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Close to You  作者: Tohma
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83 球技大会

 10月の(なか)ばになり、外の風が心地良く感じられるようになったこの頃。


先月仙台駅で見かけてから今日まで、学校で雨音の姿を見かけることは1度もなかった。


それも当たり前と言えば当たり前だ。


 この1ケ月あまりの間、エウレカは主要都市6ケ所でドームツアーを行っていたのだ。


ツアーの合間も入念なリハーサルの繰り返しで仙台の高校に通学できる余裕などなかっただろう。


 そのドームツアーも一昨日の東京ドームで千秋楽を迎えた。


この東京ドーム公演のもようはダイジェストであったが、昨日配信されていたので僕ももちろん鑑賞した。



「みんなー! 最終日盛り上がって行くよー!」


宮内 理沙の呼びかけに割れんばかりの歓声が沸く。


ライブ会場は観客で超満員だ。


ステージには雨音も含め、20人以上のメンバーがファンの方へ駆け寄って手を振っている。


 オープニング曲は「息吹き」


軽快な曲とダンスで一気に場内を盛り上げる。


バックの巨大モニターには、各メンバーが交互に映し出され、雨音も喜多上や葛巻と並んで踊っている姿が一瞬映った。


 続いてステージ上の照明が鮮やかな赤やピンクに切り替わり、2曲目は「可愛すぎるって罪でしょうか?」


また、志波がセンターで仏頂面(ぶっちょうづら)で踊るのかと思いきや、彼女はイントロ中のフォーメーション時にセンターにはいなかった。


彼女は最後列の目立たないポジションへと隠れ、代わりに3期の雫井 詩帆と矢真田 恋によるWセンターが初お披露目された。


志波はキャラに合わないこの曲でセンターに立つことをとうとう固辞(こじ)したみたいだが、これが(こう)(そう)したようで、雫井&矢真田のサプライズセンターがガチファンの萌えキュン度を爆上げさせ、さいこーと両手のサイリウムを振り回して泣き叫ぶ者や興奮し過ぎて倒れこむ者もいたり、1曲目以上に盛り上げを見せた。


さらに2人の脇を固める2列目も1期の二瓶 望杏や2期の水沢 唯といった小柄で愛くるしさを売りにしているメンバーを前面に出して、今までよりもこの曲の魅力を引き出したようだ。


一ノ瀬 騎械氏もこの曲の制作当初は、こういうかわいさ全開なのを予定していたんだろうなと新しい振り付けを眺めながら思った。


 このパフォーマンスを1回目に観た時には客席の前列でやたら激しくロマンスをシンクロさせて踊っている集団のオタクがいるな程度に思っていたが、2回目に見直した時にその集団の先頭にいる2人組の片割れがうちの学校の謎解き部の栗原部長だと分かった。


あの人は今年3年生で大学入試を控えているはずなのに、この時期にこんな所でこんなことをしてて随分余裕なんだなと僕は驚きあきれた。彼の着ている純白のハッピには左右にそれぞれ、"しほっち"、"命"と刻まれていた。


ついでに隣りにいた人は現地で意気投合したガチオタらしき人で、彼のピンク色のハッピには"レンレンに"、"キュンキュン"とあった。


曲「可愛すぎるって~」の最後に、雫井&矢真田が人一倍騒いでいる栗原部長達のいる方向にピストルでバンッと撃ったようなポーズを決めると栗原部長達は皆、自らの左胸を手でおさえながら撃たれた~というリアクションで床に転がっていった。



 一昨日の最終ライブがそんな感じで、それから2日経っているのだからもしかしたら今日は雨音が学校に来るのかもしれない。


今日は仙宮高の生徒にとって特別な日の1つ。年1回の恒例イベント、球技大会の日だ。


校内のグランドや体育館にジャージ姿の雨音がいる―


そんな淡い期待に鼓動が高鳴る。


しかし、目の前には雨音とは似ても似つかない人がジャージ姿で僕の前を歩いていた。そして、何かの拍子で振り向き僕に気付いた。


「よお、塔。なんだべ、気付いてたなら声かけてくれよ」


藍菜だった。


ジャージ且つ手ぶらでやって来た彼女は見かけ通り、頭を動かすより体を動かす方が得意そうでやる気満々だ。

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