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002話 女奴隷


――都市イネルダ、郊外の奴隷市場


 隅の奴隷商人の所に、僕はまだ居ました。


 「兄さん、お名前聞いてなかったですね?」


 「僕の名は、シェルディス=ルシェイだ。」


 何故か奴隷商人が驚いた表情を見せたのです。


 「兄さんは…領主様のご血縁者の方でしたか!!」


 今まで少し距離のあった奴隷商人の表情が、少し…にこやかなものへと変わった気がしました。


 「僕の家を…ルシェイ家を知って居るのか?」


 そんな話をしながら、僕は契約した…女奴隷に声をかけて、地面から起こそうとしておりました。


 「私は、ゲデルス・ツウェンと申しまして…村ルシェイの出身なんです!!」


 「そうなのか?!村に…親族はいるのか?」


 「残念ながら…親族は皆、街に出てしまってやしてね?でも、私の家の事は、ツウェンの名で聞いてもらえれば分かりやすよ?」


 村のご意見番、食堂のイオミさんにでも、聞いてみることにします。


 「分かった!!聞いてみよう!!ところで…。僕は…今からその村に、この女奴隷を連れ戻りたいのだ…。だが、なかなか立ちあがろうとしないのだ…。」


 「ああ、シェルディス様。そういう時は…奴隷に命令してやれば良いんですぜ?自分の意思とは関係なく、思いのまま動かせやすからね?」


 そうは言われたものの、今命令してしまったら…と思うと僕は、命令する事が出来ませんでした。

 何故なら、地面に寝そべった女奴隷が…僕の気を惹こうと…必死になって脚を開き誘ってきていたからです。

 相手は奴隷なのだから、そんなの関係ないと言われそうですが、僕は女奴隷の気持ちを…無碍にしたくなかったからです。


 「なぁ…ゲデルス?一つ、この女奴隷について聞きたいんだが良いか?」


 「はい!私の知っている限りなら答えやすぜ?ですが、この奴隷は…奴隷商人達のところを転々として、売り叩かれてきてやすからねぇ…。」


 やはり、女奴隷が…この酷い状態になるには、色々な話がありそうでした。


 「この女奴隷の…女の機能が壊れてるってのは、子供を産めないって事か?」


 「はい、私の手に渡った時にはもう…。ですが、夜伽に使われる分には、全く問題ありやせんぜ?」


 普通にすれば…恐らくかなり可愛い女奴隷に対し、極悪非道な行為をした輩が居たことに怒りを覚えました。

 僕は…この世界程争いのない地球の、日本人として生まれ…恋人と添い遂げる前に不慮の事故で死んで、転生してきました。

 だから、僕は…この女奴隷に対しては、非情になる事は出来ないと思います。


 「なぁ?この女奴隷はもう…僕のモノなんだな?」


 「はい!生かすのも壊すのも殺すのも、シェルディス様の自由ですぜ?」


 「分かった。ありがとう。」


 僕は…この女奴隷の身体を、まず…治療師の力を使い、元通りになるまで治してあげてから、どうするかその時考えようと、心に決めたのです。


 「ほら?行こうか?僕の家に。」


 「いっぱい…。だいてくらひゃい…。」


 声をかけても、話が…噛み合いませんでした。

 潰されていない左目も光がなく…虚でした。

 もしかすると、この女奴隷…心が壊れている可能性がありそうでした。


 「行くぞ!!立て!!」


 「はい。」


 強引は嫌ですが…命令する他ありませんでした。

 女奴隷が地面から、スッと立ち上がりました。


 「ゲデルス?この女奴隷、心も壊れてるのか?」


 「微妙なところでやすね。強い意志で…媚びを売っている時と、意識が混濁してぼんやりしている時と、まるで悪魔が憑いたかのように粗暴になる時と、色々ですね。」


 「そうか。気をつける事にする。では、ゲデルス?また会おう。たまには村にも顔を出せ?」


 「はい!領主様にも宜しくお伝えください。」


 僕は…ゲデルスに軽く会釈をすると、女奴隷の手を握りしめました。


 「ごひゅぢんひゃま♡」


 また…女奴隷は、くねくねし始めてしまいました。

 命令しながら、転送門へ行くしかありません。


 「行くぞ!!」


 「はい。」


 立たせて…僕と並んで分かったのですが、ボロボロの布切れしか身に纏っておらず、胸や大事なトコロが丸見えになっておりました。


 「これ、羽織ってくれ…。」


