リザは…次期魔王なんだって。」
「わたひが、まおう?うっ…!!うぅぅぅっ…。」
リザが魔王と言った瞬間でした。
頭を抱えて…リザはベッドの上をのたうちまわり始めました。
「いたい!!あたま!!ごひゅぢんひゃま!!たすけて!!」
「リザっ!!大丈夫か?」
ベッドの上でのたうちまわるリザを…僕は優しく抱き抱えました。
「ごひゅぢんひゃま!!ごひゅぢんひゃま!!」
みるみるうちに…リザの肌の色が、透き通る程の白い肌へと変わっていきました。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
リザの物凄い叫び声と共に、今まで金色だった髪の色が…蒼色へと変わってゆきます。
更に…リザの頭頂部と側頭部の間から、漆黒の可愛らしい巻き角が左右対照に生えてきたのです。
「ごひゅぢんひゃま…♡だいひゅき…♡」
片方しかない左目を見開いたリザの瞳は…金色に輝いておりました。
――ドサッ…!!
「ごひゅぢんひゃま?きもちよくひまひゅ♡」
それまでの…か弱いリザとは比べ物にならない程の力で、僕はリザに迫られました。
こうなったら、リザの好きにさせるしかありませんでした。
――――
――ドンドンドンドンッ!!
「シェルディス!!娼婦でも連れ込んでるの?!」
リザの…雄叫びのような行為中の声に、母が部屋の前まで来てドアを叩いております。
「クォルスお母様?!えっと…。僕の奴隷の声だよ…。ゴメン。」
「奴隷…ですって?!全く、そんな下品な声を出す女奴隷なんて…。シェルディス!!あなた、いったい…いくら払ってきたのよ!!」
流石に…昼間から、結構な声をリザはあげていたので…母が怒るのも無理ありませんでした。
「ごめんなひゃい…!!ごひゅぢんひゃま…?わたひ…めいわく?」
「僕はリザの事…大好きだよ?だから…もう少しだけ、声小さくしようか?」
リザの身体につけられた生々しい傷跡は、身体が変化したのにも関わらず、治りそうにありません。
その証拠に、右目も歯も治りませんでした。恐らく、女性の大事な器官も壊されたままなのだと思います。
「はい♡ごひゅぢんひゃま、だいひゅき♡」
もう一回戦…リザが挑もうとしておりました。
「リザ?僕の…お母様と会ってもらえるかな?」
「ごひゅぢんひゃま?おかあひゃま?」
やっと…リザが僕の身体を解放してくれました。
そう言えば…リザに着せる服など、この部屋にはありません。どうしたものかと考えているその時でした。
――ガチンッ…
――ガチャッ…
部屋の扉の鍵が開く音と同時に、扉を開ける音が聞こえました。僕が慌てて扉の方を見ると、リザが開いた扉の前に裸で立っておりました。