77 早押し対決
スクリーン上に突如現れた謎の女性アイアイ。
「おーここでアイアイの登場だ! 華巻さん、彼女の挑戦を受けますか?」
透野からマイクを向けられる華巻。
彼女は怪訝そうな顔でスクリーンに映る女性を指差し、
「麗しき才女アイアイ? どっからどう見てもあいぶーじゃん」
と言った。そして、隣りの喜多上を見る。
「うん、シルエット上だけど声も変えてるわけじゃないし、まんまあいぶー」
とうなずいて同意する。
「ぐぉらー!! 華巻ぃぃぃー、喜多上ぃぃぃー!!!」
シルエットだった女性にパッと照明が当たり、昨年の学力テストで最下位だった都 亜衣が現れた。
「去年のあの日、学力テストで最下位になってしまってからあいぶーと呼ばれ続け……最初は3ケ月間の期間限定と言われていたのに、華巻と喜多上がその後もテレビやラジオで言い続けた結果、最近の握手会にやって来るファンの人達からもあいぶー、あいぶー……この積年の恨みはらさでおくべきか……」
鬼気迫る形相の都。
教室内ではまたもやとなるメンバーのサプライズ登場に再び拍手喝采が沸き起こった。
「あおさん! この勝負受けましょう」
喜多上は拳を振り上げ、華巻を鼓舞する。
華巻はそれに応えるように椅子の上に片足を置いて、スクリーンの都を指差した。
「よっしゃ! やってやろうじゃない。どっちがエウレカのNo1おバカか白黒つける時が来たわ!」
「そんなかかっこつけて言うことでもないけどね。いざ! 最終決戦!」
八幡タイヤも番組の締めくくりにふさわしいと手を叩いて場を盛り上げる。
他のメンバー達もいいぞーと都と華巻に声援を送る。
透野が2人の直接対決のルールについて説明する。
「お2人の前に早押しボタンを用意しました。問題が読まれましたら先にボタンを押した方のランプが点滅します。解答者が間違えたら、もう1人に解答権が移ります。1問につき1点、3点先取した方が勝者となります」
「勝ってギャフンと言わしてやるわ華巻! この日をどんなに待ち望んだことか……」
そして、都のVTRが流れる。
都が頭に"打倒 華巻"と書かれたはちまきを巻いてエウレカのスタッフと思しき人達に教えられながら机に向かって猛勉強している姿が映し出された。
「事前にあんなに勉強してるのー! ずるーい!」
華巻はあらかじめ勉強して準備してきた都を非難する。
喜多上はそんな彼女の上着の袖を引っ張り制止する。
「まあ落ち着いてください。あおさんのさっきのテストの結果は5教科全部で25点でした。
前回の亜衣さんの点数は何点でしたか憶えていますか?」
「えっ、いや……何点だったっけ?」
「今、スマホで調べたんですけど……18点です」
「くっ、ふふっ」
こらえきれずに吹き出してしまう華巻。
えー、と教室のメンバー達からも驚きの声が上がる。
「こらー! 言うなー!!」
都は羞恥心で顔を真っ赤にして目を見開き、興奮のあまり持っていたノートで机をバンバンと叩いた。
まさに鬼の形相だ。
「亜衣さん、大変失礼しました。前もって勉強してもらってないと私の圧勝だったところです。
ハンデとしては十分ですよ」
華巻は突然クールな顔になり、都をいっそう挑発する。
「く~、負けないわよ!」
教室内のメンバー達は各々を応援する。
「亜衣ちゃーん、1期生の意地を見せてちょうだい」
西根、松尾、二瓶は同期の都を。
「あおちゃーん、あなたはやればできる子、今日こそ1期生に下剋上よ!」
釜井、伊沢はやはり同期の華巻を。
「あおさん、もう1年あいぶーを延長させましょう」
喜多上も漫才の相方でもある華巻を。
「どっちもー最善を尽くして頑張ってくださーい」
雨音と東和は中立的な立場で両者を。
都 亜衣 VS 華巻あおい―2人の早押し対決が始まった。