 僕は、羽織っていた外套を脱ぐと…女奴隷の手に渡しました。


 「ごひゅぢんひゃま?!いいの!?」


 驚いた表情を女奴隷は見せて、少し素が出たように感じました。


 「お前は女性だ。見られたら恥ずかしいだろ?」


 「ありがとうごぢゃいまひゅ♡やひゃひい♡」


 女奴隷はすぐに外套を羽織ると、僕の右腕にギュッと抱きついてきました。


 「ごひゅぢんひゃま…♡ひゅき…♡」


 歯が殆ど抜かれていて、喋り方が変なのは置いておいても…この女奴隷は案外喋ることに、僕は安心しました。


 「家に帰ったら、お前の身体治してやるからな?」


 「ほんと?!わたひ、うれひい…。」


 急に…僕の右腕に抱きついている女奴隷から、水のようなものが…僕の腕にポタポタと落ちてきたのです。

 ふと女奴隷をよく見ると、左目を潤ませて涙が零れ落ちてきておりました。


 「なぁ?他にも…酷いことされた身体の場所はあるのか?」


 「ううん…。ごひゅぢんひゃま…?だいひゅき♡」


 何だか、こうして女奴隷に身体を密着されていると…恋人だった彩綾の顔が思い浮かびました。

 ですが、そろそろ僕は…忘れようと思います。


 傷心気味の今の僕の心を満たすには…丁度、都合の良い…女奴隷が手に入ったからです。


 「そろそろ、家に帰ろう?」


 「はい!!」


 僕と女奴隷は、都市イネルダの街外れにある転送門に向かって歩いて行きました。


 「お?兄さん、誰にでも腰を振っちゃう奴隷のリザちゃん買ったのか?」


 背後から急に、僕は男に声をかけられました。


 「そうか、名前はリザと言うのか?まぁ良い。僕は先を急いでいるからな?」


 「朝から晩までどこでもお構いなしなのが、唯一リザちゃんの良い所だからなぁ?きっと兄さん、苦労するぜ?ハハハハ!!」


 どこでもしろと主から、命令でもされていたのだろうと思いました。


 「ちがう…。わたひ…。いや…。」


 「大丈夫だよ?僕は気にしてないから、早く家に帰ろう?」


 女奴隷はチラチラと僕の顔色を伺いながら、右腕を…更に、ギュッと強く抱きしめてきました。


 「ひんぢてくれて、ありがとう…。」


 こんな可愛い姿を見せられてしまった僕は、とりあえず…一回、この女奴隷を抱いてみたくなりました。



――都市イネルダ、郊外の転送門


 それから、転送門へ向かう間、何回か同じように女奴隷を揶揄う男に遭遇しましたが、それとなく聞き流しながら何とか辿り着きました。


 「僕にちゃんと捕まってるんだよ?」


 「はい!!」


 「村ルシェイ…。」


 ――ブンッ…


 僕と女奴隷の身体が…都市イネルダの転送門の中から消えてゆきました。


――村ルシェイ、郊外の転送門


 ――ブンッ…


 僕と女奴隷が再び…村ルシェイの転送門の中へ姿を見せました。

 今までの喧騒は消えて、鳥の囀りが聞こえてきておりました。


 「ごひゅぢんひゃま?わたひ、ここひゅき!!」


 「おおっ?!この村の感じが好きか?」


 「はい!!」


 この村のことを…女奴隷が好きと言ってくれた事に、僕は物凄く嬉しく感じてしまいました。早く、身体を治してあげたいという気持ちと…早く抱いてみたいという気持ちが入り混じっております。

 一言で言えば…この女奴隷が好きみたいです。


 とりあえず、早く…女奴隷を抱きたくて、僕の家まで…誰にも見つかりたくありませんでした。


 「よし、『透明化(インビジブル)』!!これで僕達の姿は見えないから、しっかり掴まったままでいてね?」


 「はい…。とうめい。こわい。」



――村ルシェイ、領主の屋敷


 僕の家は…この村の領主を一応している為、それなりの屋敷なのです。

 バレないよう、家の者と一緒でしか通れない抜け道を通って敷地内へと入りました。


 ――ギィッ…


 そのまま、裏口へと回り込み…扉を開きました。

 誰も居なさそうだったので、自分の部屋まで一直線に向かいました。


 ――バタンッ!!

 ――ガチンッ!!


 「『可視化(ビジブル)』!!着いたよ?ここが僕の部屋だ。」


 ――ドスンッ…!!


 「ごひゅぢんひゃま♡だいて…♡」


 僕の気持ちを察していたかのように、女奴隷が僕のベッドに倒れ込むと…誘ってきました。


 「ああ。抱いてやる。」


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